1-07.砂糖を求めて
『レイ、レイ、今、念話を通しても良い?』
『ヒカリさん、お久しぶりです。大丈夫ですわ。どうされましたか?』
『結婚の儀でも会えなかったし。それどころか妊娠したって聞いたよ?』
『あら。耳が早いですわね。ヒカリさんが帝都に遊びに来られていたころかしら。トレモロに大事にして頂いたおかげですわ』
『トレモロさんに大事にされてるなんて聞くと、こっちが照れちゃうね。幸せそうで何よりだよ』
『いえいえ。ヒカリさんには負けますわ。ヒカリさんのフェロモンならぬ体臭で王子を釣り上げた伝説に勝る物はありません』
『ま、ま、待って。その噂は何処から?』
『ミラニア川で橋を掛けている拠点で娼館を営んでいるときに、ヒカリさんとリチャード王子殿下が会話していたのを覚えていますわ』
『あ、あ、あ、あの会話を聞いてたの?』
『だって、心配でしたもの。大航海から帰ってきたヒカリさんが「王子と上手く行かない」って語りだしたものだから……』
『あ~あ~。確かに……。レイには世話になったね……』
『いえいえ、こちらこそ。
無事に出産を終えるまではそちらへ伺うことは出来ませんが、ヒカリさんの都合がつけば何時でもトレモロとの縁を作って頂いたお礼に歓待しますわ』
『あ、そうそう。
私もトレモロさんに会いにそっちへ飛竜で飛んでいこうとしたんだけど、リチャードに止められたの。「今は子育てが大事だろ!」って』
『あら。トレモロに用事ですか?』
『うん。砂糖を分けて貰えないかなって……』
『少々お待ちいただけますか?』
『はい』
こういときに念話って便利だよね。日本でいうところのスマホと同じ感覚で、好きな時にすきな人と話ができる。インターネットみたいな情報が電子化された世界じゃいないから、ラインとかSNS見たいのは出来ない。
魔法が使える世界ならではの情報伝達の進化だね。何で今まで普及してなかったんだろ?無詠唱で魔術ランク6が必要って壁が高かったのかな……。ステラやフウマも6属性魔術ランク3であることに自信を持ってたみたいだけど、そこから乗り越える壁は大きかったもんね。
って、レイさんから念話が返ってきた。
『ヒカリさん、お待たせしました』
『うん。分けて貰えそう?』
『ヒカリさんの船は数日中にナポルの港に帰港するので、無事に航海を終えられれば、優先的に確保できるそうです。
しかし、先週着いた従来型の船団の荷は、既にストレイア帝国の帝都からの予約を捌くのに一杯一杯で、半年近く先まで砂糖の先買いが始まってるそうです。
ちなみに、半年先までの予約分に対して、一樽で、金貨3000枚を積み上げる必要があるそうです』
『はぁ?』
『その……。その、ですね……。 大変申し上げにくいのですが……。』
『な、なに……?』
『ヒカリさんのクッキーの影響と、ユッカちゃん達に樽ごと差し上げてしまって、本来帝都へ卸す予定だったものが品薄になっていることの両方から、価格高騰が起こってしまっているようです。
実際に帝都の商店で購入できる価格は、さらに数倍になるそうです』
『そう……。
実は、こっちでも同じとが起こっててね……。
私たちの結婚の儀でお土産にクッキーを配ったの。そうしたら、そのお土産が話題を呼んで、皆がクッキーを自作しようとして、市場から砂糖が消えちゃってるんだって。
で、今日は、砂糖菓子を作ったら、最後の砂糖が枯渇しちゃって……』
『そうでしたか……
そうしますと、ヒカリさんの船が帰港したら少しでも早く荷を届けられるように手配しておくしかありませんね』
『そうだねぇ~。私が飛んで行ければ良いけど、リチャードに止められてるからねぇ~。ユッカちゃんに度々(たびたび)私の為にお使いに行ってもらうのも悪いし……』
『ユッカ嬢でしたら、喜んで助けてくれるでしょうけれど、船がいつ到着するか判らないので、こちらで待ってて戴くのも悪いですわ。
あ、少々お待ちください!』
『あ、うん』
あれ?夕飯の支度で忙しかったかな?
長電話ならぬ長念話は悪かったかな……
ここからナポルまでなら数百kmだから、時差は気にしなくていいのだけれども……。
っていうか、私の船に誰か念話できるひとが乗船しててくれたら、こういうときに情報を円滑に取れて良いんだけどね。念話なら電源要らずの距離やエリアを無視できる優れモノだし……。
『ひ、ヒカリさん、あ、あの……』
『レイ、大丈夫?忙しかったんじゃない?』
『あ、いいえ。それは大丈夫です。
私が妊娠したことを受けて、トレモロが執事とメイド、料理人を雇ってくれていますので、私はダラダラしてても全く問題ありませんわ』
『そう。それなら良かったんだけど。何か事件なの?』
『ハイ!大変です!
ヒカリさんの船団が海賊に襲われました!
今、コウさんとカイさんが最大船速で航海を終えて、第一報が入りました!』
『被害状況は?死者、怪我人、船団の被害状況は?』
『ヒカリさんの船と、そこの乗組員は無事。そこの海域を緊急離脱して帰ってきたそうです。
状況としては、陸地に寄港できる中型の船で沖合に留めたヒカリさんの大型船へ荷渡しをしていたところへ海賊が襲い掛かってきたそうです。
ヒカリさんの船を守ることが絶対命令であることから、荷や残りの中型船団、そして襲われている乗組員を全て無視しての離脱だそうです
ですので、詳細な被害状況も判りませんし、ヒカリさんの船にどの様な荷が積み上げられているか、今の第一報では把握できていません』
『うん……。
私の船は作れば良いけど、人の命は作れないよ?
助けられ人たちが居たら、助けてあげて欲しかったかな……』
『ヒカリさん、私も詳細を伺った訳ではありませんが、そのような判断は海賊に襲われている状況次第なのではないでしょうか。
コウさんやカイさんも互角の人数であれ応戦できるに十分な戦力を備えています。きっと、やむを得ない事情があったと推測します』
『そっか、それもそうだね。全滅するよりは、そういった危険と遭遇したことを知らせてくれただけでも良かったよ。あの船は沖合で風を受ければ船速上げられるし、逆風でも進める訓練も積んだしね』
『はい。
それでこの後、どうしましょうか。私がこのまま念話通じてヒカリんの通訳するのは構わないです。
ですが、トレモロに念話のことを共有するのは良いとしても、ヒカリさんの方で、リチャード王子たちに飛竜が不在の念話の存在を共有しても構わないでしょうか?』
『あ、そうだね。ちょっとこっちでも相談してみる。飛竜で駆けつけるにしても、動ける人の人選をしておく必要もあるし。また、明日にでも念話通すね』
『承知しました。こちらも情報を整理しておきます』
『うん。よろしく。またね』
いや~、参った参った。
砂糖どころじゃないよ。
海賊が現れたとなると、護衛艦が必要ってこと?
っていうか、停泊中を狙われたってことは、今後も沖合停泊してたら狙われるわけで、陸上での価格交渉とか荷造りをおちおちとしてらんないって話になるよ。
護衛艦、護衛部隊、ゲリラ的に活動する海賊への対抗手段かぁ~。港からそう遠くない海域で起こる海賊事件なんだから、現地の騎士団みたいのが海賊を見つけて鎮圧とかしてくれないのかね……。
さて、みんなと相談だね。
いつもお読みいただきありがとうございます。
書き溜めたものが枯渇しましたら、週一程度で更新していく予定です。
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