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6-17.チョコレートを作ろう(4)

 午前中は観光迷宮の資源化の商流づくりで終わっちゃったね。

 午後からはステラやシオンと合流して、コーヒーの実やカカオの実が豆になっているかの確認だよ!

「みんな、お待たせ~」


 ステラとシオンとメイドさん達が色々とやってるみたい。

 そこに、ニーニャを伴って合流したよ。


「ヒカリさん、待ってましたわ」

「お母さん、待ってました」


 なんだっけ?

 期待されてる?

 というか、コーヒー豆ぐらいは出来たのかな?


「二人とも、調子はどう?」

「シオンくんから、発酵したコーヒーの実の洗浄を手伝って欲しいと頼まれましたわ。酸性になっているから気を付けて欲しいとのことで、ザルに空けながら水洗いしたわ。

 そこで天日に干してあるけれど、良かったかしら?」


「ステラ、ありがとう。多分大丈夫。というか、乾煎からいりする機械が出来ていれば、今日からコーヒー飲めるかもよ?」


「ヒカリさん、この後どうするのか、説明してくださらないかしら?より上手く進める方法があるかもしれないわ」


「あ、うん。

 先ず乾燥ね。湿度10%くらいだって。中までカラカラに乾燥させていると思って。

 次にローストね。乾燥した豆は保存できるんだけど、今度は香りを引き立たせるためと、次の段階へ進めるために、豆をる感じかな。

 3番目のステップが、ミルとかで砕いて粉にする作業ね。最初は1mmぐらいまで小さくしちゃって良いと思う。

 最後は、それを布で包んで、お湯で煮だす感じかな?最後はハーブティーで慣れているステラだったら、何回か試行錯誤をするうちに、良い煮だし方が分かってくると思う。

 煮だした後のお湯をコーヒーという飲み物として飲むよ」


「ヒカリさん、乾燥させるだけなら、妖精の力を借りればすぐよ。

 ローストとミルについては見本が欲しいわ。専用の道具ではなくて、フライパンとか、スパイス用の粉にする道具ではだめなのかしら?」


「大丈夫だとおもう。


 ただ、ローストする際は、直火でフライパンで温めると豆が焦げちゃうから加減が難しいみたいだね。あと、鉄製の重たいフライパンを常に動かして全体を満遍なく煎るためには、時間も筋力も必要になるから、皆がお手軽に作るためには軽い網みたいなのに入れて作業するといいみたい。ルシャナさんかラナちゃんに手伝って貰えるなら、遠赤外線で温めると焦げずに中まで温められていいかもしれない。


 ミルはなんでもいいと思うけど、粉の粒度が均質に仕上がらないと、粉々のとぼそぼそのが混ざった状態で煮だすと、細かい粉が布から煮だし液に出てきたり、ゴツゴツした粒だと、十分にコーヒー豆の成分を煮だせないことがあるね。

 この辺りは、エルフ族が得意とするお茶と一緒で、温度お湯の量、お湯の対流とも関係するから、試行錯誤すればいいと思うよ」


「わかったわ。やってみるわ。

 シオンくん、午前中に干した豆を少し貰っても良いかしら?」

「ステラ様、どうぞ好きなだけお使いください。

 お母さん、ステラ様にお願いしている間、カカオ豆についても相談にのってください」

「うん。ニーニャに来てもらったから、今度はカカオ豆からチョコレートを作る機材の打ち合わせをしようね」


 ステラはお茶の達人だから、色々と加減を変えて良い感じなコーヒーを作って貰えると思うよ。


ーーー


 一旦、ここでステラと別れて、カカオ豆を砕く機械の相談だよ。

 本当だったらアリアにも何が重要かを説明しながら機材の開発をしたいんだけど、まぁいっか。


 実験パラメータが多すぎるから、幾つかの条件を絞ってから始めないとね。もう一度、ナビから聞いた情報を整理しておこう。

 前提条件として、コーヒー豆と同様に、乾燥させて、洗って、ローストする部分まではこの時点ではこだわらないことにしよう。きっと、ステラの素敵な魔法を応用すれば、ローストまで仕上がったカカオ豆ができるはず。


 さて、ここからがニーニャと一緒に取り組みたいことだね。チョコレートの舌触りを決める条件は……。


1.粒子サイズ

2.粒子分布

3.温度


 この3つで良かったはず。

 テンパリングという過程で、砂糖とチョコレートの結集粒子サイズを調整していくみたいだけど、少なくとも舌触りの段階でザラザラしてるのはダメだよ。

 滑らかにして、砂糖を混ぜてその後でテンパリングの調整を行っていく感じかな。


 ということは……?

 ニーニャには、とりあえずカカオ豆を長時間温度一定で磨り潰す装置を作って貰えれば良いってことかな?

 指定した時間になるまで温度一定で、ゴリゴリと粉ひきみたいな動作をしてくれる装置。ただし、油のペーストになるし、保温機能も必要だから、壺みたいな器の中で、液体を保持したままゴリゴリしてもらう必要があるね。


 ちょっと、ナビに相談してみよう。


<<ナビ、カカオ豆を潰す機械ってどんな感じ?>>

<<工場で用いる大規模なものでしょうか?それとも個人で楽しむサイズでしょうか?>>


<<え?個人でカカオ豆を潰す機械とかあるの?前回のレポートではザラザラとか言っていたでしょ?>>

<<個人商店や喫茶店の規模で、商用を前提にした機材になります。最初は自由研究程度の概要を知りたがっていたはずです>>


<<わ、わかった。じゃさ、その個人商店用の小規模なもので良いから、どんな感じか紹介して?>>

<<某ネット通販業者が取り扱っている資料を元に情報を提供します。

 直径20cm程度の金属製の円柱に、回転軸となる棒をたてて、そこに花崗岩の回転するローラー側面が棒に取り付けます。つまり、円柱の中をローラーが立った状態で回転します。このときの円筒の筒と花崗岩のローラーの干渉についてはニーニャ様とご相談ください。

 この金属製の容器自体に温調機能をもち、ゆっくりと長時間かけて磨砕して練り上げるようです。

 ただし、ローラーの半径に対してカカオ豆のサイズが大きいため、ロースト後に軽く砕いて異物を除去してから投入する様です。


 続いて、テンパリング装置の説明も行いましょうか?>>


<<なるほどね~。長時間磨砕し続ける必要があるから、石臼みたいな粉を入れて脇から排出する方法だと、何回も繰り返して磨砕することが出来ないよね。

 今の構造だと、ひたすらグルグル回転させることが出来る訳だから、時間さえ掛ければうまくリファイニングが進みそうだね。


 あ、あと、一応テンパリング装置も家庭用サイズがありそうだから、そっちも教えて?>>


<<承知しました。

 こちらは非常に簡単ですが、温度制御をかなり高精度に行える必要があるようです。25~35℃ぐらいの範囲で1℃以下の刻み幅で設定して、維持できる必要があります。

 そして、そこからジワジワと時間をかけて温度を下げていく場合と、急冷する場合があるようです。

 これはチョコレートに混ぜる砂糖やココアバターなどによって徐冷する傾斜温度が変わる様です

 この時点で砂糖が細かく混ざっている必要がありますので、先のリファイニング装置のどこかの段階で砂糖等の材料を混ぜて微粒子に整えておく必要があります>>


<<ナビ、ありがとう。こっちは構造的には楽だけど、温度制御の精密さが重要だね。ニーニャと相談して進めるよ>>

<<良きチョコレートライフを>>


「ニーニャ、シオン、お待たせ。

 今、ステラがコーヒー豆で対応してくれているような、乾燥とローストと荒く砕くまでは手動で出来ると思う。そのあとの装置について説明するよ。

 いいかな?」


「「ハイ」」


 ナビから聞いた情報を丁寧に説明した。所々図を描いてどんな機能が必要かも説明したし、花崗岩のような自重も無いとうまく磨砕できないこととか、花崗岩と円柱の床部分の平面の面精度と耐久性が必要になることも説明した。

 次に、固まる段階での結晶サイズがなめらかさいに効くことから、テンパリングという、いわば高精度温調器の説明もしたよ。


「ヒカリ、これは何セットぐらい必要なんだ?

 それほど複雑では無いが、温調機能に温める側と冷やす側の2種類の印が必要になるんだぞ。クロ先生とルシャナさんの協力して貰うとスムーズだが、そのお願いする枚数を予め伝えておく方が良いんだぞ」


「最初は1式。上手く動作したら5式ぐらいで条件を整えてもらう感じかな。この国の産業とするためには、もっと大掛かりな装置が必要だけど、それは美味しいチョコレートが出来ることをみんなに示してから考えれば良いと思うよ」


「わかった。早速作り始める」


 と、ニーニャは私が紙に描いたメモを持ってどっかに行っちゃった。ここにはドワーフさん達が使える工房とか無いから、どこで作るんだろう?まぁ、その辺は任せておけば良いかな?


「お母さん、僕も質問があります」

「シオン、何かな?」


「カカオ豆以外の材料、その分量、混ぜるタイミングです」

「ああ……。

 暫くは砂糖とカカオ豆だけで行こうと思ってる。投入タイミングはニーニャが作ってくれている磨砕機に投入するときかな。

 砂糖の分量は正直分からない。カカオに対して3割~5割ぐらいで行こうと思う。


 ここで、滑らかなチョコレートが出来るようになってから、他の物を添加したときの条件を振っていく形にしたいとおもう。

 実験ていうのは、変数が多ければ多いほど再現性がなくなっちゃう。再現性が無いっていうことは幻のレシピになっちゃって、産業にはならないんだよ……。

 ただ、まぁ、わざとレシピを秘匿するために紙に記さなかったり、工程を分けて別々の人に担当させておくっていう手もあるけど、まだそこの段階じゃないと思うよ」


「わかりました。装置はニーニャ様に使い方を良く聞くことにします。実験をしてレシピを作る方法はアリアさんと相談します」


「うんうん。

 お母さんが居れば一緒に手伝うからね。カカオ豆の発酵、洗浄、乾燥が終わったら教えて?」

「ハイ!」


 まだ、全然全体像がつかめてないけど、方向性を示すことは出来たかな~。

 よし、ちょっとステラのコーヒーの様子を見に行こう……。

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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