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2-03.出発の準備(3)

「ヒカリ、 メディチ卿にお願いしたかった海路かいろを行く手配は必要無いな?」

「はい」


「では、現地へ予め荷物を送っておく手配の支援をお願いすれば良いな?」

「はい?」


「何だ、何か不満があるのか?」

「いいえ、良くわからないだけです」


「ヒカリ、一応言っておく。


 今回のハネムーンは1年間を想定している。

 先週1週間の視察は各位との連携を済ませるために、お願をして周ってきたのだ。来年までは現状を維持してくれるであろうし、飛竜族の方達の緊急支援も期待できる。


 つまり、南の大陸への訪問には、エスティア王国の国力を見せつけるための行動が含まれている。それは国王も母もレナード・バイロン侯爵も期待されているところだ。


 当然、ヒカリが外交に興味が無ければ、現地で自由に行動していて良い。

 少しは、今回のハネムーンの意義が理解出来たか?」

「はい」


 ふ~ん。そっか~。

 流石は王子だね。国の事を考えているよ。

 私は単にユッカちゃんとの冒険のことしか考えてなかった。


 でも、ちょっと待ってね?

 リチャードが外交に注力してる間、私はユッカちゃんと二人で行動ってこと?どのタイミングがリチャードと私のハネムーンなんだろ?

 

 べ、別に、リチャードとイチャイチャしたいって訳じゃないよ!

 したい訳じゃないけど、なんか、こう……。

 なんか、ねぇ?

 

 まぁ、いいや。

 第三子を旅行中に懐妊したら、それはそれで面倒だし。


「ヒカリ、南の大陸は人種の坩堝るつぼだ。

 人族、エルフ族、獣人族、ドワーフ族、魔族が住む。

 ユグドラシルが存在する山への登山は5種族が別々に管理していて、1週間ごとに輪番で管理している。


 南の大陸での各種族の領域は北西部に人族、北部中央にエルフ族、北東部から東部にかけて獣人族、南東部にドワーフ族、南中央部から西部にかけて魔族が支配している。


 北から東回りに、登山の権利の順番が周ってくることから、人族、エルフ族の合同編成ができたとすれば、2週間の連続したユグドラシルへの登山の権利を得ることが出来る。

 同様にして、獣人族とドワーフ族の権利を合同で行うことが出来るとすれば、4週間に渡って、ユグドラシルへの調査権利を維持できることになる。


 これは大きいだろう?」


「は、はい……」


 うん、事前情報が何もないところで説明されても、うなずくしかないね。

 ユグドラシルって、ジャングルの中に生えているもんじゃないの?

 今の話だと、高山に生えていて、ご神木みたいに奉られている感じだね。


 そんな高山へ一週間の間に調査しに行って、帰ってくるとか、まぁ、無理だよ。リチャードみたいな戦略を立てて合同調査隊を派遣しないと、ユグドラシルへの到達とか、ドリアード様の発見とか無理なんじゃない?


 てか、なんで、みんなは私に教えてくれなかったんだ?


「ヒカリ、ニーニャ・ロマノフ様が一度里帰りをしたことを覚えているか?結婚の儀の城を建てる際に、ドワーフ族の土地へ人員要請に向かわれたときの話だ」

「はい」


「あの際、神器の斧1本を譲渡する代わりに、南の大陸のドワーフ族への紹介状を書いて貰うこととした。

 当然ながら、魔族に奪われたとされる、神器の斧についての奪還への協力も申し入れている。

 いいな?」

「はい……」


「エルフ族のステラ・アルシウス様には、『今は代行が管理してるはずだから、私が直接頼みますわ』と、了承戴いている。

 すなわち、ステラ様にも今回のハネムーンに同行戴くことになる」

「はい……」


「そして、獣人族との共同調査を成立するには獣人族への紹介状が必要になるため、レミ・ペルシア王女に今回、こちらに正式に訪問戴いた次第なのだ。

 準備は整ったと思うのだが?」

「はい!」


 うんうん。

 魔族とサンマール王国の事以外はきっちり出来てる!

 問題は人族側の許可を取り付けるのと、魔族の接触が出来ているかの話だよね……。

 でも、そこは何の情報も無いから、出たとこ勝負で良いのかな?


「何か心配があるのか?」

「いや、別に無いです」


「一ヶ月後には、出発の準備が整うか?」

「え?」


「早いのか?」

「あ、いや……」


 空飛ぶ卵と、ステラの不思議なカバンがあれば、あとは旅に必要な物って無いよねぇ……。

 確かに、食料とか着替えをカバンに詰め込んでおく必要はあるけど、金貨なんか使えないだろうから、中型サイズの魔石を現地で交換すればいいだろうし……。


「いつまで待てば準備できるんだ?」

「リサとシオン次第。

 あ、あと、シルビア様とスチュワート様に話を聞いておいた方が良いかも?」

「うん?どういうことだ?」

「シルビア様は、植物の妖精であるドリアード様から加護の印を貰ってるの。スチュワート様はエルフ族の代行をしているから、南の大陸にも詳しいんだって」


「シルビア様は良く存じ上げている。先ほどの南の大陸やユグドラシルについては、色々と話を伺っている。

 エルフ族のスチュワート様とは誰だ?」

「あっ……」


「ヒカリ、ヒカリが「様」を付ける人物はそうそう居ない。

 次に、エルフ族の代行と言った。

 そして、『話を聞く』とも、言った。

 まさか、未だ会ったことが無い南の大陸に住む人物と飛竜族の念話で会話をする訳では無いだろうな?」


「リチャード、飛竜族の念話のことは、トレモロさんや、ザックさんは知らないかも……?」


「ヒカリ、飛竜族との信頼関係を説明した際に、飛竜族の念話についても説明させて戴いているので心配無用だ。

 それこそ、エルフ族のスチュワート様には知られてはならない極秘事項だろう?」


「モリス!助けて!」

「少々、お待ちください」


 と、リチャードに詰め寄られて、モリスに助けを求める私。

 いや、だって……。

 スチュワート様は私の範疇に無いもん……。


 モリスは席を立つと、メイドにお茶の交換の指示を出して、そそくさと部屋を出て行く。

 私は黙ったまま、お茶を飲みつつ、モリスが帰ってくるのを待つ。

 リチャードは私を睨みつつ、「いつも、うちのが申し訳ない」みたいな会話をトレモロさんやレミさん達に話をしている。


 そして、メイドがお茶の交換を終えたタイミングでモリスがスチュワートさんを連れて帰ってきた。


「モリス殿にお茶会にお呼ばれしました。何か楽し気な会話に加われるとかで……。

 私は、エルフ族の族長代行をしている、スチュワート・アルシウスと申します」


 と、スチュワートさん。


 ま、良いよね。

 打ち合わせ必要だし。スチュワートさんも船が直るまで帰れないんだし。

 ゆっくりして貰えるもんね!


ーーーー

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