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7-30.後始末 アリアとミチナガさん

 よし!ニーニャにもお礼と挨拶を終えて勇気を貰ったよ。

 さて、次は……。 

「アリア、ミチナガさん、ご心配おかけしました。

 私が休んでいる間に各種ご支援を頂きありがとうございました」


「ヒカリ様、無事で何よりです。

 ステラ様からご連絡は頂いていたのですけれど、お会いできるまで安心できませんでした」


「アリアもサラッと酷いこと言うよね」

「だって、ヒカリ様は直ぐに何処かに行ってしまって、常に大事件を起こして帰って来るのですから、本物を見るまでは信用できません」


「いや、今回のハネムーンは大人しくしてる。拠点に居る時間長いし、観光が多めで危ないこともしてないと思うよ?」

「私には色々な方から念話が入ってますので大丈夫です。騙されません」


「騙して無いよ?」

「前人未踏の迷宮をクリアするだけに留まらず、魔物を人為的に溢れさせるなんて聞いたことがありません。国際問題に発展します。全ての国から入国拒否される国際犯罪者リストに掲載されますよね?


「あ……。考えようによっては国を滅ぼせるか……。アリアは頭の回転が速いね」

「魔族が封印している人族の巫女の亡骸なきがらを奪回しましたよね。

 もしその事実が発覚すれば、サンマール王国に潜入している魔族側の工作員が破壊活動を始めたり、事件の主犯を探し出し暗殺に走ります。

 折角、王姉殿下が金銭的な譲渡と領地の割譲によって停戦状態を構築しているのに人族対魔族の戦争が再開しますよ?」


「あ……。

 一応バレない様に仕掛けはしてある。フウマの偵察でも大丈夫だった。

 それに王姉殿下の政策に異を唱える訳では無いけれど、魔族の侵略は人族だけでなく、他の種族にも影響が出始めている。

 人間同士が直接殺し合う戦争は嫌いだけれど、自由も希望も無い中で生きていたら、それこそ生きている意味がなくなるよ」


「南の大陸の飛竜族の方達とも友好な関係を構築しておりますよね。

 飛竜族と会話ができるのは上級魔法が使えるエルフ族の一部とされています。そのような要注意人物は入国拒否の対象です。ハネムーンどころではありません」


「あ!アリアさぁ、凄く大変だったんだよ?

 今さ、空飛ぶ卵とか飛空術って時速100kmぐらいでしょ?飛竜さんが本気出すと時速1000kmぐらいまで出せるの。この辺りから空気や水蒸気との戦いになるんだけど、そこからさらに速度を上げると熱の壁との戦いになるのね。

 私も想像が出来て無くて……。ラナちゃんが助けてくれて、やっと勝てたんだよ……」


「ヒカリ様、飛竜族に飛行速度で勝利を収めたのは初耳です。

 その技術を自国の物とすべく、関係者の誘拐が多発してもおかしくありません。国境を跨ぐ誘拐犯が跋扈し、治安の悪化や国際問題に発展します」


「でも、知っているのは妖精の長とか族長クラスだけだから大丈夫じゃないかな?」


「エイサンからも聞きましたよ?

 『海神様に戦いを挑まれた』

 『シャチを根絶やしにしようとした』

 『種族長の紹介の場で不機嫌になり、お食事会を途中退席された』

 あり得ませんよね。

 種族間の戦争に発展する事例ばかりです。

 どの辺りがハネムーンを楽しんで大人しくされていたのでしょうか?」


「ええっ?」

「とぼけるのでしょうか?」


「アリア、今日はなんだか突っ込みが厳しいかも……?」

「当たり前です!どれだけ心配していると思っているのですか?

 私が代わりに出来ることなら、私が全てするのに……」


「いやいや。凄く頑張ってくれてるよね。

 チョコもガラスも、私が寝ていたときの石の運搬も。

 それこそアリアじゃなければ出来ないことを沢山してくれているよ」


「ラナちゃん達とドワーフ族の支援が無ければ道具を作ることも出来ませんでした。マリア様やシオンくんの支援が無ければ拠点で道具だけあっても、人を集めて作業をしてもらうことはできませんでした。あと、家族の支援が有ったので私が自由に動くことが出来ました。皆様に感謝しています」


「アリアは最初に出会った頃より人との接し方が上手で、指揮も全体を観ているよねぇ……。羨ましいよ」


「ヒカリ様と出会って色々なことが変わったのです。

 これまでの人生で一番辛かったのはきこりの村からの脱出の指揮を執ったときです。出産は覚悟が有りましたが、突然聖女様や村人全員の命を預かるのはあのときが初めてでした。

 ヒカリ様にとってはどうでも良いことなのでしょうけれど……」


「どうでも良くないし、アリアが一皮剥けるためには、これまでの試練とは違う試練を体験して欲しいかなと、あのときは考えていて任せることにしたんだよ。

 ちなみに、今回アリアが助けてくれたチョコやコーヒーやガラス細工、アルコール濃度を高める蒸留酒の技術は国を揺るがす効果があるものなんだよ?」


「ヒカリ様は科学技術がどの様に進化するのかを前もってご存じなのですね。流石は女神様です」


「あ~。私は女神じゃない。

 あと、科学の発展の仕方は様々だよ。

 魔法がある世界では魔法と科学が共に発展するのが良いと思うよ。魔法とか、印とか私には分からないことがいっぱいあるし……。

 あっ!」


「ヒカリ様、どうされましたか?」

「ミチナガさんとシズクさんは印を描けるかな?あるいはアジャニアから連れてきた人で印が描けそうな人とかいるかな?」


「ミチナガ、どうです?」


 と、アリアの傍で黙って話を聞いていた旦那さんにアリアが尋ねた。


「アリア、私は特殊な印は描けないが、簡単な物なら幼いころに描いたことがあるよ」

「ヒカリ様、だそうです」


「へぇ~。ミチナガさんが幼いころに描いていた印って、どういう種類のですか?」

「ええと……。

 幼少のころ、武術の指導を受けていた当時、『この石が切れたら卒業だ』と、指導官に言われまして……。

 ちょっと、練習用の木刀を壊れにくくする印を描いていましたね。

 ステラ様が考案されたコーティングも良いのですが、木刀で石を切ろうとすると、木刀の本体が石に負けてしまいますので。

 やはり、木刀本体が堅牢であることが必要だと思いました」


「アリア、どう?」

「どうと言いますと?」


「今回さ、私が倒れたのは木刀を破裂させたからって聞いてるよね?」

「いいえ。『模擬戦の最中に事故が起きた』と、それ以上は伺っておりません。

 途中ステラ様とシオンくんが拠点に戻って来られて作戦会議を開きましたが、『傷は治したが、まだ意識が回復していない』との話でした。

 先ほどステラ様から意識を取り戻したとの念話が届き、今ヒカリ様と面談をしている最中ですが、木刀が破裂する事故が有ったのですか?」


「色々な人が『どうやったら木刀が破裂するか』を検証してくれて、私が魔力で非破壊の印を壊したから、その魔力が木刀内で暴走して木刀が破裂したらしいよ」


「『ヒカリ様が木刀を破裂させてしまう事故を起こした』と。自業自得ですね。確かに緘口令を敷いた方が良いかもしれません」


「いやいや。

 私の前にリサが木刀を両断していたんだよ。だから私も木刀を縦に割って、相手の戦意喪失を狙ったのね。そしたら私のときは木刀が割れずに破裂したの。

 『木刀に高度な非破壊の印を付ける』ってことはニーニャからしても普通にしないことなんだって。誰かのイタズラとか変わり者の仕業だって言ってた」


「ヒカリ様が印を描いて、それを忘れていて模擬戦に持ち込んだということでしょうか。やはり自業自得ですね」


「アリア、ちゃんと人の話を聞いてくれてる?」

「ちゃんとヒカリ様の行動しそうな事に予測を立てて会話を進めているつもりですが、何か失礼な点がございましたか?」


 確かに私の知っている知識とアリアが持っている知識に差があるのだから仕方ない。

 ここに来る前のニーニャとの会話を丁寧に順番を追って説明をしたよ。


「ヒカリ様、ミチナガ以外に木刀に非破壊の印を付けそうな人がいますかね……」

「アジャニアだと、シズクさん辺りも工夫しているかもしれない」


「ヒカリ様、そもそもその木刀は何処から持ち込まれた物なのでしょうか?」

「ズィーベンさんに聞いてみないと判らないし、本人が非破壊の印の付いた木刀を知ってて使っていたのかも判らない」


「なんで、こう……。

 木刀を切断しようとしたり、木刀で石を切断しようとする人がヒカリ様の周りに集まるのでしょうか……」


「アリアだってやろうと思えばできるでしょ」

「そもそも模擬戦とか参加しませんから」


「私だってメイドで十分だよ」

「ヒカリ様はメイドの職業を習得していますからね」


「確かにメイドは便利。何でも有りだね。良い職業だと思う。

 マリア様も実は気に入っているんじゃないかな?」


「ヒカリ様、一応言っておきますが、メイドは自由ではありません。ある意味で職業奴隷と言っても差し支えない存在です。あるじの命令は絶対ですから。

 マリア様やヒカリ様の場合、あるじ=メイドですからそこに身分的な上下関係が存在しません。ですので、『何でもあり』なんて、気楽なことが言えるのです」


「私が悪かった。それで何の話だっけ」

「ヒカリ様が好き勝手するという話です」


「あ、違う違う。『木刀に非破壊の印を付けるの止めようね』って話だね」

「それは大事なことですか?」


「木刀がはじけなければ、私がケガをすることは無かった。これ大事」

「ヒカリ様がメイドで模擬戦を主催しなければそんなことにならなかったという話です」

「そうだっけ……」

「ヒカリ様がメイドを隠れ蓑にして、好き勝手するから色々な問題が起こるのです。

 王太子妃として正々堂々と入国されて、その待遇に見合った使節団に迎え入れられて、観光も他国の王太子妃が巡れるような場所のみに絞っていたら、問題は起きなかったのです」


「そしたら、飛竜の話も無かったし、リサの話も無かったし、チョコの話も無かった。


 当然、アリアが空飛ぶ卵に乗ることも無かったし、サンマール王国を観光することも無かったし、アルコールの蒸留装置を手掛ける必要もなかったね。


 それだけじゃなくて、飛竜の卵は盗まれ続けるし、ドワーフ族は魔族に強制労働されたまま自然破壊が続くし、サンマール王国は魔族の経済支配を受け続けて、王姉殿下は北と南の両方の大陸で大暴れし続ける。


 そういう未来になるね」


「ヒカリ様はサンマール王国の賓客待遇ですよ?なぜその様なことをする必要があるのですか?」

「マリア様に全てお任せする訳にはいかないでしょ?私の子育てが落ち着くのと空飛ぶ卵の完成をサンマール王国で身分を隠して待っていてくれたんだから……」


「すみません。私の考えが浅はかでした……。

 けれどヒカリ様が大事な方であるが故にもっと気を付けて行動して頂きたいのです」


「アリアごめんね。何か美味しい物を作るから許して」

「も、物で人の心を支配するつもりですか?」


「アリアの機嫌が直るといいなぁって」

「私のことは良いです。ラナちゃん達が美味しい物を食べているときに一緒に呼んでください。誕生会のケーキですとか、ドリアンという果物ですとか、フワフワパンケーキとかです」


「わかった。アリア達家族は暫くサンマール王国に滞在していてくれるのかな?」

「ミチナガが良ければ大丈夫です」


「ヒカリ様、私の印を付けた木刀がケガのきっかけとなった可能性があること、大変申し訳ございません。処罰は何なりと受けますので指示ください。

 また、もし生存を許可頂けるのでしたら、魔族の王国を統治していると云われる法王殿にお会いし、対話を試みたい次第でございます」


「ミチナガさん、アリアの旦那様を処刑とか有り得ないね。

 今回の木刀の真犯人は誰でも良いし、今後は私も気を付ける様にするよ。

 それよりも、法王との対話は面白そうですね。フウマの調査が進んだら積極的に関わってくれると有難いよ」


「寛大な裁定に感謝いたします。微力ながら支援させて頂ければと思います」


「うん、じゃあ、悪いけど暫くサンマール王国で家族ぐるみでお付き合いお願いします」

「「ハイ!」」


 なんとなく、木刀の印の原因も分かった。

 あと、アリアが凄く心配してくれていることもわかった。


 さて、あとは……。

 マリア様と妖精の長達かな?



いつもお読みいただきありがとうございます。

毎週金曜日22時更新に戻る予定です。


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