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6-10.カカオを探そう(5)



ガイドを行動不能にして、目隠しと猿轡を掛けた状態でクレオさんが私の所へ戻ってきた。


「ヒカリ様、大変申し訳ございません。

 冒険者ギルドの管理者の処分、および私の処遇について検討したく、一度マリア様の館へ帰還させてください。

 また、ヒカリ様のご意向も伺いたく、お手数ですがご同行いただけますでしょうか」


「そんな大ごと?

 そのガイドさんはそこら辺に転がしておいて、他のガイドさん達と合流して、木の実の採取を再開した方が良いんじゃないの?」


「ヒカリ様が気になさっていないのは承知の上です。

 ですが、本件についてケジメを付ける必要がございます」

「歩いて王都まで戻ったら、時間も掛かるし、他のガイドさん達も待たせることになるよ?」


「飛びましょう」

「姿消さないと目立つし。それに王都の出入門記録があるから、私たちが門を通らずに王都の中にいると、いろいろ問題になるよ?」


「ヒカリ様の魔法で姿を消してください。出入門記録につきましては、本件の処理が終わり次第、飛んで二人のガイドと再合流しますので、大きな問題となりません」

「わかった。クレオさんがそこまで気にしてるなら、一度もどろっか……」


ーーー


 で、まぁ、二人で飛びつつ、クレオさんは身動き不能にしたガイドさんを背負って、マリア様の屋敷に到着したよ。

 姿を消したままマリア様の執務室前まで来て、そこで光学迷彩を解除してから扉をノックした。


「マリア様、クレオです。先ほど念話にてお願いした件につきまして、ご相談させていただきたく、参りました」


『どうぞ。入って頂戴』


 扉の向こうからマリア様の返事が聞こえた。

 本当はマリア様もハピカさんとかと打ち合わせの予定があったはずだけど、クレオさんが緊急の念話を入れて、マリア様と面談の予約を申し入れたのだろうね。

 なんか、大ごとに成り過ぎてないかな?


 ま、とにかく入ろうか……。

 クレオさんと私と動けないガイドの3人で、マリア様の執務室に入ることにしたよ。


「クレオさん、何を決めれば良いのかしら?」


「先ず、この者が何を目的としてヒカリ様を罠に嵌めようとしたか、理由が判明しておりません。突発的な婦女への暴行、誘拐、あるいは金銭目的の強盗でしたら、速やかに処分を進めさせて頂ければと思います。

 万が一ですが、背後にある別の組織から指令を受けてヒカリ様を狙っていたとしますと、処分してしまうことで、背景が不明になってしまうことがあるため、マリア様の見解を伺いたいと思い相談に伺った次第です。


 次に、私の処分についてです。

 こちらでの私のメイドの派遣契約の反故に対する解約料金、違約金のギルドへの請求手続き、そして私の処分についてです。全てマリア様のご判断に従い、ギルドへ報告書を提出させて頂きます。


 そして、最後にヒカリ様への謝罪方法と、現在依頼中の木の実の採取依頼の継続の必要性の判断について、お伺いしたく」


「クレオさん、あなたは真面目過ぎるわよ。


 このヒカリさんの格好を見て、『王太子妃だから、誘拐しよう』とか、『二日前の王宮で起きた事件の情報から推測して、エスティア王国にダメージを与えるために誘拐しよう』なんて考えが及ぶとは思えないわ。もし、そこまで情報を持っていたなら、クレオさんを警戒して行動したはずだけれど、そんな様子も無かったのでしょう?

 だから、個人の短絡的な金銭目当ての行動よ。


 次に、クレオさんの処遇ね。

 私は正直、再発防止のために力を注いで欲しいし、クレオさんとの契約は継続したいの。クレオさん本人が辞退しなくてはいけないという考えを曲げられないのであれば、あなたと共有している秘密を守るために、エスティア王国へ送致して天寿を全うするまで囲う必要があるわね。


 最後に、ヒカリさんの件だけれど……。

 正直、ここまで治安が悪いというか、冒険者ギルドで抱えている人材の質が悪いと思っていなかったのよ。昨日の時点では、ヒカリさんが直接依頼を掛けても問題無いと思っていたもの……。

 そういった意味では、サンマール王国や冒険者ギルドという文化を良く理解していなかったこちらの判断ミスね。

 だから、何をすれば冒険者いギルドがヒカリさんの身分を明かさずに、尚且つ不当な対応をされずに正当な契約が履行して貰えるかを一緒に考えて欲しいの。


 答えになったかしら?」


「マリア様、寛容なお言葉ありがとうございます。

 少なくとも、この者の処分と冒険者ギルドでのヒカリ様の扱いの向上の対策を立てさせて頂きまして、その上で私の処分につきましては改めてご検討頂けますでしょうか」


「ヒカリさん、クレオさんの言う通りで進めても良いかしら?」

「はい。

 一応、このガイドさんが個人的な思いで行動したかを確認した上で、処分をした方が良いと思いました。

 私が冒険者ギルドで正当に扱われるための対策もクレオさんに支援して頂くのが良いと思います。

 最後にクレオさんの処遇ですが、私は今回の件でクレオさんの非があるとは思えません。ですが、本人がどうしても処罰を望むのであれば、エスティア王国で幽閉するよりは、マリア様の奴隷印を付けて貰うことがよろしいかと思います」


「そうね。私達3人の意見がほぼ一致したようね。

 先ず、ヒカリさんを襲った理由を確認した上で、この冒険者の処分を決めましょう。

 その後に、クレオさんにヒカリさんのギルドでの依頼を保証して貰えば良いわね」

「「ハイ」」


 マリア様が審議の魔術を駆使してガイドさんに尋問したところ、本人の自白は信用出来て、『金に目が眩んで罠に嵌めようとした。罠から助けたときに追加料金を請求したいと考えていた』とのこと。

 強盗や暴行を目的とはしていなかったのは若干印象が良いね。ただ、目先のお金に目が眩んで再犯しないか今後も気にかける必要がある。今後は信頼出来る人物として扱うことは出来ないね。


「マリア様、ヒカリ様、この者の処分について何かご意見がありますか?」


「クレオさん、冒険者ギルドにおいてはヒカリさんの身分は隠したままよ。一般婦女への恐喝未遂を冒険者ギルドは処罰に値すると認めるかしら?ヒカリさんの身分を隠すことが目的だから不敬罪などで冒険者ギルドへ報告は出来ないわよ?」


「そうしますと、冒険者ギルドへ報告せずに、密林の中で野垂れ死にしさせれば、お二人の気も収まるでしょうか?」


「クレオさん、私はこの人を相手にする気はないから、殺す時間と手間が勿体ないと思うし、奴隷として維持するのも面倒と思っているよ。

 ただし、冒険者ギルドで私が正当に扱われる存在を示した後で、このガイドさんがどういう反応になるか、その確認のために生かしておいても良いんじゃないかな?」


「マリア様、ヒカリ様承知しました。

 一度城門の外へ出て、正式に帰還しましょう。その上で冒険者ギルドを訪問し、彼の身柄を一旦預けましょう。

 それと並行して、ヒカリ様には冒険者ギルドでA級の資格を取得して頂きましょう。彼はC級ですので、2ランク上の実力があるヒカリ様を見て、態度が変わると思いますし、二度と余計なことを考えなくなるでしょう」


「そっか。A級がどれくらい難しいかわからないけど、それで話が進むならその方向で進めれば良いね。」

「ヒカリ様にご協力いただけるのであれば、そう進めさせて頂きます」


ーーー


 マリア様にお礼を言って、光学迷彩を掛けてから、一旦城門の外まで飛ぶ。

 そして、クレオさんの指示通りに、再び城門から正式に帰還した記録を残した上で、ガイドの人と3人で冒険者ギルドへ顔を出す。


 ギルドマスターへ事情を話して、ガイドさんを拘束してもらいつつ、私の冒険者A級資格試験についての話に移っていったよ。


「ヒカリ様、冒険者資格試験について説明させて頂きます。

 第一に、冒険者B級以上は二ヶ国語の言語習得が必須となります。ただし、今回は特例として、方言のようなでも良いとして、例えばエスティア王国語とストレイア帝国語であっても、二言語として見做していただけるそうです。

 ヒカリ様は大丈夫でしょうか?」


「クレオさん、大丈夫だよ。挨拶とちょっとした日常会話なら、サンマール王国語もある程度勉強が進んでいるよ」

「ほ、本当ですか?」

「うん」


 って、クレオさんといくつかの会話をサンマール王国語でして合格を貰った。方言とか特産物とかになると、ダウンロードした情報には含まれていない可能性があるけれど、一般的な会話ならナビ経由でダウンローとして習得した内容で十分だったよ


「続きまして、手続きと申しますか、登録料として、B級は金貨10枚。A級は金貨100枚になります。これは後で私が用意しますので、ヒカリ様は気になさらないで結構です」

「ああ、登録料は私が払うよ。今手持ちが無いからあとでクレオさんに返すね。

 他のA級登録に必要な条件について教えて?」


「承知しました。説明を続けます。

 女性が登録することになりますと、メイドとしての家事スキルが求められます。また、貴族のマナーも身につけておく必要があります。ですが、メイド出身で、王太子妃のためのマナー教育も受けられている実績がございますので、こちらはギルドマスターの采配によって免除されます。


 最後はA級冒険者3名以上からの推薦となります。

 ちなみに、私はB級ですので、推薦人になれません。ギルドマスターはA級ですので推薦人の一人になって頂けるようです。ですので、残り二人の推薦人が必要になります」


「そっか。そしたら、残りはA級の資格者二人からの推薦で良いんだ。

 ところで、B級になってからの経験年数とか、依頼達成件数とか、難易度の高い迷宮をクリアしたとか、そういった実績ベースの評価項目は必要ないの?」


「ヒカリ様、A級冒険者にはプライドがございますし、推薦人としての責任も生じます。つまり、推薦してもらえるかどかは、推薦人が提示する内容次第となります。

 仮にですが、野営スキルですとか、けものを狩る技術、薬草に関する知識などなど、その推薦者との対話やパーティーを組んだ実績によって、能力を評価頂くことになります」


「クレオさん、それって時間が掛かりそうだね?」

「ヒカリ様が立ち会えば、一瞬で片が付くと思われます」


「それって、さっきのクレオさんとガイドさんの出来事みたいな?」

「あれよりは、多少手の込んだ立ち合いになると思いますが、クワトロさんから敬意を払われているヒカリ様であれば問題無いかと」


「わかった。今時間がとれるA級冒険者って、二人ぐらいいるのかな?そして協力して貰えるのかな?」

「確認して参りますので、少々お待ちください」


 クレオさんが受付嬢の所へ行って、色々と話を進めた。次に酒場の雰囲気を醸し出している待機場所の所へ行って、あるテーブルに座っている4人パーティーの所へ話をしてきた。


「ヒカリ様、お待たせしました。模擬戦の立ち合いをギルドに申請しました。また、あちらの4人パーティーの方達が全員A級ですので、立ち合いに胸を貸していただけることになりました」


「そんなに簡単に話が進むものなの?推薦人になってくれるのかな?」

「細かいルールは後程お話ししますが、立ち合い依頼料として、一人金貨一枚を提示しました。そして、相手方が4名のパーティー構成。こちらはヒカリ様と私の2名で対戦を行います。こちらが勝てたら、推薦人になっていただけるとのことも依頼内容に付記されております。

 相手方からすれば、勝てれば金貨4枚丸儲け。負けた所で推薦人になるだけですので、自省の意味も含めて、強い相手に対して敬意を払ってくれるでしょう」


「わかった。じゃ、始めようか」

「では、場所を移して、ルールを説明させて頂きますね」


 と、何やら模擬戦というか立ち合いをすることになった。

 本気を出さないようにして勝つ加減がむずかしいんだよね。

 「あんなの、まぐれだ!」って思われたら、快く推薦人になってくれなさそうだし……。ちゃんと、目に見える攻撃をしたり、相手の攻撃を正しく受けたり、かわしたりする必要があるんだろうね……。



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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