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7-33.カレーを作ろう(1)

 ラナちゃんとの会話に衝撃を受けつつ、リサとシオンと一緒に食事をとるよ。

 一通り迷惑を掛けた人達への挨拶が終わったから、リサとシオンと一緒に夕飯にしようかな。

 食堂でラナちゃんと別れてからリサとシオンを連れてきて夕飯をすることにした。ここではペアッドさんのチームが賄いを無料で提供しているってことで、メニューは任せちゃえば良いかな。


「シオン、リサ、久しぶりに3人で一緒に食事が出来るね」

「お母様、お疲れ様です」

「おかあさん、元気になられて何よりです」


「二人とも迷惑を掛けたね。色々と助けてくれてありがとう」

「お母様、今日の夕ご飯はお粥でなくて大丈夫ですか?」

「おかあさん、お粥が良ければ作りましょうか?」


「二人ともありがとうね。体は大丈夫みたい。みんなと同じものが食べられるよ」

「ペアッドさんはサンマール王国出身なので、馴染みがある食事が食べられます」

「ゴードンさんがこちらの国のお米を使って色々な料理を試してくれています」


「そっか……。ペアッドさんだけでなく、ゴードンも来てくれてるよね。今日の賄いは何だろうね?」

「ジャガイモと魚のスープです」

「ゴードンさんはサンマール王国のスパイスを使ったシーフードの炊き込みご飯です。おかあさんならパエリアをイメージした感じでしょうか」


「そっか。そうしたら、ご飯もスープも美味しそうだね。

 ところで二人は忙しく無かったの?」

「「ヒカリシフトです」」


 なるほど。私の為に他の仕事から解放されているってことだね。

 でも偶にはゆっくり過ごしても良いんじゃないかな?


「そっか。そうしたら、夕飯を食べてゆっくり寝て、明日からゆっくり観光すれば良いね」

「お母様のゆっくり観光は上級迷宮でお父様と合流して特訓の再開でしょうか?」

「きっと、飛竜族の卵の行方を調査して、魔族の秘密施設を制圧に向かうのですね」


「あ~、お父さんはゆっくり迷宮探索しているみたいだよ。

 さっきマリア様に聞いた感じだと、まだ地下5階層だって。

 だから私達が行っても探索の邪魔になるよ」


「お母様、誰かが事故に遭われたのでしょうか?」

「いや、普通に地図見て、敵を倒しながら進んでいるみたいだよ」


「意味が分かりません。その程度の深度でしたら普通の冒険者パーティーと同じ進行度です。訓練も何もありません。収集品を拾っても手間ばかり掛かって時間の無駄です」

「うん。マリア様には伝えておいたよ。マリア様も『ゴミ拾いをしていたのかしら?』とか、残念そうだったね」


「ユッカ様、クレオさん、ナーシャ様が同行されているのですよね?何かがおかしいです」

「リチャード、カサマドさん、スチュワート様の3人が仕切ってるらしいよ。だから普通の進行度合いかもしれないね」

「分かりました。普通の人の普通であれば事故も起こらないですよね。ただ、いつ頃戻られるか全く予想が出来ませんが……」


「ユッカちゃんがタイムキーパーをしてくれているらしいから、その辺りは報告が入るだろうけれど、最深部に辿り着くのとか、お金になる収集品を集められるようになるのは暫く掛かるだろうね」

「分かりました。上級迷宮を訪問しないことに賛成です」


「シオンが気にしている飛竜族の卵の行方なんだけれど、私もまだ情報を精査できていないんだよね。ここに来る前にちょっと聞いただけだから。

 シオンは何か気になることがある?無ければ無理せずに、調味料とかスパイスとかシオンが興味のあることをしていて良いよ?」


「飛竜の卵の話は僕も伝聞でしか知りませんので、良く分かりません。

 調味料や食材の話では、おかあさんの協力があればカレーが作れるかもしれません」


「ああ……。カレーねぇ……。

 あれは土地ごとに独自の進化をする食文化だから……。

 こちらのイメージを上手く伝えることが出来たら、サンマール王国なりのカレーがあるかもね」


「おかあさん、そういうことはリサお姉ちゃんのほうが得意かもしれません」

「そうだよ!そうだよ!リサが居るよ!

 そうしたら、明日から3人でカレーを作ってみようか!」


「お母様、シオン、お二人で盛り上がっているところ申し訳ありませんが、私も会話に混ぜてください」


「リサの記憶に料理のことが残っていると思うから、その知識を共有して欲しいかなって話だよ」


「私は貧しい村で育ち、巫女として育てられましたので、お母様やシオンの様な美味しい料理についてはあまり役に立つ知識を持ち合わせていません」


「いや、もっと庶民的な料理でさ。

 香辛料を上手く組み合わせて、ピリピリ、ガツンとしてて。

 メインとなる肉や魚に濃厚なコクがあって。

 そのミックスされた味が癖になるような料理だよ」


「お母様、それはラナちゃんが求めていた料理ではございませんか?」

「ああ~。日持ちして兵站として使えるかは置いとくと、わりとラナちゃんの感覚に近いかもね」


「その様な物を私が知っている訳がありません!」


「リサお姉ちゃん、お母さんは肉や魚をメインとして考えているけれど、カレーという文化は色々な発展をした香辛料を混ぜたり発酵させた調理の名前であって、必ずしも肉や魚がメインとは限らないんです。

 ほうれん草やひき肉と混ぜる場合もあるし、ココナツミルクでコクを加える場合には肉や魚からのコクは最低限で良いです。

 さらには、野菜類を香辛料と共に発酵させた場合もあります。この発酵具合は家庭ごとに変わるので、家庭独自のカレーになります。

 

 おかあさん、そうですよね?」


「ココナツミルクはグリーンカレーのことを言っていると思うけれど、野菜と香辛料を混ぜて発酵させるのは、ひょっとしてキムチのことを言っているのかな?」


「おかあさん、キムチは確かに野菜類を発酵させてつくります。ですが、カレーのようなスパイスを複数組み合わせて独特の風味を出す文化とは異なります。

 インドの方達の家庭料理が、カレー風味のスパイスを家庭ごとに混ぜて料理に合わせるのです。日本で言えばお味噌や醤油と言った感じでしょうか。

 おかあさんでも知らないことがありましたか?」


「いや、シオンの知識が凄いんだと思うよ?

 エビのはらわたを発酵させてコクのある調味ペースト作ったり、チョコレートの製法を知っていたり、インドの食文化を知っていたりさ。

 前世は何してる人だったの?」


「前世とは私がここで誕生する前の生活のことですよね。

 断片的に思い出すのですけれど、全てのことは判りません。

 また、ここに来てから新しい記憶により融合も起こっています。

 その中の断片的なことで言うなら、乾物かんぶつを売りながらお客さん相手に商売をしていたのだと思います」


「そっか……。

 商売をしていたってことからすると、私より人生経験が長かったんだろうねぇ……。

 そりゃ、色々知っていて当たり前か……」


「おかあさん、僕の知識で役に立つことはほとんどありません。

 今のカレーの話は前世の知識であって、リサお姉ちゃんに上手く伝わっていないと思います」


「リサ、何かヒントになることはあった?」

「そもそもカレーが何か分かりませんし、ハーブなのか香辛料なのか薬草なのかも分かりません。薬草類でも葉、根、実、蕾などによって効能や香りも変わります。お母様は簡単に香辛料を混ぜた物と言いますが、そんな簡単な物ではありません。

 風味が良く、効能があっても見栄えが悪く、食料として中々受け入れられないたぐいの物もありますし……」


「あれ、リサ、結構詳しくない?」

「治療や施しは全て魔力で解決できるものではありません。普段からの食事や薬効成分のある飲み薬や塗り薬で症状を緩和させるのです。

 当然、そのための薬草類は野山で採取したり、自家栽培したり、採取した物を手入れしたりするのです。

 当たり前のことが出来て褒められても嬉しくありません」


「いや、リサ、それは当たり前でも普通でも無いよ。

 ステラとかアリアと情報交換すると知識の融和が起こるんじゃないかな?」


「お母様、色々な薬剤を下手に混ぜ合わせると毒になる場合があるのです。危険なので余計なことは言わないでください」


「ああ、ごめんね。でも、多分今回のカレー作りではリサの知識はとても役に立つと思うよ。

 薬草の呼び名や管理の仕方はシオンや私の知識と合わせて行けば、カレーの元になる香辛料が揃うことになると思う。それらの香辛料を混ぜてカレーを作っていくことになると思うよ」


「お母様、シオン、そのカレーに必要な香辛料や薬草の種類をおしえてください。出来れば名称だけでなく、その特徴もお願いします」


「シオン、わかる?私は余り詳しくは判らないよ……」


 いざとなったらナビ経由で検索して貰っても良いけど、ここはリサとシオンの絆を深めておいていいと思うし、未知の世界でお互いに交流が進むことは良いことだと思うんだよね。


「おかあさん、基本はターメリック、コリアンダー、クミン、カルダモン、唐辛子で良いと思います。そこに、ショウガ、胡椒、ナツメグ、ニンニク、シナモン、カカオ、コーヒーなど徐々に深みを増して行けば良いのです。

 先ほどのおかさんが行っていたグリーンカレーですと、レモングラスやパクチー、ネギなどの酸味と辛みを加えていく形になります。

 おかあさんの説明通り、多種多様な薬草の配合になりますので、何が自分の体に合うかは人それぞれかもしれません」


「シオン、今日は良く喋るわね。さっき、基本と言った物からもう一度詳しく説明して頂戴」


「お姉ちゃん、ごめんなさい。少しずつお話します。

 基本の香辛料は5つ。1.ターメリック、2.コリアンダー、3.クミン、4.カルダモン、5.唐辛子です。


 分かり易い物ですと、5.唐辛子です。これはこれまでにも料理で使用されているの見ているので、市場で買えるとおもいます。実が緑や赤色で口の中が辛くなります。干して粉末にした場合には、その粉末が皮膚や目に入ると非常に痛みを伴う刺激をもたらすので、扱いに注意が必要です。


 お姉ちゃん、次の説明に移っても良いですか?」



「シオン大丈夫よ。次!」


「はい。続けますね。

 次に分かり易いのが2.コリアンダーでしょうか。

 これはパセリやパクチーといった非常に香りの強い香草の実を乾燥させてから磨り潰して粉にしたものになります。

 これもお母さんが魚料理で香草を薬味替わり使用していたので、葉っぱなら市場で手に入ると思います。実を粉末にしたものはクレオさんに連れて行ってもらった市場にある香辛料の並ぶ店のどこかで手に入るのではないでしょうか」


「シオン、良いわ。続けて」


「次に分かり易いのは3.クミンだと思います。

 これは花や葉にも特徴があるのですが、何より実を噛んだときの後味が唯一の感覚と言えます。スーッと少し痺れるような舌に残る感じ。香りは爽やかで辛さも甘さもありません。

 実の大きさは精米する前のお米ぐらいで、麦より小さいと思います。色は灰色がかった緑色になります。

 おねえちゃん、これだけで分かりますか?」


「似た植物はありそうだけれど、そのままシオンのいう物かどうかが怪しいわね。後で市場の香辛料のお店でみてみましょう」


「わかりました。あと2つですが……。続けても良いですか?」


「お母様は大丈夫ですか?」

「私が直接でお店で買ったことはないけれど、今の3つなら大丈夫だよ」


「では、残り2つになります。

 1.ターメリックになります。これはショウガとか茗荷みょうがのような根を採取して乾燥させてから香辛料として利用します。味は特徴がありませんが、オレンジに近い黄色であることが特徴です。

 残念ながら自生している植物の状態は良く分かりません。うちの店では粉末でしか扱っておりませんでした。


 最後に、4.カルダモンになりますが、これは2cm程度の実のさやから種を取り出して、それを香辛料として扱います。香りが良いのが特徴で、胡椒に並び立つスパイスとして私がいた世界では希少性と香りの豊かさからスパイスの女王と呼ばれることもありました。

 そして、残念ながら私はこれを栽培している資料などを持っていません」


「シオン、最後の2つは根とか実だけで特徴が無いわ。

 お母様は判るのかしら?」


「う~~ん……。お母さんも直ぐに思い出せる物では無いかな。

 明日市場に行って、この5種類に似た特徴の香辛料を探してみよっか」

「「ハイ!」」


 さて、どうしてものか……。

 正直、唐辛子以外の最初の2つだって危ういのに、最後の2つは植物の状態が判らないんじゃ、探しようも無いよね……。

 あ、ターメリックって、きっとウコンのことだよね。黄色い粉末。それぐらいなら、香辛料のお店に行けば見つけられるかもしれない。


 ステラが忙しく無ければステラに知恵を借りるのも一つだけど、カレーとかいう未知の料理にエルフ族を巻き込んで後から怒られるのはちょっと嫌なんだよね……。


 ま、なるようになるかな?



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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