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2-18.上級迷宮への移動

 マリア様の許可を得たので、今日から上級観光迷宮に出発だ。

 朝も暗いうちから皆で集合。クレオさん、ユッカちゃん、リサ、シオンそして私の5人。朝ご飯前だけど、移動しながら食べれるか、現地に着いてから食べれば良いんじゃないかな?


「クレオさん、今日から出発ですね。よろしくお願いします」

「ヒカリさん、すみませんが、まだ準備ができておりません」


「うん?朝ご飯は途中で食べても良いよ。食材も足りなければ、途中の村とか観光迷宮のある町で買っても良いし。多少割高でも似たようなものが買えればいいよ」


「ええと、申し訳ないです……。

 食事の準備はそのようにさせて戴きますが、馬車の準備がまだなのです。馬車本体は借りてあるのですが、馬の準備がまだ出来ていません」


「う~ん……」

「この屋敷では馬車1台と馬2頭が常駐しております。ですが、今回のように突発で貸切りにする場合には、馬車も馬も外から借りる必要があります。馬車は一昨日市場に行ったときに、長期契約に変更してありますが、馬の方は出発までに時間が掛かる場合、世話をする場所が無く、当日借りに行く予定で考えていました」


「じゃ、馬車使わなくてもいっか」

「……」


「何か問題あるかな?」

「目的の上級迷宮までは、馬車で1週間程度掛かると説明させて戴いたと思いますが……」


「それなら、余計に馬車はダメだね。

 マリア様には『一週間ぐらい遊びに行く』って言ったから、移動だけでそんなに時間掛けてたら、迷宮で遊ぶ時間が無くなっちゃうよ」


「馬車ですと、1日8時間、時速5kmとして、1日40km移動できます。

 つまり、この王都から約300km離れた場所をお考え下さい。その距離を走り切るのは流石に皆様でも無理かと……」


「うん。だから飛ぼうか。 ユッカちゃん、リサを負ぶって飛べるよね?」

「お姉ちゃん、大丈夫だよ~。リサちゃん一緒に飛ぼうね」


「ユッカちゃん、ありがとう。クレオさんとシオンは私が負ぶって飛ぶからその準備しよう」


 ガラスの仮面をみんなで身に被った。月影先生とか紫の薔薇の人からの贈り物じゃないよ。ステラとニーニャとアリアの共同制作だよ。


 これまで何回か皆で飛ぶ機会があったのだけど、『時速100kmで飛ぶと、風の抵抗で髪から肌からボロボロになるから、ヘルメットみたいなマスクがあった方が便利だよね』ってことで、ガラス細工とその取り付け金具、表面の防護処理なんかをしてくた防具を作ってくれた。


 そんな飛空術用のガラスの仮面を身に着けてから、ユッカちゃんはカバンを胸側に固定して、リサを負ぶい紐で背中側に固定する。

 クレオさんは背中にシオンをしっかりと固定して、そのクレオさんを私が背負う形で背中にしっかりと固定する。カバンはクレオさんの分と2つを重ねて胸側に固定ね。これで飛んでても落ちることは無いね。


 <重力遮断>と<光学迷彩>を掛けてから出発。

 クレオさんには方向を示してもらって、途中の街や村での休憩は無しで一気に飛ぶことにした。直線で休憩無しで移動するから2時間も掛からずに着いたよ。


ーーー


 賑やかな街並みが見えてきたので、その暫く手前の人気ひとけが無いところで降下。負ぶい紐から夫々(それぞれ)を降ろして、光学迷彩を解除してから重力遮断を解除。荷物を背負い直して準備完了っと。


「ヒカリさん、出来ればリサ様もシオン様も負ぶい紐で背負って移動して戴いても宜しいでしょうか。護衛のためにも両手が空いていることが望ましいです。

 更には、皆様にはローブのような物を羽織って戴き、傍目に観光客と判らない姿で行動戴きたいです」


「分かった。リサとシオンのローブはあるよ。私は襤褸ぼろだけど、パーカーみたいので良ければある」


 と、カバンから3人分のローブを取り出して子供達に着せる。

 スチュワートさんとメルマで遭遇したときに、慌てて買ったローブとパーカーがこんな所で役に立つとは思ってなかったよ。


「クレオさん、こんな感じで良いかな?」

「十分です。ユッカちゃんはどうされますか?」


 ユッカちゃんは狩人の恰好。オリハルコンの剣とか、ニーニャが作ってくれた鎧じゃなくて、私がユッカちゃんと初めて出会ったときのようなチュニックとズボンの恰好。流石に服のサイズは変わったけどね。


「クレオさん、この格好が動きやいです。皆と同じローブはありません」

「ユッカちゃんと私の分は私が用意します。お気に召さなければ、街中で別の物を買いましょう」


「クレオさん、治安は悪いの?」


「ヒカリさん、

 まず、迷宮の中であれば、登録した冒険者同士のいざこざを避けるために、ある程度の相互不可侵の決まりがあり、魔物の占有権もあります。そのため余程のことが無ければ迷宮内では争いが起こりません。

 迷宮内で故意の妨害が判明しますと、入宮の許可が下りなくなり、冒険者としては廃業せざるをえないでしょう。


 ですが、街中には騎士団のような治安を維持するための軍隊がいません。全てが実力主義で管理されています。観光客でも貴族でも関係ありません。獲物として目を付けられない様に注意した方が良いです」


「街中で盗難や強盗にあったら?」

「第三者としての目撃者がいれば、冒険者ギルドや観光迷宮管理組合へ申し入れして、その危険人物を除名させたり、迷宮への入場をを停止させることが出来ます。

 ですが、そもそも大事な物を奪われたり、ケガを負ってしまっては元も子もないです」


「分かった。みんな、クレオさんの言うことを聞いて警戒していこうね。

 クレオさん、私たちはなるべく黙ってついて行くから、必要な準備をしてください」

「分かりました。何かあれば、手や指で合図をしますので、そちらの方へ静かに移動してください。

 他に質問はありませんか?」


「クレオさん、入場料はどのような料金になっていますか?」

「一人1回小金貨1枚です。有効期限は無く、一度出るまで有効になります。

 今回はヒカリさんと私の二人分ですので、小金貨2枚になります。何か心配事がありますか?」


「周回することになるから、どういう料金なのかな~って」

「周回ですか?」


「うん。ボス部屋まで何回も行って、レアの宝箱が出るのを狙うことになると思うのね。だから、どういう感じかな~って。

 今の話だと、毎周回ごとに小金貨2枚を支払うことになるね」


「周回と言いますか、ボス部屋の前で待機しているパーティーも居ます。階層やボスの種類によりますが、1~2時間でしょうか。食料や水が尽きるまで居座るのです。ただ、ボス部屋の前で只管ひたすら待つのは、金銭効率を考えるとあまりよくなく、一獲千金狙いです。

 それよりは、人が少ない深層まで入って、そこでの収集品を集めて来た方が金銭効率は良くなると思います。

 ヒカリさんは、何か特別なレアアイテムをお求めですか?」


「ううん。昨日、全部マリア様に金貨あげちゃったから、また集めておこうかなって。20人分の生活費もだけど、利権を買い取るにも結構お金が必要みたいだからね」

「そうですか……。

 金銭効率でしたら、ボス部屋でボスを倒しつつ、次のボスが出るまで周辺に残っている魔物を狩るのが良いですね。ボスよりは復活する時間が短いので」


「あれ?リセットとかされないの?一昨日のカタコンベもそうだし、他の観光迷宮でも最後のボスを倒すと、リセットされちゃうでしょ?」


「ええと、最深部のボスを倒すことが出来れば、迷宮はリセットはされます。ただ、最深部のボスを倒すと、最深部のボスが復活するまでは、新しく魔物が湧き出ることはありませんし、罠の類も復活しない、不活性な状態に移行します。

 最深部のボスが復活すると、通路のトラップや魔物の復活速度もリセットされることになるので、注意が必要です」


「なるほど。そしたら1回入ったら、ラスボスと周辺の魔物を倒して、リセットから復活時間までは周辺の魔物を倒して過ごしていれば良いね。

 あ、あと、スライムとかいるかな?」


「スライムですか?」


「こう、ブニブニしてて刃物の攻撃が通り難くて、種類によっては服とか鎧を溶かす攻撃をしてくる魔物のことなんだけど……」

「はい。浅い階層であればいると思いますが……。何か事情がありますか?


「うん。トイレの処理に使おうと思って。

 ステラに特殊なコーティングをして貰った革袋を持って来ているんだよ。低級のスライムの攻撃ではダメージを受けないから、生け捕りにしておけるの」

「トイレですか?」


「ほら、食べた後、色々出すでしょ?あれを放置せずにスライムに食べさせようと思うんだけど?」

「カタコンベでは皆様どうされていましたか?」


「ゾンビと一緒に焼いてたと思う。クレオさんは?」

「私は、皆様の気がそれているときに、通路の隠れた場所で用を足してました……」


「そう……」

「ハイ……」


「クレオさんも、ピュアとトイレの使い方を覚えよう」

「ハイ……」


「あ、トイレの話はおいておいて、さっき気になったんだけどさ?

 私たちが最深部のボスを倒すたびに、迷宮がリセットされるし、リセット期間中は魔物も出なくなるんでしょ?他の冒険者たちは困らないかな?」


「そもそも、未踏破の迷宮をクリアしたら、その栄誉が付いて回ります。称賛されても、その成功を妬む人は少ないでしょう。

 また、ボスを倒したときに迷宮がリセットされるルールは、皆が共通認識です。そのルール自体は人間が決めたものでは無く、迷宮側の設定ですので、そのことをとやかく言うのはお門違いです」


「うん。じゃ、栄誉も要らないけど、余計な妬みも買わない様に、踏破済のエリアには戻らない様に行動しよう」

「承知しました。他には何か心配事はありますか?」


「私は特にないかな。ユッカちゃんは?」

「無いです。早く入りたいです!」


「じゃ、クレオさん、よろしくお願いします」

「承知しました!」


 よしよし!

 初めての賑やかな観光迷宮のある街に突入だね。

 アジャニアは難易度のせいなのか、ドロップ品が美味しくないのか、あんまり賑わってる様子が無かったんだよね。ここは治安が悪くなるぐらいに人が居るんだったら、結構、いろいろな人達が集まっているんじゃないかな?


 ちょっと、期待しちゃうかも!

ーーーー


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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