2-08.久しぶりのピュア
「お姉ちゃん、朝だよ。ピュアと体操しよう?」
うん……?
TVの音?セットしたスマホが鳴ってない……。
何か、ベッドの寝心地も……。
壁の反対側を向いて、薄目を開けると、小学生中学年くらいの少女と、幼稚園の年少さんぐらいの幼児2人が立ってこっちを見てる。
何だっけ……?
あっ! やっちゃった!
……。
いや、お漏らしとか、そういう恥ずかしいのじゃなくて、寝坊しただけだよ!
でも、でも、寝坊するのは久しぶりじゃないかい?
ベッドの脇に立っている3人に片手で手を振りつつ、子供たちの頭を撫でる。
昨日というか、一昨日から20時間以上のフライトと、8時間近い馬車の移動。これは体にきたよ。
いやね?
日々、クロ先生に朝も暗いうちから稽古を付けて貰ってたんだよ?リチャードや子供達が起きる前に、一汗かいて、シャワーを浴びてから朝ご飯の支度をしてたのね。
だから、最低限の体力作りは出来てると思ってたさぁ~。
けど、久しぶりにやっちゃった……。
そして、久しぶりにユッカちゃんに起こされた。
しばらくは部屋は別でも一緒に寝起きすることになるね。
「ユッカちゃん、おはよ。リサもシオンもおはよ。お母さん、寝坊しちゃったね。
ところで、お父さんは?」
「お父様は、既にクロ先生に稽古をつけて貰って、マリア様と朝ご飯を食べながら打ち合わせ中です」
と、スラスラと答えるリサ。秘書みたいだ。
私は寝間着姿のまま、起き上がってベッドに腰かけて、改めて3人の顔を見る。
「リサ、ありがとね。それで3人は朝ご飯を食べたの?」
「お母様を起こしに来ました。お母様と4人で食べるように言われています」
「そう……。そしたら、4人で朝ご飯なら、市場で食べ歩きでも良いかも?色々な物が楽しめると思うよ」
「お姉ちゃん、シオンくんに変な物を食べさせると、また目を回すよ?」
と、適切だけど、少し誤解のある突っ込みがユッカちゃんから入る。
ユッカちゃんには、シオンが私と同じ国からの魂の転生者だって、教えて無いから、私の料理で目を回した原因が良くわかって無いんだよね。
ま、いっか。
「そっかー。シオンは朝ご飯どうする?カバンの中に、ゴードンさんが作ってくれたものが色々と入ってるけど、食べ歩きをする?」
「リサお姉ちゃんと同じが良いです」
と、シオンはキッパリと言い切った。
ある意味正解。正しい判断だと思う。
リサが賢くて、正しい判断をして、幼児でも食べられるものを選んでくれるっていう安心感があるんだろうね。
「じゃぁ、リサはどうしたい?」
「ユッカお姉ちゃんがしたいことを一緒にします」
これは楽でいいや。
シオンが食べれない物が出てきたときだけ、カバンから幼児用の離乳食とか、体に優しい物を選んで食べさせれば良いし。
ユッカちゃんとは、結婚前の冒険のときに色々とお世話になったからね。私より、ワイルドな物を食べられるはずだよ。
「ユッカちゃん、どうする?」
「お姉ちゃんが言葉が判るなら、市場を見物して、そこにある物を食べてみたいです」
「分かった。そしたら、マリア様に執事さんかメイドさんを一人借りて、4人で市場観光をしよっか」
「「「ハイ!」」」
うん。
子供達3人の元気な声が返ってきた。
若いって良いね!疲れが残らないんだろうね!
私も、ピュアして、着替えて、軽く体を動かしてから市場へ出発だよ!
ーーーー
ステラはラナちゃん達家族に連れられてどっかに行っちゃったらしい。
ニーニャはドワーフさん達と一緒に洞窟だか、鉱山だかへ向かうらしい。
リチャードとフウマ一家はマリア様と打ち合わせしてから、色々あるらしい。
なので、私を起こしてくれた3人と、メイドさんと私の5人で行動することになった。
マリア様の屋敷で紹介されたメイドの第一印象はこんな感じ。
人族で褐色の肌。髪の毛は銀色にアッシュが掛かった様な、あるいは潮で痛んでいる様なちょっと、ざらついた風合いで、肩に掛からない程度に後ろに掻き分けた短髪。
この人は、瞳の色も水色に近い灰色で髪の毛の色と良く合ってる。身長は私よりちょい高めで、ステラより低いかも?175cmぐらい?
ただ、服装がね?
こう、なんていうか、タンクトップというか、臍までの丈しかないのね。そこから見え隠れするばっちりと割れた腹筋。
タンクトップの上から分かる豊満な胸。ルシャナ様がぽっちゃり系だとしたら、この人はグラマーと言って過言ではない。
下はズボンというより、ホットパンツ?こう、お尻がパンパンで、服のサイズが合ってないんじゃないかっていう……。
「クレオと申します。ヒカリ様をあらゆる外敵から守るように申し使っております。どうぞよろしくお願いいたします」
うん。
恰好は、なんだかグラマーで、筋骨隆々で、強そうなんだけど、口調は北の大陸の言葉を流暢にかつ、とても丁寧に発音することができる。
すっごい優秀なメイドさんなんじゃないの?
「私はヒカリ。この子はユッカちゃんで、私の子供たちのリサとシオン。私には気を遣わないで、フランクな言葉で話しかけてくれると嬉しいです」
「ヒカリさん、承知しました。以後、なるべく気軽な口調になるように務めさせて戴きます。
ユッカ様、リサ様、シオン様どうぞよろしくお願いいたします」
クレオさんの挨拶に、ちょっと緊張した面持ちで、ユッカちゃん、リサ、シオンが順番に丁寧にお辞儀をして、自分の名前を紹介する。
暫くはこの5人で観光して時間を潰すことになるのだろうから、仲良くやって行きたいね。
「クレオさん、朝ご飯を食べに、市場へ行きたいのだけど、ここから遠いですか?」
「この城下町の中にある食品市場でしたら、大人の足で15分も歩けば着く距離です。馬車を使いますか?」
私たちの恰好は、私とユッカちゃんが簡単な麻で作ったチュニックとズボン。リサとシオンはワンピースを腰ひもで縛っている様な簡易は服装。
けれども、マリア様の紹介だから、馬車の手配も提案してくれたんだね。
「うん。皆で歩こう。クレオさん案内お願いします」
リサを左手に掴んで、シオンを肩車しつつ、シオンの足を右手で掴んで落ちないようにする。
当然、ユッカちゃんは一人で歩けるさぁ。
ヨシ!出発の準備万端だ!
「……ヒカリさん、リサ様は歩かれるのですか……?」
リサは自分で歩く気満々。
だって、昨日だって獣道をユッカちゃん達と駆け回ってたもん。
ま、一応聞いてみるか……。
「リサ、どうする?」
「私は歩けます。でも、王都の景色は見たことがありません」
そっか、背が低いから、視点も低くて、何も見えなよね。
人の足ばっかり見てても面白くとも何ともない。
私が両肩に抱えても良いんだけど、強盗に襲われたときに防御出来ないんだよね……。
「リサ様、失礼でなければ、私の肩に乗られますか?」
と、クレオから提案があった。
これは有難いね。
リサが嫌がらなければ、任せたいな~。
「あ、あの……。私がクレオ様の邪魔にならなければ……」
リサが遠慮がちに返事をする。
ま、まあね。
最初の印象が大事だしね。
リサも緊張してるよね。
「承知しました。肩車をさせて戴きます」
と、クレオさんは左肩にリサを担ぎ上げた。リサが女の子だからか、それとも右手を自由に確保して、腰に差してある短剣をいつでも取れるようにするためなのか、片側の肩に足を揃えて抱え上げた。
「では、出発しましょう。私が案内しますね」
と、市場と朝ご飯に向けて出発することになった。
さぁ、何が食べられるかな~?
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