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7-04.軍団をまとめよう(2)

「ヒカリ様、このまま馬車で移動の最中は私が話を続けても宜しいでしょうか?」


 と、トレモロさんから逆に提案を頂けそうな雰囲気。

 何が聞けるのかな?


「はい。お願いします」


「まず、ストレイア帝国から派遣されている騎士団員とサンマール王国から犯罪奴隷として落とされた騎士団員では明らかに待遇が異なります。ここのわだかまりを無くすことが重要であると思います。


 そのためには、『過去の地位や出自に依らず、もう一度フラットな観点からテストを実施し、その実力に見合った地位と職務に就いて頂く』と、周知させて頂く許可を頂きたいです。


 次に、ヒカリ様のお考えを将来に渡って浸透させるために、年2~4回の定期的な試験を実施することにより、意識や能力の改善が見られたものには次なる地位へと伸びる余地があることを提示させて頂きたく。この試験の頻度は短すぎては煩雑になりますし、成長するまで時間の掛かる内容もあり、成果が見られない可能性があることと、長すぎては途中で意気消沈してやる気へ繋げられない人達が存在する可能性から適切な期間を設けることが望ましいと考えます。


 こちら2点につきまして、何かご質問はございますか?」


「う~ん……。

 なんだか塾や学校の定期試験とクラス分けみたいで、私には馴染みがある制度なんだけど、皆に受け入れられるかが、ちょっと疑問かな?」


「ヒカリ様……。

 『ジュク』とやらが何を示すか判りませんが、定期的に試験を行って、能力に見合った地位に就くことが普通なのですか?」


「え?」


「あ、いや……。

 ヒカリ様の意向に沿うべく、画期的な方法を提案させて頂いた自負はあったのですが、もう既に実践されている国があるのですね……。

 流石はヒカリ様です……」


「うん、まぁ、是非はあるけれど、自力だけでは能力の開発は進まない場合が往々にしてあるからね。


 まだ自身の成長に前向きに取り組めない環境であれば有効な育成手段だと思うよ。あと、出自に囚われない評価制度は公平性があるから自分事として受け止め易いと思う。


 ただ、その試験でクラス分けをすることはあくまで手段であって、目的は能力に見合った仕事を担当してもらって、自分の糧を稼いでもらうことにあるよ」


「承知しました。試験の意図の通達に併せてヒカリ様のコメントも盛り込んでおきます。

 

 続きまして、試験内容と試験の監督者についてなのですが……。

 (1)個人での体力試験

 (2)チームでの体力試験

 (3)筆記試験

 (4)意思を確認する面接

 これら4点で宜しいでしょうか?」


「私は早くチームに分けて仕事に取り掛かって欲しいから、短期間で試験出来るのが良いと思いました。

 もし、トレモロさんが時間を掛けずに能力を振り分ける方法が他にあれば提案をお願いします」


「ヒカリ様、あくまでご提案なのですが、

 試験の順番を入れ替えて頂くことは可能でしょうか?

 最初に体力試験。次に筆記試験、最後にチーム力とするのです。


 チーム力の試験内容にも関係するのですが、力自慢ばかりが集まったチームでは解決できず知恵を動員しない内容を組み込んだり、一人の力だけでは解決しえない内容を組み込んでおくのです。そのためには、体力と知能のバランスを加味してチーム編成をするのが良いと思いました」


「トレモロさんの方法で時間が掛からないならそれでも良いよ。

 ただ、走ったり、泳いだりした後で筆記試験は出来るのかな……?」


「ヒカリ様、失礼ですが体力の試験はどのような内容をお考えでしょうか?具体的にイメージがあればお伺いしたいのですが……」


「うん?

 1.ユッカちゃんが先頭で走って行く。私は最後尾で脱落者を拾っていくよ。

 2.農園の開拓地点の端までたどり着いたら、狩りをして食事をする。

   このとき、獲物の大きさや数でポイントを付ける。

 3.戻ってきたら、今度は海に潜って海産物を取ってきて食事をする。

   このときも、獲物の大きさや数でポイントを付ける。

 こんな感じで考えていたよ」


「ヒカリ様、ヒカリ様はドワーフ族への支援要請に向かわれている間の出来事ですので存じ上げないかもしれませんので、念のため報告させて頂きます。


 ユーフラテス殿の支援により、農地の整備と共に街道が作られており、王都から約40km地点まで舗装はされいない状態ですが道が拓かれています。

 つまり体力試験が舗装されていない街道を片道40kmを走破してから狩りをする内容になりますが、大丈夫でしょうか?」


「え?」


「あ、ですから……。開拓地点の終点がここから約40km先の彼方かなたにあると申し上げました」


「いや、説明は理解できたけど何が心配なのかが判らないよ」

「舗装されていない道40kmを一日で往復するのですよね?」


「時速20kmで走れば片道2時間だね。身体強化無しなら結構大変かもしれない。

 けど、朝早めに起きればお昼前には到着するし、狩りが順調に進めば夕方には戻って来れるんじゃないかな?」


「ヒカリ様、うちのコウとカイではその試験に合格できませんが……」

「トレモロさん、体力試験の試験官はユッカちゃんと私でやるから大丈夫だよ」


「ヒカリ様、私が聞くのも何ですが、合格者は出るとお考えですか?」

「合格できる人がいないの?騎士団員が300人+50人とか居るのに?」


「ええと……。参考までに申し上げますと……。


 ナポルの町で行っている『ストレイア帝国内を自由に出入り出来るA級の許可証』の合格者数は、普通に試験を受けたものですと私が知る限り3名のみです。万事屋のマスターとコウとカイになります。そのコウとカイがヒカリ様の体力試験に合格出来ると思えません。


 また、サンマール王国で女性がA級の冒険者登録証を取得したのはヒカリ様とクレオさんが初めてとのことです。また、ここ10年で10名程度しかA級冒険者登録書を取得出来た者は居なかったとのことです」


「え?」

「私は事実のみを申し上げております」


「いや、だって……。

 私の家族のフウマ、ユッカちゃん、リサ、マリア様は出来るよ。リチャードもそろそろ出来るかもしれない。

 私の専属傭兵のアイン、ドゥエ、サン、クワトロでしょ。

 多分、シズクさんとクレオさんなら余裕でしょ。

 エルフ族だけど、ステラも出来るし、最近合流したナーシャさんもできるよ。


 10人以上居るよね?」


「ニーニャ・ロマノフ様、何かヒカリ様へアドバイス頂けないでしょうか……」

「トレモロ・メディチ卿、ヒカリ様はこれが普通なので仕方ないと考えます。

 ですが、ヒカリ様に出会う前から前述の体力試験に合格出来た人は一人か二人しかも居なかったでしょう」


「ひょっとしてではございますが、ニーニャ様も同様のことが出来るのでしょうか?」

「私は出来るようになるまで特訓を積んでおりません。が、別の支援を頂けておりますので、そちらの方面でヒカリ様へ役に立てるように心がけております」


「ニーニャ様、承知しました。

 つまり、ヒカリ様は軍隊や傭兵として雇用するなら、ヒカリ様としての最低限レベルの要求能力があり、知識や意識の試験もそれ以上の能力を見いだせないと雇用に値しないとお考えなのでしょうかね……」


「トレモロ殿、ヒカリ様の見えない所で我々がその振り分けとチームリーダーの育成を行ってきております。ですので、全ての人物がヒカリ様のお眼鏡にかなう必要はございません。

 ヒカリ様の機嫌を損ねない程度に、直接対話する人物がある程度の能力を所持しています。あとはリーダーにチームとしての成果を引き出して頂くのみです」


「ニーニャ様、ありがとうございます。それでは、体力面での試験方法はコウとカイに補助させることでヒカリ様とユッカ嬢の負担を減らす形で進める様に致します。


 ヒカリ様、続いての質問をしても宜しいでしょうか?」


 う、なんか、ニーニャとトレモロさんで話が片付いてる。

 私のやりたいことは無視されていないみたいだから良いけど……。

 でも、ニーニャ説明の感じからすると、私が知らない所でドワーフ族の人達に凄い迷惑掛けちゃってる気がしてきたよ?大丈夫なのかな……?


「ニーニャさぁ、あのさぁ?」

「ヒカリ、なんなんだぞ。もう種族間での儀礼的な対話形式は済んだのか?」


「あ、ニーニャ、ごめん。

 軍隊とか騎士団とか良く分からないし、人事制度も良く分からないから、敬意をこめて丁寧に話を進めていたんだよ。それはちょっと置いておいて……。


 なんか、私の知らない所で、ニーニャがチームリーダーに任せて指揮を執らせてるみたいだけど、その辺りはニーニャの負担とかチームリーダーに無理をさせて無いかちょっと心配になったよ」


「ヒカリ、前に似た様な話題があったと思うんだぞ。

 ヒカリの役に立てるなら死ぬ気で取り組む。

 『無理』や『出来ない』は無いんだぞ。

 文句があれば種族の元へ帰るか、ヒカリの代わりに自分でやれば良いんだぞ」


「いや、でもそれって……」

「ヒカリは私を救ったんだぞ。

 そして私に神器の斧1本を専属化している。

 人族の所有ではあるが神器の斧の1本の所在を明確にしている。

 最後の1本の所在も突き止めつつあり、その奪還に動いている。

 誰がヒカリと同じことを出来ると思うんだぞ?

 つまり、そういうことなんだぞ」


「ニーニャ、ありがとう。

 でも、それって……。

 ドワーフ族の人には感謝されるかもしれないけれど、人族には関係ないよね?

あと、エルフ族とか獣人族にも」


「ヒカリ、ユッカ嬢が率いている騎士団員は後から奴隷印が押されているが、その前から上皇様とハンス殿下に陶酔している。だからその同族のユッカ嬢が率いているのであれば問題無いんだぞ。

 ヒカリが率いている傭兵リーダーは、そもそもヒカリが力比べをして従えたと聞いている。であれば、問題ないんだぞ。

 ステラ様やレイ様、エイサン様はそれぞれ族長クラスなのだから、そこをヒカリが押さえていれば問題無いんだぞ。

 ドワーフ族に関しては私が押さえられるものは気にしなくていいんだぞ」


「ニーニャ、それって、サンマール王国で新たに奴隷にした人たちだけを従えれば良いってこと?」


「そこはトレモロ・メディチ卿の意見を良く聞く方が良いんだぞ。犯罪奴隷として落とされているリーダーと力比べをすることと、敵方に犯罪奴隷として落とされた憎しみを持っている奴隷と力比べに意味があるかh、良く考えた方が良いんだぞ」


「なるほど……。ニーニャありがとうね。

 トレモロさん、ユッカちゃん率いる騎士団員もここで犯罪奴隷になった元騎士団員もまとめて試験をする方向で進めることで公平性を担保したい。

 どうかな?」


「ヒカリ様、特例を認めずに公平に接することは後顧の憂いを無くす意味でも賛成です。また、定期的に試験を実施するとのことですので、最初から無試験で優遇されている人が居るとなると、二回目以降に試験に参加する意欲が無くなる者が出てくる可能性があります。


 ですので、試験と選別には大方賛成しています。

 そして、先ほどの質問に戻らせて頂きますが知識を問う試験はどの様にお考えでしょうか?」


「あ、馬車が着いた。

 ちょっとニーニャには別行動にしてもらって、試験の仕方についてトレモロさんと詳細詰めさせて貰っても良いかな?」


「ヒカリ様承知しました。コウとカイ、それか商人のハピカ殿と冒険者ギルドのギルドマスターにも集まる様に声を掛けておきます」


「ヒカリ、私は靴の準備があるんだぞ。それを進めるから、ヒカリの試験が終わったら声を掛けるんだぞ」


「あ、はい……。二人ともよろしくお願いします……」


 な、なんか、私の知らない所で色々気を遣わせてしまっていることは判ったけれど……。

 ま、いっか~。

 これからも前向きに進んでいくよ!


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定ですが、

最近書きだめがままならず、その週のものを金曜日にアップしてます。

22時になりませんこと、ご了承ください。


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