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1-17.不思議なカバン(2)

「「ええ~!」」


「2人とも、そんなに驚くこと?」と、私。

「ヒカリさん、私の師匠は魔術に長けてますが、科学技術は……」と、ステラ。

「ヒカリ様、科学的にありえません!」と、アリア。


 うん。それぞれの知識に基づく反応だね。

 確かに、私は妖精を召喚したり、妖精に念話を通して頼るような魔法は使えない。

 エルフ族を代表するステラが得意とするような、この星の至る所に存在するとされる妖精さん達にお願いをして、科学的に説明が出来ないような複雑な現象を実行して貰うことはできない。

 ただ、まぁ、妖精の長達へ口頭で直接お願いしている件はおいておくけど。


 一方で、科学に裏打ちされた現象を具体的に思念としてイメージすることができれば、その考えた脳波をエーテルが検知してくれて、エーテルが作用することで、私のイメージが魔術として具現化する。

 だから、私は科学に基づいて、重力が何かを理解していて、それを遮断することをイメージすることで【重力遮断】の魔術が使える。

 他にも、体表面を覆う老廃物を【ピュア】という掛け声で除去させたり、体内の血流やリンパ、脳内の化学物質を運搬させる作用をイメージすることで、【身体強化】を行ったりできる。

 私が出来ることは他にもあるけど今は置いておこう。


 ということで、ユッカちゃんの持つ【不思議なカバン】で起こっている現象を科学的に説明が出来て、それをイメージしてエーテルを作用させることが出来れば良いってことになる。


 私が言うところの【不思議なカバン】ってのは、ファンタジーやゲームの世界では一般的な知識として知られているアイテムボックスとか異空間収納庫ってやつね。


 うん。目に見える現象は簡単だ。

 けれど、どうやったら不思議なカバンが起こしているメカニズムを科学的に説明できるかが困難であるということ。


 と、ここで二人に話しかける。


「ステラもアリアも私と同じく、いろいろなヒントは貰ってると思うんだけどな……」


「ヒカリさん、私にも分かるようなヒントをください」と、ステラ。

「ですです」と、アリア。


「先ずね?

 エーテルが魔法を具現化してくれてて、エーテルを集めて魔石を作れるってことは良いよね?」


 私の問いかけに二人がコクコクと、静かに頷く。


 この星にはエーテルが存在する。エーテルを凝集したものが魔石になる。魔石からはエネルギーを取り出すことができる。此処まではユッカちゃんとの特訓で分かったし、私と一緒に活動してきたみんななら認識出来ていると思う。


「次にね?

 エーテルは情報をつかさどることが出来るということ。

 頭の中で考えた思念のような情報を受信することができて、その受信した情報を魔術へと変換させることができる。皆はエーテルを介して、魔術を使ったり、念話によって会話したりできるでしょ?


 これも良いかな?」


 この問いかけにも、二人はコクコクと頷く。


「そしたら、エーテルを媒介すれば、エネルギーと情報を変換することが出来るはずなんだよ。


 これも良いかな?」


 今度は直ぐに返事が来ない。

 一つ一つの知識を構築できても、一見すると全く違う現象に見えることを結び付けるには、思考の飛躍が必要になる場合がある。

 そういうのが出来る様になるのって、訓練が必要かも……。


「ええとさ?


 人が考える⇒エーテルに作用する⇒エーテルが魔法を具現化する

 人が考える⇒エーテルが集まる⇒魔石ができる


 これは良いよね?


 つぎに、


 魔石を魔道具や魔術の印に載せる

 ⇒魔石が少しずつ小さくなるぶんだけ、エーテルが作用する

 ⇒魔法が具現化する


 これも良いよね?


 つまり、エーテルは情報を取り入れることもできるし、魔石からエネルギーを取り出ることもできる。ってことは、情報とエネルギーの両方の作用を受け持つことが出来るよね?


 何となくOK?」


「はい……」と、ステラ。

「ヒカリ様、何となくOKですけど、それがカバンに繋がるのでしょうか?」と、アリア。


「うん。じゃぁ、次に進むよ。


 ラナちゃんの高温炉のときに、ちょっと話が出てきたんだけど、エネルギーと質量は変換できるの。私が居た国の物理学者が考えたのだけど、


 E=mc^2


 っていう、数式を導き出したの。


 左辺のEはエネルギーのこと。

 右辺は質量と、光の速度を二乗したもの。

 これが等価交換できるってことなのね。


 つまり、私が居た世界では、物体を究極の小ささまで分解していくと、全てがエネルギーにすることが出来るってことなの」


 私のエネルギーの説明にアリアが直ぐにくいついてきた。


「ヒカリ様、ひょっとして、綿菓子を作ったときの話と関係がありますか?」

「うん。ちょっと関係あるよ。


 本当は綿菓子みたいな塊では無いし、粒でも無いんだよ。

 だけど、エネルギーと小さな粒が相互変換できる世界ってことをイメージするためには、粒が高速で移動するときの軌道を具体的にするために、綿菓子のモデルで説明したってのはあるよ。


 電子とか高速で移動する物の動きを止める概念をイメージしたからステラもみんなも空気の液化に成功したでしょ?

 だから、あのイメージは正しいし、粒が高速で動いているという概念も正しいってことになる」


「判りました。私は次の説明に移って戴いて結構です」と、アリア。


「ヒカリさん、ひょっとして……」

「ステラ、何か思いついた?」



「ええ。ヒカリさんのヒントが繋がったかも知れませんわ。


 ヒカリさんは、最初にエーテルの説明をしましたわ。

 『エーテルは情報とエネルギーを変換できる』と。


 次に、『物とエネルギーの変換』の説明をしましたわ。


 ということは、

 エーテルを上手く利用することで、

 『物を情報へ変換して、それを格納すること』

 を目指しているのではないでしょうか?」


 お~~~。

 ステラ、流石だよ。

 全体感というか、俯瞰して物を観れるのが素晴らしいよ。


 現象の一つ一つを理解するのはアリアの反応が早い。

 それを1つのシステムに組み合わせるのはニーニャが得意。

 ステラには、全体感だけでなく、魔術の印を構築する部分にも、とっても期待してるんだけどね。


「ヒカリさん……?」


「ああ、うんうん。ステラの言う通りだよ。


 私がそれが出来ると思ったのは、山奥の村でご神木の最後を見送った時なんだよね。


 あれって、単純な植物が枯れて寿命が尽きただけでなくて、何か魂のようなものがエーテルになって、天に駆け上っていくように見えたんだよ……。


 ステラもアリアも見えてたよね?」


「「はい……」と、二人。


 二人とも現象は見えていたけど、その現象をみて、情報とエネルギーの変換が起こっているっていう認識では無かったみたいだね……。



 よし!突破口は開けそう。

 あとはみんなで、ここの概念を試行錯誤して構築していけばいいね!


いつもお読みいただきありがとうございます。

週末1回、金曜日の22時を予定しています。

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