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6-41.ドワーフ族の支援(4)

 う、うん……?

 なんか、ちっちゃい何かがペチペチと顔に当たる。


 え、まさか、蛙とかトカゲ……?

 ユッカちゃんなら、声かけて起こしてくれるから、そんなイタズラ……。


「ハッ!ここどこ?」

「お母様、起きましたか?」


 リサが寝ている私の顔を叩いていた。

 いや、貴方の手小さいから!

 手で払っちゃったら、リサがどっかに飛んで行っちゃうところだったよ。


「あ、リサ、起こしてくれてありがとうね」

「皆様がお待ちです。ニーニャ様から様子を見てくるように言われました」


「あ?え?」

「皆様、朝ごはんをお待ちです」


「ああ……、先に食べててくれて良いのに……。」

「お母様が『食事は暫く私が作るね』と、昨日おっしゃったそうです」


「あちゃ~。やっちゃった?」

「やっちゃってます。ですが、私も昨日の記憶がありません」


「リサ、良く寝てたよ。夕飯を少し食べさせたけど、それ以外ほとんど寝てたよ」

「私のことは良いです。皆様が朝ごはんをお待ちです」


「あ、ああ。じゃ、朝の挨拶を先にするから、みんなが集まっている場所に連れて行って」

「はい!」


 リサの案内に従って、少し大きめの部屋に案内される。

 ここは初日の夕食会をして貰った食堂だね。

 魔族の3人とニーニャ、あと、ドワーフ族で支援してくれた3人が居た。


「皆様、すみません。寝過ごしました……。

 それで、7名分と私達親子の食事を準備すればいいですか?」


「ヒカリ、お茶だけで打ち合わせを続けるのはしんどいんだぞ。早くなんでも良いから出すんだぞ」

「ニーニャ、今は鞄から出来合いの物を出すけど、良いかな……?」


「ヒカリ、私はなんでも食べるんだぞ。

 けれど、『ヒカリは女神説』があるから、程々の物が良いんだぞ」

「そう……。

 じゃぁ、パンとスープとお肉少々。

 飲み物は牛乳とジュースで」


 皆が腰かけているテーブルの脇にサイドテーブルを持ってきて、その更に脇に椅子を置く。椅子の上に私の鞄を載せて、そこからサイドテーブルに食器と大皿を並べる。大皿の上に調理済みのパンと肉の塊を出して、メインテーブルの上に大皿と一緒に切り分け用のナイフを添えて置く。


 スープ皿には出来立ての温かさが保たれた野菜と優しいスパイスで味を調えたコンソメ風の透き通ったスープをサイドテーブルの上で鍋から盛り付けてから各自の前へ並べる。

 最後に、市場で購入してから直ぐに冷やした牛乳と搾りたてのオレンジジュースをカバンから取り出した水筒からサイドテーブルの上に並んでいるガラスのコップに注いで、それも各自に配布する。


 仕上げに食器を配布して終わり。

 私はリサを抱っこする形で末席に座って皆の様子を伺う。

 けれども、誰も食事に手を付けようとしないで黙ってみてる。


 なんで?


「ヒカリ、食べていいか?」

「え?お腹空いてるのでしょ?食べればいいじゃん?」


「ヒカリ、ヒカリの機嫌を損なわない様に皆が気を遣っている。

 だから、ヒカリが声を掛ける必要がある」


 そ、それって、王様の晩餐会とかそんな感じ?

 でも、それをこの場で調整しているとご飯が遅くなるから、先ずは『頂きます』をしてから、食事を始めよう。


「あ、遅くなりました。皆様お召し上がりください。

 中央の大皿からパンと肉を切り分けて好きなだけお皿にとってください。

 スープと飲み物はいって頂ければ適宜追加します」


 って、食事の仕方を説明しても、みんなが食べ始めない。

 しゃあないな……。


「頂きます!」

「「「頂きます」」」

「「「「頂きます」」」」


 私の掛け声に習って挨拶をしてから、手元のスープを飲み始める。

 

 っていうか、早くパンとお肉を切ってこっちに回してよ。

 届かないんだからさ?


 それとも、あれなの?

 ニーニャのメイド扱いの設定のままだから、私が全員のパンと肉を切り分けて給仕しろってことね?


 仕方ないから、リサを椅子に座らせて、もう一度サイドテーブルに向かって、中央のパン大皿を引き戻す。そして、厚さ1cmぐらいの大きさに、殆どすべてをスライスし終えて、今度はその大皿を持って各自にパンを2~3切れずつ空いたお皿に配る。

 それが終わったら、空いたパンの大皿と肉の塊が載った大皿を交換して、3~5mmの薄切りにしたローストビーフみたいなお肉を、もう一度何枚かずつ配って歩く。


 サイドテーブルがキャスター付きワゴンみたいのだったら、もう少し楽なんだけど、この世界にはプラスチックも金属加工技術も無いから、室内で滑り良く回転する車輪が無いんだよね。

 今度ニーニャに作って貰おうかな。配膳が大分楽になるはずだよ。


「ヒカリ、これは食べて良いのか?」

「え?」


「このまま食べるのかと聞いている」

「パン薄切り肉を挟んだ状態で手で持って食べるか、それをナイツとフォークで食べやすい形に切ってから食べる。それか、パンと肉を別々に食べても良いよ」


「わかった」


 ニーニャがなんでそんなことを聞く?

 これまで一緒に食事をしているから分かっているだろうに……。

 

 あ!

 お肉のソースが無い!

 パンにバターが塗られて無くて、塩気が足りないってこと?


「ニーニャ、ごめん。お肉にかけるソースは準備出来てない。今から作る?」

「いや、そうじゃない。大丈夫だ」


 と、ここでニーニャから念話が飛んでくる。


<<ヒカリが食事を作ると言ったから、ヒカリのやりたいことを勝手に変えない様に待っていただけなんだぞ。

 この朝食も彼らが手を付けないのはヒカリが手を付けないからで、ヒカリに給仕しろという意味では無かったんだぞ。

 最後に私が聞いたのは、皆に食べ方を教えるためと、ヒカリを待たずに食べる許可を取る為だったんだぞ。


 ヒカリはきっと何か勘違いしているんだぞ>>


<<ニーニャ、ありがとう。なんか面倒なことになって無い?>>

<<ヒカリがどうにかするしか無いんだぞ>>

<<わ、わかった>>


 やっと、皆が食事を始めてくれて、朝食の場が落ち着きを取り戻し始めた。

 リサも私に抱っこされながらパンやスープを食べている。

 じゃぁ、ちょっと誤解を解いてもらうために話をしてみても良いかな?


「皆様、食事をしながらちょっと聞いて頂けますか?」


 と、声を掛ける。

 ところが、ニーニャを除いた6人が全員食事をするのを停止して、目線や顔だけでなく、背筋を伸ばして体ごとこちらを向く。口の中に入っていた物を無理やり飲み込んでいる様子もうかがえた。

 

 これって、『王様の一言は絶対だ!』みたいな雰囲気じゃん!

 でも、この場は強引に続けてでも誤解を解くしかない!


「あ、あのですね。食事を続けながら耳を傾けて頂ければ大丈夫です。

 私はそんなに偉くないので、皆様に普通に接して頂ければと思うのです。

 ニーニャが私に接してくれているのと同じような態度でお願いします。


 それと私は女神でもなんでもありませんので、寝坊もしますし、自分が発言したことを忘れてしまったり、間違ったこともいうかもしれませんので、そこは皆様に補って頂ければありがたいです。


 ご協力いただけますかね?」


「分かりました!」


 と、即座に全員から揃った返事が返ってくる。

 いや、それって、食事してなかったってことじゃん!


「ニーニャからも何か言ってよ」


「皆、ヒカリは悪気は無い。訳の分からないことも言う。

 だから、大概の場合は『フンフン、そうですね』と、返事をすればいい。

 ヒカリが何か言いたいこと、伝えたいことだけをしっかりと聞け。

 それ以外はこれまで通りに自由にすれば良い。

 ヒカリの機嫌を取る必要は無い。

 分かったら、従え」


「わかりました!」


 と、さっきよりもはっきりとした声が返ってきて、即座に食事を始めだした。

 どちらかと言えば、咀嚼音そしゃくおんも大きくなって、ガツガツと食べている様子。なんか、男の職場って感じなのかな?

 でも、私はこういう方が気楽でいいよ。


「ヒカリ、同じもので良いのでさっきの3倍出して欲しい。

 彼らに自分で取り分けろと指示も出して欲しい」

「了解」


 こう、なんていうか上品なお茶会の雰囲気が、ガツガツと食事をメインとする定食屋の雰囲気に変わった。

 もう、セルフサービスでどんどと食材が減っていく。

 ま、まぁ、滞在期間があと2-3日で済むなら大丈夫なんだけどね?

 足りなかったら、昨日みたいに自分で作るかな……。



 なんか、朝ごはんだけで疲れちゃったけど、まぁ、皆と打ち解けたから良いのかな?

 皆が大体満足いくまで食べ終えたので、朝食の食器は私が回収しつつ、食器にピュアを掛けてから鞄に一式まとめてしまっておいた。

 そして、このままこの場所で打ち合わせに入ることになったよ。


「ヒカリ、各論はこちらで処理するから大丈夫なんだぞ。

 それより、サンマール王国へ連れていく人材の希望を言うんだぞ。

 連れていくメンバーでドワーフ族以外は奴隷印が必要になるんだぞ」


「そうだね~。

 道を作る指揮をとれる人が2-3人。

 観光迷宮で収集された武具の鑑定と、加工が出来る人が1人。

 あと、魔族の言語とか文化を人族語に翻訳できる人が1人。

 それ以外はニーニャの助っ人なので、ニーニャが決めて」


「ヒカリ、分かったんだぞ。

 魔族の人選はこのあとカサマドにさせる。

 ドワーフ族の人選は、こちらの精錬設備の改造や指揮を執る者を残す必要があるので、少し時間が掛かるんだぞ」


「わかった。ニーニャとカサマドさんに任せる。

 他には?」


「他には

・樽の部材の放出

・冷蔵庫の作成許可

・ヒカリが持ってきて後から買える食材全ての放出

それで、ここの立て直し時間が大分変わるんだぞ」


「ニーニャ、冷蔵庫の印は私は描けないよ。

 それに、許可と言われても、ここはサンマール王国ですら無いし……」


「ヒカリが魔石を置いていけば良いんだぞ。それなら私でも印が描ける。

 魔族の施設での権利化が必要だから、カサマドに権利書の作成と登録、そして権利がヒカリにあることを明示しておけば良いんだぞ。

 そもそも、魔石を用いた冷蔵庫の印を描けるのは今のところ私しか居ないが」


「わかった。

 冷蔵庫は色々と生活を豊かにする技術だから導入して良いと思う。

 ニーニャから見て適切に権利が確保できるようにカサマドさんと確認してね。

 魔石とか属性石は予備を含めて、後で出しておくよ」


「よし、これでヒカリの出番は無いんだぞ。

 リサちゃんと遊んでいても、見学していても、お菓子を作っていてもいいんだぞ」


「ニーニャ、ありがとう。

 じゃぁ、私はニーニャの準備が終わるまで、色々見学したり、食事を作ったりしてるよ」


 と、ここでリサが……。


「お母様、ちょっと待ってください!」


 え?

 魔族は信用できないとか、サンマール王国に連れて帰らないとか、そういうこと?

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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