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4-25.飛竜族との交流(4)

<<我々の血が欲しいとのことであるが、どの程度入用いりようであろうか?>>

<<はい。小さな瓶に5本分ぐらい。念のため、10本で2パーティー分あれば信ぴょう性が高まって良いかと思います>>


<<器を戴ければ、今すぐ提供しよう>>

<<は、はい。少々お待ちください>>


「ステラ、ユッカちゃん。飛竜の血を入れる瓶が欲しいんだけど、誰かアリアが作ったガラスの器を持ってる?

 飛竜の血の効力が無くならず、持ち運べる器なら何でも良いかよ」


「ヒカリさん、容器に関してはアリアさんが『エルフ族へのお土産に』と、幾つか戴いてい居るので、それを提供することが出来ますわ。エルフ族へのお土産に関しては、ヒカリさんが別な物をください。

 それより、リチャード殿やマリア様を通さずに話を進めても大丈夫かしら?」


「ええと、まだ、交易の話にはなってなくて、『朝ご飯のお礼に、先ずは血をあげるよ』みたいな雰囲気。貰っちゃって問題無いんじゃない?」


「普通はそうやって貰えるものでは無いと思うだけれど、ヒカリさんだから仕方ないわね。有難く頂戴しましょう。

 こちらが容器になるわ」


 と、ステラがカバンから容器を出してくれる。

 チャチャっと、容器を持って族長のハリさんの所へ向かうと、爪で前腕の表面に傷をつけて、自由に血を採取するように促された。


 私はガラスの器といっても、お菓子を入れるような綺麗なデザインのされた器なんだけど、そこに飛竜の血を入れる。

 密閉容器じゃないと零れちゃうんだろうけど、直ぐに自分のカバンに入れちゃえば、この状態が保存されるし、零れることも無いから大丈夫かな。冒険者の身体強化用のアイテムとして使うときに、それらしい器に入れ替えよう。


<<ハリさん、ありがとうございます。傷の治療しますね>>


 と、血液を採取させてもらったお礼を言ってから、傷の貼り合わせと縫合をエーテルさんの力を借りて処置する。まぁ、飛竜族の人が自ら傷つけた場所だから、大きなダメージでは無いと思うよ。


 さて、ここから交流とか交易の条件の本番だね。


<<ハリさん、今戴いた血は朝食のお礼と受け取っても構いませんよね?

 それで、飛竜族と人族の交流の仕方について、取り決めをさせて戴ければと思うのですが>>


<<ヒカリ殿。ヒカリ殿が必要な物を我々が提供する。我々が欲しい物で、人族が提供戴けるものを貰えれば良い。

 それでは済まないことがあるのだろうか?>>


<<例えば、この高台で植物を栽培したり、ユグドラシルの樹に登るときに、飛竜族から攻撃されない様にするにはどうすれば良いですか?>>


<<我々は予め加護の印を与えて、そちらが念話で許可を取ればよかろう>>


<<人族の全員が念話を通せる訳ではありませんので、何か良い方法があると良いのですが……。

 それに、全員が飛空術を行使できる訳ではありませんので、途中の崖を登るため、飛竜族の方達の巣の近くを通過することも考えられます>>


<<加護も念話も飛空術も使えない人族と交流することは、そもそも無理があるのではなかろうか?>>


<<そ、そうですよね……。考えます……>>


 私は一体何を求めているんだ?

 飛竜族のハリさんの言う通り、念話や飛空術が使える人達だけが、この高台で敵対関係にならないのであれば、それで十分と言えば十分。


 だけど、小麦栽培を南の大陸でするなら、こういった少し気温の低い場所が適していると思うんだよ。それに、もしコーヒーとか紅茶の樹とかも生えているなら、こういう高山気候の土地が生育に良いと思う。


 だけど、私が常にここで植物を栽培し続けるのはちょっと違うんだよな~。

 さて、どうしたもんだか……。


「ヒカリ様、どうされましたか?」


 と、エイサンから声が掛かる。

 いや、別に昨日みたいに気絶させようとかしてないし。

 ちゃんと、前向きに交流しようとしているよ。


「ええと、『念話が使えないと飛竜族の人達と交流ができないね~』って、族長のハリさんと話をしていたの。

 でも、私はこの高台で小麦栽培を試してみたいから、普通の人族の人達とも交流できるようにしておきたいんだよね」


「ヒカリ様、その……。

 飛空術を使えて、念話を使えて、複数の妖精の長から加護の印を貰えるような存在は私は知りません。

 ヒカリ様の普通を、一般的な人族に当てはめては不味いのでは無いでしょうか?」


「そうだとすると、南の大陸で小麦を入手することは難しいね~。北の大陸から船で一々運ぶとなると、随分高価な小麦になるよ」


「ヒカリ様、砂糖や米、綿花、大豆といった産物を南の大陸から北の大陸へ輸出しています。その逆であると考えれば如何でしょうか?」


「輸送のリスクに伴う価格上昇もあるから、手軽な食べ物にはできないよね……。今の北の大陸の砂糖事情と同じことが起こるよ。

 飛竜族の人達が簡単に手に入れられる状況にならないよ……」


「ヒカリ様、そもそもの話でで申し訳ないですが、飛竜族と人族の交流は必要なのでしょうか?」


「え?ほら、人族が勝手に飛竜族の卵を盗んだりしなくなるでしょ」


「いや、その盗んだ人族の者達が何を思って行ったか分かりかねますが、人族全員の心を飛竜族との交流に向けるのは困難なのでは?

 『倒せない、意思疎通が出来ない、恐ろしい生物』という認識でしょうから」


「ええ~?じゃぁ、私のしてることは無駄っていうこと?

 ほら、クッキーだって喜んでるし、この朝食会も予想外に大成功みたいだよ?」


「ヒカリ様、ですから、ヒカリ様の普通と一般的な人族の普通を同列に考えては話が進まない気がするのですが……」


 と、何だかエイサンと話がかみ合わない。

 私がおかしいのかな……。


「ヒカリさん、保留にしましょう。

 それかリチャード様かマリア様に交渉して貰いましょう。

 少なくとも、念話が通せる人族やヒカリさんの知り合いであれば、飛竜族と交流をして頂けるわけですし、好きな時にお土産をお持ちすれば、受け取って貰える状況なのですよね?」


 と、ステラも会話に入って来てくれた。

 やっぱり、私がズレてるのかな?


「うん。 血ももらえたし、念話で話しかけられる人なら問題ない。

 でも、小麦栽培が……」


「ですから、ヒカリさんが交流したいときにお土産をお持ちすれば良いのでしょう?」


「ラナちゃん達が、南の大陸に来たときに、小麦栽培文化が無いとクッキーが手に入らなくて困る……」


「え?」


「私がいないと、妖精の長達が南の大陸でクッキーが入手できなくなる」


「は、はい……」

「ヒカリ様……」


 え……。

 ステラもエイサンも自分のことだけ?

 こんだけラナちゃん達にお世話になってるのに……。


「二人とも、私が変かな?」


「いや……」

「そうではなくて……」


「だって、妖精の長にはお世話になってるのだから、それを私の代で終わらせずに、人族から敬意をもって、そして自由に行動して貰いたいでしょ?」


「ヒカリさん、判りました。


 ヒカリさんのの夢を叶えるために、先ずは目先のことをしましょう。

 魔族に悟らせずに、南の大陸で人族の領地を広げて、ヒカリさんの文化が末永く伝えられる状況を作りましょう。

 如何ですか?」


「ヒカリ様、私もステラ様の意見に同意です。


 先ずは、この南の大陸にヒカリ様の拠点を構築しましょう。

 少なくとも、サンマール王国や魔族とヒカリ様の関係が良好であるとは申し上げられません。何らかの形で、ヒカリ様の思想や文化が残る形にしていきましょう。

 そのために、微力ながらこれからも精進させて戴きます」


「あ、うん……。

 じゃぁ、保留にしよう。念話が使える人達だけでコッソリと交流しよう。

 それで良いかな?」


「「ハイ!」」


<<ハリさん、大変お待たせしました。

 私の考え違いの様でした。

 皆と相談したところ、ハリさんのご提案の通り、直接念話で会話ができる者のみが飛竜族の人達と交流することを許可してください。


 残念ながら、今の私の実力では飛竜族の方達の卵を窃盗から防止する環境を構築できそうにありません。もし犯人が見つかったら、お知らせさせて戴きます。


 また、今後も交流する際にはお土産として、クッキーや朝ご飯にお出しした照り焼きソースの料理を提供させて戴くことにします。


 如何でしょうか?>>


<<承知した。ヒカリ殿に受け入れて戴いて有難い次第である。

 中々に、緊張した。

 これからも宜しくお願いしたい>>


<<いえ、こちらこそ。飛竜の血ありがとうございます。

 そして、緊張などなさらずに気軽に接してください>>


<<私の補佐を務めるエルマであるが、南の飛竜族の中では、身体能力や魔法の類を数多く使いこなすことが可能な中で、その能力は群を抜いている。


 本人の資質と努力の賜物であるとは思う。

 であるが、人族のヒカリ殿に全く歯が立たなかったと、驚きと悔しさと、身体的な損傷とで、かなりショックを受けていた。


 彼が勝てないのであれば、南の大陸の飛竜族でヒカリ殿に勝てる者はいないであろう。すなわち、ヒカリ殿が本気をだして我々を攻撃すれば、我々は為す術も無く敗退することになる。これは種族存亡の危機を意味する。

 

 お判りいただけるであろうか?>>


<<いやいや。

 私もラナちゃん……。じゃなくて、ライト様に助けて貰わなかったら死んでたし。勝負に勝てても、死んじゃったら意味無いし。

 私もまだまだだよ……>>


<<ヒカリ殿、妖精の長が同行されているのは分かりましたが、ライト様が封印から解かれているのは……>>


<<あれ?グルーさん達から聞いてない?色々あって、救出できて、一緒に行動して貰ってる。そして、今回私が死なない様に助けて貰ったの>>


<<ヒカリ殿……。妖精の長を救出した?>>


<<シルフは、そこに居るステラが見つけて、難破船のウンディーネはエイサンが救出して、闇の妖精の長クロはそこに居るユッカちゃん達と救出したよ。

 ライト様は私たちの総合力だから、誰が助けたって言うのはいい難いね>>


<<ヒカリ殿……。人族は飛竜や妖精を封印するために行動を起こしていたのでは無いのですか?>>


<<ああ……。

 科学に依存した世界を作ろうとしたみたいだね。

 でも、ユッカちゃんのお母さんとか私はそういう偏った世界よりも、この世界に合った文明の発展の仕方があると思ったよ。今はそういう人たちが集まった時期なんだろうね。

 今のところ、色々な種族や妖精の力と共存していく方向で考えているよ>>


<<ヒカリ殿……。我々がヒカリ殿のお役に立てることが有りましたら、是非お声を掛けてください。全力で駆けつけます>>


<<え?あ……。うん。

 もし、助けて欲しくなったら、念話で連絡するね>>


<<承知しました。そのときは是非とも!>>


 こう……。

 なんか……。

 平等で公平な交流はどこいった……?

 人族全体との交流はどこいった……?


 これ、マリア様はともかく、リチャードに絶対に怒られるやつだよ……。

 小麦畑の視察も無くなったし……。


 ま、まいっかな?


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