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9-11.マリア様とゲーム

 魔族の国を訪問する準備を一つずつ整えないとね!

 と、朝からやる気満々だったのだけれども……。

 フウマとの念話の翌朝。

 いつもの様に体を動かしてから、ピュアをしつつ、朝ご飯へ向おうとすると、マリア様から声が掛かった。


「ヒカリさん、朝ごはん食べながらでも構わないのだけど、少しよろしいかしら?」

「は、はい!」


 ええっと……。

 マリア様に直接お願いしていることは港湾関係の利権の調整だよね。あとは農作物の販売だけど、まだ収穫できてないし……。他にお願いしていたことは無いはず!


 朝食のテーブルに着いて、お米を主食とした朝食を食べ始めると、マリア様が話し始めた。


「ヒカリさん、食べながらで良いので相談があるの。

 端的に言うわ。

 シオンくんにゲームで勝ちたいの」


「はぁ……」

「どうかしたのかしら?」


「ええと……。シオンは私と同じくらい強いと思います。

 ですので、私がマリア様にお教えてしても必ず勝てるとは限りません」


「そうなの?リサちゃんもそうなのかしら?」

「リサと私では私の方が強いかも知れませんが、あまり勝ちたくないですね」


「あら?どうして?」

「リサもリサなりに負けず嫌いな所がありまして。

 私が微妙な負け方をしないと不機嫌になります」


「……。ヒカリさん……」

「は、はい!」


「私はシオンくんに不機嫌な態度をとったりしていないわよ?」

「あ、はい……」


「シオンくんから何かきいたのかしら?」

「あ、いえ。想像しただけです。

『シオンがわざと負けた』ということを、マリア様がどの様にして知ったのかなと……」

「私は審議のスキルがあるから、それで確認できるわ。

 あの子、わざと負けようとした様に見えたの。


 『わざと負けたのかしら?本気出して良いのよ』

 と、シオンくんに訊いただけよ。


 『そんなことないです』

 と、答えてくれたのだけれど、それが嘘だったの。


 『嘘をつかなくてもいいわ。怒らないわよ』

 って、諭したつもりだけど……

 私がゲームで強ければ全く問題ないのだけれど、勝てないのよ……」


「そ、そうですか……」

「私は怒ってないわよ?」


「そうですよね……」

「ヒカリさん、どうしたらシオンくんに勝てるかしら?」


 いや……。

 これは……。

 マリア様らしくない……。

 なんか変な食べ物食べたり、薬草を服用したりした……?

 それか呪いに掛かったとか……。

 負けず嫌いなだけ?

 なんなんだ、この状況は……。


「マリア様、これはゲームですし。

 マリア様は始めたばかりですので少しずつ強く成れば良いのでは?」


「ヒカリさんはゲームで負けたら悔しくないのかしら?」

「ええと……。確かに負ければ悔しいかもしれません。でもそれがゲームですし……」


「ルールは簡単なのよ。でも勝てないわ。おかしいじゃない」

「ゲームのたぐいは、場数を踏んだ方が強くなりますね。

 シオンは前世でそれなりに回数をこなしていたのかもしれません」


「だったら、ヒカリさんが勝つコツを教えてくれてもいいじゃない」


 う~~~~~ん。

 これって、マリア様が負けず嫌いなだけかな?


 確かにマリア様は過去の経験上、審議のスキル持ちだから、口論や精神的な攻防で負けたことは無かったと思う。

 ゲームは戦争や模擬戦と違って、心理戦になるし、頭脳戦だけだからね……。

 頭脳戦や心理戦で負けた経験が無かったマリア様からすれば、初めて無敗記録が破られた様な……。


 アリアもモリスに負けて、相当ショックを受けていたし……。

 ステラもゲーム大会の本番で勝てなくて、かなりショックを受けてて、シオンの支援申し入れを難なく受け入れたしね……。


 これって、私がゲーム中毒者を出したってこと?

 いや~~~~。

 『異世界にリバーシを持ち込むのは定番』みたいなのは嘘だよ!

 人を狂わす何かがあるよ!

 刺激が強すぎだよ!


 もっと、単純に遊べて、直ぐに飽きそうなもので良かったのかもしれない……。


「ヒカリさん、シオンくんと念話かしら?」

「あ、いえ、違います。

 アリアやステラもゲームに夢中になっていたなと。

 それを思い出していただけです」


「リサちゃんはどうだったのかしら?前世でリバーシで遊んでいたとは思えないわよ」


「リサにはもっと簡単なゲームで勝敗の意味を経験してもらい、ゲームの勝ち筋の考え方を学んでもらいました。その次にマリア様が楽しんでおられるリバーシで遊びました。

 ですので、ゲームの奥深さを理解しつつ、勝敗に対するストレスも少なかった状態からリバーシを始めたのだと思います」


「ヒカリさん、確認だけれど、リバーシは自分のコマの色の数を増やすゲームよね?」

「ええと……。最後に自分のコマの色が多い方が勝ちのゲームです」


「同じことよね?」


 ああ……。

 これはダメな奴……。

 ステラと同じ感覚でリバーシを遊んでいるというか、戦ってるな……。

 そりゃ、シオンもわざと負けてあげたくなる感覚になるよ……。


「マリア様、途中経過でどんなに自分の色のコマが増えても、最後にひっくり返されたら負けてしまいます」


「ええ。だから最初から最後まで自分のコマが多ければ勝てるはずよ」

「ええと……。必ずしもそうでは無く……」


「どういうことかしら?」

「例えば、初級者のうちは角のマスを取ることを目指します。

 中級者になると角の攻防と辺の取り合いを意識します。

 上級者では勝ちパターンを複数組み合わせて自分の有利になる展開を目指します」


「ヒカリさん、何を言っているか判らないわ」

「マリア様は初級者の手前の初心者ということかと……」


「かなり、悔しいわ」

「ええと……。美味しい物を食べれば気が安らぐかと……」


「どうしたら初級者や中級者になれるのかしらね?」

「一つずつ場数を踏むのが宜しいかと……」


 全然リバーシの話から逸れてくれないね。

 これは大変だ……。

 あの人付き合いの良いシオンが嘆く訳だ……。

 こんな状態で魔族の国を訪問して、マリア様が賭けリバーシに参加しようものならえらいことになるよ!まぁ、負けても借金を抱える訳では無いから良いんだけどね?


「ヒカリさん、モリスを借りても良いかしら?彼は強いと思うのよ」

「え?」


「ダメかしら?」

「ええと……。少し打ち合わせをしたかったのですが……」


「リバーシ大会でも開催するのかしら?」

「あ、いや。リバーシ大会はそのうち開催することにしましょう。

 先ずは魔族の国を訪問して、ステラとアリアの軟禁状態を解放するための準備を整えたく」


「え?」

「はい。彼女ら賭け事で勝ち過ぎたらしく、国と教団に目を付けられてしまって。

 ですので、救出に向かう必要があるのです」


「それは大ごとじゃない。早く人を集めて作戦会議を開くべきよ」

「は、はい……。そのためにモリスの力を借りたく……」


 ふぅ……。

 なんか、こう、いろいろと大変だよね?


・魔族の国の正式訪問の準備もしないといけないし、

・シズクさんを密入国させる準備もしないといけないし……。

・サンマール王国の経済発展の礎とか食料調達量の向上や利権の調整。

・ペアッドさんの奴隷とか指揮官としての在り方はモリス辺りから話をしてもらうとして……。


 う~~ん!

 一個ずつ片付けていくよ!



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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