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6-38.ドワーフ族の支援(1)

「ヒカリ、終わったんだぞ。これからどうするつもりなんだぞ」


 って、ニーニャが人族語で私に音声で話しかけてきたよ!

 いや、多分、彼らは人族語も理解しているはずだよ?


「ニーニャ、念のために彼らの奴隷印の所有者がニーニャであることを確認して!」

「承知!」


 ニーニャが彼ら3人のうなじに手を当てて、所有者がニーニャで登録されていることを確認した。


「ヒカリ、もう大丈夫なんだぞ」

「本当に大丈夫かな?」


「ヒカリは妙な所で心配性なんだぞ。

 私が確認しておくんだぞ」


「カサマド・ディアブロ、私の奴隷であることを宣言できるか?」

わたくしカサマド・ディアブロはニーニャ様の所有物であり、絶対服従であることを誓います。指示に反した行動をとった場合には奴隷印の制約により追跡され、如何なる処罰も受け入れることを誓います」


「カサマド、左右に座る2名の立場は?」

「この者たちはニーニャ様の奴隷となります。

 私の右側に居るものがテイラー、私の左側に居る者がムカンと申します。

 何なりとご指示ください」


「ここでの出来事、私とヒカリの会話、私とヒカリの行動に際して、一切の見聞きした情報を口外することを禁ずる。

 良いか?」


「「「承知しました」」」


 3人が同時にニーニャの命令を受け入れたよ!

 奴隷印って、実は凄い効力があるものなの?


「ヒカリ、安心したか?」

「ニーニャ、凄くない?」


「人生を捨てる覚悟があれば、奴隷でも問題無いんだぞ」

「でも、主人の言うことは絶対なんでしょ?もし守らなかったらどうなるの?」


「今回のカサマドに付いている奴隷印は自らの署名と血を用いての印だから、強制力は高いんだぞ。指示した内容に反する行動をとろうとする場合には身体機能の低下や停止する場合があるんだぞ」


「逃げられないってこと?」


「逃げられないどころか、さっき私が指示を出した『秘密を守れ』という言葉に反する行動をとろうとすると、身体活動に制限が掛かる。喋れないだけでなく、呼吸が困難になる場合がある。そのような強制力が躾として作用し、服従するようになるんだぞ」


「よく、そんな危険な物に署名したねぇ……」


「ヒカリが居れば大丈夫なんだぞ。それにヒカリもエルフ族との戦いで署名をしたとモリス殿から聞いているんだぞ」


「ああ、あれねぇ……。あれは勝てる戦いだったからねぇ……」


「今日も勝てる戦いだったんだぞ。100倍相当の借金を作ることはできても、現物を用意することは鼻から出来ないとわかっていたんだぞ。

 それにあの金貨は製作に非常に手間が掛かるからあまり流通していないはずなんだぞ。きっと、多くの案件は契約書を基本に成立していると予測できたんだぞ」


「じゃ、私が直接カサマドさん達と会話をしても大丈夫?」

「ヒカリの好きにしていいんだぞ。私はお腹が空いたんだぞ」


「あ、ああ……。

 ニーニャ、昨日の夜食の残りなら何人前か残ってるよ。あれで良い?」

「中々、美味しかったんだぞ。そこにある金貨を片付けさせて、そこに並べるんだぞ」


 カサマドさん達は私とニーニャの会話から何が起きているのか良く分からないけれど、言われるがままに周囲に散らかっている契約書とか金貨の袋とか金貨の鑑定に使った機材を手早く部屋の隅の片付けた。

 で、私はホットケーキを山盛りにして並べつつ、お茶を淹れてニーニャの腹の虫を収める準備を整えたよ。


 ニーニャがリサを抱えてくれて、もう片方の空いた手でパンケーキの生地で出来たサンドイッチ風な何かを食べながら、こちらの様子を見守る。


「カサマドさん、いろいろお話を伺いたいのですが……」

「失礼ですが、ヒカリさんはニーニャ様とどういったご関係でしょうか?」


「えっ?ニーニャ、どうしよう……」

「……。(ゴクリ)……。あ~。カサマド、ヒカリの命令は絶対だ」


 と、ニーニャはモグモグと食べてる合間に、一言だけ口添えをしてくれた。


「ニーニャ様、承知しました。

 ヒカリ様、ご用件を承ります」


 え?敬称が『様』に変わっちゃったよ?

 これって、ニーニャに私の奴隷印が付いているって察したってこと?

 た、多分、そうなんだよね……。

 小出しに確認しながら話を進めてみようかな……。


「カサマドさん、私へは敬語も敬称も不要です。

 特定の場所で、特定の身分で接する必要がある場合以外、同格な態度で接してください。ご協力いただけますか?」


「ヒカリさん、承知しました。

 特定の場所、特定の身分を予め共有頂ければこの先配慮します」


「あ~、そうだね。

 そういえば、カサマドさんは王族の関係者でしょ?

 家柄とか血筋はどうなっているの?」


「私はディアブロ王家の正室の第三王子であり、王位継承権は3位となります。

 もし他に知りたい情報があればご指示ください」


「カサマドさんの付き人の二人の身分は?」


「彼らも侯爵家の出身ですが、爵位の継承権は3位以降となり、私の配下として尽くしてくれております」


「じゃぁ、魔族も王国の制度で国が成り立っているんだ?」

「国王とは別に法王もいらっしゃいます。政治の実権はそちらに偏りつつあります」


「うん?法王?初めての情報だね。あとで詳しく話を聞くよ。


 私の紹介がまだだったね。

 基本、私は冒険者出身のメイドという経歴で、そのメイドをエスティア王国の王子が見初めて、結婚相手に選んだことになってる。

 だから、エスティア王国の王太子妃という身分として登場する場合はヒカリ・ウインザーを名乗ることがあるよ。でも、その身分は飾り物で、本当はただのメイドってことで情報統制を掛けている。だから注意してね。


 王子が私を結婚相手に選ぶとき、『相応の身分が必要』ということで、私に伯爵の地位を与えて、その伯爵の身分の相応しい成果をだすために、私の領地に有力な支援者を呼び入れたの。それがドワーフ族のニーニャ・ロマノフ様やエルフ族のステラ・アルシウス様であったりするの。

 そういった経緯の元、伯爵領とヒカリ・ハミルトンという貴族の身分も所持しているよ。


 だから、普段は私のことをどう思ってくれていてもいいけれど、公の場では『幸運に恵まれたメイドが王太子妃なった存在』として扱うことを忘れないでね」


「ヒカリ様、承知しました。

 それで、その……。

 今のヒカリ様の自己紹介の中に、『ニーニャ・ロマノフ様とステラ・アルシウス様が支援者として集まった』との話がありましたが、そのお話を伺っても宜しいでしょうか?」

「ちょっと面倒だから省略。

 でも、支援してもらっているのは事実だから、証拠を見せるよ。

 ニーニャ、あの樽の材料を荷ほどきするから、組み立ててくれる?」


「(モグモグ)……ヒカリ、食事中に人使いが荒いんだぞ?

 仕方ないから手伝うんだぞ……。

 カサマド、テイラー、ムカン、この樽を組み立てる。

 手伝え」


「「「ハッ」」」


 食べかけのパンケーキを木皿に戻して、私が荷ほどきした木片の束をニーニャは自分の鞄から取り出した金属の帯で縛るように固めながら樽を完成させていく。当然、樽の組み立てで複数の木片を支えておく機材とか無いから、カサマドさん達に指示を出して手伝わせたってことね。


 ものの五分も掛からずに樽が1つ完成した。

 ニーニャが軽く、仕上げの印の様なものを施してから、「完成したぞ」って、私に声を掛けた。


「ニーニャありがとうね。

 カサマドさん、ドワーフ族が飲み水に苦労していると噂に聞きました。きっと、銅の精錬に伴う河川が汚染されてしまったことと関係があるのでしょうね。


 こちらの樽を預けますので、飲み水などにご利用ください。ニーニャ様とステラ様の支援は強力なものであることが実感頂けると思います」


 って、ニーニャが仕上げの印を描いて、私がちょっと説明を加えている間に、樽の板同士の隙間が濡れ始めて、しっかりと水が漏れ出ない仕上がりになってきているのが判る。


「……ヒカリ様?」

「カサマドさん、なに?」


「いま、我々4人で樽を組み立てましたよね?」

「そうだね。ありがとうね」


「水とは?」

「え?ほら、乾燥していた木の色が湿り気を帯びて黒ずんでるでしょ?

 そこに水を取り出せるような栓が付いているから、それを外せば水が取り出せるよ」


 なんか、全然信用無いな。

 服従することと理解できなくて信じて貰えないのは別物らしい……。

 まぁ、別にこれで反抗しているとか、そうい訳じゃないから仕方ないね。


「ニーニャ、私が持ち上げるから、栓を外して水をそこのティーカップに注いでくれる?」

「ヒカリ、このティーカップには、まだお茶が残ってるんだぞ?」


 と、私が身体強化で樽を持ち上げて支えているから、文句を言いつつもニーニャはティーカップに入ったお茶を飲み干して、樽の栓に近づくと、そこから綺麗な水をティーカップに注いで見せた。

 それを確認したので、私は樽を床に置きなおす。


「カサマドさん、分かった?」

「ヒカリ様、この液体は何処から出てきたのでしょうか?」


「うん?見てたよね?見て無かったの?」


「ヒカリ、いじめるな。外交の切り札に使えるかもしれないんだぞ。

 ゆっくりと進めるんだぞ」


 と、ニーニャから横やりが入る。

 そ、そんなにキツイこと言ってるかな……?

 私が実演したのを見て無かったのか、確認しただけだよね?


「ヒカリ様、無知を承知で申し上げます。

 私には水が何処から出てきたのか理解できませんでした」


「うん?

 魔族の人達だって、簡単な魔法を使えば水を出せるんじゃないの?

 こんな感じでさ……」


 ニーニャが受けたティーカップの水を今度は私が飲み干して、そこに掌から水を注ぐ。


「ヒカリ様、魔法の訓練を積んだ一部の者がヒカリ様が実演されたことを可能としますが、誰でも水を簡単に出せる文化は魔族にはございません」


「人族だってそうだよ。いろいろ魔法を使うには知識や修行が必要でさ。

 だから水不足が起きたとき、樽から水が出せたら便利だと思って、持ってきたんだよ?」


「ヒカリ様、全く理解が出来なくて申し訳ないのですが、この樽は水が取り出せる魔法の樽ということで宜しいでしょうか?」

「魔法かどうかわからないけど、特殊な印を組み合わせていて、その樽の栓を外せばそこから水が取り出せるね。

 一応、製作者が死ぬか、その樽を分解するようなことをすると、二度と水は出なくなるから気を付けてね」


「ヒカリ様、『魔法の樽』を大事に預からせて頂きます」

「カサマドさん、預かるんじゃなくて、使うんだよ。

 ちゃんとここに住んで、働いている人や家族の世話が出来るように水を潤沢に供給してあげてね」


「貴重な水を頂きありがとうございます。公平に分配するように管理したいと思います」

「ニーニャ、もう、こんな感じだから、残りの樽も全部出して組み立てても良いかな?」

「ヒカリ、ここで組み立てると、水が湧いて重くなる。この部屋から出すもの大変なんだぞ」


「今から外へ行って、設置場所決めて、そこで樽を組み立てるの?」

「疲れたし、腹も膨れたから、今日はここで寝るんだぞ。

 支払いはヒカリが交渉しておくんだぞ……」


 なんだか、最後の方はちゃんと喋ってないで寝始めたよ。

 それどころか、いびきまでかいてる!凄い早業なんじゃないの!

 でも、まぁ、昨日からの魔族の交渉に加えて、徹夜で複製金貨の作成を指揮しつつ、実働までしたんだからね。体も精神も魔力も枯渇しててもおかしく無いよね……。


 よし、此処からは私がやってみるよ!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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