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7-09.試験1日目(4)

 ユッカちゃんと二人で結構色々な獲物を捕ってきたつもりなんだけど、受験者達から反応が無いのね。疲れてるにしても、「お~」とか「すげぇ~」みたいな反応があっても良いと思うんだけどさ?


 少しイラっとするね……。


「ええと、反応が無い皆様、制限時間は馬車が到着するまで。大体2時間ぐらいです。それまでに各自で自分のおかずを狩りしてきてください。さっき見せて得点を付けた点数を参考にしてください。

 何か質問はある?」


 と、ここでズィーベンさんから手が挙がった。

 三度目だね。


「ズィーベンさん、何かな?」

「あの……。ユッカ様とヒカリ様は何をしたのですか?」


「え?」

「あの、質問をしているのはこちらですが……」


「見てたよね?狩りしてきて、捕ってきた獲物を並べて、得点を付けたよ」

「砂時計という道具がサラサラと減っていく様子を皆でぼ~~っと見ておりました。


 突然姿を消して、再度姿を現したヒカリ様、ユッカ様。

 次に会話をしたかと思うと、見たことも無い大きさの動物が出現しました。

 その動物は矢や剣で攻撃を受けたような痕跡がありません。あたかも寝ているかのようです。


 転移門から運んできたとか、伝説の鞄から取り出したとか、そういうことだと思います。これが我々の認識になります」


「姿は見えなくても、私たちの気配ぐらい追わなかったの?」

「何名か、気配察知で追跡を試みましたが、あっというまに索敵範囲外に移動されました」


「だったら、私達が転移門を使ったり、伝説の鞄を使ってないあかしになるじゃん!」

「いや、ですが、姿を消してから転移門を使って運んできたり、伝説の鞄を使った可能性もございます」


「そんな吟遊詩人のサーガに出てくるような不思議な道具を使うぐらいなら、普通に狩りした方が現実的だと思うよ?」


「いや、ですが、見えていませんし。我々からすれば、『突然動物が現れた』という事実しかありません。


 もし、転移門でも伝説の鞄も使われて無いとすると、何かまじないのたぐいでしょうか?」


「いや、もう、説明面倒だから好きに狩りしてきてよ。

 肉を捌いたりして、時間に余裕が出来たら、私達が支援しに行くよ。

 はい、しゅっぱ~~~つ!


 ユッカちゃん、ラナちゃんが待っているから鳥から捌こう!」


 って、ズィーベンさん達を追いやって、獲物を捌きにかかることにする。


「お姉ちゃん、みんなは何をしたら良いか分かってないみたいだよ?

 ちゃんと説明しなくていいの?」


「説明したもん」

「説明になってないよ」


「それなら、ユッカちゃんも試験官なのだから、丁寧にお手本をみせれてあげれば良いよ」

「わかった~」


 む。

 何が判ったのかな?

 私だって、ユッカちゃんから狩りのテクニックを教わるのに基本的な行動の仕方を含めて1週間以上かかったんだよ?お昼ご飯前に狩りしてこれるのかな……?

 なんか、もう、試験じゃなくて講習会になってきてるよ……。


ーーー


「みんな、きいてください。

 (1)索敵と隠密行動と身体強化が使える人

 (2)上のどれか1つでも使える人

 (3)どれも使えない人

 この3つに分かれてください」


 ユッカちゃんの指示で、100人がぞろぞろと3つの塊に分かれる。

 (1)の3スキル持ちが5人

 (3)何のスキルも持ってない人が15人。

 (2)の何らかのスキル持ちが残りの80人になるのかな?


「次の指示をだします。


 (1)の人はこれから私と一緒に狩りに出かけますので、装備を準備してください。弓矢かナイフで得意な武器のどちらかがあれば良いです。武器が無い人はヒカリお姉ちゃんから貰ってきてください。


 (2)の人は話し合って、3スキルが揃う様にメンバーを集めてください。何人の構成になっても大丈夫。2回目の狩りの練習に行くまでにチームを作っておいてね。


 (3)の人はヒカリお姉ちゃんの料理の手伝いをしてください。


 はい、みんな準備して~」


 ユッカちゃんが試験ではなくて研修を始めた。

 確かに、研修することが前提であればこういう進め方もあるね。

 なんか、試験ではなくて課題達成型のチームワークっていうか……。

 ある意味で試験になってないけど、ある意味で能力の分別も出来てしまってるかも?

 このままユッカちゃんの進め方に任せて置こう。


 私の方は弓矢とかナイフをカバンから取り出して、30セット分くらいを並べて置く。まさか武器を手に入れたからって、いきなり反乱を起こすことは無いと信じたい。一応、ニーニャの防具にステラのコーティング、そしてクロ先生の印による保護はついてる装備を身に着けているけどね。


 で、武具を並べ終わったら、今度は狩ってきた動物たちを捌く準備だ。狩りの訓練はユッカちゃんに任せておいて、15人を集めて調理に向けて準備だね。


「はい。では、狩りの試験に参加しない皆さんは後衛として食料保管、料理による賄い作成の支援技術を確認しますね。


 まず、けものを捌くためのナイフを各自に渡します。

 これは良く切れるというか、多少の魔力を込めて願えば骨も断つことが可能です。

 次に、有用な皮、骨、牙などがある場合には取り分けておいてください。後から来る馬車で運んで持ち帰ってもらいます。


 ここまでは良いですか?」


「(コクコク)」


 集まった15人がちゃんと真剣にこちらを見て頷く。

 ちゃんと反応があるのは良いことだね。


「次に、獲物の捌き方ですが……。


 ユッカ先生も私も獲物を冷やしてありますので、腐敗の進行は最低限に留めてあります。ですが、無闇に血管を傷つければ血が噴き出しますし、そこから内臓を痛めたり、腐敗が進行します。


 ですので、皮の剥ぎ方、内臓と肉の分離を丁寧に行える人が中心になって捌く工程を進めてください。この意味がわからなければ、丁寧に説明しますので質問してください。


 このとき、肉と内臓は別々の容器に保管します。動物の種類ごとに分けておくと良いので、器を用意しますね」


 と、捌き方のイメージを共有したところでナイフとは別に内臓や肉を取り分けるための木製の10リットルぐらいのバケツを私の鞄からとりだす。とりあえず50個もあれば良いかな?


「ここまでで、何か質問はありますか?」

「ヒカリ様、サンマール王国の騎士団所属であったペアッドと申します。質問宜しいでしょうか?」


 と、狩りに行かないメンバーの一人から手が挙がった。

 ズィーベンさんは狩りメンバーの何処かに居るんだろうね。



「はい。ペアッドさん、名前の発音が覚束おぼつかないですがご了承ください。

 質問をどうぞ」


「2つ質問がございます。

 1つめは、ヒカリ様の鞄について入手方法などの詳細を教えて頂くことは可能でしょうか。秘匿事項でしたらコメント頂かなくて結構です。


 2つ目は、肉や内臓の処理についてです。

 本日召し上がる場合には、塩と香辛料や香草とともに下ごしらえを済ませます。

 ですが、長期保存を視野にいれて下処理を進めることが範疇に含まれていますと、香辛料とともに下味をつけたり、干し肉に加工したり、内臓は脂身と共に混ぜてソーセージなどとして加熱保存する方法があります。

 我々15名はどこまでを求められていますか?」


「良い質問だね。


 1つ目は私の信頼を得られるまでは教えられない。その人の身に危険が及ぶから。ある時期が来たら、個別の対象者に教えることにします。

 2つ目は任せる。ここにある食材は昼食だけでは余ると思うので、適宜保存用に加工してください。運搬は馬車か私の鞄でするから心配しないで。


 回答になりましたか?」


「ヒカリ様、ありがとうございます。

 今のご回答を得て、追加でお願いがございます。

 調理用の台、水洗いするための潤沢な水。

 そして、味付け等を行うための調味料として、塩、胡椒、各種ハーブ、スパイス。

 これらはヒカリ様の手持ちで準備戴ける分を出してください。もし後続の馬車に積んである物がありましたら、リストとそれらの使用許可をください」


「ペアッドさん、了解。

 まな板になりそうな台は、密林から適当な木を伐採してくる。

 水は休憩のときに使った樽を使って。足りなければリサにお願いして。


 調味料の類は……。

 砂糖、塩、小麦粉は袋単位で出せるから好きに使ってね。

 

 スパイス、ハーブ類は……。

 市場で買ったのが商館で使うための量の残りしかないね。馬車に積んであればそれも使って良いけど、私は特別に注文しなかった。密林に入ってとってくるチーム編成をしても良いし、ここのある物で工夫しても良いよ。


 ついでに調理用のコンロと鍋も出しておくね。鍋は数人用の小さいのしかないから、大きな鍋で調理したいなら焚火の準備をしておいて、馬車が到着するのを待っていてください。


 これで良いかな?」


「承知しました。ここに居るメンバーのチーム分けをして作業に取り掛かります!」


 へぇ~。

 なんか期待できる感じ?

 まぁ、ペアッドさんの方は機材と材料を出しておいて任せることにしょう。

 もし、調理の腕前も確かだったら、ゴードンさんの下に組み入れようかな?


 私は丸太の切り出しとラナちゃんの照り焼きチキンを作らないとね!


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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