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1-23.メルマの街

 今日は朝ご飯を食べたら、お母さんと、リサお姉ちゃんと僕の三人でメルマの街までお出かけ。そこには多くの商店があったり、港には船が浮かんでたりと、ここの領主のやかたがある街に比べて、とても賑やかなところだって、ユッカお姉ちゃんが教えてくれていた。


 お父さんも、領主補佐のモリスさんも忙しいから、どうしてもお母さん一人でお買い物に行かなくてはいけないらしい。


 モリスさんが普段から使っている馬車は、領主様の特殊な馬車だから、この馬車に襲い掛かるような人がいなくて、護衛とか必要ないんだって。

 だから、この馬車を使えば、お母さん一人で買い物に行っても大丈夫なんだって。


 普通は、お金持ちの人の馬車が護衛を付けて無かったら、中の人を誘拐されたりとか、強盗に遭ったりとかすると思うんだけどね。よっぽど領主様の人望があるのか、治安がいいのか、もしかしたら、領主様がとっても怖い人なのかもね?


 僕らの恰好は、子供用のワンピースに麦わら帽子。

 お母さんは、台所で着る様な割烹着かっぽうぎにエプロン。何故か普段は付けない手甲のアミュレットとか、額に掛かるティアラ、そしてイヤリングまで付けてる。全部木製だから高価なものには見えないけど、お母さんが装飾品を付けているのは余りみたことが無かったから、とても珍しいなって思った。 街にお出かけだから、ちょっとぐらい、お洒落にしておこうってこと?


 僕たちは借りた馬車に乗って出発した。

 この馬車で2時間ぐらいで到着するってことで、お母さんが馬の操縦をしてる両脇に座って、外の景色を眺めていた。馬車の中にはクッションとかあるけど、窓が小さい上に、僕らの背丈で窓しがみついているのは疲れちゃうからね。

 領主様の農園を馬車で見学したことはるけど、こんな長距離を馬車で移動したのは初めて。

 最初のうちは道の左右に広がる森や平原、偶に飛び出る鳥や小動物がいて、興味津々だったけれど、途中からお尻や背中が痛くなってきた。

 なんで、自動車やバスで移動しないんだろう?こんな田舎だからタクシーや電車が無いのは良いとしてさ?そういえば、誰も自動車を持ってないね。お金持ちのはずの領主様も持ってないのかな?


 段々と疲れたな~って、うたた寝を始めたところで、メルマの街の入り口に到着したらしく、門番さんに馬車を止められていた。


ーーーー


「モリス様のお使いですか?それでしたら、お使いのメモを拝見出来ますでしょうか」と、門番さん。

「あ、ええと。私の用事です」と、何やら、しどろもどろなお母さん。


「見かけないメイドさんですね。この馬車からすると、ハミルトン卿の持ち物なのでしょうが、どういったご関係でしょうか?」

「あ、そうなんです。

 馬車は本人から借りてるので大丈夫です。

 この子達は領主様のお子さんたちなので、大丈夫なはずです」


 お母さん、嘘は良くない。

 領主様の姿を見たことがないけど、子供なんかいるの?

 ひょっとして、アリアさんかシズクさんが世話している子供が領主様の子供?他に僕ら以外の子供だと、ユッカお姉ちゃんとか?


「一応念のために、貴方のお名前、そして身分証を確認させてください」

「あ、はい。私の冒険者登録証になります。名前はヒカリです」


「確かに。それでは、そのお子さんたちの通行料をお支払いください」

「ええと、あの……」


「通行料はお支払いください。二人分で銀貨2枚になります」

「すみません。

 あの、今、金貨きんかしか持ってなくて……。

 小さな魔石でも構いませんか?」


「何で、お使いのメイドが金貨しか持たないのか良くわからない。

 だが、ハミルトン卿の馬車を止める訳にもいくまい。

 魔石を見せて頂こうか」


 お母さんがゴソゴソと腰に付けたポシェットから小さな魔石を取り出す。ぼくの手のひらに丁度収まるぐらいの大きさ。魔石が魔法の元になるとは聞いていたけど、実物を見るのは今日が初めて。


「あ、あの、これで宜しいですか?」

「うむ。換金手数も掛かるが、二人分として、お釣りは出せない。良いか?」

「あ、はい。ご迷惑をおかけします。すみません」


 何でお母さんはスムーズに街の門を通過することもできないんだろう?よく、メイドの職を失わないと思う。


 そうだとすると、関所で聞いてる噂は本当かもしれないな……。『おまえのお母さんは、関所でメイドをしているところを、お父さんに拾われたんだよ』って。


ーーーー

 

 門番さんのところを何とか抜けて、街中に入って来れた。

 町の一角で馬車を預けておいて、3人で市場のような人混みの中に入ってきた。お母さんは背中に革袋を背負っていて、僕ら二人を両肩に担ぐ格好で歩いている。


「シオン、ここの市場にはいろいろな食材があるよ。調味料とか乾物かんぶつもいろいろあるよ。好きなものを好きなだけ買って良いよ。美味しいものを作ろうね」

「お母さん、わかった。でも、おねえちゃんも好きなものを買って貰った方がいい」


「うん。リサちゃんも好きな物買っていいよ」

「ちゃんは要らない。リサでいい。靴と剣が欲しい」


 リサお姉ちゃんは僕以上にぶっきらぼうにお母さんに突っかかるんだよね。 昨日の木刀の試合に負けてから余計に酷くなってるみたいだ。


「リサちゃん、ごめんね。お母さん気を付ける。

 あ、リサ、ごめんね。 それで、リサの買い物はシオンの買い物の後でいいかな?」

「いい」


 と、リサお姉さちゃんがボソッと呟く。


「お母さん、武器や防具、装飾品は高価って聞くよ。

 リサお姉ちゃんの物を先に買おうよ。

 余ったお金で買える食材を選ぼうよ」

「そ、そうだね。シオンの言う通りだね。そうしよう!」


 お母さんは、そういうと何やら冒険者が集まる盛り場のようなところへ行く。ひょっとして、お母さんが門番に見せた冒険者登録書は、ここで貰ったのかな?


 どう考えても武器や防具を売っているお店に見えないんだよね。

 まさか、冒険者から中古品でも譲ってもらうのかな。お母さん、お金なさそうだし。

 でも、大人用の中古品をお姉ちゃんが使える訳無いと思うんだ……。


 お母さんは僕ら二人を肩に担いだまま、冒険者たちが待機しいてるテーブルがある場所とは別の、受付カウンターのような所へ行くと、受付のお姉さんと何やら話し始めた。


 「今日の相場は……」「今日ですと、このサイズが……」何か早口で会話しているので良く聞き取れない。でも、このカウンターでの会話は慣れてるみたいで、台所にいるときのお母さんぐらいテキパキとしていた。


 お母さんは僕ら二人を床に降ろして、背負っているリュックのような革袋の中から、魔石を取り出して、カウンターに並べてるみたい。

 カウンターの向こうのお姉さんの表情からすると、お母さんが出した魔石の大きさは結構大きいみたいで、ちょっと驚いていた。お母さんのリュックに入っていた魔石はお父さんかモリス様から貰ったのかな?お母さんは金貨と魔石しかもってないとか、変だよ。


 「ご確認ください」と、カウンター越しのお姉さんがなんか重そうな革袋を4つ持ってくる。僕らの背ではカウンターの上の革袋に何が入っているか判らないけど、ジャラジャラ言っているから銀貨とかのお金かな?お母さんは他人の魔石を勝手に売って、それで買い物でもする気なのかも!


 お母さんは、さも当然って素振りで、手渡された革袋を自分のリュックにしまい込むと僕らに声を掛けた。


「リサちゃん、シオンお待たせ。先にリサちゃんの剣と靴を見に行こうね」

「ちゃんは要らない」


 って、ちょっとニコニコしながら僕らに声を掛けて、また両肩に僕ら二人を担いで冒険者が集まるお店を出て行くことにした。

 お母さんは、いい加減にしないと、リサお姉ちゃんに怒られると思うよ?


いつもお読みいただきありがとうございます。

週末1回、金曜日の22時を予定しています。

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