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4-24.飛竜族との交流(3)

<<ヒカリ殿、何をされているのか、族長が興味を示されておる>>


 みんな朝早いね~。

 こんな高台の吹きさらしの場所で、臭いが籠るわけでも無いのに、なんで朝食の準備の香りを敏感に嗅ぎ付けてくるかな……。


<<エルさん、おはよう。体は回復しましたか?>>

<<うむ。空腹ではあるが体調は良い。それよりも、族長が興味を示しておられる>>


<<族長は元気ですか?>>

<<朝から念話が飛んでくる程度に元気であられる。ヒカリ殿は族長の話を聞く必要は無いのであろうか?>>


<<朝ご飯を食べて、ゆったりした気分でいると難しい話もイライラせずに話が進められるよ。だから体調をお伺いしているのですが>>


<<ああ……。うむ。問題無い。族長も私も空腹である以外は問題無い>>


<<あ、それは朝餉あさげの前の貴重なお時間を戴き申し訳ございません。 それぞれで済まさせから、その後でお時間を取って戴ければと思います>>


 そろそろ引き延ばすのは限界かな?


<<ヒカリ殿、率直に申し上げよう。もし、その人族の準備されている食事が、我々も試食できるのであればご相伴に預かりたい>>


<<はい。どうぞ>>


「ステラ、飛竜族の人達がご飯一緒に食べたいって」

「ヒカリさん、ラナちゃんより先は不味いわよ……」


「あっ……」

「ラナちゃんは自由です。起こすと怒られるのか、起こさないと怒られるのか、

ヒカリさんにしか判りません」


「え?私なら起こさないで美味しい物を食べてて怒られる方が、起こして怒られる方より嫌だな」


「でしたら、ヒカリさんが起こした上で怒られてください」

「わ、わかった……」


 な、なんか、結局私が怒られるのか!

 ま、まぁ、良いよ。

 昨日はラナちゃんのおかげで命がたすかってるんだしね!


<<エルマさん、ちょっとみんなを起こして来るから、族長さんにもこの辺りに移動して貰えるかな?ステラがケアしてくれるよ>>


<<承知した。族長と私で伺う>>


 まぁ、ここで「2人分?それは……」なんて、嫌がらせをしても話が長引くだけだから、ステラの許可があれば何でもいいや。

 とっとと、みんなを起こしに行こう。


ーーー


「ラナちゃん、ユーフラテスさん、シオン、リサ、朝ご飯だよ」


 うん。起きない。

 ユーフラテスさんは起きてるけど、シオンとリサとラナちゃんの枕になってる。返事をしたり、体を動かすと子供達が起きるから起きれない。


「シオン、リサ、ユーフラテスさんが困ってるから起こすよ」


 むにゃむにゃと目を擦りながらねぼけまなこで、微妙な反応をする双子を左右に抱える。


「ユーフラテスさん、ライト様なのですが……」

「ああ……。ヒカリさんが起こして欲しい」


「わ、わたし?」

「ああ。今まで、ライトを怒らせて機嫌が悪くならないのはヒカリさん以外に見たことが無い」


「ええ?」

「ああ。1000年単位で驚きだ」


 わ、わたしは、ラナちゃん起こしたこと無いよ?

 寝起きって、普通は機嫌が悪くなるよね?

 ま、まぁ、いっか……。


「ラナちゃん、朝ご飯です」


 二人を抱えたままだから、ちょっと遠くから声を掛けて見る。

 反応なし。


「おねえちゃん、どうしたの?」


 って、岩陰から起きて来たユッカちゃん。

 忘れてたわけじゃないけど、見えて無かったから気が付かなかった。


「ユッカちゃん。おはよう。ラナちゃんを起こそうかなと思って」


「ヒカリお姉ちゃんなら起こせるよ」

「え?」


「ラナちゃんは、ヒカリお姉ちゃんには優しい」

「そう……」


 いやいやいや……。

 みんな、反応がおかしいってば!

 わたし、散々怒られまくってるよ?

 怒るというか、叱られるという感じだけども……。


 あぁ……。

 ラナちゃんが冷静に怒ったのは、私が刺殺されそうになったときだけだね。

 あれは怖い。

 それ以外、ダメな自分を反省する機会は与えて貰ったけれど、ラナちゃんに殺されそうになったことは無いかな。

 だったら、まぁ、いっかな?


 寝ぼけたままのシオンとリサをユッカちゃんに預けて、ラナちゃんを起こしに掛かる。


「ラナちゃん、朝ご飯です」


 さっきと同じ様に声を掛けて、優しく少女の体をゆすってみる。

 ユーフラテスさんは黙って仰向けになったまま、状況を見守ってる。

 反応が無いね。


「ラナちゃん、美味しい照り焼きソースの朝ご飯です。

 鶏肉はステラが用意してくれました。

 不要であれば、飛竜族の方達に先に食べて戴いても宜しいですか?」


「ヒカリ、テリヤキって、何かしら?」


 目を瞑ったまま、ラナちゃんが声だけで反応する。

 念話で返事をしないのは、人間への意思を示しているという意味かな?


「割と美味しいです。今までにない味のソースになります」

「良いわ。起きるわ。起こして」


 こう、なんていうか……。

 ユーフラテスさんに寄りかかったまま、手だけを前に伸ばす。目は瞑ったままね。

 腕を引っ張れば良いのかな?

 まぁ、いいや。


 よっこいしょ!

 と、ばかりに、ラナちゃんの腕を引っ張って抱え上げる。

 重さは人族の少女の重さに調整してくれているようで、傍目には何も問題無い。ラナちゃんを抱き上げるなんて初めてだよ。


「ヒカリ、私は頑張ったわよね?」

「はい」


「ヒカリのご飯を食べても良いわよね?」

「ええ、勿論です」


「美味しいのかしら?」

「ステラの笑みが零れる程には、美味しいかと思います」


「ステラが感情を見せるのは珍しく無いかしら?」

「珍しいと思います」


「楽しみね」

「お口に合えば幸いです」


ーーー


 飛竜族の2人、妖精の長であるラナちゃん、ユーフラテスさん。

 エイサン、ステラ、ユッカちゃん。

 そして私たち家族3人だ。

 全員で12人と、結構な人数だ。


 飛竜族の人達がいるから、皆で念話を共有することは予め伝えておく。


「みなさん、お待たせしました。全員集まったので朝食にしたいと思います。

 肉類は全て今朝ステラが調達しました。ステラをねぎらって戴ければと思います。


 料理は、白米を炊いたご飯の上にチキンステーキ又は山羊のステーキ。

 そこにかけてあるソースは照り焼きソースでして、本日初めてお披露目するものです。皆様のお口に合えば幸いです」


 そういえば、醤油と砂糖っていう当たり前の調味料なんだけど、醤油も砂糖も入手が困難で難儀したねぇ。

 それぞれ単体ですら大変なのに、こんな風に合わせ技で潤沢に使えるようになったのは交流の範囲が広がったということなんだろうね。

 2年でここまでこれたのは早いのか、遅いのか……。


 私は事前にステラと試食をしているから味は判ってる。

 多少は余分に作ってあるわけで、余った残り物を食べれば良いし。

 万が一にも余らなかったら、別にパンでも何でも食べるからいいさ。


 飛竜族の人達へのサポートはステラとエイサンが対応している。

 他の人達は人型をしているから、スプーンとかフォークとかナイフとか、適当なカトラリーを使って、お皿から食べる。

 ああ、当然、テーブルとか無いから、転がっている石とか、座りやすい岩場に腰かけて、各自が自由に食べているよ。


「ヒカリ、ヒカリは何を願うのかしら?」


 って、ラナちゃんから突然声がかかる。

 どういうこと?私がお願いする素振りとか見せてないけど……。

 どうやって反応して良いか分からないから、黙ってステラの方を見ると、ステラは驚いた様子で私の方を見てる。


 え?なんかした?


「ヒカリ、どうかしたのかしら?」

「あっ、ええと……。今まで通りで……。

 というか、昨日は命を救って戴きましたので、それで十分です」


「そうね。あの計算とチューブの構築は久しぶりに全力を使ったわ。

 故意でなくても貴方が死亡していたら、1000年はお父様に封印されるところよ。今朝、疲れていたのは、あの計算のせいよ」


「はい。ですので、十分です」

「それで、何を願うのかしら?」


 え、え、え?

 会話がかみ合わないよ!


「ステラ、助けて!私はルールが分からない!」

「ヒカリさん、『お願を1つ預けさせてください』と、願えば良いわ。説明は後回しよ」


「わ、わかった!


 光の妖精の長であるライト様、いつもありがとうございます。

 今日は、私の願いを1つ預かって下さい」


「分かったわ。願いが出来たら言いなさい。いつでも助けるわ」

「ありがとうございます」


 ふぅ……。

 願いを預けるって何よ?ストックっていうこと?

 意味が分かりません!


「ヒカリ、これ美味しいわね」

「喜んで頂けて幸いです。まだ余裕があるのでもっと召し上がりますか?」


「そうね。貰えると良いわね」

「どうぞ、どうぞ」


 と、まぁ、そんな感じでステラがいっぱい狩りしてくれた、更には捌いてくれた獲物を焼き照り焼きソースを掛けて、皆に配りまくる。

 当然、ラナちゃんが一番最初だけども。


「ヒカリさん、飛竜族の族長であるハリ様がお話があるそうよ」

「は、はい。そちらに向かいますね」


 一旦、食事を作成する手を休めて、残りの料理作成の仕事をユッカちゃん達に任せて、私はステラが給仕しているハリさんの所へ向かう。

 いや、ステラが給仕してくれてるんだから、文句はないだろうに……。


 接触して、1:1の念話を通す準備をするとハリさんから先に念話が来た。


<<ヒカリ殿。うちのエルマが大変失礼した。

 また、北の大陸に住む飛竜族を救い頂いたことに感謝している>>

<<ハリ様とお呼びしても宜しいでしょうか。北の大陸では飛竜族との交流がありますが、南の大陸に住む飛竜族の方達とも交流させて戴ければと思います>>


<<ヒカリ殿、エルマをエイサン殿の所に向かわせたのは私の落ち度だ。


 彼は色々と分からないことが多いにも拘わらず、ヒカリさんと面談に向かわせてしまった。そのため、多くの時間をとらせることになり申し訳ない>>


<<ええと……。

 エルマさんの言い分はご尤もでしたので、私としては飛竜族と人族が公平な立場で交流できるように交渉の場を整えるために注力させて戴きました>>


<<私は北の大陸の飛竜族の先代の族長であるヌマ殿と交流がある。今はグルー殿に代替わりしているが、それにしても2代続いて、人族の下に隷属していたことは、飛竜族の一人として非常に歯がゆい思いをしていた。


 それを解放してくれたのがヒカリ殿である。

 ただ、エルマは私からの伝聞でしか、その内容を確認できてない。それよりも、北の飛竜族を解放できたという確証もなく、日頃より我々の卵が盗難に遭うといった、目先の被害に重きを置き、種族間の交流にまで目が行かなかった。


 更に、エルマは加護の印も読み取れないし、妖精の長を判定することも出来ない。であればこそ、ヒカリ殿を本物であるか確認する手段が無く、彼なりに警戒をしていたのだろう。


 北の飛竜族の二の舞にならぬよう、彼なりに最大限の警戒をしていたのだ。どうか代わって頭を下げる故、譲歩戴くことは可能であろうか>>


<<はい。私としては人族も南の飛竜族との交流の輪に加われるのであれば、特に問題ありません>>


<<大変感謝する!

 ところで、我々の血が欲しいとのことであるが、どの程度入用いりようであろうか?>>


 いきなり、本題きた……。


<<は、はい……。少々お待ちください>>

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