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7-35.カレーを作ろう(3)

 生薬や香辛料に詳しい露店商に出会ったよ。

 上手くスカウトできそうかな……?

 カレー用の香辛料のブレンドは食材に合わせた調合とか始めたら沼のように嵌るっていうからね……。その担当が居るなら任せた方が楽で良いよ。場合によっては、サンマール王国で採取出来る特殊な香辛料もブレンドしてくれるかもしれないし。

 この辺りの調整が済んだら、日本固有の出汁やルゥの文化と融合させていけば良いんだよね。カレーパンに辿り着けなくても、陸稲米や水稲米に合わせたり、ナンに合わせたりと世界は広がる。


 よしよし。香辛料が全て揃うよりも、余程良い物が見つかったんじゃないかな?


 と、日本のカレーに向けて想いを馳せていると肩の上からリサが声を掛けてきた。


「お母様、いつ出かけますか?」

「いつって、パイスさんとは明後日待ち合わせだよ。聞いてた?」


「私が聞いているのは、私が育った村の話です」

「ん……。いつでも良いけど……」


「では、荷物を置いて、皆に連絡してから出発ですね」

「え?」


「『え』ではありません。ちゃんと、皆に行先が市場から村へと変わったことを伝えましょう」

「いや、連絡する話では無くて、リサが随分熱心に話を進めるねって話だよ」


「お母様、私が未熟であったためにパイスさんの恋人なのか奥様なのかが亡くなられたのです。知識としての書物は騎士団に配属されて時間があるとき、幾つかしたためたのですが、現物となる薬草までは手が回りませんでした。

 今すぐに取り掛かるべきです!」


「リサ……。そこまで気負わなくても良いんじゃない?

 治療薬とかそいうった処方が出来る人に任せれば……。

 あくまでカレーという香辛料をブレンド出来れば良いわけだし。

 ただ、まぁ、リサが育った村に採取に行くのは賛成だけどさ」


「お母様、その様なこころざしの低さでは巫女になれません」


「リサ……。私は巫女を目指すには志が低すぎるし、医療関係の知識も乏しいよ。アリアみたいな錬金術師とかなら目指したいね」


「錬金術は結局のところ不老不死の妙薬を作成することが求められるのです。あるいはゴーレムと言われるような人形に自動で行動させるため魂の創生が求められるのです。何であれ、人の神秘に到達する必要があるのです。

 それに比べたら巫女の能力は初歩の初歩です。お母様が目指す通過点に過ぎませんので全く問題ありませんね」」


「リサ、言っていることは合ってると思う。

 だけど、私の残された人生でそこまでたどり着けるか自信は無いかな……」


「お母様は出来ないと思ったら、挑戦を諦めるのですか?」

「あ……。いや……。うん……」


「お母様に問題が無ければ夕方には出発できますね。

 早速準備しましょう」


 うん、とりあえず帰ってから他の人の意見も聞かないとね。

 今だと、誰に確認とれば良いんだろう?

 モリスかステラだよね……。

 あの二人が反対すれば、リサも多少は考えを和らげてくれるかな……?


ーーー


「モリス、ただいま~」


「ヒカリさん、リサ様、シオン様お帰りなさい。目的の物は見つかりましたか?」

「うん。露店商ごと買い取った。価格とかの詳細は明後日の面談で決めることになった。誰に相談しよう?」


「ヒカリ様?ご質問させて頂いても宜しいでしょうか?」

「たぶん大丈夫」


「今日は、料理に使う香辛料をお求めになられて、市場へ向かわれましたよね?」

「はい」


「親子3人で安全に買い物に向かわれたはずですよね?」

「うんうん、それがちょっと手に入らないことが分かってね」


「ヒカリ様、質問を続けたいのですが宜しいでしょうか?」

「あっ、はい。ごめんなさい」


「手に入らない、希少な物であると分かったなら、その専門家を訪ねるとか、冒険者ギルドや商人ギルドに依頼をかければ良いのでは無いでしょうか?

 この国の利権でヒカリ様の思うようにならない物は無いと伺っておりますが?」

「あ、専門家が居たから、その人の意見に従うことにしたの」


「ヒカリ様の個人資産があれば、露店商の囲い込みぐらい何とでもなります。

 また、その露店商が専門家であったなら仕方ありません。委細面談にて私が話を進めましょう。ヒカリ様も立ち会いますか?」


「ん……。条件をいくつか提示されていて……。

 1.住む場所には馬車一杯分の書籍を格納できる場所が欲しい

 2.貴重な香辛料やハーブ類は自家栽培や処理が必要なため、農園や施設が欲しい

 3.採取の旅に出かけることもあるので、その場合は外出を認めて欲しい

 4.治療薬の開発依頼をされる場合、その費用や成果報酬は事前に決めて欲しい

 って、感じかな?

 ここを調整してくれれば私はどうでも良いよ」


「露店商殿の提示された条件を全てのむ必要があるほど、専門性に長けていらっしゃる方なのですか?」

「いや?でも、居たら便利だと思う。

 リサも自分が成長するまではそういったことを支援してくれる人が欲しいみたい」


「リサ様の専門性を磨くための家庭教師の立場になる方なのでしょうか?」

「いや?たぶん、リサの助手かな……」


「ヒカリ様、私は何か勘違いしていますか?」

「私が勘違いさせているかも?」


「ヒカリ様、リサ様と直接お話をさせて頂いても宜しいでしょうか?」

「うん。大丈夫。リサ、欲しい物を説明してみて」


「モリス様、お母様は巫女の存在の重要性が認識できておりません。ですので、私が導く必要があると感じました。

 さしあたり、私が成長して一人で行動しても不信がられない程度になるまでは、私の代わりに薬草の調合や提供をしてもらえる人物が必要なのです」


「リサ様、ありがとうございます。

 リサ様が専門家でいらっしゃって、リサ様の存在を秘匿するためにも、その手足となって代わりに作業する助手を雇い入れるということでしたか。

 リサ様から観て、今日お会いになられた人物は役に立ちそうでしょうか?」


「私には分かりませんが、少なくとも私は彼の魂を救いたいと思いました」

「魂ですか?」


「パイスさんは奥様らしき人を失ってから魂が救われておりません。

 私は奥様を救うことは出来ませんでしたが、パイスさんを救いたいのです」


「承知しました。パイスさんの魂をすくべく、全面的に支援しましょう。

 リサ様はお母様と同じで人の魂にまで思慮できるのですね……」


「お母様がですか?」

「はい。私の魂も救って頂きました」


「お母様、何をされましたか?」

「いや、特には……。モリスが養子に出した子を探したことぐらいかな?」


「モリス様、何が有ったのですか?」

「リサ様、お母様は素晴らしい方ですよ。

 今は私の過去のことよりも、パイスさんの魂を救う準備をしましょう。

 リサ様、何が必要でしょうか?」


「は、はい……。

 ええと……。ええとですね?

 倉庫と作業小屋が必要になります。各種採取した植物を乾燥させたり保存させる場所が必要になるのです。そして、お母様の財力であれば、沢山の種類を保存することが出来ると思いますので、アリア様とシオンが使っているぐらいの小さな家ぐらいの大きさは欲しいです。

 大丈夫でしょうか?」


「リサ様、この辺り一帯はマリア様、つまりリサ様のおばあ様が所有権をお持ちですので、敷地の大きさについてはご心配に及びません。

 小屋と什器じゅうきですが、一般的な物であれば人族の力で対応できます。特殊な備品が必要であれば、ニーニャ様にお願いしてドワーフ族の方達のお力を借りれば対応頂けると思います。

 栽培用の土地に関しましても、リサ様が試験官として走破した40km先までの土地を所有しておりますので、必要なエリアだけ開墾して栽培に充てることが可能です。

 如何でしょうか?」


「お、お母様!」

「ん?リサ、なに?」


「マリア様とモリス様とニーニャ様は素晴らしい方達ですね!」

「うん。リサも頼って良いよ」


「モリス様、ありがとうございます!

 植物の菜園につきましては、その栽培の元となる種子類がまだ入手出来ておりません。一般的な物であれば、わざわざ栽培するよりも市場で購入した方が手間が掛からないと思います。

 ですので、特殊な種子の入手に向かいたいのですが……」


「リサ様、市場で手に入らない種子ですか?

 でしたら、冒険者ギルドに調査依頼を掛けるのは如何でしょうか?」


「モリス様、依頼を掛けても宜しいでしょうか?」


「リサ様お一人で冒険者ギルドへ向かわれますと、リサ様の聡明さに驚き、噂が拡散される恐れがございますので、どなたか成人の方に付き添って頂いた方が宜しいかと。


 私もリサ様と並行して小屋等の各種手配を行っていきますので……。

 マリア様とクレオさんは上級迷宮の訓練に参加していて不在です。

 シズクさんも飛竜の卵の調査で出かけておりまして……。

 クワトロもズィーベンさんの訓練で不在ですよね……。

 アリア様とミチナガ様はチョコレートとコーヒー作りを軌道に乗せるためにエルフ族の方達とかなり忙しそうです。


 他にリサ様の事をよくご存じな方としましては……。

 何か嫌な予感がしますが、ヒカリ様お願いできますでしょうか?」


「モリス?」

「ヒカリ様、なんでしょうか?」


「色々と言いたいことはあるけれど、私がリサのお願いを受けられれば、冒険者ギルドを正式に通さなくても良い?」


「と、いいますと?」

「冒険者ギルドでこちらの要望を説明するのが面倒だし、色々と手間が掛かる。最短でリサの願いを叶えたい」


「それは、正に私の嫌な予感の方向に向かっている気がしますが?」

「え?」


「ヒカリ様にはお目付け役が必要です。

 本来であればリサ様が今回はその役割を果たすのでしょうが、ヒカリ様はリサ様のために動き、リサ様はそのお母様の想いを止めることができません。

 つまりは、ヒカリ様の歯止め役として不適切な関係になります」


「モリス、言い切るねぇ……」

「皆様が念話で私に情報を共有して頂けておりますので、南の大陸でハネムーンをしながらご活躍をされていることを良く存じ上げているまでです」


「みんな、仲が良いね……。私もその念話ネットワークの輪に入れて欲しいんだけど?」

「入って頂いても結構ですが、ヒカリ様の想いを全員と共有することは困難かと思われます。

 全員が一丸となって検討を重ねて『ヒカリ様はこのように考えているはずだから、そのような行動をしても仕方ない』という結論に至ります。

 念話が使えない場では『ヒカリだから』で全てが簡単に通じるのですけども……」


「モリス、分かった。もういい。

 リサ、出かける。準備は良い?今から飛ぶから道案内して!」


「ヒカリ様、怒られましたか?」

「お、お母様、市場で買い物した荷物を整理してから預ける必要があります。

 また、今から行く場所では虫刺されの薬や毒虫、獣の対応、簡単な食料、採取する道具と回収用の容器などの準備が必要です。

 いくら何でもすぐには揃いません……」


「モリス、怒ってない。

 リサ、買ってきた物の片づけはシオンとモリスに任せる。

 虫よけのクリームはユッカちゃんから教えて貰ってるからそれを使う。

 獣は私もリサも問題無く倒せる。

 食料は私の鞄に100人が一ヶ月は暮らせる量が常に入ってるから問題ない。

 採取する道具はこれまでに収取した武具を上手く使おう。

 採取したものを回収するための麻袋は、ある機会に大量に仕入れているから大丈夫。

 

 リサも急いでいたんだからさ、暗くならないうちに出かけよう?」


「ヒカリ様、リサ様もシオン様も驚かれていますよ。

 もう少し、やんわりと接してあげて頂いても宜しいかと……」

「念話でなだめてあげて。後始末はモリスに任せた」


 全く、失礼しちゃうよね……。

 私がトラブルを引き起こしている訳では無くて、皆のために色々と考えて行動していると、不運な状況に巡り合わせているだけでさ?

 さぁ、さっさと採取する物採取して帰ってこようっと!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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