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7-13.試験1日目(8)

 馬車を率いるコウさん達とラナちゃんを残して、100人と試験官3人で割と良いスピードで帰ってきた。

 1時間くらい?

 片道40kmだから時速40kmで走り切ったことになるね。行きは休憩を2回挟んで3~4時間かけて移動したけれど、帰りは休憩なしで1時間。

 結構、良いんじゃない?

 みんな合格だよ!


 さて……。

 また、ここから夕ご飯に備えて海の幸を取りに行くわけだけども……。


「トレモロさん、カイさんただいま。

 コウさんは後からラナちゃんを乗せて帰って来ます。

 これからうみさちを取りに行こうかと思いますが良いですか?」


「ヒカリ様、お帰りなさい。

 船やボートが必要であればカイにお申し付けください。

 また、漁に必要な銛、釣り具、網、生餌いきえなど必要であれば適宜お申し付けください」


「トレモロさん、ありがとうございます。

 じゃぁ、またユッカちゃんと漁の見本を受験者に見せるために行ってきますので、リサを漁の間だけ預かって貰えますか?」

「承知しました。リサ様はそれで宜しいのでしょうか?」


「リサ、お留守番良いよね?」

「お母様、私は空の飛び方は習いましたが、海の泳ぎ方は知りません」


「そっか……、なら尚更お留守番だね。

 ユッカちゃんと二人で行ってくるよ。

 

 ユッカちゃん、今回は何分ぐらい必要?

 30分ぐらいあれば良いかな?」


「お姉ちゃん、遠いところに居るクジラとか取りに行くならそれぐらい必要かも?

 近くのお魚とかエビ、カニなら……。

 でも30分ぐらいないと、みんなの分は獲って来れないかも」


 ユッカちゃんは優しいねぇ……。

 昼間の狩りの例からして、彼らが漁に失敗して夕飯のおかずが無くなることを心配してるんだね。でも、まぁ、受験者はそれが試験なんだから……。


 うん……。

 これは、あれか。ユッカちゃんはお昼の狩りで自分なりに丁寧に教えたつもりだけど、結果として5ポイントしか狩りで得られなかったわけだから、今回もみんなが漁に失敗するし、教えても無理って直感的に判ってるのかもね……。


 試験の厳格さとユッカちゃんの気持ちを両方考えると……。

 と、考え込んでるとユッカちゃんから確認が来たよ。


「お姉ちゃん、30分じゃ短い?みんなの分が集まらない?」

「ううん。みんなが漁に行く試験時間と、その試験時間で魚を獲って来れるかを考えないといけないかなって考えていたよ」


「お姉ちゃん、空を飛べない人がいたから、きっと泳げない人もいるよ。

 泳げても魚を獲れない人もいるよ。

 私とお姉ちゃんで夕ご飯のおかずを準備しないと……」


「じゃあ、もう、カイさんとトレモロさんに試験は丸投げしておいて、私とユッカちゃんで晩御飯のおかずを獲って来よう。

 トレモロさん、カイさん、適当に試験しておいて」

「「は、ハイ!」」


 突然の無茶ぶりでも元気よく肯定の返事をしてくれるトレモロさんとカイさん。彼らに任せて私とユッカちゃんは美味しい晩御飯のおかずを取りに行こう。


「じゃ、ユッカちゃん、二人で先に出発して取りに行こう」


ーーー


 相変わらず水着とか無いので裸になる訳ですが……。

 ちゃんと光学迷彩を掛けてから服を脱ぐ。

 あとは、凍らせた獲物をまとめて持って帰って来るための網をカイさんの準備した道具から貰ってきて……。

 もう、ここでは姿を消しているからユッカちゃんとは念話で話を通す。


<<ユッカちゃん、準備OK?>>

<<うん!>>


<<タコ丸は調理に時間がかかって、100人分は用意出来ないから諦めてね?>>

<<うん!タコもいなくなっちゃう!>>


<<そうしたら、クジラ、サメ、カツオ、マグロとかの大き目な獲物が良いね>>

<<ピンクとかオレンジのクジラは危険。クジラはやめよう>>


<<じゃぁ、イルカ、シャチ、サメとか、その辺りの凶暴な動物にしよっか>>

<<大きくて凶暴でクジラじゃない生き物ね?分かった!>>


 今回は競争とかポイントとか必要無いからユッカちゃんと沖合の方まで飛空術で飛んでくる。そこその沖合まで来たところで索敵を掛けて大き目の生き物を探索する。


<<お姉ちゃん、あれは?大きいよ!>>


 ユッカちゃんが指さす方向を確認すると、大きな生物反応があるんだけど……。

 あれは巨大なクラゲだね。エチゼンクラゲみたいな2mサイズの大きなクラゲ。

 おかずにならないからや止めよう。


<<ユッカちゃん、あれはクラゲといって、水分だらけの生き物。

 食べられる部分がほとんどないから、違うのにしよう>>


<<お姉ちゃん、あの円盤みたいなのは?>>

<<あ~。エイかな。私は食べたことが無いけど、サメとかの類と同じみたいで臭みを考えなければ美味しいらしいよ。毒があったり、電気を持っている種類がいるから捕獲と、捕獲した後の処理に気を付けてね>>


<<ん……。じゃぁ、後回し。もっと美味しいの探そう!

 じゃぁ、あれは?

 なんか四角くて、平べったくて、魚っぽくない布団みたいなの>>


<<ええと……。

 あれ?あれはマンボウ?

 確か白身で美味しいって聞いたことがあるけれど……

 試しに食べてみようか>>


<<分かった!獲って、凍らせて、網に入れておく!>>


 ユッカちゃんばかりに任せておくのも悪いから私も何か探そうかな?

 

 ん……。

 小さい魚は沢山いそうだけど……。

 あとは小さな魚の群れも検知できるけど……。

 大きな魚ねぇ……。


 あ、あれはシャチ?

 私は食べたこと無いけど捕獲して良いのかな?

 また、海神様のペットとかじゃなければ良いけれども……。

 念のためにエイサンに確認しておこう。


<<エイサン、シャチみたいな大型の肉食動物が居るんだけど、あれは捕獲して食料にしても良い?>>

<<ヒカリ様、今はどちらに?>>


<<サンマール王国の沖合でユッカちゃんと漁をしてるよ。

 この前みたいにクジラを獲って海神様のペットだったみたいなことは避けておきたい>>

<<ヒカリ様、その辺りに出没するシャチは手ごわいです。

 我々海人族でも手を焼きます。

 奴らは速度、賢さ、集団戦闘、凶暴性を兼ね備えています。

 こちらも編成を組んで各個撃破をするのが彼らに勝つ手段となります。

 もし宜しければ、我々も捕獲の支援に向かいましょうか?>>


<<うん……。大丈夫。獲れなかったら他の魚とかを夜ごはんにするよ。

 ちょっと、100人分のおかずが必要だから大き目の獲物を探していただけです>>

<<承知しました。手の空いている者をそちらへ向かわせかます。

 シャチ以外でも海の幸を食料として調達するのであれば支援可能と思います>>


<<わかった。ありがとうね>>


 エイサンとの念話を止めて、ユッカちゃんの様子を伺う。

 もう、既にマンボウらしき平たい魚を凍らせて網に入れた状態で浮かせてあるね。じゃぁ、次の獲物の相談をしよう。


<<ユッカちゃん、あそこにいるシャチを感知できる?

 クジラより小さいくて、魚より大きな生き物なんだけど。

 あれって、凶暴で危ないんだって。

 エイサン達でも手を焼くって。

 海神様のペットでは無いから、捕まえても良いって>>


<<強いの?ワクワクするね!早く獲ろう!>>


 ダンジョンの魔物とかは慣れているみたいだけど、海の動物は捕獲の経験数がそれほど無いんだよね。知性が高く無ければこれまで通り搦めとって凍らせれば大丈夫。

 集団行動が出来る程度に知性があるとすると、囲まれたりしないか注意が必要だね。


<<エイサンが言うには、知性も高くて集団行動も出来るらしいよ。注意しようね>>

<<分かった!早く行こう!>>


 やる気満々のユッカちゃんの気分を害さないように、ユッカちゃんの直ぐ後を追いかけてシャチらしき生物に接近する。

 見た感じ、体長が6mぐらい?昼間に獲ったワニより大きいけどクジラよりは小さいよね。まともに戦ったら勝ち目は無い感じ。

 さて、どうしたものか……。


<<お姉ちゃん、私が倒して良い?>>

<<危なくないなら良いよ~>>


 と、シャチの周りが凍り始める。ユッカちゃんが凍結させているんだろうね。この漁の仕方は私とユッカちゃんの常套手段だから、これで捕まえられるなら安心だね。

 もし、この凍結を解除できるとなると、知性っていうか、身体強化の魔法とか凍結作用を何らかの方法で解除できるスキル持ちってことになる。そうだとしら手ごわいね……。

 凍っていくのを眺めていると、なんだかシャチが声だか、音だかを発信している。恐怖なのか断末魔なのか……。仲間に危険を知らせているのかもしれないね。念のため周囲に仲間が居るか索敵して確認しておこう。


 って、もの凄い勢いで水中を高速移動する集団を発見!

 陸上で私達が高速で駆けたときより早いぐらい!

 これって、マグロ?

 それにしては数が少ないし、大きい……。

 まさか、シャチが仲間を呼んだとか?


<<ユッカちゃん、念のため浮上するよ。シャチの仲間が来たかも!>>

<<全部生け捕り?>>


<<ここ一帯の海を凍らせるのは、流石にユッカちゃんでも厳しいでしょ。

 先ずはこの一体を海上に引き上げてマンボウと一緒に浮かせておこう。

 その後で様子見ながら集まってきた集団を捕獲できるか考えよう>>


 ギィーギィーだか、そんな感じの音を発するシャチを半分凍り始めた状態で海上に浮かせて、更に空中へ浮遊させる。そこからユッカちゃんと二人で完全に凍るまで協力して凍結を強めていくとシャチ一体は捕獲に成功した。前回のクジラのときと違って凍結も解除されない。


 けれどもだ……。

 眼下に集まった群れがこっちの様子を伺っている。いなくなった一体を探しているというより、私達が連れ去ったのを知った上で、どうにかしようと考えている様子。その証拠に海面側に目を向けてみたり、水上にジャンプしてから体を反転してこっちの方を見たりしている。水族館のイルカの曲芸じゃないんだから、海上にジャンプして横回転なんかする必要は全く無いよね。

 この動きは仲間を探して集まっているだけの感じじゃないよ……。


<<ユッカちゃん、なんだか睨まれているよ?>>

<<でも、100人分のおかずになるよ?>>


<<一頭でも十分じゃないかな。私達がシャチのおかずになっちゃうかもよ?>>

<<じゃぁ、お姉ちゃんが餌で私がシャチを捕まえる!>>


 私が餌か!

 ま、まぁ、良いよ。私よりユッカちゃんの方が戦闘の」センスあるはずだしね。

 私は上空でサポートするよ。


<<お姉ちゃん、私が海の下から打ち上げるから、お姉ちゃんは空中で浮かせて凍らせてね>>

<<分かった~>>


 って、返事をしたら直ぐにシャチが下から打ちあがる。

 どうやって、こんな巨体を海中から打ち上げているのかさっぱりわからない。

 いくら本体を軽くしても水の抵抗とか、水の粘性とかあるから空中に引っ張り上げるのは結構大変なはず。それを下から打ち上げるのは何らかのエネルギーを使っていると思うんだけど、さっぱりわからない。


 ま、どんなエネルギー伝達手段をつかっているか判らなくても、事実として打ちあがったシャチに重力遮断を施して、凍結を始める。距離を離しているよりも接触していた方がエーテルの通りが良いというか、きっとイメージが伝わりやすいんだろうね。噛みつかれないように本体に触って急速に凍結させていく。


 でね?

 私が上で受け取ったのを確認したのか、次のシャチが打ちあがってくるわね。まだ、完全に凍らせて無いのに!

 ユッカちゃんのペースに合わせないと、海中でユッカちゃんをシャチの危険に晒す時間が長くなるから、何とかしないとね……。


 と、とりあえず、凍りかけているのを頭上高くへ打ち上げて、次のシャチをキャッチする。一頭目を遠隔でゆっくりと凍らせつつ、二頭目のシャチを重力遮断掛けて凍らせる。

 うむ。

 シャチが凍りながら上空高くに浮いているのはちょっと奇妙な風景だけれど、ユッカちゃんと私の連携は成立しているからヨシとしよう!


 って、こっちが二体目をキャッチしたら、次から次へと下からシャチが打ちあがっくる!まさか、ユッカちゃんピンチとか無いよね?


<<ユッカちゃん、大丈夫?>>

<<お姉ちゃんが大丈夫そうだから、どんどん打ち上げるね~>>


 心配するだけ無駄だった……。

 どんどん処理しないと私が負けるやつね。

 これ、キャッチできずに落下させちゃったらユッカちゃんが二度手間になるし、場合によっては集まってるシャチに逃げられてしまうかも?


 これは、身体強化を掛けて空中浮遊を高速化して、片っ端から重力遮断と空高くへ打ち上げて遠隔凍結を片っ端から試みる。

 とにかく、海中へ落とさないことが重要。凍結の進行具合は後からでもなんとかなる。

 並列操作が30頭を超えた辺りで、海中から打ち出されるシャチの間隔がまばらになり始めた。そろそろお終い?それともユッカちゃんが疲れてピンチとか無いよね?


<<ユッカちゃん、大丈夫?>>

<<うん……。逃げられそう……。追いかけてるけど……。散り散りに逃げていく~>>


 海のギャングと言われるシャチを追いかけるっていうのは……。

 そもそも30頭近い集団で襲い掛かってきたシャチが劣勢とみて逃げ始めるっていうのは……。

 もう、夕飯のおかずには十分過ぎる量を確保出来たと思うだけど……。


<<お姉ちゃん、上の方が片付いてたらあそこに2頭逃げるのを捕まえて!

 私はこっちの大きいのを追いかける!>>


 ユッカちゃんが真剣に追いかけて高速で水中移動を始めた。

 そしたら私もユッカちゃんと逆方向に逃げてる2頭の確保に向かうよ!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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