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0-05.シオンの準備(3)

「女神様、転生先を選べるのですか?」

「私の調整できる範囲では可能よ」


「お金に苦労しないぐらい裕福な家庭に生まれる変わることはできますか?」

「貴方のいう『お金の苦労』が何なのか、私には判らないわ」


「家族で泊りで旅行に行ける余裕があったり、大きなTVがあったり、家族で外食に行くことが出来るような家でしょうか」

「旅行も、TVも、外食も何を意味するのか判らないわ」


「旅行とは、学校とか仕事とかを休んで、普段行ったことが無い様な場所へ行って、様々な経験をして帰ってくる。美味しいものを食べたり、遊んだり、珍しいものを見たりすることでしょうか」

「簡単に言うと、普段生活している場所から離れた場所を訪問して、見聞を広めて帰ってくるということかしら?」


「はい。家族でそういったことをするには、両親も仕事を休まなければいけないし、時間もお金も掛かると思います。零細な自営業だと中々そういう機会が取れなくてね……」

「うん~。ちょっと転移先の候補が狭まるけれど、選択できそうかしら。

 あと、『TVと外食』と、言っていたわね?」


「TVはキャンセルで良いです。

 ですが、ネットに繋がるためにもスマホは必須と考えます。最新のパソコンとか、大画面のタブレットが欲しいとかそういった贅沢は言いません」

「すまほ?」


「女神様が案内してくれる世界は、携帯電話が無い世界なのですか?」

「携帯電話が何か判らないわ」


「気軽に、登録した人と話が出来る装置ですね。昔は背負子しょいこに載せて重い思いして運んでいたらしいです。今は、手のひらに載るぐらい軽いです」

「貴方が登録した相手と、離れていても会話が出来ればいいのね?」


「本体も買う必要があるし、通話料も掛かるので、それを自立するまで家族に支援戴ける環境が欲しいです」

「離れたところに居る登録した相手と話が出来る様に、家族に手伝って貰えれば良いのね?」


「はい」

「うん~。三ヶ月ぐらい掛かるかしら」


「いや、そんな最新モデルの順番待ちとかは必要ないです。最低限の機能で大丈夫です」

「貴方が周囲の方に説明して、その使い方を習得できれば使えるようになると思うわ。

 ただ、案内する先の選択の幅がとても狭まっていて、貴方の転生に臨む条件と合うかわからないわ」


「たまに旅行に行けて、スマホがあって、たまには外食に行けたら十分です。

 ああ、外食とは、母親が作った物ではなくて、他の人が作ってくれたものを食べに行くこになります」

「今の候補先なら、多分大丈夫じゃないかしら?」


「判りました。十分裕福な家庭と考えます。魂の移動に同意します」

「そう。他に何か確認したいことはないかしら?」


「魂の無くなった私の本体はどうなるのでしょうか?」

「どういうことかしら」


「明日にもボロボロな状態で発見されるでしょう。ですが、そこに私の魂はありません。それで大丈夫なのでしょうか」

「この世界の神様との契約は先に言った通り大丈夫よ。残される今のご家族のことが心配かしら?」


「心配といえば心配ですが、子育ては終わっています。今回のは不幸な事故だと考えられるので、別れの挨拶とか出来なくても仕方ないですね。

 そ、そういえば、私は私の記憶を持って転生出来るのでしょうか?何分、魂とか、転生とか良くわからないことだらけでして……」


「魂に同化した知識や経験は、貴方の深いところで残ると思うわ。けれども、体が変わってしまうのだから、運動能力とか学習能力はこれから入る器に大きく影響されることになるわ。

 最初に言ったと思うけれど、貴方の体は損傷が激しいわ。そのまま転移させても苦しみながら死んでしまうでしょう」


「記憶はどうなります?」

「役に立つ記憶と役に立たない記憶という表現があるようだけれど、私にはわからないわ。魂と記憶を切り離すことは出来ないけれど、器が変わるのだから、全てがそのままということはないわ。貴方と私でこういった会話をしていることですら、事故に遭った貴方の記憶とは異なる状態になっているの。分かって貰えるかしら?」


「あ!」

「何かしら?」


「アニメや小説の話だと、転生者は勇者とか目指すのですが、女神様の言うことを聞いて、悪魔みたいのを倒しに旅にでるとか、そういうことになりますか?」

「私が直接貴方にお願いをすることはないわ」


「国王とか、教会とかの命令で討伐に向かうことは予定されていますか?」

「判らないわ」


「判らないことだらけですね……」

「もし、私の案内で転生するのが不満でしたら、元の体に戻して差し上げます」


「戻されたら、私は死ぬしかありませんよね」

「判らないわ。

 トラックに引きずられている体に貴方の魂を戻したとして、他の神様が貴方を発見して、自分の世界へ連れて行く可能性があるもの」


「そんなことが起こりえますか?」

「判らないわ」


「他の神様が居たとしても、貴方ほど良い条件であるか判らないわけだ……」

「そうね。判らないわ」


「貴方が案内できる一番いい条件はなんでしょう?」

「今、貴方が選んでる条件は、相当面白いと思うわ」


「それは、他人が見てて波乱に富んで飽きないということ?」

「うん……。私には答えられないわ」


「最後に確認させて戴きたいのですが、

案内に従って転移した先で不都合があって、、女神様にコンタクトを取るには、『助けて』と念じれば良いのでしょうか?」

「えっ?」


「案内が不十分で、ここで聞いた通りじゃないとき、どうするんだ?」

「判らないわ」


「嘘もあるってことか?」

「いいえ。私の認識と貴方の認識が違っていても、もうその時には私は貴方をどうすることもできないの」


 なんか、突然無責任な言葉を返されたようで、ついつい口調が荒くなってしまった……。

 だが、この運命を司ることがない女神様は丁寧に答えてくれて助かったな……。だったら、こちらの要望を再度伝えて、転生に導いてもらおう!


「家族で旅行ができるぐらのお金と時間があって、スマホがあって、外食がたまにできる。そんな身の回りの世話をしてくれる人が居る場所に転生できるんですよね?」


「日常生活から離れた場所へ出かけて見聞を広める機会があって、登録した離れた人と連絡する方法があって、自分や家族以外の人が作った食事を食べることが出来るような環境で良いのよね?」


「はい。

 ついでに、神様の命令で討伐の宿命があるとか、そういうのも無しでお願いしたいです」

「私から直接貴方に関与できないわ。だから、転生後に貴方が私に願いを届けられたとしても私は関与できないの」


「決めました。女神様の案内する転生先に転移したいです」

「わかったわ。貴方の魂を案内させてもらうわね」


おれは、おれは、自分の選択が正しかったと思いたい……。

お読みいただきありがとうございます。

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