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7-27.ステラの本気

 私の胸で寝てしまったリサを抱えたままだけどステラから話を聞かないとね。

「ヒカリさん、入っても宜しいでしょうか?」

「あ、ステラ、どうぞ~」


 テントの外からステラが声を掛けて、中に入ってきた。


「ヒカリさん、食事は十分に足りましたか?」

「はい。リサが作ってくれました。今は十分です」


「分かりました。お体の調子はどうですか?何か不調や痛いところなどはございませんか?」

「さっき、軽く体を伸ばしたり、調理場の方へ歩いてみたけど、それで感じる異常は無かったです。それよりも背中がツルツルでビックリしました」


「ヒカリさんの背中、凄いことになっていましたよ。妖精の長やユッカちゃんにも加わって頂いて全力で修復させて頂きました」


「そう言われると、なんだか怖くて詳しく聞けないね」

「ええ。ユッカちゃんや私では理解できない操作や施術が行われていました。ヒカリさんなら理解できたかもしれませんが。私たちは言われるままに施術やエーテルの操作を繰り返しただけだわ。一部ウンディーネ様からレシピを頂いた秘薬を使ったけれど、それがどの程度効果があったのか私にも分かりません」


「背中のケガことはみんなに感謝してお終いにしておこう。

 さっき、ステラが何か所かに念話を入れてくれていたみたいだけど、私が聞いても良い?」


「ええ。まぁ……。

 簡単に言うと、ヒカリさんが重傷を負って昏倒していることを隠す必要が有ったの。

 だって、私も受験者全員を抹殺したいと思ったもの。でも、折角ヒカリさんが我慢して手に入れた仲間を私が短気を起こして無にしたら駄目でしょう?私の他にもこの件で立腹している人が居て、その人たちへヒカリさんの目が覚めたことを連絡して安心して貰ったわ」


「あの、あの……。なんだかごめんなさい」

「ラナちゃんの采配、看病してくれたシオンくんとゴードンさん、そして一番心配していたのがそこに抱かれているリサちゃんよ。

 ユッカちゃんがリサちゃんの代わりリチャード殿下達と一緒に迷宮に潜っているわ」


「ああ、そっか。もう既に迷宮訓練班は出発しているんだよね……」

「ええと……。総勢で7名だったかしら。

 訓練者がリチャード殿下、魔族のカサマドさん、うちのスチュワートの3人。支援役がナーシャ、クレオさんとユッカちゃんの3人。あと飛び入りゲストでマリア様が加わったわ」


「マリア様もですか?」

「『私もちょっと小銭を稼いでみたい』ですって。無理をされず、罠に嵌らなければマリア様なら十分に探索できると思いますわ」


「ま、マリア様の行動力にはいつもビックリさせられるけど、迷宮訓練班が無事に出発した様で何よりだよ」


「あとは……。

 ヒカリさんが一生懸命試験をしていた受験者と残りの騎士団員の班編成と運河造成かしら」


「すみません。試験の結果も班編成もせずに……。

 そういえばズィーベンさんとペアッドさんという優秀な人がいたはずなのですが……」

「二人とも優秀ね。ヒカリさんが大事にしたがるのも分かるわ。

 ズィーベンさんはクワトロさんの奴隷にしました。クワトロさんがヒカリさんのお眼鏡に適う様に鍛えてくれますわ。

 ペアッドさんはチーム全員でゴードンさんの代わりにヒカリさんが造った拠点で皆さんの賄いを作っていますわ」


「あ、賄いは助かります。

 でも、受験者の班分けと班ごとのリーダーを立てないとニーニャやドワーフ族の方達の負担が大きいかな?」


「まず、ヒカリさんが模擬戦で見せた戦いは意味があったわ。少なくともあの場に居合わせた100人はユッカちゃんや王姉殿下ではなくて、ヒカリさんの奴隷に移して欲しいとの要望があったわ。当然、却下したけれども。

 もう、その時点で試験とか班分けは不要ね。何でも言うことを聞くわよ。ただ、それでも指揮官は立てないといけないから、ズィーベンさんという例の人の配下の5人を指揮官に立てて、あとは受験者が班分けしていたチームを上手く活用して班編成をした感じかしら。詳しくはトレモロ様、コウさん、カイさんが書類に残してくれているからそれを確認すると良いわ。


 あ、トレモロ様とレイさん達は明日にここを出るわ。『ヒカリ様が無事なら私たちのミッションをやり遂げるだけです』ですって。レイさんも心配していたから、今晩ならギリギリ会えるのかしら?」


「そっか。みんな夫々自分の役目を果たしに行動を始めているんだ……」


「ええ。私達も妖精の長達もヒカリさんの治療が終わったので久しぶりに本気をだしたわよ?」


「え?ステラの本気?」

「クロ先生、ユッカちゃん、アリアと私の4人で石を運んだのよ……」


「いや、でも、私の治療をしてくれたのが一昨日でしょ?」

「ヒカリさんが目を覚ましたときに驚かせたいでしょう?」


「ええと……。いつもみんなに感謝しているから、そんな……。

 そもそも私の治療をしてくれただけで十分有難いことなのに……」


「石を大体1000個運んだわ。マリア様が買い取った土地の密林に隠してあるけれど、ヒカリさんの拠点からそれ程遠くない場所よ。運河の造成に使えるのじゃないかしら?」


「1000個って……。どこから切り出したか判らないけれど何往復したの?」

「1人1回100個の運搬。3人が3往復で900個というところね。ユッカちゃんは石の切り出しに専念してもらったので最後の100個だけだったわ」


「それだけあれば護岸工事ぐらいはできるかもねぇ。足りない分は王姉殿下が帰ったら飛竜さんにも支援して貰っちゃえば良いかな?」


「ヒカリさん、あまり驚かないわね……」

「え?いや、凄いです。流石です。でも、運河作るにはまだ足りないかな~って」


「ええと……。ヒカリさんに石の大きさを伝えていなかったわね」

「はい。でも、1辺が2~3mだとしたら凄く大きくて大変だったんじゃない?」


「ニーニャさんが必要な石の量を簡単に計算してくれたの。


『ヒカリは橋の橋脚を建てたようなやり方で、人工の川を作るつもりなんだぞ。だから、護岸だけでなく川底にも石を敷き詰めて更に川の高さまで石を積み上げるUの字型の建築物を作ることになるんだぞ。

 この石の量を計算すると、単純計算で1辺30mのコの字型に敷き詰めて、長手方向は海の深度が深まるところまで約2km。厚さ50cmの石板で造るとすると、1辺10mの石が100個ぐらいあれば、最低限足りるはずなんだぞ。川底の強度を上げたり、運河の幅を広げたり、港や護岸の領域を広げるともう少し石を用意しておくと助かるんだぞ』


 ですって。

 だから、ヒカリさんを驚かせるために1辺10mの石を1000個ほど用意したわ」


「ええ~~~?」


 って、大声出したらリサが起きちゃう……。

 てか、びっくりだよ。なんなんだよ……。

 飛竜とか要らないじゃん!


「ヒカリさん、驚いたかしら?」

「何をどうやったか判らないけれど、相当びっくりだよ。飛竜さんの出番は暫くないんじゃないかな?魔族の国まで石板で道を作るとかすると、それなりに必要になるかもしれないけれど……」


「夜中に最低限の灯りに制限して4人で運んだ甲斐があったわ」

「いやいやいや……。それはもの凄く大変だったと思うよ……」


「でも、ヒカリさんが運河を設計できるドワーフ族の助っ人を連れてきて、指揮に従う人族100人を掌握して準備したなら、あとは運河の材料だけでしょう?」


「いや、それはそうなんだけど……。

 たぶん、三ヶ月とか準備に掛かって、それから1年ぐらいかけて工事しても終わらないとか考えていたよ……」


「ヒカリさんが元気になって、驚かせることができて、ヒカリさんの計画が早まって私はとても嬉しいですわ」


「私が寝てた方が上手く行く?」

「ヒカリさんがやりたいことを皆が待ち望んでいるのよ」


「うん?」

「ヒカリさんが本気で一生懸命取り組んでいる姿を見て、皆がそこに巻き込まれるの。ヒカリさんが何もせずに座っているだけなら、私だって無理はしないで好きなお茶を飲んで暮らすわ」


「そう……」

「ヒカリさんとリサちゃんで戦った模擬戦も同じよ。

 試験官として美味しもの食べて、楽に指揮して、受験者を追い立てているだけでは纏まる物もまとまらなかったはずよ。

 見せ場を作って、相手の立場に合わせて勝利して、挙句の果てには致命傷を負いそうな対戦相手を庇ってケガをするとかね。

 力も技術も騎士道としての心も全てが敵わないと感じたし、ヒカリさんの意思に感銘を受けたのだと思うわ」


「ステラに褒められると、ちょっとこそばゆいし、恥ずかしい……」

「私はヒカリさんもヒカリさんの家族も仲間も大事ですわ。

 だから本心から接しているだけなの」


「なんか、ますます照れちゃう……」

「そんな可愛いヒカリさんの姿はとても貴重ね。

 きっとリチャード殿下もご覧になったことが無いかもしれないわね」


「え?そ、そうかな?」

「多分そうよ。でも、それでも上手く行っているのだから良いんじゃないかしら?」


「上手く行っているか判らないけれど、大事にしてくれているのは凄く感じます」

「私もスチュワートがもう少し私に歩み寄ってくれたら、師匠を追って旅に出なかったのに……」


「あれ?でも、ステラの旅の目的は種族の宿命が何とかって……」

「ヒカリさんと一緒に暮らす様になってからどうでも良くなったわ。スチュワートとの価値観の違いもどうでも良くなったわね」


「それは良いことなのか……」

「ヒカリさんが気にしなくて良いわよ。

 それより、元気になったならここをたたんで、ヒカリさんの拠点に戻りません?」


「あ、はい。ここに私達5人しかいないのであれば、無事な姿を皆に見せるためにも戻りましょう」

「ええ。ヒカリさんが元気なことが分かれば、皆も元気になるわ」


 うん、なんだかステラに褒められ過ぎで、ちょっとのぼせてる。

 でも、まぁ、ケガの後遺症とかリサのお粥で体が火照っているせいかも?


 と、とにかくみんなに心配かけちゃったね。

 拠点に戻ろう!

いつもお読みいただきありがとうございます。

お盆休みなので、少し追加して投稿します。

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