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6-39.ドワーフ族の支援(2)

 よし、此処からの魔族への指示は私がやってみるよ!

 ニーニャがベンチで眠ってしまったので、軽い毛布のようなものをニーニャに掛けて、魔族の3人と私とリサでコソコソと部屋を出て、別室に移ることにした。


「カサマドさん、私がお願いしたいことを言うから、メモを取ってくれる?」

「メモを残しますと、我々の会話が文章として残りますが問題無いでしょうか?」


「カサマドさんが指示を出せる程度に理解が進めば、書いたメモを破棄すれば良いよ。私はずっとここに滞在して貴方たちを監視する気は無いから。

 助けて欲しいときは連絡をくれれば助けにくるよ」


「ヒカリ様、メモの件は承知しました。

 ですが、ヒカリ様との連絡手段となりますと、どのような方法が宜しいのでしょうか?例えば、人族の冒険者ギルドへ伝言を頼めば宜しいですか?」


「あ~。そこからか。

 でも、話を続けたいから今のところはそれにしておこう。

 サンマール王国の王都にある冒険者ギルドに言づければ良いよ」


「承知しました。半年もあれば伝言できると思いますので、そのときはよろしくお願いします」


「ああ、うん。その話は後で考えよう。

 でね?いくつかお願いがあるの。


 1つ目は、数人のドワーフ族を貸して欲しいの。サンマール王国で色々な工事をしたり、器具の作成をしたいからニーニャの補助が出来る人が欲しいのね。

 で、ある程度軌道に乗ったら、その人たちはサンマール王国に移住して貰いたいの。


 2つ目は、さっきニーニャが居るときに話が出てたと思うけど、ここの精錬所から発生している汚染物を出さないようにしたいの。各種化学精錬に伴う副産物を無害化処理すれば、出来るはずだよ。


 3つ目は、この精錬所で働いている人たちの生活レベルの改善ね。仕事量を減らしてあげるとか、休みの日数を多くしてあげるとか。

 ただ、彼らもお金を稼ぐモチベーションが無くなるは不味いから、借金が帳消しになっていることは言わずに、就労規則として休暇を強制的に取らせる感じで管理して欲しいかな。その分、今度は自分たちの余分な時間を趣味とか好きな事に時間を使う様に仕向けて欲しい。


 4つ目は、知っていればで良いのだけど、ドワーフ族の斧の在り処が知りたいかな。噂によると借金のかたに魔族が管理しているって話らしいね。それをドワーフ族に返す方法を知りたい。


 ざ~っと、喋ってみたけど、理解出来ました?」


「ヒカリ様、理解しました。メモも取りました。

 私からも何点かお伺いしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」


「うん、なに?」

「目先の話としまして、今晩の食事と宿の準備になります。

 また、明朝以降の滞在予定につきまして、お伺いしたく」


「経費精算とか不要ならここの建物のどかで寝室が欲しいよ。

 滞在日数はニーニャと調整。ドワーフ族の人選と引っ越しがあるからね。


 食事は……。

 まぁ……。

 どうしたい?」


「寝所につきましては理解しました。ニーニャ様含めて3名のベッドを直ぐに整えます。

 食事につきましては……。

 すみません。理解が至りませんでした。

 アドバイスかヒントを頂けますでしょうか」


「う~ん……。

 さっき、ニーニャが何か食べてたよね?

 あのレベルの上の食事が作れるなら、それを食べたい。

 あれを見て、『不思議な物で、味を見てみたかった』とかなら、

 私が調理場を借りて作るから、調理場に案内して」


「ヒカリ様、興味本位で申し訳ないのですが、

 先ほどニーニャ様が召し上がっていたものは何でしょうか?」


「ああ、焼き立てじゃなくて残り物になっちゃうけど、それで良いならあなた達3人で食べて良いよ。

 しばらく食事を作るから、台所に案内してくれる?」


 2-3週間の間、ニーニャ、リサ、私の3人が食べられる食事なら、一々作らなくても鞄に入っているし、調理後の状態で取り出せるから、それで済ませることが出来る。

 けれども、私より体格の良い男性の大人3人が加わって、贅沢に食事を振舞ったら、一週間ともたなくなる。

 そういった意味で、鞄の秘密の前に、実際問題の食料調達の観点から、私がここで調理してご飯を提供した方が手っ取り早い。


 案内された調理場と食糧庫を見たんだけど……。

 正直、キリギスの宿屋を思い出すレベル……。

 昨日の夕飯は『夕食会の会費をケチったから粗末は物だったのかな』とか、思っていたけど、接待する夕食として出されたものがあのレベルだったのか……。私がダンジョンの中で作っている食事と変わらないんじゃないの?


 米、ジャガイモ、香りの強いハーブ、何か分からない干し魚、何かの干し肉、乾燥してカチカチになったソーセージ。野菜らしきものが無い。干しキノコとかも無い。

 調味料は塩だけ。乳製品でコクやまろやかさを出す方法も使えない。


 これはちょっとピンチ?

 あ、でも、肉や魚で出汁がとれれば、お米で釜めしみたいのが作れるかな?

 釜めし風であれば、お米の質が多少悪くても水分を出汁として吸収してくれるはず。

 

 この路線でいくとして……。

 干しウインナーと干し肉の汚れを丁寧に落として、細かく刻んでおく。臭いは腐ったりカビたりした臭いが無いから大丈夫かな?

 出汁は、干し魚とサンマール王国から持ってきた干したキノコを茹でて出汁としておく。

 お米は洗米をして、水を切ってから近くにあった鍋に入れておく。


 これらを順番に入れて、蓋をして焚き上げるだけだね。


 これだけだと品数が寂しいから、さっき出汁をとったキノコと魚を具にしてスープを作っておこう。


 釜めしが炊き上がるまでの時間は掛かるけれど、手間は掛からない。

 それに大人数であっても、一度に作れて、取り皿のお椀の数も少なくて済むから、間に合わせで作ったにしては良い線言ってるんじゃないかな?

 本当なら、砂糖とか醤油とか日本酒で臭みをとって、味も調えたいけど、そこはまぁ、我慢だよ。


 他人の調理場だけど、まぁ、準備入れて一時間も掛からずに仕上がったのだから良しとしよう!

 とりあえず、4人分をお椀のような形をした深皿に盛り付けて、スープを別の皿に盛り付ける。私は箸でたべるけど、この人たちは何の食器を使うのかな?


「カサマドさん、出来たよ!


 二―ニャが起きそうだったら起こしてきて。

 リサは私が起こしてみるよ。

 あと、私は箸で食べるけど、好きな食器を用意してね。


 食器の上げ下げが面倒だから、ここで食べようと思うんだけど良いかな?」


 私が料理の完成とともに指示をだすと、一人がニーニャの様子を確認しに行って、のこりの二人がご飯を食べるためのテーブルと椅子を運び込んで、そこに食器を並べ始めた。

 この人たち、理解した物事への対応能力は高いよね……。

 とても優秀なんだと思う。


 で、眠そうなニーニャを連れてきて、椅子に座らせる。私は朝から眠り続けているリサを起こして、ご飯を食べることを告げる。そんな準備が整った6人でテーブルを囲んだところで、夕飯を食べる準備は整ったよ。


「カサマドさん、食事の前のお祈りとかあるの?

 無ければ、『いただきます』って、声を掛けてから食べ始めるよ」


「法王から強要されている食事の祈りの挨拶はありますが、ご客人と一緒に食事をとる場合は免除されています。

 ですので、ヒカリ様の方式で食事の開始の挨拶としてください」


 そんなこんなで、ようやく夕飯になった。

 朝も昼も色々な作業が立て込んでいて簡易的な食事しか出来なかったしね。

 長い一日だよ……。


 そんなことを思いながら、箸でお椀からひょいぱくひょいぱくと釜めしを食べていると……。


「ヒカリ様、食事中に話しかけても失礼では無いでしょうか?」

「うん?ご飯が口に入った状態で、ぺちゃくちゃしながら話すのは下品だと思うけれど、食事を楽しめる会話ってのは良いんじゃないかな?」


「それでは失礼して……。

 この料理は旅の中で入手した貴重な食材を使われているのでしょうか?」


「うん?それは私にお世辞を言っているの?

 ある物だけで作ろうとしたから、こんな程度でごめんね。


 食材としては、干しキノコだけを追加で使っているけれど、それ以外はここの調理場と倉庫にあったもので賄ったよ」


「で、では、そのキノコが大変貴重な物であったり、伝説の食材であったりするのでしょうか?」


「だから、そんなお世辞は要らないってば。

 サンマール王国の市場で売ってたキノコだよ。

 高価な物とか入れて無くてごめんね」


「いや、その……。恐れ入りました……。

 ニーニャ様、ヒカリ様はどこかの著名な料理長の下で修業した経験があるのでしょうか?」


「カサマド、ヒカリのことを詮索するな。

 『フンフン、分かりました』

 これで十分だ」


「ニーニャ様、それはヒカリ様に失礼では……」

「質問ばかりで、鬱陶しい思いをさせると、ヒカリが無口になる。

 ヒカリが無口になって、機嫌が悪くなると国が亡ぶから注意する。

 覚えておいて損は無い。


 それより、我々が帰る段取りは整ったか?」


「ニーニャ様、宿の準備と夕飯の準備を優先しました。

 明日からニーニャ様のご意見を伺って、連れ帰る人選をさせて頂きたいと思います」


「ヒカリ、何やってるんだぞ?」

「ええ~?だって、夕飯が……」


「ヒカリ、夕飯後にカサマドを借りる。

 その他、魔族の人達から情報を入手する必要があれば、テイラーかムカンと話を詰めるんだぞ」


「わ、分かった……。

 あ、ニーニャさ、お願いがあるんだけど?」

 

「なんなんだぞ?」

「カサマドさんの指輪、ニーニャが作ってあげたら?」


「それは、命令なのか?」

「ううん……。ニーニャが不快かと思って……」


「賠償問題に発展する可能性があるんだぞ?」

「カサマドさんが我慢してくれれば良いよ」


「わかった……。

 その代わり、この件で質問があったら全てヒカリが処理するんだぞ?


 カサマド、身に着けているオリハルコンの指輪だが、私が別の物を与える。

 だから、それを破棄しろ。鑑定書もだ」


「ニーニャ様?」

「ヒカリ、説明だぞ。

 私はこの場で指輪を作る」


 って、ニーニャは自分の鞄からオリハルコンと思われる鉱石を取り出して、いとも簡単に指輪に成形しちゃったよ。


「カサマド、指の太さを確認する。

 銘は入れるか?」


 ニーニャがカサマドさんの右手人差し指に嵌っている指輪を取り外して、そこに帯状の紐を巻いて、指の太さと間接の骨の通り具合を確認する。

 こういう装飾品の加工って、ニーニャは不得意な分野じゃないんだっけ?その割には手慣れている。まぁ、いいや……。


「カサマド、返事が無い。

 ヒカリの指示だから、銘を入れておく。無くすな」


 って、カサマドさんの指から取り外した指輪と、ニーニャが太さを調整して銘を入れた指輪を食事をしているテーブルの上に無造作に並べて見せた。


「カサマド、説明が必要ならヒカリに頼め。不要なら私が作った物を身につけろ」


 カサマドさんは部下に鑑定書をとってこさせて、その合間に身に着けていたの指輪とニーニャが今作った指輪を見比べているよ。色々と思う所があるのだろうね。


「ヒカリ様、ご質問させて頂いて宜しいでしょうか?」

「私が判るならな何でもいいよ」


「こちらの鑑定書付きの指輪なのですが、人族語の言葉でロマノフ家と銘が入っております。一方、ニーニャ様から頂いた指輪なのですが、ドワーフ族の言葉でニーニャ様の名前が刻まれています。

 何が起こっているのでしょうか?」


「カサマドさんは分かっているんでしょう?

 『どっちの指輪が装飾品として素晴らしい素材の味わいと造形をしているか』

 だから疑問に感じて、私に質問をしたのでしょう?」


「私は装飾品の審美眼と申しますか、鑑定といいますか、そういったことに疎いのです。ですが、私の目から見て、ゴミと宝飾品の差が見て取れます。

 私が大金を支払って大事にしていたものは何なのでしょう?」


「審美眼とか鑑定が出来ない素人を狙った詐欺に引っかかっていたんだよ。

 一応、製造元とそのサプライチェーンは潰したんだけどね。

 こっちの大陸まで制圧をかける前にカサマドさんに流れていたのかもね」


「ヒカリ様、事情を良くご存じの様子ですので……。

 これはドワーフ族から人族へ種族の名誉棄損による賠償請求が発生しませんか?」


「種族間の戦争になるところを、賠償金の支払いで止めて貰ったよ。

 ただ、その賠償金がべらぼうな額なのでドワーフ族の斧を返還して相殺しようかなと


「ヒカリ様、先ほどの斧の件がここでつながるのですね。

 ですが、残念なお知らせが……」


 え?なになに?

 斧壊したとか、溶かしたとかそういう話じゃないよね?


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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