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7-29.後始末 ニーニャ

 トレモロさんとレイさんのお見送りは済ませたので、ニーニャの所に挨拶に行こうかな?

「ニーニャ、ただいま。色々とご迷惑をお掛けしました」

「ヒカリ、頑張ったんだぞ。他の手段が有ったかもしれないが、非常に早く目的が達成できることになるんだぞ」


「え?」

「運河の作成が終わるまで3~5年掛かると覚悟していただが、3ヶ月もあれば形になるんだぞ。これなら魔族攻略も早く着手出来るから準備を進めたんだぞ」


「ええと……。

 運河の材料と人集めの話は上手く行ったってステラからさっききいた。あと、ニーニャが運河の基本設計と必要な石材の量も計算してくれたって。そういうのは私が凄いんじゃなくて、ニーニャやステラが凄いんだよね。感謝してるよ。

 ところで、魔族攻略の準備って?」


「ヒカリは相変わらずなんだぞ。ただ、まぁ、だから人が動くのだし……。

 魔族攻略の準備として、魔族の金貨5万枚を追加で作ったんだぞ。これだけあれば、きっとカジノの景品の斧をゲットできるんだぞ」


「あ~。ええと……。

 運河が出来たとしても、上級迷宮の商用資源化とか、コーヒーやチョコレートの商品化が軌道に乗って無いし……。

 魔族の攻略は法王の話、カジノの話、飛竜飼育の話と課題も多くて……。

 まだまだ問題が山積みだよ……」


「カジノの話は先に潜入しているフウマがシズクさんに念話を通しているんだぞ。詳しくはシズクさんに聞けばいいんだぞ。少なくとも必要な資金は用意できたはずなんだぞ。

 飛竜の卵の盗難の話は冒険者ギルドから裏情報を取って、飛竜の卵を魔族に横流ししていることが分かったんだぞ。リサちゃんとユッカちゃんが怒っているからヒカリが何とかするんだぞ。

 最後の法王の話は分からないんだぞ。カサマドやテイラーと良く話をしてからフウマに話を繋ぐと良いんだぞ」



「ニーニャ、凄くない?」

「シオンくんが凄いんだぞ」


「え?」

「『魔族のカサマドさんの情報を鵜呑みにせずに、僕たちで情報の裏取りが出来たら良いですね』って、皆の前で感想を言ったんだぞ。そこからはフウマや冒険者ギルドに当たって情報収集をした結果が今の状態なんだぞ」


「シオン凄くない?」

「あれはワザとやっている可能性があるんだぞ。

 ワザとでないとすると、厄介な人物として命を狙われる危険性があるんだぞ」


「そっか……。なら、大丈夫かな……?」

「ヒカリより、よっぽど危なく無いんだぞ」


「いやいや。さっきトレモロさんに似たこと言われたけど、私は結構真面目にやってるよ?」

「破壊不能の印が付いた木刀を壊すのはヒカリしか有り得ないんだぞ」


「あ、あ、あ!それそれ!」

「なんなんだぞ?」


「ニーニャの目利きからしてさ、破壊不能の印って木刀に付与したりするものなの?一般的なコーティングとかと違うんだよね?」


「コーティング単体では中身を壊すエネルギーをぶつければコーティングは無力なんだぞ。けれど、破壊不能の印が付いた物は先に印を破壊する必要があるんだぞ。

 そんな手間のかかる印を木刀に付与することは普通は無いんだぞ。するとしたら、ヒカリぐらいなんだぞ」


「ニーニャ。私はそんな高等な印とか描けない。ましてストレイア帝国の騎士団が持っているような備品の木刀に付与したりしないよ」

「以前帝都を訪問した際に、ストレイア帝国の騎士団員の装備品を確認したがそのような印を見かけなかったんだぞ。ただ、練習用の木刀まで確認した訳では無いが……」


「あ、木刀も全部に破壊不能の印が付いている訳では無いみたいよ。私の模擬戦の前の試合でリサが相手の木刀をスパッと切ってるもん」

「うむ……。だとすると……。ひょっとすると……」


「何か分かった?」

「ヒカリが破壊した木刀の破片を見せて貰ったんだが、木の質がアジャニアやサンマール王国ので採れる広葉樹の木が使われいたんだぞ。硬くて目が詰まっていて加工しにくいのが特徴なんだぞ」


「あ、そうすると、硬すぎて私の魔力に耐えられずに破裂しちゃった?」

「馬鹿言うんじゃないぞ。

 木と木がぶつかって裂けたり割れたはりする。ユッカちゃんやリサちゃんが魔力で切断するのも判るんだぞ。だが、木刀がはじけて爆発するようなことは、いくら硬い木を使っていても起こらない現象なんだぞ」


「ごめん……。ニーニャの話を最後まで聞きます」

「つまり、ヒカリでもストレイア帝国でもなく、サンマール王国かアジャニアで作られた木刀で、そのときに印が描かれた可能性があるんだぞ」


「うんうん。それで?」

「誰が何のためそんな木刀を作ったか判らないが、ヒカリ以外に普通じゃないことをしそうな人をサンマール王国やアジャニアで見つけた方が速いんだぞ」


「そっか。ズィーベンさんがサンマール王国の元騎士団員から借りた可能性もあるね」

「ヒカリの奴隷以外でヒカリと似た様なイタズラを考えて、それを実行できる人は知らないんだぞ。とすると、ストレイア帝国の騎士団に在籍していたならアイン、クワトロ。サンマール王国ならシズクさんとミチナガ様なんだぞ」


「アイン以外はみんないるね。ただ、サンマール王国で私が奴隷にしていない人もいるし……。急がない程度に情報を集めてみるよ」

「無闇に木刀を破壊するのは止めた方が良いんだぞ」


「あ、だから……。いや、何でもない……」

「ヒカリ、どうしたんだぞ?」


「ううん。木刀のことはどうでもいいや。

 過去の対戦相手が破壊不能な木刀を持っていなくて良かった思うことにするよ。

 それよりも運河だね」


「設計、材料、人が足りた。あとは道具と技術と食料と賃金なんだぞ」


「それってどういうこと?」

「石と石の隙間を埋めて固める材料を作るためには、砂利や砂が大量に必要になる。その製造と運搬する道具がないんだぞ。


 技術は運河の水をクロ先生に堰き止めて貰えても、そこから川底を掘ったり、そこに石を整形して並べるための技術が必要になる。人にはそれらの道具を使いこなす技術を身に着けて貰う必要があるんだぞ。


 最後の食料と賃金については、一時的な人望と奴隷印で行動を束縛することができたとしても、部分的な活動では将来が見えないし、食料不足で疲れが溜まれば不満も溜まることになる。そこを十分な食料で気力を回復し、達成できた将来に対する褒賞を用意しておくことで将来的な意識改善が進むんだぞ」


「ニーニャ、凄いねぇ……」

「これほど大規模では無いが指揮した経験もあるんだぞ。ドワーフ族よりも人族の方が目先の個人の利益に執着しゅうちゃくする傾向が強い。十分に備えた方がいいんだぞ」


「ニーニャ、他に気をつけた方が良いことはあるかな?」

「運河が完成するまでなら関係ないが、完成後の利権の調整、技術や道具の秘匿は重要になるんだぞ。他者の成功を横から掠め取ろうとするのは種族を超えて当たり前のことなんだぞ」


「う……。目先の準備しか考えてなかった……」

「木刀を壊すよりマシな話だし、まだ着手段階だから成果が出始めるまでに準備する時間は十分にあるんだぞ」


「そ、そうだよね……。少しずつ勉強するよ」

「元気になったら、次に向けて頑張るんだぞ。みんなヒカリに協力してくれるんだぞ」


「ニーニャ、ありがとうね。そしたら他の人達にも心配をかけたことのお詫びとお礼の挨拶してくるよ!」


「あ……」

「え?」


「いや……。でも……」

「ニーニャ?」


「うん……」

「ニーニャらしくないね?」


「念のために言っておくんだぞ?」

「うん。どんとこい!」


「リサちゃんなんだが……。気づいているか?」

「なんか、大分疲れているみたいだね。私にお粥を食べさせてくれてから良く寝てるよ」

「気づいていなかったか……」

「え……」


「ヒカリが倒れたのは自分のせいだと思い込んでいるんだぞ。


 でも、対戦した相手を滅ぼすことも出来ず、目覚めぬ母親に謝罪することも出来ず、ステラの様に秘薬を使うとこも出来なければ、シオンやゴードンの様にヒカリの好みに合った病人食を提供することも出来ない。


 看病出来ないからといって、対魔族の指揮を執ることもできなければ、サンマール王国の経済改善もの指揮も出来ず、ましてチョコレートやコーヒーを作ることも出来なければ、運河造成に貢献することも出来ない。


 精々平気を装って、お父さんであるリチャード殿下へ同行して上級迷宮の訓練に付き合うことが出来ただろうが、お母さんのそばを離れることが出来ずに悩み続けていたんだぞ」


「リサのせいじゃ無いのに……」

「何も考えない普通の幼児ならなだめようが有ったんだぞ。

 だが、皆が知っている通り、サンマール王国の聖女候補にまでなり、騎士団の補佐役も務めた。そして死と接する程の苦境を乗り越えての輪廻転生なんだぞ。


 その転生した魂を救ってくれている母親への想いは、普通の幼児が母親に感じる本能の範囲を超えているんだぞ。せめて転生前の人生がもう少し平凡な物であれば、母親であるヒカリに対する考え方も、もう少し柔らかかったかもしれないが……。


 そこは単に看病疲れとかでは語れない重みがあるんだぞ。単なるお礼や感謝とは別にケアをしてあげる方が良いんだぞ」


「リサが作ってくれたおかゆをこぼしちゃって、凄く不機嫌になって……。なんか、疲れてイライラしてるのかなぐらいに……」


「私はその場にいなかったから判らないが、シオンくんやゴードンの作る食事を見て、リサちゃんが出来る精一杯の物を用意していた可能性があるんだぞ。

 自分が寝込んでいる母親に貢献できる唯一の行為をひっくり返されたら、その絶望たるや……」


「あ、うん。

 深くは考えてなかったけれど『リサのおかゆが食べたい』って言ったら、もう一回作ってくれて、最後まで口に運んで食べさせてくれた。その後は私が眠くなるより先に寝ちゃったね」


「お母さんの意識が戻ったことと、自分が少しでも貢献出来たことによる贖罪の気持ちが達成できて、きっと色々な重みから解放されたんだぞ」


「そっか~。リサにも悪いことしたねぇ……。

 途中までは、というか最後の方まで、ほとんど作戦どおりだったんだけどね」


「上手く行く、行かないということと、リサちゃん自身が責任を感じることは別問題なんだぞ」

「うん、わかった。リサの気持ちが少しでも軽くなるように、そしてこの先色々なことをチャレンジする意欲が失われないようにケアしてみる。

 ニーニャ、いつもありがとう!」


「うん。良いんだぞ」


 よし!ニーニャにもお礼と挨拶を終えて勇気を貰ったよ。

 さて、次は……。 

いつもお読みいただきありがとうございます。

お盆休み中は不定期更新です。

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