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8-10.魔族の武闘大会(1)

 武闘大会が終わるまではアサリで過ごすことになりそう。

 場当たり的に決めた偽名だけど、まぁ、きにしないでいこう。

「アサリ様、お待たせしました。予選会の登録が終わりました」

「グレハン、ありがとう。

 予選会のルール、本選の日程とルールを確認したい。

 その説明を受けるための宿をとって欲しい。

 部屋は3部屋で10日間程度先払いで交渉して」


「承知しました。こちらのカザマさんの分もですね?

 グレハン、カザマ殿と同部屋で過ごして欲しい。

 カザマ殿、宿代はこちらで出すので10日ほどお付き合い頂きたい」


「アサリ殿、武闘大会以外に、護衛費用も上乗せになるが良いかな?」

「経費とは別に1日金貨1枚を支払おう」

「承知した。暫く行動を共にさせて頂く」


「アサリ様、カザマ様、歩きながら予選会の説明をさせて頂きます。

 予選会は第一に本選出場時の参加費金貨10枚がその場で支払えること。

 次に、幾つかの能力試験で点数をつけて、上位チームが出場できます。

 ただ、この能力試験は本選での賭け金の倍率を決めるための基礎能力の様な物でして、大会は参加チームが多いほど盛り上がるし、運営費も潤うので予選のスコアで本選に進めなくなることは、ほぼ無いそうです。

 予選会は、順位付けの意味が主で、先の賭け金の倍率だけでなく、本選での強豪同士のぶつかり合いを避ける意味があります。昨年の上位入賞者はシード位置に配置されて、その隙間にスコアの低い順番に対戦者が配置されるそうです。

 ここまでは宜しいでしょうか?」


「グレハン、予選会はいつから?あと種目も」

「予選会は、明日の昼までにスコア提示です。立会人もスコアを確認する場所も確認してありますので、我々は明日の朝9時ごろに集合になります。

 種目は短距離走、長距離走、幅跳び、高跳び、重量挙げ、一本橋の走破時間の6種目です」


「グレハン、手際が良いね。その調子で今後もお願い。

 次は本選の日程と武闘大会のルールを教えて」


「本選は先ほどのトーナメント方式。参加チーム数は明日の昼から1時間ほどで貼りだされます。それと共に賭け事を取り仕切るギルドがチームごとの優勝時の倍率を貼りだします。これは国と民間の共同作業になっているためです。尚、本選は何チームが参加しても2日間で決勝戦が終わる様に対戦表が組まれます。


 対戦方式は運の要素を残すために、

(1)3:3のチーム戦

(2)3:3の勝ち抜き戦

(3)それぞれ一人ずつ対戦して先に2勝した方が勝ち

 この3種類をクジで決めます。

 つまり、リ……。ち、チナさんは人数としてカウントされていれば陰に隠れていても大丈夫です。

 ここまでは宜しいでしょうか?」


「良いよ。続けて。

 特に勝敗のルール。武器や魔法の使用とか、被害に遭った場合の責任とか」


「ハイ。続けさせて頂きます。

 武器は手に保持したものは可能ですが、弓矢や手裏剣などの飛び道具は禁止。接触型の暗器や毒の使用は可能。

 防具は遠隔カウンター型の仕込みが無い物であれば自由に装着可能。

 魔法は設置型、遠隔型は禁止です。接触した状態での放出は魔法でもスキルでも可能となります。また、回復魔法に関しても接触していれば使用可能です。

 何か詳しくしりたいことはございますか?」


「グレハン、魔法職は近接戦闘が難しくない?わざわざメンバーに入れるのかな?」

「ええと……。

 僧侶といいますか、モンクといいますか、教会騎士団が示威のために例年チームとして参加されています。常に上位入賞を果たしています。

 防御系、支援、回復の魔法やスキルが使える利点は大きい様です」


「なるほどね。勝敗のルールは?」

(1)降参の意思を示す。これは声やメンバーから意思表示でも可能です。

(2)戦闘不能と審判が判断する。例えばチーム全体が範囲ダメージを受けて意思表示が出来ない場合です。

(3)場外への転落

 この3つとなります。

 また、死亡、心身の欠損、武器・防具の破壊は、全て参加者の自己責任となります」


「単純で分かり易くて良いね。カザマ殿どうかな?」

「問題無い。とても分かり易いルールだ」


「アサリ様、カザマ殿共に問題無いと……」

「じゃグレハン、宿と食事の手配よろしく。

 こっちのメンバーは宿で出る物でも外でも構わない。お風呂は洗面器にお湯を貰えれば良い。カザマ殿にはカザマ殿に合わせてあげて」


 この後は宿に備えつけの食堂の様な所で、サンマール王国でも食べられるような一般的な食事をモソモソと食べて、ピュアして寝た。


 非常につまらない。

 日記にすらならない。

 折角魔族の国にきてのワクワク感とか観光して知見を広げるとか全くない。

 まぁ、明日から3日間は武闘大会と賭けごとに集中して、その後はリバーシ大会へのエントリーと賭けごとに集中。


 いや、ほんと、何し来たんだろうね?


ーーー


 翌日。

 宿の美味しくないご飯を食べる。

 フウマとリサと私の3人は予選の体力測定みたいのをする。当然、フウマと私は本気を出さないし、リサなんか肩に抱えたままで点数0点。スコアの集計が登録されて無事に予選を通過した。本選のトーナメント表が出るまでは賭けも出来ずに待機。

 その間、モリスとシオンはクロ先生を護衛役として、グレハンさんが観光案内に連れて行ってくれてた。


 そろそろ皆で集まって昼食の時間。

 きっと、美味しくない。

 でも、まぁ、昨日からそんなもんだよ。


「アサリ様、カザマ殿、チナちゃん、予選通過おめでとうございます。

 それでは昼食を食べながら本選の対戦表と賭けの倍率が出るのを待つだけですね。

 ところでアサリ様、私が預かっている袋に入っているアレですが、ここで賭けるのでしょうか?」


「グレハン、そうだよ。取り分けた残り全部を私たち3人のチームに。

 あと、私の個人的な賭け金として中型の魔石5個。これを換金するかそのままで賭け札を購入しておいて。カザマ殿はご本人の判断に任せて」


「しょ、承知しました。

 アサリ様、魔石5個をお預かりしても宜しいでしょうか?

 それと、カザマ殿はどうされますか?」


 私はゴソゴソと背負ったリュックを降ろして、鞄の中を探る振りしてテニスボールサイズの魔石を5個作り出してテーブルに並べる。

 と、フウマから念話が入った。


<<姉さん!僕は賭け金が用意出来ないよ!>>

<<無いなら、フウマも魔石を賭けておけば?案内役の人が換金してくれるでしょ>>


<<わかった。けど、姉さんほど魔石づくりに慣れてないから、コッソリ渡してくれるかな?>>

<<わかった。対応する。10個ぐらいで良いね>>


「グレハン、ちょっと食事が揃うまで花摘みに行ってくる。リサとシオンもおいで」

「グレハン殿、自分の賭け金もアサリ殿と同じ魔石でお願いする。だが持ってる魔石を取ってくる必要があるので、少し席を外させてもらう」


 と、食事もそぞろに、賭け金の準備を着々と進めながら、ふと思った。『グレハンさんが金貨1000枚とか賭けたら、払い戻しの倍率が急激に下がるのではなかろうか?』と。仮に最初の倍率が20倍とか付いていても、他の人が全体で金貨1000枚とか賭けて無かったら、私のチームが勝っても2倍以下の配当しか貰えないんじゃないかな……。


 でも、公営ギャンブルじゃないから払い戻しの比率とか設定されてなくて、運営側が資金さえ用意できるなら、倍率なんか適当に振ってるだけかもしれないね~。まして、教会騎士団の様な常連メンバーが居るなら、そのチームの倍率だけ下げておけば、後は大穴倍率に設定しておいても、どうせ負けるとおもっているだろうしね。

 まして、私たち3人チームなんか運営側からすれば、女と子供が混ざって予選も適当なスコアしか出して無いチームだから鼻から賭けの対象ではなくて、『参加費の金貨10枚得られてラッキー』ぐらいにしか考えて無いんだろうし。


 ま、結果でトラブルが起きたらそれはグレハンが莫大な賭け金を投入したせいってことで。深く考えないことにしよう。


 昼食が終わって、トーナメント表が貼りだされたのを見に行くと、本選は全部で20チームだった。私たちのチームはシード権も無く、優勝するまでに5回戦う端っこに位置付けられていて、倍率も20倍という大穴に設定されていた。

 ちなみに、初戦は倍率4倍ぐらいの常連ではない所と戦うけれど、2回目はいきなりシード権を持った倍率1.2倍の鉄板チーム。

 まぁ、なんでも良いんだけどね?


「アサリ様、こちらの金貨1000枚、アサリ様の中型魔石5個、カザマ殿の中型魔石10個。これらを全てアサリ様のチームに賭けても宜しいのでしょうか?」

「はい。グレハンさんが変な気を起こさない様に、引換証が発行されるのを一緒に確認しに行くこととします」


 と、無事に3枚の本戦の賭け金を支払った引換証を貰って、あとは明日からの武闘大会に備えれば良いことになった。


 うん。暇ができた……。

 この時間から市場に行っても、大したものは無いだろうし……。

 かといって、お茶をしようにも、美味しいスイーツが食べられるような貴族御用達のお店とか、この格好では入れないだろうし……。

 どうしよっかな……。


<<おかあさん、この後お時間があるのでしたら、ゲーム大会を見に行きませんか?>>


 と、シオンから念話が入った。

 そっか。

 下見と登録の両方しておいて損は無いね。

 様子を見に行こうか。


<<シオン、みんな、時間が出来たからゲーム大会の方も下見に行こう>>

<<ハイ!>>


「グレハン、明日の本戦が始まるまで準備することは無いかな?」

「あ、アサリ様、体調管理ですとか、武器や防具の手入れ。複数回の対戦になりますのでその休憩中に召し上がる食料や回復薬の入手。そういった準備が出来る店をご案内しましょうか?」


「いや、食事と宿の手配は昨日と同じで良いよ。特に準備も不要。

 今から市場を見学しに行っても仕方ないし……。こんな格好ではカジノにも入れないよね。なんか、簡単に楽しめることは無いかな?」


「そ、そうですか。

 武闘大会以外で簡単に……。

 皆様、賭け事はお好きですか?」


「うん?簡単なの?運だけで決まるやつ?」

「ええと、街中にゲームをして勝つと賞金が貰えるものがありまして。

 武闘大会が体力やスキルを競う内容ですが、頭脳の明晰さといいますか、そういったゲームで競うものもあるのですが……。

 あまり、ご興味ありませんかね……」


「ん……。モリス、どうかな?」

「あ、アサリ様……。興味はありますね」


「グレハン、カザマ殿の興味を聞いて、問題無ければそのゲームを見に行く。カザマ殿が明日の準備を必要とするならその対応をしてあげて」


「アサリ殿、俺も特別な準備は不要。皆と一緒に行動ができる」

「よし、じゃ、グレハン案内よろしく!」


 ふぅ……。

 まぁ、色々あったけど、漸くフウマと合流してゲームを見に行く流れに戻すことが出来たね。

 ここからが本当の魔族の国を訪問した意味だよ!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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