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1-09.海賊退治(2)

前作のものですが、帝都~サイナスまでの地図はこちら

一番左端の茶色の★が帝都

真ん中のオレンジの★がロメリア王宮

数字の4番がサイナス


本文での地名の関係の助けになれば幸いです


挿絵(By みてみん)

「アリアさんと、ヒカリさん、赤ちゃん達は大丈夫かしら?」と、マリア様。


 うん。

 今日は哺乳瓶に溜めた母乳を何本か準備してあるから、メイドさん達に託して来た。当然、ここの地下室に住んでる訳だから、何か緊急事態があったら直ぐに呼びに来るようには言ってある。

 ちなみにリチャードは今日もどこかのギルドだか、商人組合と打ち合わせ中。打ち合わせなのか懇親会なのかは良くわからないけれど……。


「ハイ。私は大丈夫です。哺乳瓶に溜めた母乳を冷蔵庫で冷やしてあります。温め方や与え方はマリア様のメイドさん達がご存じです」と、私。


「マリア様、私もヒカリ様と同様に準備してあるので大丈夫です」と、アリア。


「二人とも上手く準備してるあのね。良かったわ。


 では、話を続けるわね。

 ヒカリさんはストレイア帝国の現行の皇后陛下を敵に回しているの。きっかけは上皇后様なのか、それともエルフ族やドワーフ族との軋轢なのかは分からないけれどもね?


 少なくとも、モリスの息子さんであるアルバートさんと念話で話した範囲では、皇后陛下のヒカリさん達への恨みは相当な物よ。貴方達、皇后陛下がオーナーをしている宝飾店を潰したのよね。それも、貴方達が上皇陛下から聖女の認定を受けた一行として、同じ日に店で問題を起こしたことになっているわ。それだけでなく、偽物を販売したペナルティーの誓約書も書かせたそうじゃない。


 次に、その怪しげな聖女様一行と王宮で会食をして、上皇様からダメ出しをされただけでなく、皇后様の所有物を上回る指輪、見たことも無いガラス容器に入れられたお菓子、エルフ族のステラ・アルシウス様が煎れたハーブティーをお披露目したのよね。


 誘拐犯として偽の犯罪者として捕らえるか、抹殺しようとした皇后陛下直属の女騎士団を壊滅に追いやったとも聞くわ。


 つまり、財源、宝飾品、武力の全てにおいて皇后陛下を上回っていると示威したことになるの。


 ここまでは良いかしら?」


 いや~。 そこまでは事実だよ。

 でも、皇后陛下の借金は出身国であるサンマール王国へ要請するようなことを上皇様が言っていたから、そこは一旦切り離して良いんじゃないかな~。

 まぁ、本国からしてみたら、借金である金貨50万枚相当を延々と返済しなきゃいけないんだろうけどね……。

 

 でも、それとトレモロさんの交易とか大型船は関係ないじゃん!


「アリアさんは、ちょっと怯えているようだけれど心配は要らないわ。きっと、ヒカリさんが何とかしてくれるから、子育てに専念していれば良いわよ」

「マリア様!私も子育てに専念します!リチャードにも言われてます!」


「ヒカリさん、今の部分はきっかけなのよ……。 それに、ここまでだったら、私やフウマは関係ないもの。


 話を続けるわね?

 上皇陛下と上皇后陛下の身代わりを護衛する話があったでしょ?血なまぐさいことは妊娠中の母体ぼたいに良くないから、きちんと報告はしていなかったけれど……」


 と、ここで、フウマが「アッ」と、小さく声を漏らす。

 フウマが気が付いたことって何だろ?

 っていうか、私は妊娠中なのと、結婚の儀の料理の準備で、そっち方面は全然分かってないんだよね。各指揮を執ってくれる人たちに全面的にお任せにしてたし……。


「フウマは気が付いたようね。


 そうなのよ。

 本物の上皇陛下と上皇后陛下はこちらに既に到着していて、その身代わりを本物と装って帝都からこの領地まで保養に出かけて貰う必要があったでしょ?

 そしてその護衛は失敗してはいけないって話をしたわよね。

 いま、その結果を報告するわね」


 と、マリア様の前置きが有ってから、最新の武勇伝を聞けることになった……。


ーーー


 先ず、帝都からロメリア国境までは帝都の常駐する騎士団が護衛をすることにしたの。護衛対象は3つの馬車。1つは如何にも上級貴族って見える様な豪華な馬車。もう一つは貴族が買い物に出かける様な豪華だけれども、地方の領主なんかも使うような馬車。最後はヒカリさんが作った見かけは幌が付いた交易商人が使うような数人乗りの馬車ね。

 この隊列は普通に考えれば先頭の一番豪華な馬車に重要人物が乗っていて、次の馬車には執事長、メイドなんかが控えている。最後は旅行の荷物の多さを表しているって、感じかしら。


 ストレイア帝国からロメリア王国の西側へ国境を超えると、今度はロメリア王国の騎士団が護衛の任に着いたわ。帝国から「重要人物ゆえ、万が一の事態があってはならぬ」と、先触れがあった上でね。

 今、ロメリア王国の飛竜騎士団の団長は隠居しているので、隣国からの支援という形でエスティア王国の辺境自治大臣のレナード・バイロン侯爵が出迎えて、帝国の近衛騎士団と警護の交代の任に着いたの。ここまでは全く問題なかったわ。


 ロメリア王国内も飛竜騎士団が控えているとなれば、エスティア王国の玄関口であるメルマまで何も起こらないと考えていたけれど甘かったわ。

 帝国の情報網では、既にミラニア川から東側はエスティア王国が実質支配をしていることを知っていたの。すなわち、ロメリアとエスティアの国境に位置するメルマまで待たずとも、何か問題が起こったらエスティア王国の責任を追及できるって判断していたみたいね。


 一方、我々も入念な準備をしていたわ。

 ミラニア川に架けたヒカリさんの橋からメルマ付近まで続く街道に空気搬送システムを敷設している最中だったから、街道工事の名目で多くの偽装した騎士団員を配置することが出来たわ。

 騎士団員の中には帝国からヒカリさんの領地を守るために派遣されていた人員と、ヒカリさんが直接雇用しているヒカリさんの騎士団員たちを混ぜて配備していたわ。

 例えば、工事をしているのが偽装している帝国騎士団員だと襲撃団に身バレして、皇帝の勅命による強権発動をすれば、工事中の騎士団員たちの動きを止められ可能性があったので、その備えとして混成部隊にしておいたわ。


 ロメリアの首都、ミラニア、サイナスのそれぞれの犯罪奴隷の購入情報も入手していたので、ストレイア帝国語を話す客が、わざわざ不慣れな土地で3チーム分の荒くれ者の編成をしている可能性があったの。ただ、三者三様で、特に連携もせずに襲撃を予定していたみたいね。


 襲撃部隊の2チームは数人の強盗集団として襲い掛かってきたのだけれど、練度が悪く、本当に即席の寄せ集めの集団って感じだったの。帝国から護衛として付いてきてくれた元女性騎士団長のヒルダさんの腕が抜群だったこともあって、簡単にあしらうことが出来たわ。


 ところが、3チーム目は毛色が違ったのよ。30人規模の盗賊団でちゃんと連携が出来ていたわ。一台目の馬車を急停止させて、横から挟撃するとともに、後退して逃げれない様に後方も取り囲んできたわ。と言っても、私はその状態を後からヒルダさんから報告を受けただけなのだけどね。


 流石に30人規模での襲撃は想定していなかったわ。だって、サイナス周辺は灌木と背丈の低い草原ばかりで、奇襲をかけて強盗を行うには隠れる場所が無いんだもの。ところが、穴を掘ったり、木や草を使って上手くカムフラージュしつつ、隠密行動の魔術なんかも併用していたみたいね。


 この襲撃は見事に成功して、ヒルダも剣を捨てて降伏を申し出たわ。護衛を無力化出来たとみると、彼らは先頭の馬車の中を確認したの。そこには豪華な衣服を身にまとってフードを目深まぶかに被った初老の夫婦が確認出来たはずなの。彼らは二人を準備してあった毛布とロープで包んで連れ出したわ。


 次に、2台目、3台目と荷物や奴隷に出来そうなメイドが居ないか物色するかと思えば、その二人だけを連れ去って、撤収してしまったの。

 つまり、3チーム目の襲撃目的は、貴族一行の馬車を襲撃して強奪を行うことが目的では無かったのよ。だって、馬車2台分から得られる宝飾品や機材、奴隷として販売できる可能性のある人員を全て無視して、先頭の馬車に乗っていた二人にだけ価値を見出していたことになるわ。

 それだけでなく、犯行の目撃者であるヒルダや他の馬車の御者も生かしたまま逃亡したの。


 これで3チーム目は誘拐目的であることが自明であるし、その2人の人物を絶対に傷つけてはならないと言い渡されていた集団であることも推測できるわ。更には、その連れ去られた事実を近くの町まで連絡しに行ける様に、隊列を組んだ馬車や人員を無傷な状態で残していったの。


 私たちはフウマが3台目の馬車の中に、私は2台目の馬車にメイドとして乗車していたのだけど、あまりの見事な誘拐に唖然としたわ。もちろん、ヒルダさんも前の2チームの強盗と違って、剣を振るう暇も無かったし、追いかけることもしなかったわ。

 まぁ、ヒルダさんに関しては、出来なかったのでは無くて、しなかったのだけれどね。


 ヒカリさんなら話を聞きながら気が付いたと思うけれど、先頭の馬車には、上皇夫妻の身代わりではなくて、奴隷印が付いた完全な別人を仕込んであったのよ。ただ、ある程度魔術をかけたり、特殊なハーブオイル類を使って、肌つやを綺麗にした上で、化粧も施してあるから、直ぐに上皇夫妻の偽物と見破られない様にしてあったわ。

 そして、本物の上皇夫妻の身代わりは、三台目のヒカリさんの馬車で静かに快適に旅を楽しんでいてもたったし、フウマの護衛も付いていたから、100人ぐらいの盗賊団が攻め込んで来ていたとても無事に守り切れていたでしょうね。


 ここからは連れ去られた奴隷の老夫婦に付いている奴隷印を目標地点にして、隠密行動で追跡をかけて、盗賊団のアジトを発見したわ。まぁ、誘拐する側も上皇夫妻に奴隷印が付いてるとは思わないから、そういった追跡の手があるとは考えてなかった様で楽だったわ。


 盗賊団の小屋に着いてから、誘拐の依頼主が来ないか見張っていたの。暫くすると鎧の上からと分かるようなゴツゴツとした体形で、そこに粗末な厚手のローブを被った人物が盗賊団に接触してきたの。その人物が誘拐の依頼主であることが会話から分かったから、すぐにその人物を捕まえて、審議の魔術を久しぶりに使いつつ、拷問をしたわ。

 盗賊団を壊滅させることが目的では無かったから、睡眠作用のあるお香を焚いて、全員を寝かせつけてから連れ去ったのだけどね。


 盗賊団へ誘拐の依頼をした人物は、皇后陛下の直近の執事であることが判明したし、上皇夫妻が保養の旅に出ていることも知っていて誘拐を企んでいたの。

 誘拐にした理由は2つあって、上皇夫妻の誘拐に対するべらぼうな身代金を皇后陛下が肩代わりすることで、ヒカリさん達から課せられた借金の減殺げんさいをさせることが大きな目的だったみたい。誘拐犯も身代金を払う側も同一人物なのだから、身代金はいくらにでも設定できるし、それを支払うことも可能だものね。

 もう一つの目的は上皇夫妻が誘拐されるような犯罪が発生している事実を元に、その責任をエスティア王国の罪とするためだったみたいね。

 別の意味でいえば、上皇陛下を殺してしまうと証人がいなくなってしまうので、上皇陛下へ恩を売ったり、借金の減殺の交渉をする相手が居なくなってしまうのも問題であったようね。


ーーーー


 と、ここでマリア様のお話が終わった。

 いや、なんというか、これって罠の嵌め合いがどちらが上手だったかって話だよね?実際に襲撃されてるし、一方で盗賊団30人のアジトを貼り込んで接触者を確保したりしてる訳だから……。


ま、まぁ、マリア様の意見を聞こう……。

いつもお読みいただきありがとうございます。

余裕がなくなったら週末1回のペースにさせて戴きます。

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