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6-22.チョコレートを作ろう(5)

 コーヒーの話はおいておいて、アリア達と一緒にチョコレートの話に移るよ!

「みんな、お待たせ~」


 今朝は調理場とは別のチョコレートを作る作業場に集合。

 ここに居るのはニーニャとアリアと私で三人。

 シオンはお父さんであるリチャードが連れて行ってしまった。

 ステラはスチュワートさんが連れて行ったよ。

 ま、まぁ、この段階ではシオンもステラも一緒にいろいろしてもらわなくても大丈夫だと思う。


「ニーニャには色々と既にお願いをしているけど、アリアは初めてのはずだから、改めて説明するね。


 昨日飲んでもらったコーヒーがあるでしょ?

 あれのもっと、ドロッとしたものを作ることをイメージして。


 コーヒーは、木の実を収穫して、外側を発酵させて、種の部分を取り出す。

この種をコーヒー豆って呼ぶ。ここまでははシオンが指揮をとって全部やってくれてるよ。

 この後、乾燥させて、煎って、粉砕して、それをお茶みたいに煮だすとコーヒーが出来るの。


 今から作るチョコレートも途中まではコーヒーと同じで、木の実を発酵させて、種を取り出して、洗ってから乾燥させて、煎って、磨り潰す。

 まだ、カカオの実は採取してきたばかりなのと、種が大きいから発酵させるのに時間が掛かってる。もう1週間ぐらいは掛かるかもしれない。ユーフラテスさんが何か支援をしてくれていれば、発酵時間が短くなるかもしれないけど、そこはちょっと分からないよ。

 でね?

 ニーニャには既に説明してあるんだけど、煎ったあとのカカオ豆を磨砕まさいすることが大変なの。単に小麦を粉にするようなミルで曳くのではなく、温度を適切に保ちながら、舌触りが滑らかになるまえ20時間とか、ドロドロとした粘り気のある状態で磨り潰しつづけなくちゃいけないの。

 この保温しながら磨砕する装置はニーニャに作って貰う予定になってる。


 アリアには、砂糖をいれる量とタイミング、磨砕する時間と温度。これらのパラメーターから舌触りや味を調えていくことに挑戦して欲しいの」


「ヒカリ、私はやるべきことが分かっているから試作に入るんだぞ。もし、ヒカリやアリアで使えるものが出来たら、図面に起こして、他のドワーフでも作れるように教えようと思うんだぞ」


 と、ニーニャ。

 確かに、カカオ豆を磨砕するた際の条件だしをする作業は時間も掛かるし、パラメータも多く、水準数を管理するのは面倒だもんね。それよりはニーニャが得意とする機材の開発に注力してもらうのは役割分担としては有りだと思う。


「ニーニャありがとう。そしたら、ここから一旦別行動だね。

 アリアは何から説明したら良いかな?」


 と、ここでニーニャともお別れして、アリアとチョコレート開発の方法について議論を深めることにしたよ。


「ヒカリさん、私が今の説明を受けて思ったのは、


 1.カカオ豆を作るまでの影響

 2.混ぜる物が砂糖だけで良いのか

 3.仕上がりの滑らかさを個人の感覚に頼らない評価方法は無いのか


 この3つになります。如何でしょうか?」


「アリア、流石だね。

 1.に関してはシオンから同じ質問があったよ。

 2.はパラメータ増えすぎると困るから、私が制約条件として絞った。

 3.は色々と検討が必要かもしれない。


 でね?

 1.は天然の資源な訳で、『何が効くのか』すら、良く分かってないんだよ。

 例えば、収穫高を上げればいいのか、豆や実の大きさを大きくすればいいのか、香りや味への影響がどうなるかとか、全然分からないから手探り状態なの。

 この部分の模索は種を元に苗木を育てることから始めるし、場合によっては地質やシェイドツリーの影響もあるかもしれないから、そこだけでも何十年も掛かってしまうかもね。

 ひと先ずは、カカオの実を集めてきて、シオンに作りやすいカカオ豆の作り方を考えて貰ってる。

 行く行くはユーフラテスさんと相談して、良いカカオの実の栽培方法についても議論していくと良いかもね」


「ヒカリ様、話の途中ですが宜しいでしょうか?」


「うん?なんでも聞いて。

 別に相互理解を深めている最中だから、会話の流れとか気にせず気になったことはどんどん片付けていこうよ」


「はい。ありがとうございます。


 それで、そのですね……。

 ユーフラテスさんという方も、ヒカリさんが名前を挙げるくらい、素晴らしい方なのだとは思います。ですが、最初からユグドラシルの樹に住むといわれているドリアード様のお力を借りた方が、後々早かったということにはなりません?

 ただ、私はこちらの大陸の事情を詳しく知りませんので、ユグドラシルの樹を訪問する難易度が高ければ、先ずは有識者の意見を取り入れるということに賛成ですが……」


「あ~。アリアとは念話を通して無かったからね……。いろいろごめんね。

 まず、ユグドラシルの樹に登る権利は獲得できそう。だから、それ自体は問題無いと思う。途中に住む南の大陸の飛竜さんとも交流してもらえるようになったから、その辺りも安心して良いよ。


 ただね?

 ドリアード様についてなんだけども、ラナちゃんが連れてきてくれたんだよ。それで、ラナちゃんなりに気を利かせて、リチャード達に妖精の長が居ないように振舞うためにドリアード様のことをユーフラテスさんって紹介してくれたの。

 だから、ユーフラテスさん=ドリアード様で良いよ」


「あっ……。はい……」

「なんか、説明が足りなかった?」


「あ、いえいえ。

 説明は簡潔で分かりやすかったですし、疑問は解消しました。

 ですが、ヒカリ様達は相変わらずだなと……」


「いや?

 さっき説明したけど、『ヒカリだから』じゃなくて、『ラナちゃんのおかげ』だよ。そして、一般的には妖精の長は私たちの周りに存在していないことになってる」


「あ!そういえば!

 昨日の夕飯の際に、リチャード殿下は妖精の長の存在を知らないようでしたね。一方でスチュワート様は魔石をエーテルから製作できることをご存じない様子でした……」


「あ~。アリア、それは両方秘密。

 リチャードは、あの大型の魔石の出所はしらなくて、私がどっかから持ってきたと思ってる。でも、それを100個単位でエスティア王国で抱えていることはスチュワートさんもトレモロさんも知らないんだよ。

 一方で、スチュワートさんは、私と勝負をしたときに妖精の長の存在も知ったし、妖精の長から直接授かった加護が私たちに付与されていることを知ってる。

 ただ、お互いに知っている情報が自分たちの命や種族の危険に関わることだから、秘密にしてくれている感じかな?」


「わかりました。私も情報の秘匿には気を付けます。

 話を脱線させてしまってすみませんでした。

 チョコレートの開発の話に戻っても良いですか?」


「うんうん。次は2.混ぜる物の話だよね。

 正直ね、昨日飲んだコーヒーと一緒で、カカオを磨り潰した物自体は苦みが強いの。砂糖を混ぜて苦みを中和させたり、まろやかにする意味合いはあるけれど、それでもとっても濃いから、子供受けはしにくいかなと思う。

 だから、私が知っている知識では、ある種のミルクを混ぜることで、その苦みを和らげて、口当たりを良くする感じになるよ。


 昨日のコーヒーにもミルクをいれることがあるし、紅茶や緑茶でも場合によってはミルクを入れると、やんわりとした味わいの中でお茶の風味を感じられる方法があるのと似た感じになるかな」


「ヒカリ様……。

 あの……。

 あのですね?」


「うん。なに?」


「あれは薬ではないのですか?特に媚薬と言われるような精力剤のような……。

 であれば、子供向きでなくても良いですし、多少の苦みは問題ないかと……」


「あーあーあー。

 そ、そう……、かもね?

 なんか、リチャードがいつもより元気だったけど、アリアさんもそうだったの?」


「きっと新婚旅行気分だったのです。

 だから、いつもより元気だったんです。

 きっとそうです。

 だから、なんでもありません!」


「コーヒーよりも、チョコレートの方が効果大きいかもよ?」


「ヒカリ様は何を目指しているんですか!

 貴族は跡継ぎ以上に子供が増えると、食い扶持を探すために自立する必要があります。 技能スキルや知識を持たない貴族の三男以降は、それはそれは大変なのです……。

 ヒカリ様は、そのような不幸な人たちを沢山生み出そうとするわけですね?」


「ま、待って。だいぶ待って。話が飛躍しすぎだよ。

 秘薬だけに……」


「ヒカリ様、冗談では済まされません。

 高価で希少な精力剤を貴族以外のだれが使うのでしょうか?」


「レイさんの娼館で取り扱って貰うとか。

 貴族の婦人に召し上がって貰うとか。

 価格が安価で大量につくれるようになったら、ミルク混ぜて子供のおやつにできるよ。 ミルクには吸収や効き目を和らげる効果もあるはずだし。

 クッキーやパンに混ぜても美味しいよ?」


「ヒカリ様、承知しました。

 昨日のコーヒーが衝撃的過ぎて、脱線してしまいました。

 チョコレートの完成に向けて尽力します。

 まずは、シオン様のカカオの実の熟成とニーニャ様の磨砕機の完成待ちですね」


「うん。そこからアリアの本番だと思う。

 二人の作業が終わって、磨砕する準備が整った後の保管容器、保管庫とかの必要な物は事前に準備しておいた方が良いかもね」


「ところで……。 ヒカリ様なら、

 『仕上がりの滑らかさを人に依らずに確かめる方法』

 そんなアイデアをお持ちでは無いのですか?」


「アリアは凄いことを考えるねぇ……。

 『粒度りゅうど

 って、知ってる?」


「リュウドといいますと、飛竜やドラゴンの類でしょうか……。

 なにか、そういった土壌の作用が利いてくるのですか?」


「う~ん。この世界ならそういった影響があるかもしれないけど、私が言いたいのはもっと科学的な話だよ。

 粒粒の大きさと分布のことだね。分布っていうのは、バラツキのこと」


「ドロドロのネバネバなのに、粒粒があるのですか?」


「う~ん。ここで立ち話で説明しても難しいから、別室で座って話をしよう!」


 うんうん。

 いろいろと科学の積み上げを共有するっていうのは大変だね。

 もし、本当に龍とか飛竜が味に影響していたら、それはそれで大問題だけどさ。

 ちょっと時間をかけてアリアと議論を進めることにしようっと。

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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