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7-42.カレーを作ろう(9)

 私はパイスさんを受け入れる準備をするから別行動だね。

 リサとステラが良い時間を過ごしてると良いな。

<<マリア様、今、お話できますでしょうか?>>

<<ヒカリさん、どうかしたのかしら?>>


<<マリア様の雇用しているメイドから1人をリサのためにお借りしたく、お願い申し上げます>>

<<ヒカリさん、そんなに畏まってどうしたのかしら。

 メイドの選定と管理は基本的にクレオさんがやってくれてるのよ。

 どういったメイドが良いか判ればクレオさんに確認するわ>>


<<はい。リサが転生した魂を持っていることは共有済みかと思います。

 リサの転生前の職業であった巫女の当時の治療技術を復活させたい事情があり、そのためには薬草類を栽培したり、下ごしらえしたり、調合したりといった技術が必要になります>>


<<それを私の館で雇用しているメイドにお願いするのは難しいかもしれないわね。

 それこそ冒険者ギルドで別に雇ったら如何かしら?>>

<<マリア様、私の説明不足です。すみません。

 その様な基本的な薬草を扱う技術を持つ者は雇用する当てが付いたのですが、リサの秘密を保持したまま、その雇用者と接する仲介役としてのメイドが必要な状況でして……>>

<<私はメイドを当てがっても構わないけれど、念話を使えるヒカリさんの方がリサちゃんも安心できるのでは無いかしら?>>


<<まぁ、その辺りはですね……>>

<<問題が無いなら良いわ。クレオさんに確認するわね>>


 と、直ぐにマリア様から念話で返信があった。


<<ヒカリさん、お待たせしたわ。

 「カナエ」という女性が向いているそうよ。

 口も堅いし、新しい物事に動じず、多少は薬草の知識もあるそうよ。

 良いかしら?>>


<<お忙しいところありがとうございます。

 マリア様の館へ向かい、確認と調整をします。

 ところで、マリア様の方の進捗しんちょくは如何でしょうか?>>


<<支援体制が完璧すぎてつまらないわね。

 相変わらず収集品を拾って集めているだけで、それ以外は全て快適よ。

 あ、あと、今は地下20階のボス部屋前で作戦会議中ね。

 男性3人で何か一生懸命打ち合わせをしているわ>>


<<わかりました。特に問題もなく進んでいるとのことで良かったです。

 それでは失礼します>>


<<ヒカリさんも何をしているかわからないけれど気をつけてね>>

<<はい。マリア様達が戻られる頃には何らかの形に出来ていればと思います>>

<<楽しみにしてるわ。またね>>


 よしよし、先ずはマリア様の了承も得たから、カナエさんに会いに行けば良いね。

 モリスとシオンに言付けしてから、直ぐに出発だね。


ーーー


 昼に打ち合わせをしたモリスとシオンの所に戻ると何やら忙しそう。

 でも、忙しいながらカレーとは少し違う感じの香辛料の香りが漂う。

 もう調合始めるのかな?


「モリス、シオン、ただいま。

 菜園の方はなんとかなりそう。

 モリス、リサの世話をしてくれるカナエさんっていう人を連れてくる。

 シオン、それまでシオンを中心に先に進めて貰ってても良い?」


「ヒカリ様、ニーニャ様とドワーフ族の方達の支援により、従来の手引きの香辛料の粉砕機を発展させ、魔石で駆動できるタイプの粉砕機に更新ができました。

 基本的には、カカオの実を粉砕する考え方に近いのですが、それよりも簡単だったようです。シオンくんが既に使いこなしています。

 この後はなにが必要ですか?」


「ええと……。モリスには……。

 調理場とカナエさんが住める場所の確保かな。

 カナエさんは、明日面談するパイスさんとリサの仲介役をしてもらうよ」


「ヒカリ様、パイスさんだけでなく、カナエさんという方も雇用されるのですか?」

「カナエさんはマリア様の館で働いているメイドさん。口も堅くて薬草の知識もあるらしいから。マリア様とクレオさんの許可が出たから今から連れてくるよ」


「承知しました。こちらではクレオさんという方がマリア様の身の回りの世話をされているとのことですので、そちらの判断に委任します。

 ところで、リサ様、シオン様はヒカリ様のこちらの拠点でご一緒に過ごされますか?

それとも、マリア様のお屋敷からこちらへ通いになりますでしょうか?」


「ん~。カナエさん次第だけど、私もこっちに移った方がいろいろ指揮がとりやすいかな。もう、乳母が必要な状況でもなくなったから二人は私が面倒見れると思うよ。

 今日みたいに個別案件で、それぞれの専門家と打ち合わせでお世話になることは続くと思うけれどね」


「承知しました。それではこのままシオン様とご一緒に準備を進めます」

「うん。モリス、シオン直ぐ戻って来るから。

 あと、香辛料の調合がある程度済んだら、肉とか魚で出汁だしをとりはじめて。

 日本風のカレーにアレンジするには、出汁の力と片栗粉なんかのとろみが重要。

 一般的なサラサラした香辛料で絡めてある調理とは少し違うから食べてみてのおたのしみだよ」


「お母さん、承知しました。

 ところで……。

 数名で食べる程度であれば、十分に用意が出来ると思います。

 ですが、お母様が雇用されている皆様へ振舞うとなると、少し足りないと思います」


「あ~。お試しだから最初は数人で十分だよ。

 貴重で入手困難な香辛料はターメリックとカルダモンだよね。

 ユーフラテスさんとアリアに頼んだから、そのうち簡単に手に入るようになるよ」


「わかりました。そうしますと、暫くは秘匿すべき料理扱いで進めます」

「調理中の香りで、直ぐに噂が広まると思うけど……。まぁ、それはそれとしよっか」


ーーー


 ちゃんと、メイドの格好に着替えてから、正規に門番を通して城門から入る。そして、目立たない様に徒歩にてマリア様のお屋敷まで向かう。

 うん。なにも問題無いね。

 あとは、執事さんを捕まえてカナエさんがいるところまで案内して貰う。


「カナエさ~~ん!」

「……。」


「カナエさん?」

「どなた様でしょうか?」


「ええと、マリア様の義理の娘のヒカリです」

「念のため、マリア様の義理の娘さんであることの本人確認をさせて頂いても宜しいでしょうか?」


「え、ええと……。はい!」


「マリア様のご親族であれば、簡単な事とは思われますが、確認のための質問をさせていただきます。宜しいですか?」

「はい」


 マリア様のことなら、表も裏もある程度知ってるよ。大丈夫。



「マリア様の職業は何でしょうか?」


 これは簡単だね。南の大陸では商人だよ。王妃は秘匿されているはず。


「商人!」


 ふふ~ん。

 即答だよ!


「では、次の質問に移ります」


 あ、あれ?正解かどうかの解答は無いのね?


「マリア様が南の大陸に滞在している目的は何でしょうか?」


「ええと、海賊退治かな?」


「……。では、最後の質問になります。

 マリア様がこちらのお館で一番信頼している人物はどなたでしょうか」


 ええっと……。クワトロかクレオさんなんだけど……。

 執事長的な役割からするとクレオさん。側近かつ護衛の位置ならクワトロ……。


「どうされましたか?」

「あ、ええと、心当たりが二人いて……」


「……。」


 まぁ、ここは南の大陸だけど、北の大陸から連れてきたクワトロさんの名前を出しておけば確実だよね。


「たぶん、クワトロ。次点でクレオ」


「ヒカリさんと申されましたか。

 他所様のメイドさんが、当方の執事長やA級冒険者の称号を持つメイド長に対して、随分な態度ですね?」


「え?そこ?」

「クワトロ様かクレオ様がお戻りになるまで、お待ち頂いても宜しいでしょうか?」


「あ、え、ええと……。カナエさんを城外の拠点に連れて行かないと……」

「怪しい人物が不法侵入した疑いがございます。

 ですが、万が一にもマリア様のご親族である可能性も残っておりますので、お客様の待遇で接待させていただきます」


「え?だって、マリア様に関する質問に正解したよね?」

「ここのお屋敷が北から来られた商人が交易のための拠点として借用していることはどなたでも知っていることです。

 また、ここの執事長とメイド長も市場や冒険者ギルドで働いている者であれば知ってて当然のこととなります」


「でも、海賊退治のことは、町の人達は知らないはず!私しか知らないはずだよ!」

「正解を申し上げることは出来ませんが、職業が商人でありながら、滞在目的が海賊退治では解答が矛盾していると思いませんか?」


「いや、そうなんだけどさ。でも、マリア様が『ヒカリさんの代わりに海賊は対応してくるわ』って、下見に来てくてる訳でさ……。

 ていうか、夕飯前にシオンとリサの所にカナエさんを連れて戻らないと!」


「大変失礼な申し出で、申し訳ございませんが、これ以上横柄な態度を取られるようであれば、サンマール王国の騎士団員へ保護のための要請を掛けさせて頂きますが、宜しいでしょうか?」


「呼んでも良いけど、お互いが面倒なことになるだけだからやめよう。

 私が大人しく待っていれば良いのね?」


「クワトロかクレオが帰るまでお待ち頂けますよう、お願い申し上げます」


「わかりました。

 ところで、クワトロもクレオも訓練に行っているはずだけど、今日戻ってくるのは確実なの?」


「秘匿情報のため、お答えできません」


「なら、私が呼んでも良い?」


「所在を申し上げることは出来ません」


「いや、いいよ。呼ぶよ」

「出来ましたら、ここでお茶でも飲みながらお待ち頂けると有難いのですが」


「軟禁ね。いいよ。待ってる。お茶菓子も要らないよ。部屋と椅子だけ用意してくる?」「こちらへどうぞ」


 いや~~~~。

 こういうはまりってあるのね。

 っていうか、私はここの屋敷に結構出入りしてたよね?

 格好は冒険者の格好がほとんどで、このメイドの格好で出入りしてることは少なかったし、正門から正式に一人で来たことも無かったけれど……。


 とりあえず、急いでクワトロに念話を通さないと!



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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