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8-11.魔族の武闘大会(2)

 武闘大会の参加準備がおわったらから、魔族の国を訪問した目的に戻るよ!

「アサリ様、これから案内するところですが、個人が勝負をしているところと、ギルドが運営して大会を開いているところがあったはずです。ギルドの運営してるところであれば、ゲームに参加しなくても賭けを楽しむことが出来る仕組みになっています」


 うんうん。事前調査の通りだね。

 今日は下見だけのつもりだから、多少時間が潰せれば良い。

 モリスが本気出すほどでも無いだろうし……。


「アサリ様、そろそろ見えてきているかと思いますが、木の板の上で白と黒のコマをやり取りしているゲームが最近の流行りです。このゲームも法皇が持ち込んだとかで、割と新しいタイプのゲームのなのですが、割と皆様夢中になれるようです。

 大きな大会になると貴族の方も参加されるとあって、プレイする人の層が広いものです。ルール自体は簡単ですので興味があれば参加してみても良いですね」


 緊張が解けてきたのか、グレハンさんが色々と本職のガイドのごとく案内を始める。金貨1000枚は賭け事のギルドに預けちゃったし、登録料や宿代の前払いとかしてるから手持ちの金貨は50枚とかそんなもん?肩の荷が下りたってのもあるんだろうね。

 この後もフウマが事前に説明してくれたような賭けの仕組みとかも説明してくれたけど、モリスが彼らしくないぐらいソワソワしはじめてるから、早く参戦させてあげたいね。

「グレハンさん、モリスはこういったゲームに多少心得があるから、実際に対戦を楽しんでみたいの。多少参加費が高くても強い人と対戦させてあげてくれるかな」


「分かりました。少々お待ちください」


 ゲームの対戦の受付の方で情報をえたグレハンが説明を続けた。


「色々と説明した通りなのですが、今日ですと大きな大会前で腕に自信のある方がいらっしゃるそうで、対戦のための参加費が金貨1枚だそうです。プレイしない人は、勝ち、負け、引き分けの3種類の簡単な方式で賭けに参加できるそうでうす。

 もう、モリス殿の分を対戦申し込みしてきましたが宜しかったですか?」


「うんうん。問題ない。ところで引き分けた場合の本人達の参加費はどうなるの?」


「対戦一回の参加費になりますので、3回引き分けたとしたら、金貨3枚必要になりますね。ただ、普通は引き分けることは余りない様です。

 アサリ様はモリス殿の勝に賭けますか?」


「3連続で引き分けて、最後に負けに賭ける。賭け金は毎回金貨10枚ずつ」

「アサリ様、4回も対戦を申し込むのですか?」


「いや、同じ人と3回引き分けて、最後に負けるから参加費は4回分支払うけれど、賭け金は初回の金貨10枚を引き継いでいくよ」


「は、はぁ……。承知しました。アサリ様の名前で金貨10枚を賭けておきます。

 カザマ殿はどうされますか?」

「魔石を賭けることができるなら、中型の魔石1個でお願いする。アサリ殿と同じ様にしてもらいたい」


「承知しました」


 実際にモリスは対戦をして、きちんと調整が出来ていた。3連続で引き分けて、最後は僅差で負けた。モリスの参加費金貨4枚は失ったけれど、私が賭けた金貨は10枚が160枚の金貨になって返ってきた。フウマの魔石は中型サイズが16個の現物で返ってきたよ。 魔石も金貨と同じレベルで流通しているんだね。ただ、国営のカジノではチップを使っているみたいだから、そのときには魔族の金貨を用意しておかないといけないんだろうね。


「アサリ様、カザマ殿、モリス殿が負けてしまい結果は残念ではありましたが、金貨が150枚近く儲かりました。フウマ殿も魔石ではありますが人族の金貨換算で100枚以上の儲けがでていると思います……。

 代理で賭けの申し込みをしている私が相当睨まれてしまいましたが……」


「グレハン、ちゃんと儲かるでしょ。明日から始まる武闘大会も楽しみにしていて良いよ」

「は、はぁ……」


 納得いってないみたいだけど、まぁ、金貨1000枚が20倍になって返ってくれば分かると思うんだよね。その分、今日以上に睨まれることになる訳だけど……。


ーーー


 翌日、武闘大会本選。

 私たちは1回戦の4試合目。会場はくじ引きの結果で決まるらしく、3:3で同時に戦う場合には20mx20mぐらいの大きさ。1:1の勝ち抜きとか、総当たりの場合には10mx10mの会場が使われるらしい。

 

 観客は屋根の無いバスケットコートが3面つながったぐらいの大きさに2階席みたいなところに椅子が並んでいる。遠隔攻撃無しでも、場外負け有りだから吹き飛ばされたり、武器が事故で飛んでくる可能性があるからね。

 決勝戦になると観客が増えるらしいけれど、まぁ1日目の午前中は対戦相手を本当に研究したいチームしか来ないみたいで、観客席はまばらだね。


「姉さん、クジの結果は1:1の勝ち抜き戦だったよ。僕が先方で良いね?」

「うん。フウマ頑張って。出来れば目立たない方が良いけど」


「事故に見せかけたり、モリスさんみたいに引き分けの接戦に見せかけたりして勝つよ」「無理しない範囲でよろしくね」


 結果はフウマが一人で3人抜き。

 身体強化すら使って無い様に見えた。フウマは端に追い詰められた振りして、相手がスリップして場外負けしたり、10分くらい打ち合ってから、相手の参ったを引き出したりと、上手く弱そうな演出をしてくれた。


「アサリ様、カザマ殿、チナちゃん、初戦の勝利おめでとうございます!今日中に残り3戦ありまして、明日は準決勝と決勝戦になります。


 ですが、残念なお知らせがありまして……。

 次の対戦相手は昨年度の準優勝チームでして、払い戻しの倍率も1.5倍と、優勝候補の3強の1つとなっております。ケガなどされぬよう、お気をつけて!」


 2回戦の相手はシード権を獲得しているチームで、優勝候補の一角の上に初戦を戦っていないから体調も万全。クジの結果、3:3のチーム戦になったよ。


「姉さん、今度はチーム戦だから作戦を合わせたい」

「私たちは端っこで立っておいて、敵が来たら場外へ逃げる振りして、相手をかわして、場外へ追い落とせば良いかな?」


「相手が舐めた態度を取らないと、先ずは僕を3人掛かりで倒しに来ると思う。そなると、流石にまぐれで逆転した風には装えないんだけど」


「そっか……。

 私達が居る側と逆側に逃げて、そこで1人は場外へ追い落とせば良いんじゃないかな?

 残り2人なったら、私がリサを置いて木刀で『えいえい!』って、声を掛けて見え見えの攻撃を仕掛けるよ。相手チームもまさかリサを相手にしにこないと思う。2:2ならフウマは上手く立ち回れるんじゃないかな?」


「姉さん、その作戦で行こう。あとは臨機応変に念話で話をしよう。リサちゃんもそれで良いかな?」

「フウマお兄さん、大丈夫です」


 2回戦目は結構動けるチームだったみたいで、身体強化レベル1ぐらいの強化が確認できた。こちらは作戦通りに開始早々にリサを肩に担いで闘技場の端っこまで逃げて、フウマが3:1に追い込まれる様子を見ている。

 10m以上先での戦闘を気にしつつ、念のためリサを石の床の上において光学迷彩とステラから教わった表面の被膜を掛ける。そして仕上げにリサがそこに居る様な光学像を作り上げてから、透明のリサを連れてフウマ達の方へ近づく。


<<リサ、その透明の姿のまま、一番手前の人の一人の足元を払えるかな?

 フウマ、こっちの一人の足元を払うから、その隙を見て一人を戦闘不能にしてから一人を場外に落とせる?>>

<<了解!>>


 私は有り有りの戦いにもかかわらず木刀を構えて、じりじりと近づいていく。リサは念話を通した後に光学迷彩で透明化したまま、私より素早く彼らの元へと走り寄っていく。

 リサが足払いを仕掛けて、一人がバランスを崩して転んだタイミングで相手側チームの意識が一瞬フウマから逸れた瞬間にフウマが予定通りに行動を移した。

 真正面に居る人の足を払って転ばせつつ、よそ見をした相手の鳩尾みそおちに強烈な肘鉄ひじてつを入れる。這うような姿勢から跳ね上がる様に相手の急所に入った一撃によって、相手は声も無く崩れ落ちた。


 フウマは一人を倒したあと、先に転ばせた相手の足を掴んで場外へ投げ飛ばす。残るはリサが転ばせた人が一人で、そこへ私が木刀を突き付けた。


 当然、最後の一人は何らかの拍子に転んだだけだし、私が木刀を突き付けた所で全く意に介さず、戦闘を再開しようとする訳だけど……。


 相手がこちらの寸止めを無視して立ち上がろうとする様子にビックリした私は慌てて木刀を振り回している風を装って、最後の一人のあごに木刀をクリーンヒットさせる。首とか狙うよりは安全だと思うんだよね。


 立ち上がろうとした相手は顎を支点に脳を激しく揺さぶられて再度ダウンする。立ち上がろうとするけど酔っぱらっちゃったみたいに手や足が言うことを利かないからフラフラとして立ち上がれない。

 その様子を見て、二人の対戦相手の処理が終わったフウマが戻ってきて首と腕を三角締めにして審判側を確認する。フウマの細身であっても、あの状態から抜け出すのは無理じゃないかな?

 ここで審判から私たちのチームの勝が判定された。


 よし!2勝目だね!ちゃんと演出しつつの勝利をゲットだよ!実際には楽勝ムードなんだけど、それはグレハンさん含めて公には出来ない。

 あとはお昼ご飯を挟んでから、あと1回勝てば今日はお終いってことだね。

 

 うんうん。良い感じなんじゃないかな?


「アサリ様、勝利おめでとうございます。お昼ご飯を食べたら少々の資金とお時間を頂いても宜しいでしょうか?」


 と、モリス。

 楽勝ムードで飽きちゃったかな?

 私たちは大会の進捗に応じて出番となるタイミングが変わるから闘技場から離れることは出来ないけど、モリスやシオンは出かけてても良いんだよね。


「モリス、良いよ。昨日のゲームで勝った金貨もグレハンさんに預けてあるから、私達闘技場メンバーの3人とは別行動で大丈夫だよ。

 グレハン、こっちは任せておいて。モリス達の案内よろしく!」

「承知しました!」


 通訳という意味ではグレハンさんが居て、護衛はクロ先生が居る。ゲームの知識はシオンとモリスが居れば大丈夫。

 あとは様子見つつ、リバーシのゲーム大会の情報集めつつ、モリスがエントリー出来ていれば良いよね。


 私たちの3回戦の相手は、払い戻し倍率3倍くらいの、少しは強いけど本命にはなっていないメンバーだった。特に工夫する必要もなく、フウマ一人が活躍して終わった。

 やっぱり、武闘大会よりもリバーシの大会の方が本命ってことで良いよね!


 別行動だったメンバーと夕飯を取るタイミングで宿に集合した。


「モリス、どうだった?」

「はい。グレハンさんにお願いして、本命とされる何名かと対戦させて頂きまして、引き分けの調整が出来ることを確認した後で負けておきました。


 それと、リバーシ大会の受付終了は明後日の夕刻まででしたので、アサリ様の名前と私の名前でエントリーを済ませておきました。対戦表や賭け金の倍率などは3日後に発表され、そこから大会開始となります。

 大会は3日間続きますので、最終日が終わり次第宿を引き払えば丁度良い感じでしょうか」


「グレハン、モリスありがとう。

 他に何か準備したり、調整することはあるかな?」


「アサリ様、カザマ殿、明日はとうとう準決勝と決勝戦となります。

 私でお役に立てることはありますか?」


「私の方は特に問題なし。多分カザマ殿も十分に強いので問題無いのでは?今日は3戦したけど、だれも負傷しなかったし。

 それよりも、明日私たちのチームが勝つとグレハンさんの立場が危ういよね。カジノに招待されて散財するか、他の賭け事でわざと負けるとかしておいた方が良いと思うよ。

 私たちは魔石で払い戻しだから、相手も多少は不平があっても、武闘大会全体としての収益からすれば問題にならないと思う」


「さ、左様ですか……。もう、明日の大会は優勝する前提の様なお話ですね……」

「うん。大きな事件が起こらなければ問題無いよ」


 武闘大会で優勝することよりも、その後の問題をどうやって片付けるかだよねぇ……。

 そっちの方が大変だと思うよ。



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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