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1-03.出産の喜び

「ん~~~~!」


 くっ……。き、キツイ。

 隣ではリチャード王子が手を握っていてくれる。 意識の合間で王子が声を励ましの掛けてくれていることが判る。

 普通は立ち合い出産なんて無いらしい。でも、王子は私と一緒に居たいってことで、出産に立ち会うことになった。


 「おぎゃ、おぎゃ」


 一人いけた!あともう一人!!


 「おぎゃ、おぎゃ」


 やった。 無事に二人を出産できた。

 疲れた。

 王子やマリア様や産婆さん達が何かを言ってる。

 元気であることを示すために、にっこり微笑んで返す。

 寝よう。


ーーーー


 ひと眠りして、目が覚めるとベッドの隣にリチャード王子が居た。私の目が覚めたことに気が付くと、声を掛けてきてくれた。ひょっとして、ずっと待っててくれたのかな?


「ヒカリ、双子だ。それも男の子と女の子だ。

 大丈夫か……?」


 「うん……。付き添ってくれてありがとうね。

男の子と女の子だったら、シオンとリサだね」


「ああ……。姉がリサ、弟がシオンになる。

ヒカリも子供達も無事でなによりだ。

よく頑張ってくれたな」


 この感じからすると、私が寝ちゃった後も待っててくれたっぽいね。色々と申し訳ないけど、女性の一大イベントだから、ちょっとは許してね。


 っていうか、大事なことを聞くのを忘れてたよ!

 多産多死型の社会では双子って忌み嫌われるとか無いかな?どっちかを殺して、育て甲斐のある方だけ残すとか……。

 う~、もしそんなんだったら二人を連れて家出だね……。


「あ、あの……。双子だと、縁起が悪いとか、王位継承に問題があるとか、そういった王族での困りごととかはありませんか?」


「無いと思うぞ。ヒカリの子育て方法だと困るのかもしれないがな。

 王位継承権も正室の男児の早く生まれた順だ。次に側室の男児の生まれた順と、この国では決まっている。無事に育ってくれればシオンが王位継承権第一位になるな。

 なにか気になるのか?」


「ううん。エスティア王国の慣例で問題無ければ良いです。双子だと、どちらが王位継承権を持つかで揉めたら嫌だな~って」


「うむ、それは大丈夫だ。ところでだが……」

「な、なに?まだ疲れが完全に取れた訳でなく……。

 あと、次の子作りもまだ無理かな……

 いろいろ壊れちゃうんだよ?」


「い、いや、そうじゃない。そうじゃなくてだな……」

「あ、敬語が不適切でしたね。申し訳ございません」


「待て待て待て。そうじゃない。逆だ。」

「へ?」


 なんか、変な声が出る。

 私としては理解できない。何が逆?

 散々マナー、マナーって言ってて……。

 まして、今後は伯爵とメイドな関係を演じる訳だし……。

 なんか、間違った?


「無事に結婚の儀も終えて、後継ぎも生まれた訳だ……。

 結婚の儀に使った城は、暫くは公式行事などで使うとして、ここの領主の館の改造も無事に終わった訳だろ?」

「はい……」


「で、あれば、我々はもっと、その……」

「うん?」


「ヒカリは、私のことが嫌いなのか?」

「え?」


 なになに、なんなわけ?

 今更そんなこと言う?

 誰のために伯爵級の成果を挙げたり、エスティア王国が抱えている隣国との揉め事を解決したりしたのさ?

 確かに、ユッカちゃんを無事に独立するまで世話できる環境を整える必要があったけれど、別にリチャード王子のことが嫌なら、隣国のロメオ王子と結婚するチャンスもあったわけでさ?


「私は何かリチャード王子に失礼なことをしていたでしょうか……」


 出産してまだ日にちが経ってないのに、なんか責められてる?

 と、取り敢えず、謝っておくか……。


「まてまてまてまて。ちょっと待て。金貨10万枚はやらないが、ちょっと待て」

「はい。待ちます」


 『ちょっと』が『金貨10万枚』のくだりは、前にリチャード王子が冗談でいったことに、私が冗談で返しただけなのに……。未だにそんなこというなんて、なんか本気で焦ってる?


「その、だな……」

「……」


 何を言いたいか判らないから、暫く黙って待つことにするよ。


「ヒカリは私のことを、いつまで王子と呼ぶのだ?」

「え?あ!す、すみません。この館では伯爵と呼ぶべきでしたよね。

リチャード伯爵でしょうか、それともハミルトン伯爵様?

全然ダメダメですね……」


 やばい、やばい、やばい!

 王子がこの領地の伯爵で、私がメイドという立場で子育てをするのだから、作戦通りに振る舞わないと不味いね!呼び方も決まってないとか、失礼過ぎる!


 王子が顔に手を当てて、なんだか残念そうな雰囲気を漂わせる……。

 そっか、そうだよね……。

 母親がそんな大事なことを忘れちゃだめだよ……。


「ま、待て。確かにそれもあるが、それはあくまで公式の場での話であろう?」「公式というか、どこに人の目があるか判らないので、普段から気を付けるべきですよね……」


「ヒカリ、悪かった。俺が単刀直入に言うべきだった。

ヒカリと二人の時は、『リチャード王子』と他人行儀に呼ぶのは止めても良いんじゃないだろうか?」

「ええ?」


「うちの父と母ですら、公式の場でなければ、お互いを名前で呼んでいる」

「は、はぁ……」


「俺だけ、ヒカリのことをヒカリと呼ぶのは不公平じゃないか?」

「ええ?

 でも、私が男爵になったり伯爵になっても、ずっとヒカリのままでしたよね?王子から見たら私はいつまで経っても平民なのかな~って、思っていましたが……」


「ヒカリはそんな風に考えていたのか……」

「いや、特に気にしていませんでした!」


「なんなんだ……」

「何なんでしょう……」


「俺のことを名前で呼ぶのは嫌か?」

「え?」


 なにそれ、どういうことなの?

 だ、だれか助けて……。

 恋愛経験なく、マナーを守って王子と接してきたつもりだけど……

 ど、どうすればいいの?


「ど、どうした?顔が赤いぞ?まだ、体調が優れぬようであれば、悪いことをした……」

「い、いや、あの、あのですね。り、り、リチャード……。大丈夫です」


「ヒカリ?」

「り、リチャード。体調が優れぬので、寝かせて戴いても宜しいでしょうか。子供たちはマリア様か産婆さんに託します……」


「ヒカリ、無理するな……」

「は、はい。リチャード、おやすみなさい」


 もう、顔見れない。

 名前で呼ぶことがこんなに恥ずかしいこととは思わなかったよ!

 寝よう!

週1回くらいで更新出来ればと思います。

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