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7-39.カレーを作ろう(7)

 リサの記憶力とセンスに乾杯するために城外の拠点に戻るよ!

 喜び勇んで超特急で帰ることにしたから、高速飛行に備えて重装備での飛行だよ。

 一応、光学迷彩は掛けて人目に付かない様な配慮はしてあるよ。


 拠点に戻って、私の小屋の所まで来てからリサと荷物を降ろす。私は皮鎧とかガラスの仮面を外しつつ、光学迷彩を纏ったまま、鞄から取り出した狩人の服に着替える。

 とりあえず、最低限の着替えが終わったので、光学迷彩を解いてリサの様子を確認する。リサも皮鎧でぐるぐる巻きのミノムシみたいな状態だから直ぐに装備を解いて楽にしてあげる。リサも窮屈だったのと、高速飛行で私が無言だったこともあって、少し疲れている感じかな?

 

「リサ、少し疲れた?」

「だ、大丈夫です。お母様の飛行速度に慣れていないだけです」


「そしたら、休む?眠かったらお風呂入ってから寝てても良いよ?」

「お母様のこの小屋にはお風呂はありません。マリア様のやかたまで戻るのは大変です」


「じゃぁ、メイドさんを呼んで、体を拭いてもらってから寝る?」

「ここに居るメイドはお母様とクレオさんだけです。他の方はまだマリア様の館にいます。

 アリア様やシオン、ゴードンさんの助手はいますが、お母様のメイドではありません」

「そ、そっか……。じゃ、じゃぁ、お母さんと一緒に寝る?」

「えっ?お母様、どうされましたか?何かの呪いに掛かりましたか?」


「の、呪い?リサ、何か見える?」

「いえ。普通にお母様がおかしくなったかなと……」


「が~~~ん!」

「お母様、声に出てます……」


「が~~ん。が~~ん……」

「お母様が私のことを気に掛けたことは有りませんよね?」


「……」

「どうされましたか?」


 そ、そんなにか……。

 てか、リサが生まれて物心着いてから1年とか、そんなもんじゃないの?

 私は母親として、これまで何をやってきてたんだ……。


「リサ、どうしたら良い?」

「何がですか?」


「お母さんとして、頑張ってきたつもりなんだけど……」

「お母様は、自覚されていなかったのですから、何も問題ありません」


「ますます、どうしよう……」

「お母様は普通ではありませんし、私もシオンも普通では無いので、普通を目指しても仕方ないのでは?」


「リサ、なんか悟ってるねぇ……」

「お母様と出会う前から死にそうな目に遭っていますから。

 私の記憶にある母親はお金に苦労して、私を巫女見習いとして教会へ出しました。普通の母親の一人であったとおもいます。

 その後、私は巫女をしながら教会へ連れてこられたり、捨てられていく子供を沢山見てきました。

 その様な意味で、お母様は子育てに金銭的な苦労がない様に見受けられるます。この時点で普通ではありません。

 そこへ王族のメイドの支援や乳母が付いているのですから、お母様と私の間に普通を求めるのはおかしいのでは?」


「リサ、リサ、リサ……。

 お母さんなりに、一生懸命頑張っていたと思うんだよ?」


「貧しい家庭の母親は自分のことか、子供のことに夢中です。

 お母様は、私やシオンのことや、お母様自身のことよりも優先順位の高いことが有ったから、普通の母親とは異なった行動をしていただけではありませんか?

 おばあ様であるマリア様とお父さんの関係は王族の普通ですので、私の考える普通ではありませんし、ひょっとするとお母様の普通とも違うかもしれません」


「そ、そ、そうかも……。

 でも、家族のことは常に考えていたつもりだよ?」


「お母様が普通の母親では無いことは判っていますので問題ありません。

 それより、眠気も覚めましたし、休んで気分も高揚してきました。

 何からお手伝いしましょうか?」


 む……、 無視された?

 確かに母親が娘に頑張ってるアピールするとか、そんなの無駄と言えば無駄だけど。

 というか、リサのこの切り返しは私を見てるみたいだよ。

 考え方が似てきた?


「ん……

 モリスとシオンの昨日の様子を確認して、

 可能ならパイスさんを受け入れる準備をして、

 ユーフラテスさんの手が空いてるなら採取してきた植物を植えて、

 ゴードンとかペアッドさんの手が空いてるなら香辛料を粉末にしてもらおう。

 どうかな?」


「お母様、それですと私の出番がありません」

「リサが全部の指揮をすれば良いよ」


「予算も詳細も決めずに丸投げですか?

 騎士団で副指揮官を務めた際に苦労したパターンですが……」


「ん……。

 お金が欲しいならお母さんに言って。準備するよ。

 金貨100枚以上だと時間掛かるかもだけど、まぁ、何とかするよ。


 詳細っていうと……。

 今日のことだけ考えるなら、

 香辛料の粉末を作って、シオンの記憶でブレンドして、

 カレーなる料理の試作品が出来たらラナちゃんを呼んで食事会をするだけだよ。


 でも、リサは巫女の治療薬や治療法を普及させたいのだから、

 ユーフラテスさんに栽培して欲しい植物の育成をお願いしなきゃいけないし、

 パイスさんにリサのやりたいことを伝えないといけないよね。

 

 だから、目先の事以外は、リサがやりたいようにやって良いよ?」


「その、ええと……。

 私はどれもやったことがありません。

 皆様忙しそうなのに私のことを頼んで良いのか。

 そういう気遣いが大変そうです……」


「じゃぁ、お母さんがお願いするから、それを一緒にみてる?」

「私は邪魔ではありませんか?」


「大丈夫だよ」

「お母様が大丈夫でも、お母様の仕事を引き受ける人が気にしませんか?」


「ん……。大丈夫じゃないかな?

 それに、昨日のモリスみたいにリサに直接質問があるかもしれないし。

 だったら、リサも一緒にいた方が話は早いよ」


「でしたら、そうします……」


ーーー


 とりあえず、リサに少し待っててもらう。

 行動を始める前にモリスとシオンに念話を通して何しているかを確認するよ。


<<モリス、今どこで何してます?>>

<<ヒカリ様、ニーニャ様とシオン様と打ち合わせ中です>>


<<うん?なんだっけ?>>

<<シオン様が香辛料の真空乾燥機が欲しいそうです。

 あと、パイスさんというリサ様の付き人を囲うための小屋の相談です>>


<<ん~。だったら私も同席してよい?>>

<<ヒカリ様、今日はリサ様と薬草の採取ではなかったですか?>>


<<今、戻ってきた。リサと一緒に私専用の小屋にいるよ>>

<<ヒカリ様、相変わらず滅茶苦茶ですね。

 でしたら、そこの小屋を出て、アリア様のチョコレート開発室がある場所のもう少し先で打ち合わせしています。歩いて直ぐなので判ると思います>>


<<わかった。直ぐにリサを連れて合流する>>


「リサ、丁度打ち合わせ中みたい。私達も合流しよう」


 周りの装備品を片付けて、リサを肩に担いでモリスが居そうな場所へ向かう。この辺りも段々と人が住む小屋が増えてきたね。


「モリス、おまたせ~。私達も打ち合わせに混ぜて欲しい」

「ヒカリ様、リサ様ご無事で戻られて何よりです。

 いま、パイスさんのための工房と香辛料を効率良く作成する道具の打ち合わせをしていました。

 ただ、リサ様の薬草の処理の仕方が判らない部分もあり、工房の広さや追加の道具のリサ様が戻られてからの方が作り直しにならなくて良いかもしれないと、そんなことを話をしていたところでした」


「リサ、チョコレートとかコーヒーの工房の中は見たことあったっけ?」

「はい。私が巫女をしていたときは、教会の他の方達と一緒に作業をしていましたので、丁度あのくらいの小屋の大きさが必要でした。

 ですが、薬草の種類が増えて、保管庫も多く必要になったり、パイスさんが生活する場所も同じ場所に準備するとなると、もう少し広い方が良いですね」


「ああ、そっか。シオンはマリア様の館からの通いだし、アリアは近くの宿から通ってるのかな?だとすると、パイスさんのためには生活できる小屋が必要だね」


「ヒカリ、カサマド達の住居の近くで良いなら、空きの小屋があるんだぞ。生活するためのインフラや設備が整っているから、連れてきたドワーフ族の者に頼めば簡単に作って貰えるんだぞ」


「ニーニャ様、パイスさんは魔族や他の種族と交流しても大丈夫でしょうか……」


 と、心配そうに尋ねるリサ。

 まぁ、その心配はご尤もだね。

 でも、いろいろと慣れて貰わないとリサの指揮にも耐えられないと思うよ?


「リサ様、僭越ではございますが、パイス殿はリサ様の支援に携わると伺っております。多少のことで驚かれては、この先暮らしていけないかと思いますが、如何でしょうか?」

 うんうん。ニーニャも同じ意見だね。

 さぁ、リサ、どうする?


「お母様、どうするつもりだったのですか?」


 リサ、丸投げ?

 私は普通に雇えば良いと思っていたし……。


「リサはどうするつもりだったの?

 『私は転生者で、教会から薬草持ってきた。代わりに世話してね』

 とか、言うつもりだったの?」


「お母様が屋台ごと買うことにしたのですよね?」

「いや?雇うって言ったら、屋台を引き払う話になって、専属になるって流れだね。

 それなりに覚悟がある人だから、少しずつ話を進めれば受け入れて貰えると思うよ」


「少しずつですか……?」

「見かけ3歳児が流暢に喋らないし、巫女が転生して復活しない。

 魔族は人族と直接交流しないし、日帰りで魔族の領域から薬草を採取してこない。

 ついでに、飛べないし、木刀も一刀両断できないし、迷宮にも入らない」


「お母様、私は何もできなくなります!」

「住居は魔族の人達の近所で良いことにしよう。

 薬草や香辛料を調合するのはこの辺りが良いかも。

 道具を共有したり、メンテして貰うのも近所にあるとドワーフ族の人が困らないからね」


「お母様、私の話を聞いてくれていますか?」

「聞いてるよ。

 だけど、パイスさんがどれくらい早く順応できるかで、こちらが開示する情報をきめるしかないと思うよ」


「私はどうすれば……」

「暫くは念話で大人を経由して会話するか、予め羊皮紙か竹簡に巫女の知識を書き写しておいて、それをパイスさんに渡すことになると思うよ」


「シオンはどうして大人の人達に混ざって、コーヒーやチョコレートを作っていても大丈夫なのですか?」

「マリア様の館で働いている人たちは、採用されるときに厳選されているし、雇用されてからも問題があれば解雇してきたみたいだからね。こちらの指示には絶対逆らわないよ。 そうそう。リサが言っていた『メイドは主人に絶対服従』を本当に実行できる人だけを採用しているらしいから」


「パイスさんは、まだその採用基準に達していないということですね?」

「うん。だから、私たちの考えを受け入れられるようであれば正式に採用するし、徐々に情報を開示していけば良いよ。

 そもそも、この辺りに色々な種族が混在して住んでいる事すら珍しいことなんじゃないかな?」


「お母様、私にとっては普通ですが、エルフ族、ドワーフ族、獣人族が一か所で仲良く生活するとか有り得ません。それどころか交流して無償で助け合っているとか信じられません。そして、そこに魔族が加わってるとなると……」


「リサの転生前の普通に照らし合わせてパイスさんと接すると良いよ」

「わ、分かりました……」


 リサも段々と、普通とか普通じゃないとか、そういう考え方に囚われなくなればいいなぁ……。

 そうすれば、色々と楽になれるのに……。


 さ、リサはリサで巫女の治療薬を作って貰って、私はシオンとカレーのレシピ作成に頑張っちゃおうっと!


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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