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4-22.飛竜族との交流(1)

「族長に決定を委ねる。

 すまないが助力を求む。

 私自身、体がボロボロで動けぬ」


「ヒカリ殿、無事でしたか。

 まだ、平等な交流は確立できておりませんが、飛竜族からの支援を求められています。ご協力いただけますでしょうか」


「エイサンいろいろありがとうね。

 ラナちゃんのおかげで無事に着陸出来たし、ステラやシオンのお陰で回復もしたよ。ただ、ちょっと疲れてるから……」


 ノロノロとステラと一緒に歩いてきたけど、エイサンとエルさんが念話は通してくれていたから状況は判ってる。

 けど、この色々なダメージからはそう簡単に回復しないよ……。



「おねえちゃん、ステラさんと一緒に行ってきても良い?」


 と、ユッカちゃんが、率先して行動してくれる。

 いつも有難いよ。


「ステラ、色々悪いけど、手伝って貰える?

 うちの子らは、まだ重力遮断とか教えて無いし……」


「ヒカリさん、構いませんわ。

 お礼は、口にイカ墨を詰められて身動きできないぐらいギチギチにされて、終わりの見えない強制飛行に飛び立った感想をきかせてくだされば良いわ」


「う、うん……」


 ここだけの話。

 ステラはギチギチに拘束されてみたり、密閉されたりするのが好きなのかな?橋を架けるときの潜水服みたいなのにもこだわりがあったみたいだし……。

 ま、まぁ、良いかな?


 ステラは私に約束を取り付けると、嬉しそうにユッカちゃんと二人で飛んで行った。あの二人がいれば、飛竜が大きくて、重くても運んで来て貰えるよね。


「ヒカリ殿、我々飛竜族としての決定は、先ほどエルマ殿に伝えた通り、族長の判断に委ねる必要がある。


 であるが、私が人族を軽んじていたことにお詫び申し上げる。そして多大なる力が有りながら公平な交易へ向けての申し出であったことに改めて感謝申し上げる。


 私としては、これ以上のことは此処では申し上げられない」


「エルさん、人族の中にも色々な人がいることを覚えていてくれたら良いかな。

 当然、過去のこじれてしまう関係を作ったような、飛竜の卵を盗むような人達もいるのも事実だと思う。


 ただ、今後私たちが南の大陸で制圧したエリアでは、人族からの不用意な窃盗が起こらな用に注意喚起を行っていくよ。


 ところで、人のこと言えた状況じゃないけれど、体の方は大丈夫?」


「ああ……。


 本日何度も介抱戴いたユッカ殿とリサ殿に感謝する。

 体表面の損傷した箇所からの出血の停止と保護膜の形成。翼や脚、尻尾での麻痺や骨折部分の整形もして頂いた。


 我々の力だけでは、自然治癒を待つしかないところであったが、時間も掛からず、後遺症も残らぬように治療戴けたことは感謝するしかない。


 ヒカリ殿の方こそ、無事であったのだろうか?」


「減速装置と生命維持装置が完璧なお陰で死なずに済んだよ。

 私だけでは勝負に勝てたかも知れないけど、死んでただろうね。


 あ、旦那さんに無事であること連絡しないと怒られそう。

 ちょっと、待っててくださいね」


 いやいや。

 今までだったら、私独りで行動してて、その仲間だけ知っていれば良いけど、今は異国の地で、単にクジラ獲りに行ってるだけのはずが、夜になって連絡ないのは不味いね。


 この地では「帰るコール」だとか、スマホによる連絡手段が無いのだから、連絡取れないのが当たり前なんだけど、「念話があるのに、何故連絡しないんだ?」って、言われるに決まってる。


<<リチャード、連絡遅くなってごめん。みんな無事。もうちょっとで帰る>>

<<ヒカリ、皆が心配している。

 昼頃から、ラナちゃんとリサとシオンがユーフラテスさんと一緒に買い物に行ったらしいが、何か知っているか?>>


<<え?>>

<<ヒカリは、まぁ、ステラ様が付いていれば大丈夫であろうとは思う。皆に迷惑かけずに、無事に帰ってきてくれれば良い


 だが、夜になっても子供たちが帰って来ず、行方不明ということだ。>>


<<あぁ、そう……。子供たちはここに居るよ。私より無事だよ>>

<<海にいるのか?

 それともクジラの捕獲が上手く行かず、風変わりな屋台でも見つけて、そこで夕飯の品定めをしているのか?>>


<<ああ、うん。お土産はクッキーの販売契約でなんとかなりそう。飛竜の血をちょっと貰うだけだしね>>


<<ヒカリ?>>

<<クッキーの材料がほとんど無かったはずだ。誕生日ケーキのために、相当な小麦を消費したと聞く。砂糖は母が運営している砂糖工場から直接買い付ければなんとかなると思うが……>>


<<うん、まぁ、小麦が栽培できそうな場所も見つけたし。夜で良くわかんないけど。

 あ、みんな一緒だから、今晩は此処で泊まって帰っても良い?明日、小麦の作付けできそうか確認してから帰りたい>>


<<あぁ、ステラ様に迷惑を掛けないようにな>>

<<わかった。みんなに宜しく>>


<<ああ。子供達のこと、頼んだぞ>>

<<うん。明日は朗報を持って帰れると思うよ>>


<<また明日な>>

<<また明日ね>>


「エルマさん、お待たせ。

 夜になっちゃったけど、此処で泊まって行っても良いかな?

 飛竜さん達も夜は辛いんじゃないの?」


「あ、ああ……。

 夜目が利きにくいのはある。

 常に索敵をし続けている感覚だ。

 視認性が悪く、今の様な念話のみの会話になる。

 今は緊急事態である故、族長に助力戴いているが、明日の方が望ましいのは確かだ」


「みんな、リチャードには連絡を入れておいたから、此処で泊まって行っても良いけど、どうする?」


「ヒカリ、泊まる支度をしてきて無いわ。夕ご飯はどうするのかしら?」


 と、ラナちゃん。

 私のカバンには野営用の簡単な食事はいつでも作れる用意があるよ。

 きっと、ユッカちゃんのカバンなら、ゴードンさんが作ってくれた料理がホカホカの状態で保存されていると思うし……。


「ええと、寝る場所は風当りの少ない岩陰で休んで戴くしかありません。多少は毛布やローブを利用して、体への当りを和らげて睡眠をとって戴くことになります。


 食事に関しましては、私がカバンにある物で簡単な調理はできます。ユッカちゃんに聞いてみないと分かりませんが、ある程度の出来合いの料理はユッカちゃんのカバンに入っているかもしれません」


「そう。それなら、食事の準備をしてから、帰るかどうか決めましょう」

「エルマさん、そのような訳で、人間達の食事の準備を始めます。

 族長さん達を呼んで来て貰って申し訳ないですが、飛竜族と人族の交易につきましては、食事をしながら簡単に話をしても宜しいでしょうか?」


「ヒカリ殿。我々飛竜族の族長の意向もあるのではあるが……。

 そこのラナという子の意見が優先されるのだろうか?」


「え?エルマさん、知ってて言ってますよね?」

「何がであろう?」


「ラナちゃんは妖精の長であるライト様でいらっしゃいますよ。

 飛竜族の族長をないがしろにしている訳ではなく、淡々と必要なことを順番に進めているだけです。

 飛竜族の方達の夜への負担を配慮して、先に私たちの食事の準備を進めようとしているだけです」


「ヒカリ殿、嘘は良くない。光の妖精の長は封印されて100年以上になる。噂によると、人族によって封印されたという話だ。

 人族は本当に愚かだ……」


「ええと、その話は明日でも良いですか?食事の準備をしないと私が怒られるので。


 エイサン、仲介お願いします」


「ヒカリ殿、承知しました。エルマ殿と飛竜族の族長との打ち合わせについては、引き受けさせて戴きます。

 また、出来れば明日より交渉に入らせて戴く方向で進めさせて戴きます」


「うん。ありがとうね。

 じゃ、みんなの分の夕飯を作り始めるよ」


 ステラとユッカちゃんが二人の飛竜さん達を連れてきてくれた。

 暗いし、意識を失ってたしで、直接運んで来てあげた方が良いもんね。


「ステラ、ユッカちゃん、ありがとうね。


 今日は此処で泊まることをリチャードに連絡しておいた。飛竜族の人達は夜の生活は慣れていないから、明日、交易のルール作りとか、小麦畑の下見をしてから帰ることにしたよ。

 

 だから、夕飯の準備を手伝って貰える?」


「「わかりました」」


 ステラとユッカちゃんに続いて、シオンとリサもちょこまかと準備を手伝ってくれる。シオンとリサは観光迷宮で散々野営をしていたから、こういうのは慣れている。

 一つ一つの経験が、こういったシーンでも文句を言わず対応してくれるっていうのは良いことだね。親としては有難いよ。


「ヒカリ、夕飯は何にするのかしら?」

「ええと、スープと、あとは南国のスパイスを使ってお肉を焼こうと思っていますが……」


「エビ味噌チャーハンは無いのかしら?昨日の誕生会で出た、濃厚な風味のアレよ。ユーフラテスも好きよ」

「あ、あれは、シオンの特殊な調味料が必要でして……。今私の手元になく……」


「他の材料はあるのかしら?」

「はい。エビチャーハンでしたら材料が揃っています。ただ、あの調味料は……」


「シオンくん。私は貴方のエビ味噌チャーハンが食べたいわ」

「ライト様、ユーフラテス様から友達の証を戴いたときに、残っていた壺ごと全て差し上げてしまい、残っていません。

 

 今からマリア様の屋敷に戻っても、仕込んでから完成までに1週間は掛かると思います。

 

 すみません」


「ユーフラテス、いつ貰ったのかしら?」

「ラナちゃん、今日、シオンくんから色々な話を聞いているときに貰いました」


「今、それはあるのかしら?そして、それは皆と共有できるのかしら?」

「……」


 あ。ユーフラテスさんが黙った。

 無いから怒られる?それとも皆で共有するのが勿体ないのかな?

 何にせよ、そこが解決しないと、夕飯のメニューが決まらないっていうね……。


「ユーフラテス、どうしたのかしら?」

「サトウキビ工場へ皆で来るときに、私の荷物はラナちゃんに預けてあります」


「え?わ、わたし?私は、ヒカリの準備で荷物なんか持ってないわ」


 ラナちゃん、私のことはありがとう。

 けど、皆の荷物をどっかに忘れて来ちゃったってこと?

 誰か気が付がなかったのかな?

 まぁ、私は鎧の中だから、気が付きようが無いっていうね……。


「ライト様、もしかしたら、こちらの荷物でしょうか。

 ぼくのカバンは、昨日ステラ様から貰ったカバンですので、入れてきました」


 流石はシオン!

 移動する前に忘れ物が無いかを確認して、きっとラナちゃんの荷物らしきものを知ってて、ちゃんと確保していたんだね。

 いい子だよ……。


 この後、何事も無かったように、シオンのカバンから出てきたラナちゃんの荷物の中に入っているユーフラテスさんの壺を使って、エビ味噌チャーハンを作った。


 今日の全員分のチャーハンを作ったから、全部無くなっちゃったけどね。

 ああ、一応、3人の飛竜さん達にも分けてあげたけど、「腐った臭い」ってことで不評とは言わないけれど、濃厚な滋味としては捉えて貰えなかった様子。

 まぁ、死肉を食べなくてはいけない経験もあったのだろうし、この辺りは人族の普通とは感覚が違うとしか言いようが無いね。


 さ、お腹いっぱいになったし。

 明日の交渉に向けて、良く寝ようっと。

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