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9-12.魔族訪問準備(5)

 マリア様とモリスに参加してもらって作戦会議をするよ!

 ステラとフウマと念話を通した翌日。

 マリア様のアドバイスもあって、朝から集まれるメンバーで魔族の国の訪問の準備をすることになった。


 先ずは私が念話で収集した情報を元にマリア様とモリスに今後すべきことを説明したよ。


(1)魔族の国の正式訪問

 これはリチャードと私がエスティア王国からの訪問者という肩書が必要になるので、王族の正式な身分証を用いて、海路からのアクセスする必要があること。


(2)フウマの支援

 フウマだけでは飛竜研究所の調査が進まないので、なるべく早くシズクさんを魔族の国へ密入国させる。この身分証は冒険者で良いし、空飛ぶ卵を使って魔族の王都の近隣の村までサクセスできる。けれど、魔族語の通訳者が必要になること。


(3)サンマール王国の内政支援の継続

 私達がここを留守にする間の内政支援として、食料自給率の向上、医薬品や治療制度の向上、交易に向く商品の開発、そしてそれらの利権の調整をすることでサンマール王国の経済の立て直しを継続すること。


(4)サンマール王国のでの地盤固め

 魔族の国の訪問とは直接関係無いけれど、ペアッドさんが奴隷指揮官なので、この辺りの役割を説明して、リーダーシップをとって貰いたい。この辺りは昨日のトラブルをモリスに説明したので、個別に対応してもらうことになったよ。


 と、一通り説明が終わるとマリア様からコメントがあった。


「ヒカリさん、念のためだけれど魔族の国へは誰が行っているのかしら?私はフウマが隊商の護衛に扮して魔族の国へ向かったところまでしか知らないわ」


「夕食会のメンバーとしては、ステラ様、ミチナガ様、アリア、アリアの子。そしてシルフが同行しています。通訳としてテイラー様も同行しております。因みに彼は魔族の王国の侯爵家の三男だそうです。

 その他に、マリア様がご存じの通りフウマも魔族の王都で滞在中になります。

 ステラからの念話が入りましたので、魔族の王都ではありませんが、第三王子であるカサマド様には魔族の所領である銅の精錬所へ向かって頂いております。リチャードは空飛ぶ卵の操縦訓練を兼ねて、カサマド様をお送りしてからこちらへ戻る予定です」


「ヒカリさん、それは私が2週間ほど上級迷宮で収集品を拾い集めている頃に起きたことかしら?」

「そうなりますね……」


「モリス、補足説明して頂戴!」


「(1)は サンマール王国へ立ち寄った記録の作成は外交官のコリン卿にお願い可能です。中型の交易船一隻の調達は承認のハピカ殿と調整を進めます。こちらが終わればリチャード殿下御一行という形で魔族の国を正式に訪問可能と考えます。

 (2)シズク様の通訳係として、グレハンと申す者が居りますので、そちらを充てることが可能と考えます。魔族の国までの送迎はリチャード殿下が戻り次第、空いた空飛ぶ卵を使えば問題ないと考えます。

 (3)サンマール王国の内政につきましては、港湾施設の構築が完了していませんことと、開拓した農地からの収穫が不明であることから、主要メンバー全員で魔族の王国を訪問することは難しいと考えます

 (4)につきましては、クワトロ殿と打ち合わせ後、夕食会のメンバーに準ずる組織構成ができないか相談を進めます」


「モリス、相変わらず上手いわね」

「はっ。お褒めに預かり恐縮です」


「そうじゃないわよ。私の不満を上手く躱して、前向きな場に導いている事よ。

 確かにヒカリさんの自由な行動を制限したり、小言を言うだけ時間の無駄よね。

 そこは今度時間があるときに詰めましょう。


 それで?ヒカリさん、私はまたお留守番かしら?」


「正直、エスティア王国のために動けて、利権調整を出来る方は、やはり身分証といいますか、肩書が必要になりますので、それ相応の方を残さないと難しいかと……」


「モリス、エスティア王国で2年前から財務大臣を務めさせている……。ええと……。ベッセルを連れてこられないかしら?彼は貴方と同じアカデミー出身よね?」


「彼は金融に関する知識と計算といった実務能力、駆け引き、サンマール王国語までは問題ございません。

 ですが、港湾施設を構築するにかかる費用算定を交渉材料にすることは難しいかと……」


「それは何故かしら?」

「ヒカリ様のお力があって、約3ヶ月という短期間で港湾施設の構築の目途づけ

に至っております。私が代わりに指揮を執らせて頂いた場合には、どれほど短く見積もっても10年以上掛かります。ここのギャップを黙秘したまま交渉の場に立つことは困難でしょう。

 また、夕食会のメンバーでは共有されておりますが、サンマール王国の王姉殿下が裏で魔族と繋がっていて我々が支援に入っていることも表立って交渉材料に載せることはできません。

 そして最後に彼は『念話』を使えませんので、情報共有に限界があります」


「全然だめじゃない……」

「駄目な原因はヒカリ様の常識外れな行動にございますが……」


「ヒカリさん、ゴードンとモリスは置いて行ってくれるのかしら?」

「ゴードンはここの食料事情の調査と、300人の食事作成補助で、もう少しこちらに滞在頂きます。モリスはマリア様の指揮下に置きます」


「妖精の長達は?」

「シルフは先ほどの通り、ステラ様に同行しています。

 クロ先生はリチャードと私の護衛のために同行頂くと考えております。

 その他のメンバーはこちらで生活頂く予定です」


「ライト様……。ラナちゃんは承知しているのかしら?」

「たぶん、大丈夫かと」


「たぶん?状況を共有していないのかしら?」

「ええと……。はい。まだ帰って来たばかりですので」


「私達が迷宮から帰ってきたことと、魔族の国を訪問することは関係無いでしょう?」

「詳しくはモリスにお尋ねください。

 ラナちゃんから私へは、残り2週間程度お願いが出来ませんので、皆様が配慮お願いします」


「相変わらず意味が判らないわ。モリス分かるかしら?

 妖精の長達はヒカリさんの下で自由を得られたはずよ。

 自由にお願いをすれば良いわけだから、我々に遠慮する必要はないわ」


「詳しくは省きますが、妖精たちはお願いを聞く立場です。ですので、人間といいますか、この星に暮らす生物へ『これがしたい。これが欲しい』と、我々にお願いはできません。そこを配慮頂きたいというお願いです」


「ラナちゃんの思いを察して、それを提供するということかしら?」

「端的に言えばそうなります」


「本当に大丈夫かしら?」

「妖精の長の自らの判断で我々に危害を加えることはございません。

 どなたかが妖精の長へ『○○を殺せ』などと願わない限りは問題ありませんので」


「つまり、どんなに不平不満が溜まっていても、その文句を言えないし、それを態度に表すことが出来ないということかしら?」

「その様です」


「どうしろっていうのよ……」

「お礼とか貢物の形で、良さそうなものを差し上げるだけですね。

 『夕食にきてください。一緒にお食事をしてください』

 など、これまでと変わらないお付き合いを頂くだけで構いません」


「モリス、貴方に任せて大丈夫かしら?」

「ヒカリ様が不在になる間、ゴードンが居ればこれまでどおり過ごして頂くことは可能と考えます」


「ヒカリさん、分かったわ。ハネムーンを楽しんでいらっしゃい。

 ところで、リサちゃんとシオンくんはどうするのかしら?」


「まだ話をしておりません。ですが、連れて行かない方が良いかと。

 お忍びであれば二人も好き勝手に動けますが、私と一緒にいませんと全ての行動に制限がかかり、あまり面白くないと思います。場合によっては子供というか赤子らしい演技も交える必要がありますし、流動食のみの生活になる可能性が高いです」


「まだ一歳なのよね……」

「はい……」


「魂が輪廻転生の影響を受けていたとしても、体まで丈夫になるのかしら?」

「良くはわかりませんが、リサが言うには身体強化をかなり使っていないと、喋ることすら覚束ないそうです。食事に関しては身体強化レベル2の副次的影響なのか、私が提供している食事が彼らにあっているのか、体調不良を引き起こしていることは無さそうです」

「そうね……。妖精の長を交えた夕食会で確認した方が良いと思うわ。

 モリス、後で詳しく説明しないさい。

 以上よ」


 私は最初に説明した以外、ほとんど会話に加わることなくマリア様とモリスで采配してくれることになりそう。そう考えるとモリスはマリア様の専属の執事で無かったにも拘わらず、誰にでも仕えることができそうだね。

 優秀だ……。


ーーー


 マリア様とモリスへ事情を説明した後、リチャードと話をする機会があった。


「ヒカリ、準備は順調だ。ヒカリの方は大丈夫か?」

「リチャード、色々と協力してくれてありがとう」


「ああ、問題無い。だが、しかし……。

 ヒカリと一緒に生活をするようになると色々な感覚が狂うな」


「私は全部狂ってるよ?」

「例えば?」


「王国で王太子妃になるとか考えて無かったから、マナーも教養も無いよ!」

「ヒカリにはそれに代わる物があるから大丈夫だ」


「電気、水道、ガス、下水道が無い」

「それが何か分からないが、それが無いと何が困るのか?」


「あ、魔族の王都には地下下水道があったよ。

 見てきた国々で魔族の国の下水道が一番発展してるように思えた。

 水道に関しては関所も進んでいると思うし、『水が出る樽』があるから水道については考えなくてよい世界が出来るかもね」


「つまり、ヒカリの言う何かがあると、便利になるということか?」

「そうだね」


「冷蔵庫、冷凍庫、腰掛付きトイレ、水の出る樽の中で魔族の王国で見かけた物はあるか?」

「ないんじゃないかな?」


「であれば、ヒカリが狂うのも仕方が無いし、私の感覚が狂うのも仕方ないな?」

「そうだね」


「もう一度繰り返すが、王太子妃として魔族の国の訪問の準備は整っているか?」

「たぶん。なるべく発言しないように、おしとやかに振舞うよ」


「王族間での儀礼の場ではその方向で頼む。その他の道中やトラブルの回避についてはヒカリの意見を十分に聞くつもりだ」

「わかった。念話も上手く併用しようね」


「ああ、よろしく頼む」



 さて、手筈が整ったら2-3日のうちに出発になるね!



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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