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6-26.ドワーフ族への訪問(3)

 ドワーフ族が住んでいるとされる側の高台まで到着。

 村の中に入る前に、周辺の調査をしよう。

<<ナビ、これから一人で飛ぶ。色々な警戒を同時に行って欲しい>>

<<具体的には?>>


<<上空からドワーフ族の村を発見する。

 そのためには魔封じの結界があると墜落する。相手側が索敵しているような結界が張られていると、私達が空から侵入することが事前に知られる。

 こういった、科学を基礎にしない結界の印が張られている場合には事前に警告が欲しい>>


<<承知しました。他には?>>

<<これまで通り、科学で探知出来る毒物や放射能が人体に影響を及ぼすレベルで検知された場合には、それを事前に知らせて欲しい>>


<<承知しました。他には?>>

<<異世界生物で私が認識していない危険生物が存在している場合には、微小なウイルスだろうが、山の様に大きな生物だろうが事前に警告して欲しい>>


<<承知しました。他には?>>

<<私は気が付かないけど、私へ肉体的であったり、精神的であったりダメージを与えたり、生命活動を休止状態に追い込む危険性が感知出来た場合には、その他の危険として連絡して欲しい>>


<<承知しました。

 その他の条件としまして、地殻変動などの天変地異を伴う災害による影響と、ヒカリが直接的に接触した生物や人物との関わり合いの結果として齎される派生作用については除外します。

 宜しいでしょうか?>>


<<ナビ、ありがとう。それで十分だと思う。

 これから飛び始めるから情報の収集と支援をお願いね>>


<<承知しました>>


 ナビと探索条件の設定を細かく打ち合わせをしてから、ニーニャとリサに挨拶をしてから飛び立つ。

 サンマール王国を出発してから一日が経とうとしている。午前中でも日が出始めているから気温はそれほど低くない。見通しも良い。風は少し強いけど、体表面を膜で覆っているのと、金属繊維で裏打ちされた衣服を身に着けているから寒くはない。




 標高2000mの崖の高さと同じ高さで飛行しながら様子を見ようとしたんだけど……。扇状地のような形状に砂漠が広がっている。


 泥が流れ出した?

 いや、泥っていうか、緑の木々に土石流が流れ込んでいるのではなくて、辺り一帯の植物が枯れちゃっている?茶色の砂の表面に白く老朽化した枯れ木が残っている感じ。それもこんな上空から見えるぐらいの大きな木なのだから、相当大きな木が立ち枯れて残っているってことになるね……。


 これって、アジャニアのときにも経験したけど、環境汚染が起きているんじゃないかな?汚染の原因も過去に木が生えていた痕跡があることから、人々の経済活動の副産物としての汚染なんじゃなかろうか……。


<<ナビ、あの砂漠化している土気色の辺りは、何らかの環境汚染物質によって汚染されていないかな?>>


<<この距離からではヒカリの人体に影響する物質が検出されません。

 ですが、土壌や空気などが長期間に渡り汚染されていて、その影響によって木々が立ち枯れ、草木が死滅した可能性はヒカリの推測の範囲内です>>


<<ありがとう。短時間でも人体に作用が蓄積されるような毒物が検出された場合には警告をお願い。有機水銀のように、人体に蓄積されて排せつや排出が困難な影響を及ぼす物質が検出された場合にも警告をお願い>>

<<承知しました>>


 簡単にニーニャに念話を通してから、砂漠化した荒れ地に向かって進路を取ることを伝える。今の所、村らしき物や物見やぐらのような人工的な構造物は見当たらないね。


 ってことは、荒れ地の根源とも見受けられる扇状地の付け根辺りに何かあるかもしれないね。ナビとの連携を丁寧に行いながら、このまま光学迷彩と飛空術で進もう……。


 ……。

 結局、ひび割れた崖から扇状地の様に荒れ地が広がっている以外には村落が見当たらなかった。崖の上側にも特に異常は無いし、村落が存在していた形跡は見当たらない。


 う~ん……。

 これって、この崖の割れ目に入っていくってこと?

 それとも、ここの荒れ地はドワーフ族とは無関係な火山性の毒物で植物が死滅しちゃっただけなの?

 

 冒険や探検の醍醐味を失うけど、危険は冒せないからナビに聞いちゃおうっと。


<<ナビ、頼ってばかりでごめん。

 有視界範囲ではドワーフ族の村落と思わしきものが見当たらない。

 あの崖の割れ目の中には、ドワーフ族の村落がありそう?>>


<<基本的には、ヒカリが索敵できる範囲での情報密度でしか探査が行えません。

 あるいは事前に主神の元に情報がアップロードされていて、それが現状に適用できるデータがある場合には情報をダウンロードして共有可能です>>


<<あ~、それって、今の状態を示す詳細データが無いってことね。

 それなら質問を変えるよ。

 過去に主神が集めた情報の範囲において、この砂漠化した地形やあの崖の割れ目の周辺からドワーフ族が生活をしていた情報がアップロードされていたことはある?>>


<<砂漠化した扇状地において村落が形成されていた情報がございます。ですが、現状と合致する情報ではありません>>


<<ナビ、ありがとう>>


 ってことは、ドワーフ族が移住したか、死滅したか不明だけど、扇状地に居たんだね。あとは村落が生き残って移住した先が崖の割れ目の中に潜んでいるかどうかだね。


<<ニーニャ、村落の有った場所が砂漠化してて、痕跡すら残ってない。

 高台の崖に割れ目があって、そこの中に移住した可能性があるけど、そこを調べるにはもっと近寄らなくちゃいけない。

 調べるとなると時間も掛かるし、他の種族との接触も視野にいれなきゃいけないけど、どうしよう?>>


<<ヒカリ、偵察お疲れ様なんだぞ。


 砂漠化した状態が良く分からないが、アジャニアの近くの火山島のときのように、鉱石の採掘や精錬に伴う汚染が原因だとしたら、その崖の割れ目の中で生活している可能性が高いんだぞ。

 ただし、私が知る範囲におけるドワーフ族は自然を大規模に汚染して、周囲の野山を枯らすような精錬活動を推奨していなかったんだぞ。


 つまり、ヒカリが懸念するような多種族による制圧が行われて、強制的に鉱石の採掘や精錬を行っている可能性があるか、何らかの事情でそのような自然を壊すような活動をしてでも、達成しなくてはならない事情があると思われるんだぞ。

 

 まぁ、ドワーフ族がその地を去っていて、他の種族が移民してきて、採掘などの活動を行っている可能性がも無いわけでは無いが……。


 そんな感じだから、我々の理が通るような状況ではない相手と接触すると想定して行動した方が良いんだぞ>>


 う~ん。

 どうしよっかな~。

 リサを連れてくれば、複数の敵と対峙することになったときに助かるけど……。


 そもそも、敵対する必要は無くても、相手方は強制労働を強いられている可能性が高いんだよね……。


 そんな必死の人達が相手だとすると、ニーニャのいう通りに理が通らない。戦闘が始まったら多くの犠牲を出してでも、その場を制圧しなきゃいけない……。そんな状況に、たとえ転生したから経験値が高かったとしても、1歳の娘を巻き込んで良いもんじゃないよね……。


<<ニーニャ、私一人で制圧して、相手を降伏させた状態から対談の場を設けようと思うけど良いかな?>>


<<その方向性になる可能性が高いんだぞ。

 ただ、対談の場を設けるとしたら、ドワーフ族の代表が生存していた場合に、私なら彼らの事情を汲み取ることが出来るかもしれないんだぞ>>


<<ああ、じゃぁ、どこまで近づけるかを偵察して、門番なり、見張りの索敵範囲ギリギリを見極めるよ。

 それから一旦そっちにもどって、3人でもう一度来よう>>


<<了解なんだぞ。リサちゃんと一緒に荷造りの準備を整えて待っているんだぞ>>


<<うん。ニーニャ、また後でね>>


 エーテルを用いた索敵で有視界外から様子を伺う。

 この時点で、特に警戒すべきものは見当たらないし、ナビから報告も特になし。

 ってことは、このままもう少し接近しても大丈夫だね。


 相手の有視界に入ったとしても、相手が気配察知などの技を駆使していなけければ、光学迷彩によって存在は隠されている。逆に、光学迷彩を掛けているにも関わらず、相手の挙動に変化があったとしたら、それは目視に頼らない索敵能力か探知する結界を駆使している可能性が大きいってことだよ。

 ここを切り分ける意味でも、もう少し近づいて相手の情報を集めた方が良いね。


 ゆっくりと、着実に、強いて言うなら『だるまさんがころんだ』の遊びをしているぐらいに慎重に崖の割れ目に近づいていく。

 

 視界の中には十分に崖の割れ目が入っているし、割れ目の少し先に2つのエーテル反応がある。そして、そのエーテル反応が慌てて動いている様子は見受けられない。この時点では相手にこちらの接近を探知されていない可能性が高いね。


 2つのエーテルの動きを監視しながら、崖の割れ目の視線が通らない範囲から近づく。割れ目の直上まで飛んできたけれど、相変わらず2つのエーテルに動きは無い。もしかして寝てる?あるいはペットとか猟犬のようなものが配置されてるだけなのかな?

 

 もし、種族固有のスキルを持った臭覚とか音による探知が出来る生物が居ると不味いな……。視覚情報を隠していてもまるで意味がないもんね。


 2つのエーテルまで距離は20m。クレオやステラなら気配察知でそこに存在する生物が何なのか見当がつくかもしれない。でも、私はその辺の戦闘センスというか獣とかと戦った回数があまりに少なくて、『そこに何か居るはず』までしか分からない。

 一方、相手方のエーテルにも動きがみられない。


 う~ん、どうしよっかな~。

 割れ目の中をある程度探りたいけどな~。

 ラナちゃんだったら、妖精の子を飛ばして索敵情報等とか得られるんだろうけど、私にもそういうの無いから……。


 あ、ラナちゃんから貰った私の妖精の子に明るさを最小限にまで落として偵察して貰うとか出来るのかな?

 ちょっと、聞いてみよう!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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