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7-41.リサとステラ

 リサとステラが良い時間を過ごしてると良いな。

 私はパイスさんを受け入れる準備をするから別行動だね。

「リサちゃん、お茶がはいりましたわ。どうぞ」

「ステラ様、ありがとうございます」


 リサはチラッとステラを見たものの、直ぐに顔を伏せて、淹れてもらったお茶が入った器に目を落とす。

 緊張のあまりか、ステラの顔をちゃんと見ることが出来ていない。


「リサちゃん、緊張してるかしら?」

「い、いいえ……」


 リサは少し震え声で俯いたまま返事を返す。


「ええと……。

 私とヒカリさんは仲が良いと思っているわ。

 だから、リサちゃんやシオンくんとも同じく仲良く出来たら良いと思っているの。

 リサちゃんにはご迷惑だったかしら?」


 それを聞いたリサはガバっと顔を上げて、半泣きになりそうになりがらステラに返事を返す。


「いえ。と、とんでもございません。迷惑な訳がありません!

 で、ですが、私ではステラ様に見合うものが無く……」


 と、リサは返事を終えると、少し悲しそうにまた顔をコップの方に戻してしまう。


「見合うもの?

 リサちゃんの考える物が何か判らないけれど、それが無いと私たちは仲良くお茶が出来ないのかしら?」


「ステラ様は伝説の方でして、きちんとご挨拶できる自信が無く……」

「リサちゃん、顔を上げて私の顔を見れるかしら?」


「は、はい……」


 リサはおどおどしながらステラを見上げる。

 そこにはステラの慈しみを含んだ優しい微笑みがあった。

 貴族の子女が使う冷笑では無いことは確か。何か心が温かくなる、そんな風に語り掛けられている様子。女神とか天使とはちがうかもしれないけれど、種族を超えても通じる何かがあった。


「まだ、怖い?」

「あ、いえ、ええと……」


「リサちゃんが俯いてしまうと、私は寂しいかな……。仲良くなりたいの」

「あの、あの……。喜んでお願いします!」


「良かったわ……」

「こ、こちらこそお願いします!」


「これからもっと仲良くなれたら嬉しいわ。

 ところで、リサちゃんが聞いている私の伝説を教えて貰っても良いかしら?

 吟遊詩人の語りや町の人の噂って、かなり脚色されて興味を引くように話がすり替わってることが多いのよ……」


「ええと……。

 私が巫女を務めていた頃の話でして、少し古い内容ですが宜しいですか?」

「ええ、もちろんよ」


「まず、歴代最年少で3大エルフ族の族長になられました。その成果はコーティング技術や妖精召喚の魔法に長けているとの成果を認められてのことです。

 次は、北の大陸の沿岸部の街で流行っていた風土病を、風魔法により空気の流れを変え、そして風土病に効く治療薬を開発して、レシピを街の人に伝えたとの伝説があります。 その他にはステラ様が師匠と連れ立って各地を訪問し、それぞれの訪問先でも似た様な問題解決を行い、至る所で感謝されている。

 そのようなお話です」


「そう……。良かったわ……」

「と、言いますと?」


「出来て当たり前のことが伝わっていて、特に脚色されてなくて良かったかわ」


 ステラはリサから聞いた伝説を聞いて、ホッとしつつも、何処か自分では無い何かを想像するかの様。心ここにあらずといった感じか……。


「ステラ様、皆様が多大なる感謝をしています。普通ではできません!

 私は巫女でありながら、ステラ様の尊い行いを聞いて尊敬していました。

 その伝説の方と直接お話しできる機会があると思うと……」


 今度はステラを無視してリサが夢中になって話しかけた。

 そして、リサの声は今度は感動に打ち震えて掠れ声になっている。


 が、ステラはその気持ちに上手く答えられず……。


「リサちゃん、ありがとう。

 でも、リサちゃんも同じようなことなら出来るわよ……」


「ええと……、それはどういうことでしょうか?

 もしかして、私を弟子にして頂けるのでしょうか?」


「ああ……。弟子とかそういう話ではなくて……。

 リサちゃんには潜在能力が十分にあって、優しい心を持ち合わせているということよ。 もちろん、私の手助けが必要であれば全力で応援するわ」


「やはり、私ではステラ様に弟子入りするには不十分ということでしょうか……」


「こう……。その……。リサちゃん、深呼吸をして聞いて貰えるかしら?」

「は、はい!」


 リサは期待満々で目をキラキラ輝かせて深呼吸をする。

 そしてステラの発言を待つ……。


「私はリサちゃんのしたいことを手伝えると思うの。

 けれど、弟子入りとは違うと思うのよ。

 リサちゃんの考える弟子入りって、どういうことかしら?

 私と仲良くして、困ったことがあったらお互いに手伝う。

 そういう関係ではリサちゃんの考えることとは違うのかしら……」


「人としての格が違うのです!

 お母様に馬鹿にされなくなります!」


「格……。リサちゃん、今より偉くなりたいのかしら?」

「例えば、正式に聖女の称号が得られれば、お母様は私のことを馬鹿にしなくなります」

「リサちゃんは、聖女になりたいの?

 人族の聖女が正式に認定される方法が良く分からないけれど、それを目指したいのかしら?」


「ステラ様の弟子に成れたり、聖女に認定されれば、お母様は私のことを馬鹿にしなくなるはずなのです!」


「リサちゃん、ちょっとごめんなさい。

 ヒカリさんはリサちゃんのことを馬鹿にした態度をとるのかしら?

 ちょっと判らなくて……」


「態度や発言が私を馬鹿にすることはありません。

 ですが、上から目線というか、鼻に付くというか……

 お母様をギャフンと言わせたいのです」


「ん……。難しいわねぇ……」

「何がでしょうか?」


「ヒカリさんは、出来て当然だと思っているし、リサちゃんにも出来るだろうと思ってお話をしているだけだと思うわ」


「そうなんです。

 

 『私が出来るんだから、貴方もやればいいじゃない』


 ぐらいな感じで話しかけてくるのです。

 空を飛んだり、物を軽くして動かしたり、必要な植物だけを残して他の雑草を刈り取るなんて、出来る訳がないじゃないですか!」


「そうねぇ……。人生、驚きの連続よねぇ……。

 あの人の普通についていくのは大変なのよ……」


「お母様はステラ様に対しても失礼な態度をとっているのですか?

 娘として母を戒めないといけません!

 無礼過ぎます!」


「無礼かどうかは置いておいて、確かにヒカリさんも異世界から来たから私のことは知らなかったわ。

 ユッカちゃんも、ニーニャも私のことを知らなかったもの。きっと、シオンくんだって私のことを知らないわ。

 逆に、リサちゃんが私の過去の行動を知っていて驚きですもの」


「お母様が普通でないことは思い知っています。

 わたしの前世の総力をあげても太刀打ちできません。

 ですが、それをステラ様に押し付けるのは無礼千万です!」


「リサちゃん、リサちゃん、落ち着いて。

 そして、ちょっと昔話になるけど、お話をしても良いかしら?」


「ええ、ええと……。はい、すみません……。

 ステラ様の昔話を聞けるなんて光栄です!」


「そう、じゃぁ、少し長くなるけど、私の人生の一部を語るわね」


 と、ステラらリサにヒカリの名前を出さずにヒカリとの出会いを語り始めた。


「ある旅の途中で人族の領主さんが現れて


 『私に協力してくれ』


 ですって。

 私が旅の途中で汚い格好であったのもあるけれど、私のことを知らなかったみたいなのよ。だから、私は『魔術の勝負で私に勝てるなら良いわ』って返事をしたの。

 でね?結果として、その人族の領主に負けちゃったのよ……」


「え?あの!お話の途中ですみません!

 体調が悪かったとか、 呪いの印を利用してステラ様の能力に制限が掛けられたとか、人族に圧倒的に有利な勝負内容であったとか、そういうことなのでしょうか……」


「そう思うでしょう?

 私は全然負ける気が無かったの。

 時間制限がない勝負だったし、ルールも確認して、立ち合人が2人もいたわ。

 結果として、全く勝てる道筋を立てられずに、諦めざるを得なかったの。


 リサちゃん、私はそれまでは噂話とはいえ、私は自分で努力してきた結果も実績もあって、さっきリサちゃんが紹介してくれたような行動をとってきたわ。当然感謝もされてきた。だから、自惚れというか、自分で何でも出来るような自信というかそういった自分が居たのよ。


 けれど、その魔術の勝負で負けたときに、

 『世界には未知のものが沢山ある』

 って、思い知ったわ」


「あの、ステラ様、色々とお伺いしたいのですが……」

「何かしら?」


「その人族に何をさせられたのですか?」

「色々なことをしたわ。最初は森の開拓支援だったかしら」


「ぶ、無礼ですね!エルフ族の族長、それも伝説級の方へですよ!」

「『エルフは森の人』ぐらいにしか知識がなかったみたいね。ただそれだけよ」


「それで……、その……。ステラ様が負けてしまった勝負って、どのような……」

「ああ……。今なら簡単ね。見せるわね」


 ステラはお茶をしているテーブルの上で両掌を上に向けてリサに見せる。

 そこには何も無かった。


 「いくわよ」


 と、ステラは何も詠唱することもなく、印を結ぶことも無く、掌の上に魔石を生成していった。1分も掛からずに、掌にはソフトボールサイズの魔石が出来がった。


「リサちゃん、魔石って判るかしら?これ魔石なんだけど」

「あの……。ええと……。

 魔石は知っています。そして、魔石は魔力の結晶だとお母様が教えてくれました。

 ただ、お母様が見せてくれたのは私の指ぐらいの、とても小さなものでしたが」


「あら、ヒカリさんは既に説明を終えていたのね。

 なら、そういうことなのよ。

 ただ、私はリサちゃんに魔石の作り方を教える気も無いし、弟子にする気も無いけれど」


「あの、あの、あの……。これは世界が変わりませんか?」

「そうね。私の中で色々な物が変わったわ。

 私は世界を相手にしたら無知な子供よ。偉そうに弟子なんか取れないわ」


「ステラ様とお母様は別の形で世界の仕組みを見つけられていたのですね……」

「リサちゃん……。

 世界はこれだけではないわ。

 私が知らなかった世界が沢山あるの。

 ヒカリさんと行動して、仲良くなって、色々なことを知る機会ができたわ。

 だから、リサちゃんとも世界を知る旅に仲良く旅立てたら嬉しいかな」


「ええと……。あの……。

 弟子では無くて、ステラ様と仲良くして頂けるのですか?」


「ええ。リサちゃんさえ良ければ、これからずっと、ずっと。ず~~~っと。

 ね?」


「はい!喜んで!」


 楽しいお茶会は一旦お開きになる様であった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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