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6-14.チョコレートを作ろう(3)

 今日は、エスティア王国の私の領地から呼び寄せた主力メンバーと合流予定。

 さてさて、上手くいくかな~。

 朝、いつものクロ先生との稽古が終わって、一汗かいてからみんなと合流して朝食をとることにした。ところが、「訪問者が来られました」と、メイドさんから連絡が入った。 こんな朝早くから誰だろう?


「ストレイア帝国のトレモロ・メディチ侯爵様が、ヒカリさんとの面談を希望されています」

「あ、ああ、そう……。

 じゃ、マリア様に了解を得ることと、朝食を1人前追加してくれる?内容は私達に出してくれているものと同じでいいから。その上で、ここに案内してもらってもいいかな?」「承知しました」


 と、どんな用事なのか分からないけれど、乗船手続きで色々と大変だろうに、こんな朝早くから訪問してくれるのだから、結構重要な事件でも起きているのかな?


 手筈を素早く整えたメイドさんが私達の家族4人だけで食事をしているところにトレモロさんは招き入れられた。


「ヒカリ様、ご無沙汰しております。また早朝からのご訪問大変ご迷惑をおかけしております。ですが、火急の事態につき、少しでも早く調整を図るべく、面談を申し入れさせて頂きました」


「うんうん。リチャードが居るけど、私には気を使わないで良いから。一緒に食事を食べながらで良いから、重要な用件を教えてくれますか?」


「はい。

 1つ目。ユッカ様のご訪問と、その客人の入国手続きにつきましては、全て書類を整えて、提出が完了しております。特に問題はありませんので、今日から順番に入国が可能となる予定です。


 2つ目。皇妃様がヒカリ様のシャワー付きの大型船で、ストレイア帝国に帰国することを希望されています。

 当初の予定では、休養を理由にこちらで行動制限と監視する目的で滞在中であったかと思われますが、何か事情が変わった可能性がございます。私が詳細情報を入手できておりませんので、どのような回答をすべきか、ヒカリ様と相談させて頂いてからと思い、早速伺った次第です。


 3つ目。これは昨日の上陸後に夕食の場と宿での噂話を総合すると、サンマール王国の治安が悪化してる様子です。迷宮から魔物が溢れたり、外国人の住む館を襲撃するテロが起きたりと。

 そこで、最近になってA級冒険者のメイドが二人ほど登録されたとのことですので、私から冒険者ギルドへ依頼を掛けて、ヒカリ様の護衛を厚くすべきかと情報提供に参りました。


 4つ目。昨日の夜半ですがマリア様のメイドより、『明日都合が付くタイミングで、ヒカリ様が面談を希望されている』との言付けを頂きました。


 如何でしょうか?」


「あ~。色々と気遣いさせてしまってごめんなさい。

 ほとんど全部私のせいの気がするけど……。


 先ず、1つ目ですね。

 南の大陸で採れる木の実を特産物にしようと思ったのですが、人手が必要になるということで、追加で人員を要請しました。本件、種々助力頂きありがとうございます。手続きに費用が発生している様でしたら、ご請求してください。


 2つ目は、ストレイア帝国に関係することでもあります。

 魔族と皇妃が結びついていることが分かりました。リチャードに動いて貰って、『サンマール王国を実行支配できる権限』を皇妃である王姉殿下から念書という形で取得しました。これはサンマール王国の各種権限を頂いております。

 その代わりに王姉殿下にはストレイア帝国に戻って頂く形となりました。なお、王姉殿下の秘密はこのマリア様の館に住む一部の人と、サンマール王国で書記を務めたコリンさんだけになりますので、情報の取り扱いには配慮願います。

 ですので、トレモロさんが都合が良いタイミングで帰る際に、皇妃様を一緒に連れて帰ってあげてくれると嬉しいです。


 3つ目は……。た、た、多分、大丈夫かな?


 4つ目は……。トレモロさんのコネで武具を売りさばいて欲しいので、詳細を打ち合わせをしたいと考えておりました。こちらから訪問出来ず、ご足労頂く形になりましたこと、お詫び申し上げます。


 こんな感じですけれど、答えになりましたでしょうか?」


「つまり、ヒカリ様が問題とされているのは、私と武具を販売する商談をされたい件だけであり、それ以外は問題となっていないという解釈でよろしいでしょうか?」


「流石はトレモロさんです。その通りなんです!」

「承知しました。そうしますと、ヒカリ様との商談を最優先とさせて頂きますので、都合の良いお時間をお知らせください。私は宿で待機させて頂きます」


「あ、ええと……。私はみんなが良ければいつでも良くて……。

 トレモロさんが一々宿に戻って貰わずとも、ここでお茶でもしながらお過ごしいただけますか?リチャードとニーニャの都合を確認しますので……」


「トレモロ・メディチ卿、挨拶が遅れて申し訳ない。

 妻がいつも色々とご迷惑をおかけしていること、お詫び申し上げます。

また、いつも無茶な依頼を掛けて、お手を煩わせてしまっていることも併せてお詫び申し上げます。

 そして、先ほどの商談に関する打ち合わせですが、私は最優先で打ち合わせに臨ませて頂きますので、この朝食が終わり次第、待機させて頂きます。他の用事はキャンセルするつもりです」


「リチャード殿下、こちらこそ朝食の最中での訪問を受け入れて頂きありがとうございます。

 ヒカリ様の側にいれば全ての流れが読み取れて安心できるのですが、その情報の外側にいると、サンマール王国においてクーデターでも起きて、何らかの措置を講じる必要があるの想定しておりました。政変に伴い治安が不安定になることは、どこでも起こりうることですので、万が一にもヒカリ様の身に危険があってはと、寝てもいられず訪問させて頂きました。


 ヒカリ様のお話を伺い、ゆったりと朝食を楽しむことが出来そうで一安心です」

 

「そうですか、ご迷惑をおかけしていなければ良いのですが……」

「いえいえ。ご迷惑どころか、ヒカリ様が動かれている範囲内とのことですので安心です。後日、お時間が出来たときに英雄譚をお聞かせ頂ければ幸いです。


 それよりも、サンマール王国の食事は北の大陸の民にとっては中々慣れないものでしたが、ここで出される食事は美味しいですね。料理人も連れてこられてハネムーンを楽しまれているのでしょうか?」


「あれ?トレモロさんは不慣れでしたか?

 メイドさんに頼んで朝食後のデザートとして、美味しいフルーツも楽しんでください。いくつか出してもらいますね。それと、ニーニャの都合も確認してもらいます」


「それは、誠に恐縮です。ご相伴に預からせて頂きます」


 と、トレモロさんなりに、色々と不安を抱えていて、本当は夜中に集まった情報を元に駆け付けたかった様子なんだけれど、「メイドから面談の希望がある」との連絡があったので、無事は確認出来ていたみたいで、朝に訪問してくれたみたい。

 なんであれ、お互いが無事に出会えてよかったよ。


ーーー


 リサとシオンは朝食後に別行動に分かれて、その代わりにニーニャが加わった。

 早速、皆で観光迷宮の武具の販売方法について、打ち合わせを始めることにしたよ。最初は現物を見せて、内容を吟味するところからだね。


「……と、これまで説明しましたとおり、準神器級が5%。普通の鍛冶屋では作成できない業物や特殊なコーティングがされたものが15%。残りの8割は一般的な騎士団員や冒険者が鍛冶屋に依頼して作って貰うような内容になります。

 道具類や小物に関しましても、比率は同じような具合になります」


 ニーニャが予め分類してメモに起こしてくれた内容を元に、馬車数杯分の山盛りの武具と、麻袋10袋以上の細かな収集品を現物とメモを照らし合わせて説明してくれた。


「ニーニャ様、ありがとうございます。この量はアジャニアの観光迷宮のときよりも多い様に見えますが、どのような方法を取られたのでしょうか?」


「メディチ卿、私は今回、迷宮の探索には同行しておりませんので、ヒカリ様にお伺いして頂きたく。私は鑑定の依頼を受け、特殊な魔術のコーティングが掛けられているもの以外で、判別できている物を説明させて頂いたに過ぎません」


「そうでしたか。

 ヒカリ様、この中からどの程度の品物を扱わせて頂けるのでしょうか。ニーニャ様やリチャード殿下がいらっしゃることから、商圏や商流の話だけでなく、収集品の分配方法についても、議論の余地があるとおもいますが」


「私の考えでは、金貨2万枚を毎年稼げる程度にストレイア帝国で販売して貰えればいいかな。そして、それは継続的に稼ぎ出せる必要があるの。

 アイデアとしては、オークションとか、競売っていう方法になるんだけど、簡単に言えば一番高値を付けた人が購入できるシステムね。

 この方法は売主側が値段をつけるのではなく、オークションハウスとか競売の主催者が予め、カタログを用意しておいて、その価値の素晴らしさや希少性を示すの。後は、自然に値段が釣りあがっていく感じかな」


「ヒカリ様、その金額ですと、一か月にレアグレードの武具1つを金貨2000枚という格安根で落札されたとしても、12ヶ月で金貨24000枚に到達するように思われますが……」


「うん。オークション方式は売却価格が上がるメリットがあるね。


 けれど、結構手間が掛かるんだよ。

 最初の値決めもや鑑定士のスキルの確からしさも重要だし、秘宝の入手元を調べられることもある。例えば由緒ある王室の盗品とかは不味いしね。

 今度は、主催者が落札する参加者の信用査定が必要で、『金貨1万枚で落札!けど、お支払いはできません』なんて、詐欺師みたいな人は参加させちゃいけないよ。

 そして、それらの信用情報の管理、それから金銭の授受の護衛、出品する物の厳重な保管とかで、かなり経費が掛かるのね。


 ただ、それらの手間賃を差し引いても、ここにある量で1年分のオークションを乗り切る収集品の量にはなってそうだね」


「ヒカリ様、先ほどニーニャ様に案内頂きました準神器級となりますと、それ一つで金貨1万枚にまで跳ね上がります。まして、『交易で正当に入手した物』となりますと、皇帝が勝手に接収するわけにもいきません。その場合、皇帝の代理人を通して他の参加者と共に落札することを求められ、莫大な金額が積みあがる可能性がございます……。

 ヒカリ様はそれを承知でオークション方式というものを提案されているのですね?」


「うん。価値があるのに、それを正当な評価もされずに眠らせておくのは勿体ないし、サンマール王国の収入を確保する必要があるからね。

 数年先までは毎年金貨1万5千枚を対外的な支出として見込む必要があるの。その他にも内政の拡充で金貨5000枚単位でインフラや農耕地の整備をしないといけないと思っているの」


「ヒカリ様?」

「トレモロさん、何?」


「ひょっとしてですが、サンマール王国の実行支配には、敢えて内政を立て直すための実権を握る必要があり、これまでの王姉殿下の方法ではそこが打開できないということから強硬手段に出たということでしょうか?

 あるいは、南の大陸での飛竜の利権やユグドラシルの登頂権を入手するために、サンマール王国の借金を肩代わりされたのでしょうか……」


「どちらかというと、穏便にユグドラシルの登頂権だけを手に入れようとして、その資金源として武具を上級迷宮で拾ってきただけなんだよ。そしたら魔物が溢れちゃったり、飛竜の血が必要になったりしてね。

 そこを隠そうと、色々と調整していたら、騎士団に強襲されたり、王姉殿下が魔族に弱みを握られていたりと……。

 そんな感じ?」


「そのような話を伺いますと、ヒカリ様がクリアした難易度はアジャニアのときの比ではありませんが、後日英雄譚として伺うこととします。

 他に何か制約条件はございますでしょうか」


「う~ん。特にないよ。私だけフランクに話しているのが気まずいぐらい。

 あ、あと、リチャードもさっきの収集品リストで欲しいものがあるかもしれないから、相応の値段で譲ってあげて」


「わかりました。ヒカリさん、これからもよろしくお願いします。

 ところで、もうお昼が近いのですが、ヒカリさんのこれからの予定は空いてますでしょうか?もし空いていればハピカという信用がおける商人を紹介したいと思います。彼と一緒に食事はいかがでしょうか?」


「ハピカさんには色々と迷惑を掛けているから、トレモロさんと押しかけちゃったら悪いかな。そのうち、こっちで招待してあげないといけないね。

 だから、トレモロさんもお昼ご飯ならここで食べて行けばいいよ。そこそこ美味しい料理が出せるようになったと思うし」


「では、お言葉に甘えて、こちらでリチャード殿下と打ち合わせを続けさせて頂きます。ヒカリ様は午後も忙しいので?」


「う~ん。ステラと子供たちが待ってるかな。あと、ニーニャとちょっとした調理器具を作る予定。だから、午後はここに居ます。用事があれば声を掛けてくださいね」



 午前中は観光迷宮の資源化の商流づくりで終わっちゃったね。

 だけど、もし商流が確保されて、定期的にレア品を供給できるようになれば、サンマール王国としては安定した資金源になるし、冒険者ギルドに登録している冒険者たちも真面目に働く気も起きると思う。そうやって、個人のやる気に還元して、経済を回して行ければ良いんだけどね。

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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