2-11.カタコンベの迷宮(2)
カタコンベの地下3階の入り口に到着。
地下2階の入り口にあった収集品より、ここで集められているドロップ品の量が増えてる。そして、魔石とか牙みたいな小さな物だけじゃなくて、剣とか兜とか篭手まで何個か落ちてる。
こんなにいっぱい集めてるって、どうやってるんだろう?
「クレオさん、また収集品をカバンに仕舞うね。
それと、ここに置いてる装備品で銀貨1枚の価値がありそうなものはある?」
「ヒカリさん、売れば確かに銀貨1枚以上の価値はありますが、ただ、ここから地上まで運ぶとなると、その労力とか、途中で遭遇する敵との戦いでの動きを考えると、捨てておいても、良いのではありませんか?」
「あ、うん。入れたことを忘れなければ、後で取り出せるよ。
ちょっとメモするから待っててください。
そのあいだ、悪いけれど、クレオさんとシオンで細かいのを袋詰めしてくれますか?」
「ハイ」
武器の種類と番号だけメモしておけば、後でそれを思い出して取り出せば、自動的に認識したものが取り出せる仕組みだったはず。『私が入れたもの』を手探りで取り出すのだから、『剣1を入れた』と、指定して物を入れておいて、『剣1を取り出す』ことをイメージすれば、剣1が取り出せる。
問題なのは『剣を10本入れた』って、メモを残すと、10本の剣の束を一度に入れたのでない限り、1本ずつのどの剣を後からとりだしたら良いか識別が出来なくなっちゃう。だから、入れた本数を1本ずつメモして入れておくしかないね。
こないだ、メルマの昆布工房から昆布を持って帰るときも『昆布1束』で、記憶していたから、どんな長さの、どんな昆布を何本とかメモしないでも大丈夫だったもん。
ゲームのアイテムボックスなんかでも、スタックとか言って、同種類のを数だけ増やして収納する仕組みが有るもんね。あれと同じ感覚で使えば良いと思う。
領地から持ってきて、カバンに入っている紙と筆記用具を取り出して、一々メモを取りながら、武具類をカバンに放り込んでいく。なんだかんだで20個もあったよ。 小物類は革袋で2袋分。
本当に、どうやって集めてるんだ?
地下2階入り口では革袋1つ分で、5分も掛からなかったけど、今回はメモする手間が掛かったらから15分ぐらいは掛かったかな?
このタイムロスは恐ろしいよ……。
ーーーー
続いて、地下4階の入り口。
流石に運べる量の限界に到達したのか、地下3階と同じぐらいの分量。一生懸命メモを取りながら回収し終えたよ。地下3階の分と合わせて、30分ぐらい余計に時間が掛かってるね。
そして、地下5階の入り口に到達したときに、ユッカちゃんから念話が届いた。
<<お姉ちゃん、まだ?>>
<<今、地下5階の入り口。今からドロップ品の回収を始めるよ>>
<<お姉ちゃん、トイレどこ?>>
<<途中にスライムは居なかったの?>>
<<ううん、お姉ちゃん達を待ってる間に飲み物を飲んだり、汗が冷えてきたから、トイレに行きたくなったの>>
<<ボスを倒してから、帰り道もあるから、何処かメイン通路じゃない所で、出来ないかな?後は、そこにアンデッドを連れてきて、一緒に燃やしちゃえば良いよ>>
<<わかった~。リサちゃんにも言っておく~>>
念話しつつ、メモを取りつつ、武具類を仕舞いながらふと考えた。
ダンジョンとか迷宮でトイレに困ったら、魔物と一緒に燃やせばいいんだよ他の人にみられたり、用を足してる最中に魔物に襲われたりしなければ、全く問題ない気がしてきたよ。
後は、処理用のスライムを袋に入れて、持ち運ぶかだね。日本でもペットの糞の始末なんかを袋に入れて持ち帰ってるもんね。ああいう感じで考えればいいよ。
後で、クレオさんにスライムを2-3匹調達して貰おうっと。
ーーーー
ようやっと、地下5階のボス部屋の前に到着。
到着したら、ユッカちゃんとリサの二人で仲良くお菓子とかフルーツを食べている。
そっか、そろそろお昼の時間か。こっちはドロップ品を回収しながら追いかけてたから2時間近く掛かっちゃったもんね。
それより何より、地下5階のボス部屋の前に、ドロップ品が山の様に積みあがってる。いや、だから、これどうやって集めたのかと……。
「ユッカちゃん、リサ、お待たせ。ドロップ品を回収してたら、結構時間かかっちゃった。ごめんね。
それにしても、二人で沢山集めたねぇ……」
「お母様、途中からユッカお姉様が荷物を持ってくれました。そして、私が敵を倒しました」
「そう。リサも敵を倒せたんだ。怖くなかった?」
「敵の動きは単純で遅かったです。ミスリル銀はお母様の言う通り、アンデッド系に効果がありましたので、スムーズに戦闘を終わらせることができました
「ユッカちゃんも、沢山武具を拾い集めてくれてありがとうね。ちゃんと持って帰えれるようにしまっておくね。
ところで、地下5階の分はこんなに集められたの?」
「えとね。用を足してから、みんながまだ来ないから、二人で地下5階のドロップ品を集めることにしたの」
「そっか、じゃあ、二人でボスを倒してきてよ。その間にここの山積みのドロップ品を片付けておくから。
クレオさん、二人と一緒にボスの部屋で戦いを観てきてくれる?
シオンはお母さんと一緒にお片付けね」
「「「「ハイ」」」」
私とシオンはせっせと、カバンに仕舞い始める。シオンは小さな物を革袋の中へ。私は紙に品物と番号を書きとめながらカバンに入れて行く。
ただ、地下5階の分は量が多くて時間が掛かりそう。
って、「作業を始めるぞ~」って、シオンと分担をして、紙と筆記具をカバンから取り出したところで、ボス部屋から3人が出てきた。
簡単だったのかな?
「ユッカちゃん、速かったね?」
「うん。リサちゃんが剣を一振りだったよ。レイスの核の位置を教えてあげたら、そこを斜めに切り裂いて、それでお終い」
「そう。
こっちは、まだ始めたばかりだから、お昼ごはんの準備をしてくれる?バナナとヨーグルトで良いと思うんだよ。足りなければパイナップルとかだすね。
水はシオンかユッカちゃんに出してもらっても良いかな?」
「ヒカリさん、私は何を手伝いますか?」
「クレオさんは、ユッカちゃんとお昼ごはんの準備かな?
武具類の荷物を整理するのは、私じゃないとカバンに入りきらないから、手伝って貰えないんだよ」
クレオさんは、なんか疲れてそう。
攻略スピードが速すぎたかな?
それか、自分も冒険者として活躍したかったとか……。
いろいろと驚かせちゃったのもあるかな?
でも、この先専属で護衛してくれるんだったら、早いうちからお互いを知っておいた方が良いよね?
私がテキパキと武具類をカバンに入れてる間、4人は仲良く昼ご飯の準備。疲れてそうなクレオさんも、笑顔を作って対応してくれてる。
ユッカちゃんがシオンに水の出し方を教えてくれたみたいで、ユッカちゃんとシオンの二人が水を出してくれて、それで手を洗ったり、汚れをとったり、喉を潤したりしてた。
敷物を出して、ガラスのコップに水を入れて、ヨーグルトと、バナナ、パン。「肉類は、迷宮から出てからにしよう」ってことになったみたい。
私も作業を一通り終えて、みんなで仲良く食事をする。
ユッカちゃんは、クレオさんに上級迷宮の構成とか攻略方法について説明を受けてた。
ユッカちゃんの場合、地図と罠の位置さえ把握してあれば、当面困ることは無いと思うんだけどな~。毒ガス噴出とか、精神操作の呪いとかあったら、対処に困るかもしれないけど。
ま、いいや。
シオンは水を出せてる自分にビックリ。みんなのコップに水を足して周ってサービスしてる、ちょっと、かわいい。
リサは黙々とご飯を食べつつ、私が収めきれてない武具類の山を眺めてる。持ち帰られるか心配してるのかな?
「リサ、何か心配?」
「お母様、あれをどうするつもりですか?」
「持って帰るために、カバンに入れてるよ」
「持って帰った後の話です」
「道具屋で鑑定してもらって、売れるものは引き取って貰うんでしょ?」
「聞いて良かったです。銘や持ち主の名前が書いてあるものは返します。それ以外で売れる物があった場合には、私たちが売っても良いと思います」
と、自分の意見が正しいことを確かめる様に、クレオさんの方へ顔を向ける。
「リサちゃん、時と場合によりますが、指定依頼が掛かっていたり、過去からの捜索依頼があるものは、リサちゃんの言う方法が適切です。
ですが、高名な匠の銘が入った品物であっても、冒険で命を落とした人の装備品は、後から探索に入った人たちが発見した場合に、それを自分の拾得物として所有することが認められています。
ただ、無制限に他の人のものを取得できないように、入場管理をすることで、特定のパーティーが初心者を狙った『人狩り』が行われないように配慮されています。疑いが掛かる場合には『指名手配』が掛かり、冒険者としての活動に支障を来すため、基本的には迷宮の中では助け合いの精神が培われています。
如何でしょうか?」
「お母様、ここで収集した品物は、全てクレオさんにお預けした方が良いと思います。
まして、今日の朝食、明日に届けられる果物の代金、ここの入場料、今日の特別ガイド料がお支払い出来ていませんから」
「うん。リサの言う通りだね。
クレオさん、地上に戻ったら、何処かの倉庫と、麻袋と台車を準備してくれますか?そこで全てお渡ししますので」
「は、はい……」
リサの言うことは分かる。新しい土地で余計な物を売って、余計な揉め事を起こさない様に用心した方が良い。
クレオさんの方は、きっと専属契約でお給料が支払われているはずで、それも1日金貨1枚クラスの特別待遇のはず。だから、多少の経費もお給料の中で賄う様に指示がでてると思うんだよ。だから、返事が煮え切らないのだと思う。
ま、いっか。
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