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6-27.ドワーフ族への訪問(4)

 私の妖精の子を経由して、崖の割れ目の中へ潜入だ!

 私の妖精の子に偵察して貰うことが出来るのか聞いてみよう!


<<私の子、お話できる?>>

<<お母様、何でしょうか?>>

<<あの崖の割れ目を、コッソリ、少しだけ偵察したい。だけど、貴方が眩しく光っていると、『何かがやってきた!』って、騒ぎになっちゃうかも。

 今の所、崖の割れ目の中の存在が友好的なのか敵対関係にあるかも分からないので、慎重に行動したい。

 そんな状況だけど共有出来てるかな?>>

<<はい。共有できています。私が光量を最小にして、様子を見てきます>>


<<あ、うん。危なくなったり、捕まりそうなら直ぐに逃げてきてね。貴方を失いたくないから>>

<<大丈夫です。お母様のこれまでの思考も索敵情報も共有できています。私からお母さんへも情報を繋げますが、繋いで良いですか?>>


<<そんなこと出来るの?>>

<<お母様と同化している時間が長く、関係が深くなってきていること。そして、私からお母様へ情報を供給してもお母様が情報酔いをしないであろうとの推測による判断になります>>


<<前者はなんとなくわかるけど、後者の『情報酔い』って何?>>


<<お母様の知識に基づくなら、『3D酔い』という言葉が一番適切でしょうか。

 視覚的な浮遊感や移動であるにも関わらず、脳が得た情報によって、あたかも浮遊感や回転などを検知してしまい、それに伴う船酔いなどを疑似的に体験してしまう症状です。 今回の『情報酔い』とは、私からの視覚情報をお母様が受け取ると、私の羽ばたきや移動に伴う浮遊感を疑似的に体験することで酔いに似た症状が体に現れることを懸念しました。

 

 ですが、お母様は常に飛空術で飛び回りながら移動されてるので、浮遊感などに伴う酔いが発症しない可能性が高いと思われます。もし、発症した場合には無理せずに視覚情報を切断した上で、横になってお休みください。直ぐに回復するはずです>>


<<なるほどね。分かった。

 もし情報酔いが始まっちゃったら、視覚情報を切断すれば良いんだね。直ぐに横になれるように、崖下の砂地に下りるね。そしたら準備おっけーだよ。よろしく!>>


 崖下へ下りる途中で妖精の子と別れて、私は崖下の砂地で待機。

 私が崖下の窪みで背を持たれ掛けさせて隠れるようにして座ると、妖精の子から念話が入った。


<<お母様、私の視覚情報を転送します>>

<<おっけ~。お願い>>


 割れ目の幅は2~3mなので天然の要塞のようだね。大軍を率いてきても攻め込めないよ。一方で内側で待ち伏せされたらどうにもならないね。

 割れ目の高さ方向は50m以上あるんじゃないかな?高低差が判らなくなるぐらい、かなり上の方まで続いている。けれども光が射してこないから割れ目の形状が複雑にいりくんでいるか、一番上までは届いていないんだろうね。上から攻め込むことも難しい感じだね。


 割れ目の中に入っていくと、何故か薄暗く明るい。松明のような火が灯されている様子は無いので、何らかの魔道具か、あるいはこの世界特有の発光する生物が存在しているかだろうね。あ、あと、もしここ最近の話であればラナちゃんが復活したので小さな光の妖精を召喚している可能性もあるね。

 ま、何にせよ人間の目で十分に明るいとは言えないけれど、どこに何があるかは判別可能な明るさがある。


 そして、私が崖の外側から検知した2つのエーテル反応と思わしき人物が居た。

 

 う~ん。

 背の高さからすると、人族やエルフ族。出会ったことは無いけれど魔族とか。ここに見張りが二人立っていることになるね。

 この二人の頭上1mくらいを通過したけれど、索敵対象の物体が小さいためか何も気づく様子が無く、無事に通過できた。


 そのまま、ふよふよと少し上下に揺れながら割れ目の中を飛んでいくと、少し開けた洞窟の内部のような場所に出た。ここは洞窟の中であるにもかかわらず、小さな集落が形成されているように見えるよ。

 

 割れ目の入り口から50mぐらいは入ってきたかな。

 整備もされていないゴツゴツしたままの岩だらけの道沿いに点々と掘っ立て小屋が並んでいる。この雰囲気は初めて関所の領地を訪問したときの奴隷小屋をみている感じに近いかな。中に人が居るかどうかわからないけれど、生気が無くて賑やかな雰囲気がまるで無い。ただ単に食事と寝るためだけの場所のような雰囲気……。


 ニーニャと念話で話をしていた通り、あまり良好な状況ではなさそうだね……。


 そのまま暫く進むと、大きな建物があって、これは蒸気の様な物が上から出ているから精錬所とかかな?ドワーフ族が小屋の中で鍛造している雰囲気では無くて、何らかの金属を大量に溶解して精錬している様に思われる。

 そして、その精錬所を過ぎて更に進むと今度は鉱石を掘り出すための洞くつみたいなのが見える。


 う~ん。

 それにしても門番以外の人影が見当たらない。建物の中を探索していないし、精錬所の中や鉱石を掘っていると思われる洞窟の中にも入っていないから様子が判らないけど、視覚情報からでは生活の営みが感じられなね……。


<<お母様、この先に大き目の建物がある様です。そこでこの大きな空洞は壁に行きつくようです。細かな枝の様に伸びる洞窟の探索や建物の中の探索も行いますか?>>


<<貴方が何らかの生物に発見されて、この洞窟の中で警戒されるような状態になると色々困る。

 たとえ無事に帰って来れても、この後ニーニャたちと実際に訪問するから、そのときに影響が残っていない方が良いと思う。

 だから、コッソリと戻ってきてもらっても良いかな?>>


<<分かりました。細心の注意を払って、元来た道を戻ります>>


 うん。

 妖精の子のおかげで大体の状況はつかめたよ。

 ニーニャ達を待たせちゃ悪いし、戻る旨を伝えてから一旦合流だよ。


ーーー


「という訳で、妖精の子に偵察をしてもらった結果を共有したけど、どんな作戦で進むのが良いかな?」


「正攻法で攻めるなら、門番に取り次いでもらって、一人のドワーフがドワーフ族を訪問した旨を伝えて貰うのが良いと思うんだぞ。

 この時点で我々が友好的に扱われない場合、離脱するか戦闘に入るかを予め決めておくと良いんだぞ」


「なるほど。ニーニャありがとう。リサは何か意見ある?」

「私の持つ知識は何の役にも立ちません。ニーニャ様とお母様のご判断にお任せします。ただし、いつでも戦闘に入れる準備はしておきます」


「あ~、そっか~。

 拘束されて、荷物から武器から取り上げられたら不味いね。

 不思議なカバンの中身は偽装してあるから大丈夫だけど、不思議なカバンを切り裂かれたりしたら元々入っていた種々の貴重な品物が失われちゃうのは勿体ないね。

 武力行使を受けるぐらいなら、先制防衛を発動してもいいかもね?」


「そんな恐れがあるなら、不思議なカバンも空飛ぶ卵と一緒にここに置いていけば良いんだぞ。私が作ったナイフと木の樽と、一般的な冒険者が担ぐ荷物だけを持っていけば良いんだぞ」


「そうだね。そうしよう。

 でも、リサはナイフを持っているんだっけ?

 流石にリサのミスリル製のショートソードを背負ったり、普通の冒険者の鞄に入れていくのは不自然だと思うよ?」


「お母様、何故ですか?お母様に買っていただいた折角の剣です。こういった機会でもないと、使う機会が無いと思います」


「いやいや。リサ、ちょっと待ってよ。

 リサがもう少し大きくなったら、例えば最低でもユッカちゃんぐらいの年齢になっていたら、ああいう剣を振り回していてもおかしくないよ。

 だけど、今のリサが使いこなせていても、それを振り回すのは『あいつら普通じゃない!』って、相手に情報を与えることになるよ」


「お母様、そんなこというのでしたら、私がこの年齢で普通に会話ができていることすらおかしいことになります!」


「そうだよ。だから、リサは喋れない振りをするか、念話で情報共有しないと……」


「が~~~ん!」


「リサ、気持ちが声に出てるよ?それも擬音で……」

「お母様、私はここまで来て、ただお母様に抱っこされて見てろと言うのですか?」


「そんな感じ?念話なら会話に入って良いよ。念話の習得は進んだ?」

「なんとなく……。たぶん……。きっと……」


「まぁ、魔族とも会えるかもしれないし。リサの知識が役に立つかもよ?」

「お母様、最初に言っておきます。

 背中に翼の生えた魔族には逆らってはダメです。

 ディアブロ一族です。

 お母様に関係するありとあらゆる人が地獄に落ちます」


「え?」

「どの辺りがおかしかったですか?」


「いや、私は魔族のことは全然分からないんだよ。

 伝説なのか吟遊詩人のサーガなのか判らないけれど、角と羽が生えてるらしいとか。あと、ドワーフ族が何らかの方法で大事な斧を奪われているぐらい」


「さらに言えば、人族の領地の一部も占有されて、その際にいくつかの村が壊滅に至りました。そのエリアには、ユグドラシルへの登頂ルートのうち、飛竜の巣を回避できる安全なルートがありました」


「なるほど。

 ところで、翼が生えているディアブロ一族って何者?」


「私も良く分かりませんが、背中に翼の生えた人物が軍の指揮を執っていました。

 その者の命令は絶対で、少しでも異なる意見を言う部下が居れば切り捨てられていました」


「切り捨てるってのは、視野に入れない様に解雇するという意味?」

「いいえ、物理的に胴体が切り裂かれてるという意味です」


「そ、そんなのが、これから行く洞窟に居たら不味いんじゃないの?

 普通の冒険者がニーニャのオリハルコン製の鎧を着こむ訳にはいかないし……」


「ヒカリ、今着ている内側にミスリル銀を編み込んだ衣服であれば、ステラのコーティングと併せて、並みの技量では傷つけることは出来ないんだぞ。

 ただ、衝撃自体は体にダメージを与えるから吹き飛ばされたりはすることになると思う」


「そう……。

 まぁ、身体強化して受け身をとりつつ、ダメージは軽減しておいて、やられた振りをすることにするよ。

 それにしても、割れ目に向かう前から全然楽な未来が見えないんだけど?」


「ヒカリがサンマール王国を経済的に自立させるために、多くのドワーフ族の助けを借りるのであれば、そこの割れ目の中で生活しているドワーフ族の信頼を勝ち取る必要があるんだぞ」


「わかった!

 覚悟きめたよ!3人で向かおう。

 戦闘に巻き込まれないように最善策を模索した上で、ドワーフ族を魔族の支配下から取り戻せるように頑張ろう!」


「「ハイ!」」


 よしっ!

 覚悟を決めた以上は、前進あるのみ!

 ちゃちゃっと飛んで、割れ目の所の門番に会いに行くよ!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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