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8-19.ゲーム大会(2)

 今日からゲーム大会の予選会。

 ゲーム大会の事前情報をグレハンさんが入手してくれていたので、朝からお弁当のサンドイッチ作りに励んだ。場所はカジノの調理場を借りて、材料は持ち込みの物を使った。ついでに、朝ごはんも6人分も私が作って、レストランで場所を借りて食べさせてもらったよ。


 なんていうか、緊張の欠片かけらもなく、ゲーム大会でお金を稼ごうって気も起きなくなってる。だって、フウマは教会に潜入出来てるし、ステラも教会関係者と面談が出来る様だし、ドワーフ族の本物のと思われる神器の斧も手に入って、手元の金貨は合計で2万枚ぐらいは残っているから治安の良いカジノの宿泊施設で滞在できるし。


 今日は軽く3勝して予選を通過して、明日と明後日の本選に備えれば良いよね?ちなみに、エントリーしたのはモリスと私。念話が通ったところではアリアとステラも参加するんだって。リサかシオンをステラのサポートに付けると良いと思うんだけど、ステラが迷惑かな?予選を無事に通過したら考えよう。


 グレハンが事前に説明したくれたところによると、予選会はチケットを購入して1勝したら1個の○印が貰える。負けたらそのチケットに×印が付く。3個の○印が溜まったら予選勝ち抜きが決定。チケットは金貨1枚。勝負は1回金貨1枚。かなり高額だと思う。最低でもチケット1枚+3回戦で金貨4枚が必要ってことになるね。

 逆に言うと、仲間内で○のやりとりが出来るのだから、お金さえ掛けて金貨8枚で○を3個揃えられるから、だれでも予選を通過可能ってことになるね。


 予選を勝ち抜くと本選出場なのだけれど、ここの参加費が金貨10枚。これって高くない?予選で金貨4枚と本選で金貨10枚で合計14枚が最低の参加費として必要になるってことだよ。ただし、優勝賞金が金貨100枚。2位が50枚、3位30枚ってことなので、3位入賞すれば、元手は戻って来ることになるね。


 それとは別に勝負ごとに賭け札を買うことができるのは事前調査の通り。勝ち、負け、引き分けに最大金貨10枚までを賭けることがことが出来る。これは予選会では対戦相手同士の勝ち負けに対してしか賭けられないけれど、本選からは払い戻し倍率が計算された上で賭け事ギルドが勝敗と払い戻しを管理している。


 流れとしては、

(1)対戦カードが決まる

(2)賭け事ギルドが倍率を発表する

(3)発表から10分以内に賭け札を購入する

(4)勝敗が決まれば、その倍率の払い戻し。

   引き分けは賭け金2倍になって、それを次の勝敗に再び賭ける。


 うん、この大会では賭けのチケットの販売時間が短いためか、勝敗の枚数差での払い戻し倍率は変わらないみたい。確かに、1戦に掛かる手続きの時間を短くするためには仕方ないよね。


ーーー


 さて、予選会の会場では何十席も対戦席が設けられていて、そこに夫々賭け事ギルドの審判が付いていて、参加チケットの販売と勝敗のしるしも提供してくれている。


 私はリサとシオンを両脇に抱えながら、難なくゲームをこなして3連勝の成績で予選を通過。モリスは予選の成績を偽装するために、3勝3敗の成績を提出して予選通過。念話を通したところ、アリアも大勝して目立つような真似はせずに、3勝2敗で金貨を余分に使いつつ、予選の成績を偽装して通過。


 で、ステラなんだけど……。

 0勝3敗で4試合目に突入したらしい。気が散るといけないからなるべく念話を通さずに、リサとシオンを抱えながらステラの姿を探す。緑髪が目立つかと思っていたけれど、色々な種族が大会に参加しているみたいで、髪の色以外に帽子や髪飾りなんかを身につけたりで、ステラの綺麗な緑色の長い髪がなかなか見当たらない。


「お母様、見つけました」と、リサ。


 そちらの方角に目を向けると確かにステラの姿が見えた。人混みをかき分けながら、ステラが対戦している席の方へと近づいていくと、「これステラが負ける」って、すぐに判るレベルでのコマの配置に差が出ていた。


 すると、今度はシオンが「僕がステラ様の応援に向かうと失礼でしょうか?」と、申し出る。

 このゲームの勝敗が確定したらステラに聞いてみよう。きっと迷子の子供を預かっている振りしながらゲームに参戦すれば良いと思うんだよね。会話は念話で指示を出せば周囲にシオンが手伝っているって判らないだろうし。


 ゲームの勝敗が決まって、ステラの参加チケットには4つ目の×が付く。そのタイミングで私からステラに念話を通す。


<<ステラ、シオンがゲームに参加したいみたい。迷子を預かる振りして、シオンに参加させて貰えないかな?念話をつかって指示だす形になると思うけど>>

<<そう……。私も少し疲れたから、シオンくんに任せてみようかしら>>


 と、ステラも素直にシオンの申し出を受け入れてくれたので、5回戦目に入る前に迷子の振りをしたシオンを拾って貰った。


 シオンを抱えながら成績は3勝1敗。多分1回途中で負けたのはシオンの心配りだと思う。相変わらず気配りの達人だね……。


<<ヒカリさん、シオンくんは私より強いみたい。折角だから、明日の本選もシオンくんと一緒に参加しても良いかしら?>>

<<ステラが良いなら良いよ>>


 と、ステラに念話を返した。

 まぁ、シオンが毎日迷子になるのを不思議に思う人も居るかもしれないけれど、それはそのときってことで。


 ステラとは念話とシオン以外では交流できないけれど、お互いに無事に予選を通過出来たってことで別れた。


ーーー


 私たちはカジノに戻って少し遅めのお昼ご飯を食べることにする。朝に作ったサンドイッチがあるので、それを皆で分けて食べた。


 やることも無く暇だから、調理場を借りておやつを作る。夕ご飯も作る。明日の朝ごはんや昼ご飯に備えてローストビーフとかも作って準備をしておく。

 材料はグレハンが市場で買ってきてくれたものだから、基本的に魔族の王都で普通に手に入る物ばかりを使っているのだけど、調味料と調理技術が違うと、料理の出来栄えというか味も随分変わるね。


 で、まぁ、夕飯をカジノのレストランの場所を借りて食べていたんだけど……。周囲でちょっとした揉め事が起きていた。


「ちょっと!あそこのお客さんに出しているメニューは何かしら。あれを頂戴!」


 と、魔族語で少し大きめの言葉で店内の執事を呼び止めている女性がいた。人のテーブルをゆびさすのはどうかと思うし、私達にその声が聞こえちゃうのもどうかと思う……。

 きっと、このカジノに来て食事も食べられるぐらいに裕福な生活を送れているのであれば、貴族階級か教会の関係者でも上位層の人なのかな?とは、思う。


 私たちが巻き込まれそうな気配がプンプンするので、早々に食事を済ませて部屋に戻ろうとすると、女性に困らされていた執事がこちらのテーブルにやってきてグレハンに話しかけた。


「すみませんが、先ほど召し上がられていた料理のレシピを教えて頂けませんか?」と。

 グレハンは、そんなことを私に通訳したら、きっと酷い目に遭うと想像がついた様で、私に伝える前に首を振ってその話自体を拒絶した。

 執事は仕方なく、拒絶された回答を先ほどの女性に伝えに行くのだけれど、口論が再開しただけだった。


「グレハン、どうしたの?」

「アサリ様、あちらのお客様が我々の料理を食べたい様です」


「ふ~ん。それは残念だね。ここの普通では食べられないからね」

「アサリ様の仰る通りです。

 私も食材の調達を市場まで行っている最中は自分がなぜこのようなことをしているのか理解できませんでした。ですが、アサリ様の料理にご相伴させて頂きまして、その意味を実感している次第です。

 このような特別な物を見知らぬ他人に紹介する必要はございません」


 グレハンの感想はお世辞と恐怖支配の半々だとしても、言われて悪い気はしないし、通訳兼案内係として良い役目を果たしてくれていると思うよ。最終日の精算ではそれなりに金貨を渡してあげるべきかな?


 で……。

 例の執事さんが泣きそうな表情で戻って来るわけ。


「あの……。申し訳ないのですが、レシピを開示頂けなくともですね……。料理を作って頂くことは可能でしょうか……」


 うん。有り得ない。

 そりゃ、グレハンだって返事をする必要すらない。

 で、このまま席を立とうとするグレハンの袖を掴んで追加の申し出があった。


「あ、あの、お客様!こちらのカジノのチップそのものをお渡しすることは出来ませんが、各種賭け事へ参加できる遊戯チケットをチップ100枚相当をお礼に差しあげたいのですが、如何でしょうか」と。


 グレハンが少したじろぐ。

 チップ100枚は、魔族の金貨100枚。これって人族の金貨1万枚だよ。

 まあ、カジノだもんで、遊戯チケットが100%チップになって戻って来るわけでは無いし、チップ100枚があっても交換出来るものが大したものじゃない。

 ただ、まぁ、チップ100枚あったとすれば、ここの宿泊費を全部支払っても沢山の金貨が残るよね。既に2万枚相当あるとはいえ、人間の欲は際限がないからね。


「アサリ様、少々宜しいでしょうか?」

「グレハン、どうしたの?また何か言われた?」


「もし、我々が先ほどの夕飯を1食分作って差し上げれば、ここの遊戯チケットをチップ100枚相当分をお礼に頂けるとのことです。

 遊戯チケットはチップにそのまま交換出来ませんので、ゲームを楽しんだ結果として、勝てればチップが入手でき、それを賞品や魔族の金貨と交換ができることになります。

 如何でしょうか?」


「グレハンが興味あって、材料が残っているなら作ってあげるよ。グレハンが遊戯チケットに興味が無ければ、このまま無視して部屋に帰ろう」


「アサリ様、あの……。その……」

「グレハン、遠慮なく言ってごらんよ」


「私はカジノに入店したのは今回が初めてでして、勝てるかどうかも分かりませんが、カジノというものを楽しんでみたいとは思います……。

 で、ですが、アサリ様達の通訳やご案内の妨げになる様な場合には遊戯を控えさせて頂く所存です」


「良いよ。食事を作ろう。遊戯チケットは今回の滞在中に使わなかったとしても、後日グレハンが一人で来れば良いよ」

「アサリ様、それでは皆様に何のメリットも無く……」


「あと何日か滞在すると思うから、皆でカジノで楽しめる時間もあるかもしれないし。遊ぶ時間が無ければグレハンが使うってことにしよう。それで良いよね?」

「で、では、その様に伝えさせて頂きます……」


 この後、グレハン以外は部屋に戻って貰って、グレハンの通訳を通しながら1人前のローストビーフを作成した。

  ソースはコッソリ醤油と玉ねぎベースの甘辛いソース。これは材料が無いから魔族の国では絶対に真似できない味だね。薬味としての辛子大根のすりおろしも少し脇に添えてあげている心遣い。付け合わせのマッシュポテトも別のお皿に盛り付けてあげた。


 ま、材料費は金貨10枚にもならないんだから、安いもんじゃないかな?盛り付けを終えて、先ほどの執事に渡すと、「少々お待ちください」とのこと。


 どうやら、先に料理をサーブしてきてから、私達へのお礼の遊戯チケットを発行して貰ってきたみたい。


「こちらが当カジノの遊戯チケットとなります。直接カジノチップや商品とは交換出来ませんので予めご了承ください。各種カジノにあるゲームにつきまして、遊び方が不明な物がございましたら、何なりとお申し付けください」


「アサリ様、と言うことなのですが、このチケットは如何いたしますか?」

「グレハンが預かってて。今日はこれ以上料理を作らされたくない。

 明日に備えてゆっくりと寝ようと思う」


「承知しました。ゆっくりお休みください」


 休めるときに休んでおくのは良いことだと思うよ。

 それに、チケット100枚分を下手に負けて嫌な思いをすると明日からの本選に響くしね


 さ、寝よう寝よう!

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