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9-10.魔族訪問準備(4)

 魔族の国で生じる武力衝突に備えないとね!

 ステラからの情報を受けて、直ぐに空飛ぶ卵の運転訓練中と思われるリチャードとカサマドさんに念話を入れることにした。


 幸いにして二人とも運転中では無くて、夜間操縦で気を付けることを学んでいる最中だった様で、普通に念話を通して会話が出来た。

 カサマドさんには、訓練が途中でも良いのでドワーフ族と一緒に洞窟まで行ってもらう。リチャードはカサマドさんを送り届けたら魔族の国を訪問するための打ち合わせが必要ってことで、なるべく早く戻ってきてもらうことにした。

 よし、これで魔族の金貨の隠蔽と魔族の国からの視察対策は上手く行きそう。


 次に確認した方が良いのはフウマの方だね。

 よし、こっちも念話を通しておこう。


<<フウマ、夜分遅くごめん。今、念話を通しても大丈夫?>>

<<ああ、姉さん。自室で寝る準備をしていたところ。緊急事態かい?>>


<<飛竜の調査状況を知りたいと思って>>

<<姉さん、すまないが時間が掛かりそうだね。

 昼間は教官としての指導で8時間拘束されている。その他にも教育手法の打ち合わせなんかが沢山入っている。衣食住は全て提供されている反面、今は宿舎に軟禁状態だよ。自由に行動ができる余裕がないね。

 何か飛竜族から問い合わせがあったのかい?>>


<<ん……。

 魔族の国を訪問した際に戦争せずに済ませたい。だから飛竜族を予め解放しておきたいと思って確認したよ>>


<<姉さん、僕の方の時間は大丈夫だから詳しく話をききたい>>


 私はステラと話をした内容をつまんで説明した。

 それに対してフウマも飛竜の問題を問題解決するまでにあまり時間が残されていないことを感じ取ってくれたよ。


<<姉さん、魔族の国家や教団としては国家存亡の危機を突き付けられているから、『掛け金の払い戻しは不要なので、穏便に済ませて帰国させてください』では済まない状態になっているね>>


<<賭け事ギルドを潰してお終いだったら話は小さくて済んだけれど、国と教団に責任を分担させてしまっているからねぇ……>>


<<マリア様やリチャード王子は何か言ってた?>>

<<まだ知らせてない。さっきステラから情報を手に入れたばかりなの>>


<<そうか……。それなら先に何か考えておいた方が良いね。

 ステラ様やアリアさんと正式に合流して、『本件は人族やエルフ族としても問題を認識している』ってことにしておかないと、軟禁状態の彼女らが暗殺されてしまうからね>>


<<ステラ達ならシルフが付いてるから暗殺には至らないけれど、飛竜族の救出は困難になるだろうね。

 そうそう、飛竜の卵は魔族の国の教団から流れてくるらしいよ。中身が無い殻だけを装飾用のオブジェとしてお土産やカジノの景品として提供してるらしい。

 だから教団がなんらかの形で飛竜の研究に関わっているのは間違いなさそうだね>>


<<姉さん、その情報はどこから?>>

<<飛竜の卵の件?>>


<<ああ。卵の殻だけでそれが本物かどうかは見分けがつかないと思うんだ。土産物屋の店主であれば、いくらでも本物を装った様な嘘をちりばめて売りつけるからね>>

<<リサだよ。リサの鑑定だから問題ない>>


<<リサちゃんが?鑑定の特技持ち?

 それにしても卵の殻なんか石や粘土と変わらない物質だから鑑定とか利き難いと思う>>

<<フウマに言って無かったっけ?リサは生まれながらにして飛竜の加護持ちなんだよ。だから、『皆様には分かりませんか?』みたいな話になって……。

 私達が持ってるような加護とは別の効能があるのかもね>>


<<そもそも普通の人には加護の印すら見えないからね。僕にはその特殊な効能が発現するとしたら、それを信じるしかないね。

 それで、飛竜の卵の殻が本物だとして、その出所が教団というのはどこから?>>


<<カジノの景品で並んでいるのを見て、『どこから入手しているの?』みたいな話をしたら、『教団から押し付けられている』って>>


<<姉さん、リサちゃんに飛竜の居場所を探してもらうのはどう?>>

<<え?>>


<<リサちゃんには特殊な加護の印が付いているんだろう?

 だったら、研究所に捕らえられている飛竜の居場所を探せるかもしれない>>


<<触って分かったレベルだから、遠いところの索敵は無理だと思うよ?フウマやユッカちゃんだって、索敵できる範囲には限りがあるでしょ?

 念話だって、ちゃんと自分と相手が認識していないと通らないし。

 その方法はあまり期待できない>>


<<そうか……。そう上手くいかないか……。

 それで……、魔族の国側が武力行使という開戦のきっかけを起こすのはいつになるんだっけ?>>


<<王都から銅の精錬所まで片道約500km。普通に早馬を乗り継いで伝令をとばしたら片道5日間。調査結果を伝聞で伝えるだけなら往復で10日間だね。

 視察部隊を派遣するとなると、騎乗している人物側の体力と睡眠が必要だろうから、どんなんに速くても片道1週間以上は掛かると思うよ>>


<<視察結果を報告する際にはカサマドさんにも同行して貰うべきだね。

 軟禁されているステラ様達には視察部隊が虚偽報告をした場合にそれを証明する手段が無い。だから魔族の王国の一方的な調査結果で告発されて処刑されないようにさ>>


<<とすると……。魔族の国にカサマドさんとテイラーさんが同席できることになるね。

 ここから何か良い展開に持ち込めないかな。

 カサマドさんは魔族の第三王子。テイラーさんは侯爵の三男とかいってたから、立場上無闇に暗殺しにくいんじゃないかな>>


<<魔族の国内の意見の相違を強権発動でつぶされたら、いくらカサマドさんやテイラーさんがいても決定を覆すのは難しいかもね。

 『国際問題に発展させない』という抑止力を働かせるためにも、人族やエルフ族の人による介入が必要だと思う。

 ミチナガさんとアリアさんはエスティア王国の王太子であるリチャード殿下の肩書きが有効だとして、ステラ様はどうしようか……。個別の種族対応ってことにされて、問題を切り離されれると、こちらも個別の救出案を作らないといけなくなるね>>


<<ん……。スチュワートさんとナーシャさんなら大丈夫じゃないかな?>>

<<姉さん、誰それ?>>


<<スチュワートさんはエルフ族の族長代行。ステラの旦那さんだね。ナーシャさんは良く分からないけれどエルフ族の3大種族のうちの族長の親族らしいよ。ステラとスチュワートさんとは別の種族らしい>>


<<姉さん、スチュワート様の存在は知っているが、呼び戻す手段があることをしらない。そして、ナーシャさんの存在を俺は聞いてない>>


<<そうだっけ?

 ああ、スチュワートさんは2台目の空飛ぶ卵を利用して、今こっちに来てるんだよ。ちょっと前までリチャードと一緒に迷宮で訓練してた。ナーシャさんも一緒に訓練の教官として同行していたから、声を掛ければ協力してくれると思う>>


<<姉さん、それを聞くと最強メンバーがサンマール王国に集まっている様に聞こえる。そんなメンバーが居て、正式に魔族の王国を訪問すれば多くの問題は種族間問題へと格上げして処理出来ると思う。

 ただ、エスティア王国が手薄過ぎて、皇后様が余計なことを始めないかが不安だね>>


<<トレモロ侯爵には『3ヶ月後に開戦。戦力は好きなだけ投入して。ただし、投入した分の人的被害がその後のストレイア帝国の復興の妨げにならない程度に』って、伝えてあるよ。

 まだ正確には伝えていないけれど、ロメリアに駐在しているレナード侯爵と獣人族のレミ女王にお願いして、ミラニア側から東には攻め込ませない様にするつもり。

 これらは魔族の王国の件が片付いてからでも間に合うと思っているよ>>


<<姉さん、そうしたらリチャード王子と二人で正式に魔族の国を訪問。同じタイミングでエルフ族のスチュワート様とナーシャ様にも正式に訪問してもらうことにすれば良いよ。 ただ、それなりの船を準備しておくか、陸路で疑われない様に痕跡を残しながらになると思うから、そこは前回の訪問よりも綿密に行って欲しい>>


<<だったら、船を一艘買い取って、それを浮かせて空路で搬送して、海路の1-2日の場所に浮かべて魔族の国へ入港って感じだね>>


<<それで良いと思う。あとは飛竜の研究施設の調査になるね。

 姉さん、シズクとか連れてこれないかな?出来ればシズクと偽装夫婦になれる旦那役も欲しいけれど……>>


<<分かった。そこの準備は進める。場合によっては空飛ぶ卵で先に送り込むよ。フウマとシズクさんは念話は使えるようになってる?>>

<<ああ。聞かれなかったから答えていないけれど、アジャニアからエスティア王国にもどってきて、間もなく習得してもらっている。姉さんほどじゃないけれど飛空術も重力遮断も教えてあるよ>>


<<そっか。フウマの間者としての血筋も安泰だね>>

<<姉さん、有能な王家に仕えるうちは良いけれど、王家の世代交代があったり、隣国との緊張状態によっては、簡単に無かった存在にされるんだ。

 姉さんと念話が通せているうちは問題無いけれど、それが無くなったら緊急事態が起きているだろうし、僕らの家族もそこに巻き込まれると思うね。


 今はそんな話は良いよ。

 僕なりにも飛竜調査に向けた情報収集を考える。

 何かあったら連絡する>>


<<フウマありがとう。こちらもシズクさん含めて準備を始めるよ。

 またね>>


 ふぅ……。

 なんか、こう、いろいろと大変だよね?

 う~~ん!一個ずつ片付けていくよ!





いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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