表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/302

2-16.食材の調達

 5人で揃って、マリア様が借りてるお屋敷で朝食。

 メイドのクレオさん、ユッカちゃん、リサ、シオン、そして私。

 朝ご飯は、パン、スープ、果物、ヨーグルト。

 シンプルだね。


「ヒカリさん、今日のご予定はどうなさいますか?」

「うん?上級迷宮に行く準備はどうなったっけ?」


「ええとですね。

 昨日打ち合わせをさせて戴きたかったのですが、マリア様からの特別のご指示を戴いている状況ですので、どうしたものかと相談させて戴きたいと思いました」


「マリア様の特命って、なんだっけ?ピュアのこと?」

「いえいえ、私は純真なんかではございません。心は汚れてしまっています」


 え?

 また、会話がかみ合わないよ。

 なんだ?


「ええと、ピュアの件はいいや。そしたら特命って何?」

「ヒカリさん、南の大陸の食事を作るのですよね?」


 うん。

 朝からピュアの件とか、クレオさんのことで忙しかったとは言えない。

 一晩寝て忘れちゃったとも言えない。

 さて、どうしたものかな……。


「どんな料理が作れるかは、市場で食材や香辛料を見てみないと分からないよ。食材だって、魚や肉の種類によるしさ?だから、『上級迷宮の準備のついでに見て周ろうかな』ぐらいに思っていたよ」


「ヒカリさん、ヒカリさんの迷宮での食事の準備が判りませんが、普通は日持ちがして、軽い物を持ち込みます。それを水でふやかして食べたり、スープにして食べます。

 ですので、普段の屋敷で用いる食材と、迷宮へ潜るための準備とは同時に成立しないと考えます」


「あ~。私が悪かったかも。

 迷宮内でのご飯は好きな物を現地で作るか、予め下ごしらえが終わった状態で持っていく。水と灯りは自分達で調達する。

 足りないのは、入宮資格、地図とか魔物の情報と、そこの迷宮に行くまでの手段ぐらいじゃないの?」


「分かりました。皆さんの口に合う食材を探しましょう。

 そして、その食材や香辛料に合った調理方法も調べましょう。

 地図は、最新情報を現地で調達しましょう」


 本当に分かってくれてる?

 昨日のカタコンベの練習と同じ感じなんだけど……。

 市場で気に入った食材があったら、それを多めに持って行って食べるっていうね?

 ま、いっか。


「じゃぁ、そうしよう。ところで、そこの迷宮はここから遠いの?」

「馬車で片道一週間は掛かります」


「移動に時間が掛かるなら、忘れ物をする訳にはいかないね。クレオさんの準備は念入りにしておいてね?水と食料と灯りの準備はしなくて良いから」


「承知しました。一応、確認なのですが、罠の解除役と、誤って毒ガスなどの罠に掛かった場合の治療方法については如何準備しますか?」


「そっか。今回ニーニャが居ないのか。クレオさんは罠の解除できない?」


「地図に記載が有る物は、解除方法も知られているので出来ます。ですが、未踏破の領域で、新しいタイプの罠が出てきたときに、それを解除する自信が有りません」


「おねえちゃん、ニーニャさんから少しは習ったの。『判らなかったから、状況を説明すれば教える』って、言ってた」


「そっか。ユッカちゃんもこの1年いろいろ準備してくれてありがとうね。

 クレオさん、罠は大丈夫みたい。

 毒の治療薬は、ある程度の薬ならステラから貰ってるから、それでいけると思う。どうしてもダメだったり、継続的なダメージを貰うような毒ガス地帯があったら、それはそのとき考えよう」


「分かりました。もし、何か追加で確認させて戴きたいことが有りましたら、改めて質問しますが、宜しいですか?」

「クレオさん、リラックスしよう。思いついたら気軽に聞いてね。

 他になければ、今からみんなで市場へ食材を見に行くことで良いかな?」


「「「「ハイ!」」」」


 うん。

 迷宮を舐めてる訳じゃない。

 けど、装備も食材も水も整っているから、あとは未知との遭遇を楽しむしか無いと思うんだよね。

 っていうか、その部分が冒険の醍醐味だと思うし。


 よし!今日は食材の確認と料理作成に注力しよう!


ーーーー


 皆で屋敷から市場まで歩いてきた。

 リサは昨日と同じくクレオさんの肩の上。シオンは私が肩車をしてる。

 最初は調味料とか香辛料の露店が多い通りに案内して貰ったよ。


 へぇ~。結構海産物の干したものがあるね。

 小魚、エビ、アワビっぽい貝、ナマコみたいな何か。形からすると、ウツボだかウミヘビだかみたいなのがある。日本人にメジャーなイカとかタコも干したものがあった。


「ユッカちゃん、あそこにタコとイカを干したものがあるよ」

「おねえちゃん、どれ?」


「あそこの、ちょっと小さい手のひらサイズの干し物がタコだよ。普段、タコ丸とかに使っている大きなタコじゃないけど、あれは小さなタコだよ。その隣の大きい三角形の形をしたのがイカだね。どっちも炙って食べれば美味しいと思うよ」


「おねえちゃん、水で戻せばタコ丸が作れる?」

「無理じゃないかな。冷凍か茹でた状態で袋にいれて、それをカバンで保存しておくなら、後でタコ丸の材料に出来ると思うよ?

 ただ、タコ丸を迷宮の中で作るのは賛成したくない。材料の準備も調理の時間も掛かるから、屋敷で食べた方が良いと思う」


「おねえちゃん、私の誕生日のこと、覚えてる?」

「確か、私の誕生日のちょっと後だったよね。

 リサとシオンの誕生日の一か月後ぐらいだから……。

 ひょっとして、そろそろユッカちゃんの誕生日?」


「うん。去年はお姉ちゃんの結婚の儀と、赤ちゃんが生まれる準備があったから、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒にケーキを食べたよ。ゴードンさんが作ってくれたの」


「じゃぁ、今年の誕生日はタコの干物で良い?」

「タコ丸パーティーか、南の大陸の果物を色々食べてみたい」


「南の大陸の果物は、昨日みたいに試食しながら集めれば良いと思うよ。果物を食べてもちゃんと運動すればいいし、ご飯もちゃんと食べるなら危なくないよ。


 タコ丸パーティーには、タコ本体、キャベツ、小麦粉、丸い窪みのある鉄板が必要だね。あの鉄板を持ってきてないと、ニーニャに作って貰わないと無理かも?」


「ニーニャさんは、『鉄板をカバンに入れてきた。だけど、鉱山の調査をしてるから、タコ丸パーティーは待って欲しい』って、言ってる。

 材料だけ集めあれば、みんなでタコ丸パーティー出来るね!」


「じゃ、クレオさんには迷宮に入るための食材探しだけでなく、色々な果物とタコ丸の材料も追加でお願いしておこうね。


 クレオさん、乾物で出汁がとれそうなもの、それと貝、タコ、イカの干物を買って貰える?魚で一夜干しの干物みたいのがあれば、それも買って帰りたい。

 昨日、銀貨とか手に入らなかったから、クレオさんに支払いもお願いしたいです」


「わかりました。

 ところで、魚の干物とは何でしょうか?そこの小魚を干した出汁ようの素材とは異なるモノでしょうか?」


「ええと……。

 魚を開いて、内臓を取り出して、干物用の液に浸して、それを2-3日干した物かな?

 生で食べるより、味に深みがあるし、生魚で保存するより断然日持ちがするから、海が近い地域では食べられると思うんだけど?」


「なるほど。

 そうしますと、鮮魚の市場の方へ探しに行った方が良いですね。生の魚介類は捌いたり、加工をしても臭いが残るので、この辺り乾物や香辛料があるエリアには店が並んでいません。


 この辺りには、先ほど話題にしていた香辛料のお店もありますが、先に見ておきますか?それとも乾物類だけで宜しいですか?」


「先ず、乾物を選ぼう。私の言ったのとは別に、シオンにも選ばせてあげて。指差した物があれば、それも包んでもらって。

 それが終わったら、香辛料のお店の方に行こう」


 クレオさんはテキパキと私が指示した乾物を集める。その他にもクレオさんなりに選んだ物を運べる量を気にせずに集める。更にシオンの意見が加わって、麻袋で4袋ぐらいの量になった。

 あ、麻袋って小麦なら20kg。日本人ならスーパーの10㎏のじゃなくて、紙袋に入った30㎏サイズの袋ね。


 乾物の中に高価なものが入っていたのか、小金貨を出して支払いをしていた。支払いが終わると、私のカバンに2袋を収納して、クレオさんと私が一袋ずつ運びながらお店を離れた。


「ヒカリさん、もう、お店から離れましたので、残りの麻袋を収納戴いても良いですか?このあと、香辛料のお店でも、いろいろ選ぶことになると思いますので……」

「うん。良いよ」


 って、感じでクレオさんも不思議なカバンに慣れてきた。昨日の経験を生かして行動してくれる反応の良さは素敵だね。


ーーー


 よし!次は香辛料だね!

 と、クレオさんから質問が有った。


「ヒカリさん、香辛料はどういった形でお求めになりますか?」

「うん?」


「ええと、一般的なお店ではですね。

 店独自の調合で、更に粉末にされている物を量り売りで買うことができます。あるいは、調合を自分でする前提で、必要な香辛料を素材のまま量り売りで購入して、持ち帰ってから調合したり、粉末に加工する方法があります」


「そっか~。調合してくれるんだ!それは便利だね。カレー粉とかもあるの?」

「カレー粉ですか?」


 うっ。

 またやっちゃったか……。

 たしか、日本人のいうところのカレーは、日本独自に発展した文化であって、カレー粉というのは無いんだったっけ……。


「クレオさん、カレー粉は一旦忘れて。どんな風に調合された香辛料があるのかを教えて貰えますか?」


「野菜用、肉料理用、魚料理用で調合が変わる様です。ご家庭ごとに調合は変わっているのですが、専門店独特の香辛料の調合を求めて市場へ来られる方もいらっしゃいます」


 そっか~。カレー粉ではない、香辛料の文化ってどこだっけ……?


 あ、トルコ料理かな?

 世界三大料理の1つって言われるもんね。

 父が調合された香辛料をお土産に買って来てたっけ……。


 『ヒカリ、良くわからないけど、試してみよう』とか言ってた。母は和食中心の料理を作っていたので、香辛料とか出されても良くわからない。みんなで野菜炒めの胡椒の代わりに使ってみたり、ステーキの醤油の代わりにスパイス掛けて見たりしたのを思い出すね。


 塩や胡椒だけに比べて、香りとか甘味が素材の深みを呼び起こすのだけど、日本人は醤油と出汁の文化が浸透しているから、『どっちが美味しいとか順位付けするのは難しいね』って、話になったっけ……。


「クレオさん、有名なお店の調合を何種類かずつ買って帰ろう。色々試してみて、好みに合うお店を探せば良いよ。

 この後、食材もそれに合わせて、市場で色々と調達するのでどうかな?」


「分かりました。今回のお客様の人数×数回分だけを最初に購入しましょう。皆様の食の進み具合で、お好みの店の香辛料を追加する形とします。

 しかし、ほとんど南の大陸の食材と味付けになると思いますが、宜しいのですか?」


「う~ん。

 出汁の文化じゃなくて、香辛料の文化が発達してるなら、それを楽しむのが良いんだよ思うよ?

 私は発酵したひしおの文化に慣れているから、それらともちょっと違うけどね」


「分かりました。それでは、続きまして鮮魚の市場、肉類、最後に野菜の市場へご案内させて戴きます。荷物に関しましては、これまで通りヒカリさんに収納して貰っても良いですか?

 昨日のカタコンベの収集品からすると、馬車一杯分は収納できると思いますが……」


「うん。さっきみたいに、小分けにして、人目に付かない場所で収納していこう。今日は色々な料理を試すから、買い物は任せるよ」


 この後、色々な露店で食材を調達した。鮮度の良さそうな物は選んで置いたけどね。今日は海まで行って獲ってくるとか、山に入って獲って来るとかそういうことはしなかった。

 何せ、これから何ヶ月も大量に普通の料理人が入手できる食材で料理を作る必要があるもんね。

ーーーー


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


ブックマーク登録をして頂いたり、感想や★評価をつけて頂くと、作者の励み になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ