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6-25.ドワーフ族への訪問(2)

 ま、まぁ、みんなでお茶をしてリラックスすれば良いんじゃないかな?

 私はニーニャとドワーフ族を訪問してくるよ!

「ニーニャ、準備できた!」

「ヒカリ、今度は何なんだぞ?」


「ドワーフ族を訪問しようと思って、ニーニャを誘いに来たよ」

「ヒカリは相変わらずマイペースなんだぞ。


 まず、カカオの磨砕用の温調機能付きの磨り潰し器の試作品は完成した。モリス殿と一緒に同行してきたドワーフ族の者に説明をしておいたんだぞ。使い方と器としての簡単な改良は頼めるんだぞ。印をいじる必要がある場合にはステラ達に頼むように伝えてあるんだぞ。


 次に、シオンくんが必要とする発酵用の温調器の増設なんだが、取り付け時に操作をするための印を刻んだボードだけ作っておいたんだぞ。助っ人の手が空いていれば、必要なサイズの温調器を複製して貰えるんだぞ。


 そして、アリアが追加で求めていたガラス炉の話は、ユッカちゃんとラナちゃんに任せることにしたんだぞ。ガラス炉の高温に耐える石材と、ガラスに必要な珪砂の産地は飛空術を駆使して南の大陸で集める必要があるから頼んだんだぞ。


 ここまで揃っていれば、2-3週間戻れなくてもアリアが困ることは無いんだぞ。

 私の準備はこれでいいか?」


「ニーニャ、いろいろありがとう。十分だと思う。足りない物があったら念話で連絡して貰えば良いし、実際の調達はマリア様とかリチャードにお願いすれば良いと思う」


「じゃぁ、私から確認したいことがあるんだぞ。いいか?」

「うん、何?」


「移動はヒカリに任せていいのか?

 食料の準備はヒカリに任せていいのか?

 ステラの水の印を構築した樽の材料は誰のカバンにいれて運ぶか考えてあるか?

 他のことは成り行きでも良いんだぞ」


「移動は、基本的に空飛ぶ卵。その前後は光学迷彩を使ったりしながら私がニーニャを抱えて飛ぶよ。

 食料とかは私のカバンに入れておく。せっかくゴードンが来てくれているから、念のために2-3週間分の食料を詰め込んでおいた方が良いかもね。


 ステラの印の入った樽の材料は考えて無かったね……。

 カバンから取り出したら不思議なカバンの所持者ってわかっちゃうね……。

 ニーニャ、どうしよう?」


「空飛ぶ卵での移動が終わったら、通常の冒険者の荷物に加えて、ステラの印が入った木材を背負って進むのが良いんだぞ。ヒカリが身体強化を使えることは周囲に知れるが、それは問題ない前提なんだぞ。


 もし、それに問題があるなら、冒険者ギルドで荷物運搬人を雇う必要があるんだぞ。この場合は空飛ぶ卵が使えなくなったり、人力で高台を超える必要があるなど、難易度が格段に上がることになるんだぞ」


「わかった。ニーニャの言う通りだと思う。

 私が身体強化を使えるメイドとして、荷物を大量に背負っていくことにするよ。

 ほら、一応人族のだけど、冒険者ギルドでAランク冒険者の認定も貰ってるし!」


「ヒカリがそれで良いなら、ドワーフ族の村に近づいたら、ヒカリは私のメイド扱いとして紹介するんだぞ。大丈夫か?」

「うんうん。それがスムーズに進みそうだから、それで行こう」


「それじゃ、背負子とか食料の準備をしてから出発するんだぞ」

「うん、分かった」


ーーー


 本当は折角エスティア王国から来てくれた皆をもてなしなり、久しぶりに会ったトレモロさんとレイさんと色々と話をしたかったところ。

 けれども、ドワーフ族の水不足というのは早く助けに行きたいので、ここを皆さんにご理解頂いた上での出発となった。


 まぁ、食事とかの基礎はマリア様が雇ったメイド達がある程度覚えてくれているし、今回の食事の準備をゴードンと一緒に仕込んだから、ゴードンなら上手く食材を生かしてくれると思う。

 人間、美味しい食事と休息があれば、ある程度のことは許してくれると思う……。


 今回は、正々堂々と門番さんの所にニーニャと私とリサの3人の記録を残して出発することにした。

 リサは、『お母様、私も付いていくと言いました』と、私が忘れていたことを覚えていたようで、急遽3人になったよ。

 まぁ、リサぐらいの重さなら飛ぶのに問題ないし。


 朝方に城門を抜けて3人で少し歩いて、周りに人が居ないことを確認してから光学迷彩を掛けて空飛ぶ卵までひとっとび。


 ここから久しぶりに空飛ぶ卵の運転だね。この辺りもニーニャが居るから全く問題無し。南の大陸の飛竜さん達にも念話を通して、ユグドラシルの高台を通過することを伝えてあるから問題無し。


 一応、ナビに魔物とかの警戒をしてもらいつつ、定期的に空気中の毒物濃度や放射能の探査もしてもらっておいた。

 何せ原因不明の水の枯渇となると、火山性の地殻変動が起きていて水脈がかわったとか、地震や地割れが起きている可能性があるからね。そんな大規模な地震が起きたら地中の色々な有害物質が地上に出てきて悪さをしているかもしれないし……。


 ドワーフ族が住むとされる凡その位置はスチュワートさんとかレイさんから聞いて、なんとなくの地図みたいなものは描いてもらっていた。けども、あくまで、大陸の形とユグドラシルの生えている位置にたいして、「こっちの方角のはず」ぐらいなもん。

 これだけ大きな高台が途中にあって、密林に覆われていたら地上からは精度の良い地図なんか作成できないもんね。


 私が思い描いていたよりも南の大陸は大きかったみたいで、時速100kmで飛行して丸1日掛かって早朝になっちゃった。

 サンマール王国が大陸の北西端に位置していたのに対して、ドワーフ族は大陸の東南東側で、海沿いではなく高台の麓に位置している。

 方角はちゃんと合ってるから高低差があって、ユグドラシルの樹が小さく見える程度に大周りに迂回したことと、地図の縮尺が合ってなかったのかな?


 南東側の高台の切れ目が見えてきたあたりで、一旦着陸する。ここから、色々な準備をしながら進んだ方が良いからね。


 先ずは訪問の仕方なのだけど、エルフ族が高台を調査したときに崖上から東側方面に崖を下りる場所があること、レイさんから獣人族周りで崖下に流れる川を遡る形でドワーフ族にアプローチするルートがあることを教えてもらっていた。この2つを組み合わせてドワーフ族の村へたどり着けたことにする。


 次に、各種結界の有無と、毒物、放射能、病原菌の調査で問題が無いことを確認。蚊とか毒虫対策の虫よけ薬はステラに貰ってきたから念入りに擦り込んでおく。

 衣服は冒険者風の長袖と長ズボン。表層は布だけれど、内側は風通しの印が描かれた極細繊維の金属メッシュ。鎖帷子くさりかたびらの軽量版って感じで、それを着込んであるので、ヒルとか蛇といった小さな動物が不用意接触してきても被害が出ないように準備は整っている。


 最後に、荷物の偽装を始める、三人ともステラが作ってくれた不思議なカバンを持っていた、その中にはそれぞれが必要と思われる食料や機材が十分に入れてある。

 冒険者として訪問した様に偽装するため、一般的な保存食として利用されている干し肉とかカチカチに焼しめられたパン。お米を一度煮てから干したいい。腰には一般的なナイフとか人族が使えるような傷薬とか。

 この状態の荷物を作ってから、私は背負子に一杯分になる水の出る印が描かれた樽を組み立てる材料を積み上げて、それを背負う。


 よし、大体準備は出来たね。


「ニーニャ、私の準備は終わったけど、ニーニャはどう?」

「私の準備はいつも通りなんだぞ。

 ただ、出来ればヒカリが先に飛んで、どこか村の近くに着地できる場所を探してきてくれると良いんだぞ。

 ここから徒歩で歩いて崖を降りてから訪問するとなると、それだけで一週間以上は掛かると思うんだぞ」


「だったら、3人でこのまま光学迷彩掛けて飛んでいこうか。3人で相談しながら、着陸地点を決めれば良いよ」

「お母様、お母様が一人で探索に出かけるより、3人で進んだ方が私も良いと思います」と、リサ。


 なんか、リサから信用が無い。

 けども、ニーニャとリサをここに置いて、一人で行って帰って来るなら、最初から3人で飛んだ方が早いね。いきなり石弓の様な物で狙い撃ちにされなければだけどもさ。それでも、光学迷彩付けてて撃ち落されるなら、相当な科学技術が発達しているだろうから、水不足で問題になるとか無いと思うんだけどね……。


 ま、まぁいいや。


「ヒカリ、何か問題があるか?」

「ニーニャ、リサ、いきなり下から撃ち落されたらどうしようかと思ったぐらい。それ以外は現時点では危険は無いと思うよ」


「村が上空から確認出来たら、直ぐに低空飛行に移って、近くの街道へ着陸すれば良いんだぞ」

「ニーニャ、それは私の索敵範囲がドワーフ族の索敵範囲より広い前提があるよね。相手の索敵範囲が広かったら、こっちが気が付く前に先に迎撃されるよ」


「ヒカリより高く飛べて、ヒカリより広範囲に索敵をしてるドワーフ族は居ないんだぞ」

「前に飛竜族を訪問したときに、かなり大きな範囲で魔術無効化の結界が張られていたことがあったよ。これは人の能力に関係ないし。

 今回、ドワーフ族と魔族に関係があるなら、魔族が監視する目的でドワーフ族の周囲に結界を張っている可能性もあるかも……」


「お母様は、結局どうされたいんですか?」


 と、リサから突っ込みが入る。


 私が優柔不断というか、決断力が無いのが悪いのだけども……。

 でも、ここで何かが起きたら私達3人を助けてくれる人はいない

 もし、助けに来てくれても、その救護が間に合うか分からない。だから私は慎重になるの。

 かといって、ニーニャの言う通り、ここから徒歩で崖を下りて街道に沿ってアクセスしたら片道1週間は掛かるよね……。


「じゃぁ、やっぱり、私がちょっと見てくるよ。

 ニーニャと念話で話ながら進むことにするから、念話が途絶えたり私から連絡があったら助けに来てよ」


「助けに行けるか分からないけど、3人同時よりはリスクが下がると思うんだぞ」

「お母様が勝てない相手に、私が生き残って何が出来るかわかりませんが、待つことにします」


「うん。一人で荷物も無く飛ぶだけだから直ぐ戻ってくるよ。二人でお茶でもしてて」


 冒険の醍醐味とかあるんだろうけれど、今の日本で出来る冒険は多くの場合、事前に大丈夫と分かっていて出来る冒険が多いんじゃないかな?インターネットで調べれば大体のことはなんでも出てくるし。

 情報を収集しないで露天風呂を探索してる人達なんかは、地元の人の言い伝えを聞いていたり、毒ガス探知機やpHを測定する器具なんかを持っていくもんね。そういう準備無しで行ったら簡単に死んじゃうよ。



 よし!

 ナビと連携取りながら、様子見て進もうかな?

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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