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7-22.試験2日目(4)

 試験2日目。

 試験官の昼食は問題ないけど、大人数に提供できる宿題を貰ったねぇ……

 貴族のための食料調達だけでなく、普及しやすい素材と価格帯の料理も考えないといけないかもねぇ……。兵站部隊にペアッドさんを組み入れるとすれば、そういった人の意見も重要だし……。

試験終わって、運河の作業員が大量に必要になるからその賄い飯を考えれば良いのかな。まぁ、試験しながらボチボチ考えればいっかな……。


 と、心配そうに見つめるユッカちゃんから声が掛かる。


「お姉ちゃん、大丈夫?これ美味しいよ?」

「ユッカちゃん、心配してくれてありがとうね。

 この試験が終わって、個人の特性に応じて働いてもらう内容を振り分ける。そのとき多くの人に運河の造成してもらうメンバーが出てくる。その人達に気軽に食べて貰う料理をかんがえなきゃな~って考えてただけだよ」


「北の大陸で橋を架けたときは、クジラ肉とパスタが多かったよ。美味しかったし、簡単だったよ」

「クジラは無理だね。シャチも昨日の感じからすると難しい。他の魚とかを考えてたんぱく源にする必要があるね。

 あと、南の大陸では小麦が主食じゃないから米とかトウモロコシ、豆、ジャガイモ、バナナで炭水化物を用意する必要があるね。

 今度はその組み合わせで簡単に美味しく料理できる方法を考える必要があるよ」


「お米は焼きおにぎり、トウモロコシは焼きトウモロコシ。お豆は納豆。ジャガイモはフライドポテト。バナナはフルーツ?」


「焼きおにぎりも焼きもろこしも納豆も醤油が無いね。

 フライドポテトは油で揚げる手間が掛かるのと、軍事行動中は不便かもね。

 バナナは……。私も良く分からないかな?けど、嵩張って日持ちがしなさそうだから、バナナチップスみたいな処理が必要だね」


「お姉ちゃんのいじわる?」

「ヒカリ、ちょっと待ちなさい。納豆は何かしら?」


 ユッカちゃんの反撃に加えて、黙って聞いていたラナちゃんからの追い打ちが掛かったよ。手早く対応しないとね。


「ユッカちゃん、そこをペアッドさんと相談しながら良い物を考えたいよ。

 ラナちゃん、アジャニアで食べた食事だと思いますが……」


「ヒカリ、アジャニアの食事?」

「はい」


「ヒカリ、焼きおにぎりは覚えているわ。それとお煎餅も。

 ほとんどヒカリと行動していたはずなの。

 何故、納豆の記憶が無いのかしら?」


「ええっと……」


 確か、アジャニアが津波被害みたいな状態だったんだよね……。

 上陸に手間取りそうで、その待ってる間が暇だったからコッソリ密入国したんだっけ……。


「ユッカ、ユッカは誰と食べたか覚えているかしら?」

「ええと……。ルシャナさん、ステラさん、ニーニャさん、アリアさん、お姉ちゃん、私の6人だったかな?」


「私に船で留守番をさせていたときかしら?」

「ラナちゃん、そうかもしれません……」


「ヒカリ、納豆は美味しいのかしら?」

「大人数の賄いには向かない料理ですね。日持ちもしませんし」


「ヒカリ、美味しいかどうかを聞いてるの。耳が悪いの?頭が悪いの?」


 あっ……。ラナちゃんが本気で怒ってる。

 いや、ええと……。

 ワニのガリバタ醤油が大人数向きでは無いって話をしていたんだよね?

 何でこうなったかは判らないけど、とにかく返事をしないと。


「納豆は個性の塊ですので、慣れない人には違和感があると思います」


「ヒカリ、納豆は今度で良いわ。ペアッドさんを待つ間、受験者のポイントの記録をつけましょう」


 う、うん……。

 素直に引き下がってくれてラッキーだよ。

 たぶん、ガリバタ醤油の一口ステーキの方が美味しいと思うよ。

 じゃ、大人数向けの料理はゆっくり考えるとして、昼食を手早く終えてから試験官としての仕事に戻ろうかな。


ーーー


 2日目の昼食に向けての狩りの成果は良好な結果だった。各班ごとに昼食分以上の狩りの成果を上げることが出来ていたよ。チームワークも良かったのだろうし、身体強化の効率が良くなったことも効いていたのかもしれないね。


 受験者としてみたらどんな感触なのか、獲物を捌いているズィーベンさんに直接話を聞いてみることにするよ。


「ズィーベンさん、今日は狩りの成果が良いですね。皆様どんな感じですか?」

「ヒカリ様、昨日教わった身体強化のスキルが身に付くと、こんなにも動物の狩りが楽になるのですね。皆が感心しておりました」


「へぇ~。筋肉痛とかも残っているはずなのに?」

「拠点からここに来る途中で、ヒカリ様がお話しされていた通り、体を動かすことで徐々に痛みが解消されました。

 今晩は予めヒカリ様のご指導を受けて、翌朝に備えたいと皆が申しております」


「へぇ~。みんな素直だね~。鬼試験官とか、そういう話にはならないの?」

「笑い話として茶化す形でヒカリ様の名前が挙がることがございますが、本気でその様に思っている者は居ないかと」


「ふむ~。ズィーベンさん、深く突っ込んだ話をしてもいいかな?」

「は、はい。何でしょうか?」


「不穏な兆候は無い?

 1つ目は、奴隷に落とされたことに対する恨み。

 2つ目は、試験官からの無茶ぶりに対する恨み。

 3つ目は、班分けの不公平性に基づく他者への不満。

 もし、その他の懸念事項があれば、それもお願い」


「正直に申し上げます。


 まず、2番目に関しては先ほどの通り、愚痴交じりに雑談として話題にするものはおりますが、それを逆恨みして本気で試験官たちに逆らおうとする様な馬鹿者は居ません。


 次に、3番目になりますが、お昼の狩りまでは順調であると考えております。ヒカリ様が朝の時点で班分けの目的とポイントの獲得の仕方をご説明頂いたことが良かったと思います。ただ、この先疲れがたまってきて、精神的に不安定になり、投げやりな行動を始める者も居るかもしれませんが、ここは判りません。


 最後に1番目及びその他の懸念事項になりますが……。

 予め申し上げますと、既に発見できた者が5名おりまして、私の独断で処分済みです。また、補充は試験を受けずに残っていたメンバーの中から私が信用できる者を選出し、名簿のメンバーの身代わりとして参加させております。この摩り替えは、替わった当人と私しか知らないことになっております。

 罪状としましては、ヒカリ様達の試験官の情報とそのスキルを王姉殿下に通じる者に漏洩する恐れがありました。


 簡単ではございますが報告は以上になります」


「あぁ……。優秀だね……」

「……ヒカリ様?」


「言葉通りだよ。問題が起こる前にその芽を摘むことが出来れば最高だね」

「ですが、私は2つ過ちを犯しております。

 1つは、許可なく罪状を私が判断したこと。

 2つ目は、他人の私有財産である奴隷を故意に損壊したことです。

 何なりと処罰を受ける所存でございます」


「先ずさ、王姉殿下に情報が洩れる前提は無かったんだよ。王姉殿下にはそろそろ帝国に戻って貰って、次の作戦を実行して貰えるつもりだったんだよね。ここを防げたのは非常に大きい。

 次にさ、ズィーベンさんが絶対の信頼を寄せている人が5人居て、その5人もズィーベンさんに絶大な信頼を持っている。その情報を提供してくれたことはとても心強いよ。

 だから、感謝はすれど、私があなたを罰する理由は見いだせない」


「いや、ヒカリ様がその様に申されましても、私の所有権はユッカ様にございまして、私はヒカリ様の許可だけでは話が済みません」


「うん?じゃぁ、ユッカちゃんから貰っても良い?」

「はぁ? 

 で、では無くて、大変失礼しました。

 それはどういった意味でしょうか?」


「貴方の所有権をユッカちゃんから私に移すだけだけど?」

「で、ですが!私は上皇様のお孫さんであるユッカ様であればこそ、奴隷の身分をうけいれておるわけでして、それが叶わぬのであれば全面戦争も辞さない覚悟でございます」


「う~ん……。

 私がユッカちゃんを家族として保護している期間、貴方に色々と支えて貰いたいと思っての提案だったけど……。

 まぁ、こじれるなら余計なことは言わないね。忘れて」


「ヒカリ様?」

「うん?あぁ、気にしなくて良いよ。これまで通りで」


「いや、そうでは無くて。ヒカリ様がユッカ様の保護者なのですか?」

「上皇様にその権利を10年間貰った。残り9年ぐらいかな?」


「いやいや、それは有り得ません。ヒカリ様の勘違いでしょう……」

「え?ごめん。それは私が意味がわからない。ユッカちゃんを呼ぶよ」


 みんなに交じって狩りの獲物を捌いているユッカちゃんを呼んでみた。


「ユッカちゃん、私はあと9年ぐらいユッカちゃんと一緒にいる権利があるよね?」

「おじいちゃんとの約束の期間ね……」


「ヒカリ様、ユッカ様が悲しそうです。何かユッカ様にされたのですか!

 上官のカシムが黙っていても私は奴隷主で無いヒカリ様に全力で立ち向かいます!」


「ん……。多分違うよ。ユッカちゃんが悲しそうなのは……」

「ズィーベンさんですよね。お姉ちゃんは悪くありません。

 私はおじいちゃんも大切ですが、ヒカリお姉ちゃんと別れる時期が来ることを思うと悲しいの」


「ユッカちゃん、ごめんね。悲しい思いさせて」

「ううん。大丈夫」


「ユッカ様、どういうことでしょうか?何か弱みを握られているのでしょうか?」

「ん……。ズィーベンさん、ちょっと待ってくださいね。

 お姉ちゃん、どうしてこうなったの?」

「ズィーベンさんが優秀だから、『ユッカちゃんから私に所有権移して良い?』って聞いたらこうなった……」


「優秀なの?」

「かなり」


「誰と同じくらい?」

「フウマやクワトロと同じくらい信頼できる」


「お姉ちゃん、凄い人がみつかったね!」

「うん。鍛えれば強くなるし、いずれはユッカちゃんのサポートもして貰える」


「観光迷宮に入れる?」

「うん……。そういった才能は確認してないから……。

 今だとリチャードと似た様なものかな?」


「そう……」


 いや、ユッカちゃん!

 うちのリチャードも、結構頑張ってるんだよ!


 と、ここでズィーベンさんから声が掛かった。


「正直申し上げまして、狩りの腕前はお二人に敵わないかもしれませんが、1対1の腕比べであれば婦女子に負ける私ではございません!」


「でも、身体強化とか知らなかったでしょ?」


 おっとっと。

 つい、会話に割り込まれた上に頓珍漢な内容だからイラっとして脊髄反射で答えちゃったよ!ちょっと大人げないね……。


「ヒカリ様から教わった身体強化は長時間の移動に向いた呼吸法になります。1対1の戦いにおいては、一瞬の隙を突いた駆け引きが重要になります。ここは経験がモノを言いますので、過去の訓練時間の差はそう簡単に埋められませんが?」


 あ~~~。

 どうしよっかな……。

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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※先週、予約設定ミスしていたことに今週気が付きました。

 2週間ぶりとなってしまいましたこと、お詫び申し上げます。

※リアル事情などありますが、頑張って続ける気はあります。

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