表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/303

8-16.武闘大会の精算(3)

 普通に考えたら、ニーニャを空飛ぶ卵で来てもらうのがいいんだけどさ?

 斧の真贋を調べるいい方法は無いかな……。

<<ニーニャ、ちょっとごめん>>

<<ヒカリ、なんなんだぞ。もう夕飯も終わって寝るんだぞ>>


<<ドワーフ族の斧らしい物が展示されているのだけど、真贋が判らない。魔族の金貨で1000枚必要だから、『試しに買ってみる』という方法が使えない。

 なんか良い判定方法は無いかな?>>


<<私が2台目の空飛ぶ卵で向かっても良いんだが、護衛も通訳も居ないんだぞ。どうやって合流して、真贋の判定をすれば良いのか判らないんだぞ>>


<<そうなんだよね……。来てもらえれば確実なんだけど、それ以外に判定方法があれば良いかなっていう相談なんだよね……>>


<<一度帰ってきて、マリア様達と皆で正式に再訪問すれば良いんだぞ。そのとき、そこの展示品を確認すれば良いんだぞ>>

<<うん……。ちょっとした事情があって、価格が10倍に跳ね上がるかもしれない。それが怖いんだよね……>>


<<また。ヒカリがおかしなことをしたんだぞ。どうにかするんだぞ>>

<<うん。そうなる前に真贋を判定して、本物があったら買い取りたいんだよ……>>


<<ヒカリはドワーフ語が読めたはずなんだぞ?

 銘とは別に古代風神の名が彫られているはずなんだぞ。

 これまで、元々ドワーフ族が所有しているエウロス(東風)。

 ヒカリが関所で最初に貸してくれたボレアス(北風)。

 アジャニアで私に専属化されたゼフュロス(西風)。

 もし、最後の1本がそこにあるならノトス(南風)の名が彫られているはずなんだぞ>>


<<なるほど。それは一つのヒントになるかもしれないね。

 でも、本物を真似して作った複製品デュプリケーションだったらどうする?>>


<<確かに、表面の型どりをして、そのまま鋳型に流し込めば同じ形で同じ銘の偽物が作れるんだぞ。だが、神器の能力は宿っていないんだぞ>>


<<じゃぁ、展示品で銘を確認した後で、神器かどうかはどうやって判定するの?>>

<<魔力を込めれば、何らかの応答があるんだぞ。

 ヒカリが貸してくれた斧は一太刀で大木が切断出来たんだぞ。

 アジャニアの斧は、相当量の魔力投入が必要だったが軽量化できたんだぞ。

 ノトスはどういった魔力と性能の発揮があるか、私も判らないんだぞ>>


<<じゃぁ、古代神の名前を確認したら、魔力を込めて反応を見る感じだね?>>

<<普通のミスリル銀の斧やオリハルコンの斧も魔力に反応するが、魔力が斧に溜まって何らかの効力が蓄積するような能力はないんだぞ。ヒカリなら判るはずなんだぞ>>


<<実は、貸した斧もアジャニアの斧もそういった反応を確かめていないから良く分からないけど、とりあえず魔力を流して反応を見て見るよ>>

<<真贋判定が上手く行くことを期待しているんだぞ。無闇に1万枚も魔族の金貨を作るのは良く無いことが起こる気がするんだぞ>>


<<うんうん。頑張るよ>>


 と、一旦ニーニャとの念話を切ってから展示品に目を戻す。実際に触って魔力を込めてみないといけないんじゃ、所有者に確認を取る必要があると思うんだよね。


 グレハンさんが展示品の確認方法を聞いてきてくれて、展示品の結界を解除する人も連れてきてくれた。気が利くね。

 で、理由はともかく、「触ってみたいんです」みたいなカジノに遊びに来た観光客を装って、チップ1000枚の斧の鑑定に取り掛かる。


 まず、銘というか名なんだけど、刻まれた模様の一部を繋げて読むと、確かにノトスと認識できそう。ただ、誰もがこの模様を文字として認識できるかはわからないから、複製品を作った人が居たとしたら見様見真似で同じ彫刻を施していると思う。


 次に魔力か……。

 魔力を込めてみると普通の木刀とか剣と反応が違う。材質のせいなのか、神器だからなのか判らない。なんか、込めた魔力が斧の上部に向かって逃げていく感じ。


 って、この斧の上部を見てみると四角錘の穴が空いてる。この形って魔石の角ばった形に似てるよね……。


 ん……。

 何となくだけど、真贋の区別はさておき、ここに魔石をはめ込んで、持ち手から魔力を流すとこの斧が光るとか雷を放出するとか、そういう機能があるんじゃないかな?はめ込む魔石の大きさは中型のテニスボールサイズで十分だから、ここで生成して取り付けちゃえ!


 で、何処からだしたか判らない魔石を斧の上部に取り付けて、手元から魔力を流したんだけど……。魔力は上部へ流れていくけれど魔石は反応なし。斧自体もさっきと変わった様子が無い。これって、偽物ってことで良いよね?


「グレハン。これと似た斧が倉庫に無いか確認してくれる?

 もし、倉庫に類似品があるならそれを調べさせて欲しいの」


「承知しました。こちらの係の者に確認します」


 そしたら、「基本的には関係者かVIPの方のみにご案内できます」とのこと。


 う~~~~ん。ここまで?


 ステラに念話を通して、テイラーさんのコネクションを使うか、ステラの魔族の金貨4万枚を元にVIP扱いで見学させて貰うかだよね……。

 もう、今日は疲れたし、私が真贋判定できてもチップ1000枚は用意出来ないからステラに任せようかな?

 よし!ステラに念話を通したら、美味しいかわからないけどカジノに備え付けのレストランで食事をするよ!


ーーー


 こちらの宿での食事が終盤に差し掛かったところでヒカリさんから念話が入ったわ。<<展示品は偽物だから、バックヤードに本物の斧があるか確認して欲しい。先っちょに魔石を嵌めてから魔力を流せばわかる>>ですって。


 人使いが荒いわね……。

 確かに私が金貨4万枚持っているし、テイラーさんもこちらのチームにいる。普通の一般客がカジノの景品を保管しているバックヤードなんか見学できないわよね……。今回の魔族の国の訪問の目的がドワーフ族の斧である以上は、ここには我慢して対応するしか無いわね。


 あまりぞろぞろと見学に行くのも良く無いだろうということで、テイラーさんと二人でバックヤードを見学させて貰うことにしたわ。


 あらあら。展示品と同じ斧が3本もあるじゃない。合計4本のうち3本が偽物ということかしら?それともまさかカジノにある4本とも偽物?早速確かめさせて頂くことにするわ……。


 結果、バックヤードにある3本ともハズレよ。ヒカリさんの言う通り、魔力を込めると斧の先端の方に魔力が流れるのだけど、魔石と反応する様子も無いし、何も起こらない。ニーニャさんとヒカリさんに相談して良かったわ……。

 ということは、他の展示品もこういった複製品が保管されていて、展示品が無くなり次第、ここから補充しているということかしら?それも偽物ばかりを……。


「テイラーさん、これらの複製品を何処で作っているか確認して。そこにある本物を回収しに行きたいわ」

「ステラ様、承知しました」


 もう、夜も半ばなのよね。

 贋作工房が見つかったところで私が乗り込む訳にはいかないし。

 とすると、明日の朝から視察なのかしら……。

 場所だけ確認してフウマさんに連絡するのも有ね。

 

 ああ、でも、今日の「本物が見たい」みたいな意見が上層部に流れると、工房を閉鎖したり本物を隠す恐れがあるわね……。「これで全てです」とか言って、全部偽物みたいな。

 う~ん。

 こういうのって、ヒカリさんが得意なんじゃないかしら?

 念話を通してみようかしら……。



<<ヒカリさん、起きてるかしら?>>

<<ステラ、何?私にできることは無いから明日からに備えようと思うけれど>>


<<バックヤードに3本の斧が有ったのだけれど、全て偽物だったわ>>

<<そうすると、何処かに贋作工房があるんだね……>>


<<ええ。今、テイラーさんに問い合わせをしてもらっているわ>>

<<もう、こんなに遅い時間だから普通には見学できないだろうね。まして、贋作工房だったら中なんか見せて貰えないと思う>>


<<ヒカリさん、フウマさんに偵察をお願いするのはどうかしら?>>

<<フウマは教会騎士団だか何かの団体からスカウトされて、別行動。多分加入していたら歓迎会の最中だと思う。加入早々に贋作工房の摘発とかしたら、教団側の偵察に支障をきたすよ>>


<<そうね。こういうのが得意なのは何方どなたかしらね……>>

<<ステラ?>>


<<ヒカリさん、どうかしたのかしら?>>

<<念話って、感情も伝わるんだよ?>>


<<あら。『ヒカリさんなら上手いアイデアが思いつくのに』って思っていたのだけれど、伝わったのかしら>>

<<何となく、そんな期待の感情が伝わったけれど、口に出してお願いされるとは思わなかったよ>>


<<明日は何もすることが無いのよね?>>

<<ステラも明日は何もすること無いんじゃないの?>>


<<ここ最近、ヒカリさん達と一緒に過ごしていると、夜中ずっと行動することが多い気がするの>>

<<私はそれ程でも無いけれど、皆に迷惑かけて寝てたりするね>>


<<ヒカリさん、徹夜が続いていたり、今日の武闘大会で非常に体力を消耗していたりするのかしら?>>

<<ううん。魔族の国に着いてからは、食事が美味しくない不満がある以外は特に問題無いよ。昨日と今日の武闘大会もほとんど遊びみたいなもんだし>>


<<飛空術、念話、隠密、重力遮断、気配察知、身体強化が使えるのは……>>

<<妖精の長達を外すと、フウマ、ステラ、私、あとリサかな>>


<<リサちゃんは元気かしら?>>

<<ステラが声を掛けたら、何を置いてでも協力してくれるよ>>


<<それは嬉しいわ。食事が終わったらリサちゃんに声を掛けて、私と合流してくれるかしら?>>

<<リサは喜ぶと思うよ。魔族語は私がある程度理解している。ただ、服装が綺麗すぎるから、宿に戻って汚い格好に着替えたいかな>>


<<贋作工房がこのカジノの中とは考えにくいわよね。私も動きやす、目立たない服装に着替えてから合流するわ。単独の領地マーカーを一時的に設置して、そこへ合流で良いかしら?>>

<<ステラ、分かった。みんなに話をしてからリサと一緒に合流する>>


 何がどうなるか判らないけれど、ヒカリさんとリサちゃんが居れば何とかなりそうな気がするわ。それより、テイラーさんが贋作工房の位置を教えて貰えるかどうかよね……。


「ステラ様、おそくなりました。

 どうも、カジノの高額チップの賞品となっている展示品は一つの工房で秘密裏に作成しているとのことで、公に出来ない施設とのことです」


「テイラーさん、それはそうでしょう。展示品の複製品が何個もあるのはおかしいもの」


「そこで、『例えば、我々が斧4本をチップと交換して、それを展示棚の前やカジノの入り口の前で並べたらどうなるかな~?』と、聞こえる様に呟いてみました」


「テイラーさんも意地悪ね」


「かなり困った様子でしたので、


 『とある工房の周辺施設で面白い場所を紹介してくれるのなら、それは単なる雑談だと思うのだが?』


 と、譲歩を持ちかけました。すると、


『ある古物商が色々と興味深い物を扱っていて、王都に来た観光客なら是非訪問すべきだが、裏手にある建物は危険だから絶対に近づかない方が良い』


 と、教えてくれました」


「テイラーさん、素晴らしいわ」

「ステラ様、その危険な建物まではご案内できます。ですが、その先の侵入となりますと、我々では目立ち過ぎますし、何らかのトラブルがあった場合には教団との面会に影響する可能性が高いです」


「そうね。その先はテイラーさんは独りでここまで戻ってきて頂戴。『ステラは気ままに夜の街を散歩する』とでも言っておいて貰えるかしら」

「その格好では目立ちますので、外で目立ちにくい旅人の格好を入手しましょう。それから向かいましょう」


「テイラーさんも気が利くわね。早速行動に移しましょう?」


 あら、結構いい感じで進みそうね。


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


いいね!ブックマーク登録、感想や★評価をつけて頂くと、作者の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ