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4-19.飛竜族との勝負(4)

「ああ……。ぐぅ……。」


「ステラ、ヒカリを助けられるかしら?」

「ライト様、どういったことをすれば宜しいのでしょうか」


 私が考えあぐねていると、ラナちゃんとステラが会話を始めた。

 う~ん、う~ん。考えなきゃいけないけど、それ以前に自分の浅はかさにショックで、ちょっと考えが纏まらないよ……。


「簡単に言うと、断熱材ね。炎の中で15分は耐えて欲しいわ。

 鍛冶屋やガラス職人ほどではなくても、焚火ぐらいかしら」


「ライト様、以前、冷蔵庫を作る際に、真空が断熱材に適していると聞きました。今回は真空の中を移動するので、断熱されているのでは無いでしょうか?」

「そう……。


 ヒカリは断熱圧縮の熱力学が判るけれど、ステラには科学の知識が不十分な様ね。

 高速な物体が空気にぶつかると、色々な事情で発熱するのよ。細かな原理や実証はヒカリが元気なときに頼んでみれば良いわ。


 ヒカリを断熱材で包みたいの。

 真空で包むのでも構わないけれど、そのためには真空をつくるための容器にヒカリを格納しておく必要があるわ。


 何か良い器があるからしら?

 今度はちゃんと高温に耐えて、ヒカリを入れられる器を用意するだけで良いわ。その器にヒカリを閉じ込めて、容器の中を真空にしてしまえば、ヒカリの体は熱から守られるわ」


「ライト様、ご丁寧な教示ありがとうございます。勉強不足な点は日々精進し、ご迷惑を掛けない知識を身に付けるように心がけます。


 容器に関してですが、熱に強い容器といえば、飛空術をする際に使うガラスの仮面か、あとは、ニーニャさんが作られたオリハルコン製のヒカリさん専用の鎧でしょうか。


 仮面は頭部の保護だけになりますが、視界が確保できます。鎧は関節部などの可動部が隙間だらけになりますが、今回は可動部を固定して、隙間を耐熱コーティングで埋めつつ、固定してしまえば、その中にヒカリさんを閉じ込めることが出来ると考えます」


「ああ、ルシャナ様から貰った鉱石で作ったオリハルコン製の鎧ね。良い物があるじゃない。

 

 けれど、そこでショックを受けているヒカリは普段から持ち運んでいるのかしら?結婚式を挙げたお城に記念で飾ってたりしないかしら?」


「確か、ヒカリさんは『とても大事な物だし、私に専属化されているから、常に持ち歩く』と、言っていた覚えがあります。


 きっと、カバンに入るサイズに分解して格納していると思われます」


「流石はステラね。ヒカリのことを良く理解しているわ。貴方に相談して正解よ」

「お褒め戴き光栄です」


「ステラ、ヒカリの準備を急ぎましょう。

 ヒカリ、早くカバンからオリハルコン製の鎧の部品を全てとりだして!」


「あ、はい!」


 あわわ、あわわと、会話に流されているうちに、体が自然に動いて、背負っていたカバンから鎧一式をとりだす。

 カバンの格納機能が専属化されているから、中身を知っていても私しか取り出すことが出来ないからね。


 この鎧は分解してコンパクトに収納できる。その一方で、簡単に組み立てられる設計にもなっていたよ。

 例えば、膝や肘の可動部で取り外せるんだけど、組み立て時は関節の可動方向と逆側にはめ込む形で繋ぐ仕組みになっている。だから、普通の肉体の動きでは、組み立ててから着用した場合にはその可動部ががたついたり、不用意に外れてしまったりすることが無い優れもの。


 なんて、初めて渡されたときの思い出に浸っていると、ラナちゃんの指示で、ステラが鎧を組み立てつつ、内側に各種コーティングを施していく。

 私はコーティングの印も描けないし、種類も判らないから、ラナちゃんとステラにお任せだ。


 ぼ~~っと、見てると、足の部分に水の入った革袋みたいのとを取り付けて、そこにラナちゃんが各種印を描き込んでいる。二人ともやることが完全に判っているかのように、迅速に滑らかで無駄のない手順で組み立てと構築を完了させた。


「ヒカリ、


準備が終わったのが、

(1)ヒカリの体の真空からの保護膜

(2)鎧は大気圧の圧縮に伴う発熱からの保護機能

(3)加速と減速に使用する水蒸気噴射用の革袋と念話操作による印の設置


あと、足りないのが

(4)減速用のトンネルの設置

(5)ヒカリが気絶した場合に備えての酸素供給装置


に、なるのだけど良いかしら?」


「はい!

 減速の方法は、焼け死なない様に、距離を長く伸ばして、徐々に空気の濃度を上げて行く形はどうでしょうか。


 【?】の字の下の点を出発点。

 そこから直線立ち上がり部分でゴールに到達。

 曲線でループを形成して、そこで徐々に空気密度を上げて行くイメージを再検討しました。


 そのような距離を伸ばして空気密度を上げていけば、距離当たりの圧縮熱の発生量も低減できるし、空気を音速で物体が突き破るときに生じるソニックブームの影響も低減できると思います。


 如何でしょうか?」


「ヒカリ、良いわ。馬鹿じゃないわね。


 けれど、ループ形成距離と、空気密度の段階的な変化、そして逆噴射による水蒸気の影響、ソニックブームの周囲への影響を全て相殺しておく必要があるわね。


 そこの計算をイメージできて正確にエーテルに伝えることが出来ているかしら?


 そこを誤ると、今度は『飛竜族の巣の周辺を破壊した人族』として、余計な不和を呼び込むことになるわ」


 ああ~。

 所謂いわゆる騒音問題とソニックブームの実質的な被害が発生する話ね。

 今回は超低高度で飛空するから、そのソニックブームの被害は直接的に因果関係が説明出来て、その被害も甚大だ。

 ま、まずい……。


「ライト様、お願しても宜しいでしょうか」

「ヒカリ、何を願うのかしら?」


「私が真空のトンネルを利用して、無抵抗な空間で加速とゴール地点に到達した後、無事に減速しつつ、周囲への騒音や衝撃波の影響を最低限にコントロールできる様な、減速するトンネル空間の構築をお願いしたいです」


「ステラ、ヒカリの願いは戦争を目的としたことかしら?あるいは種族間の戦争の準備に備えることを目的としたことかしら?


 どちらにも当てはまらないのであれば、『ヒカリの願うこれまでお通りの付き合い』と、矛盾しないわ」


「ライト様、私が考え得る限りの知識の範囲において、今のヒカリさんの願いは種族間の無闇な争いを求めての願いではありません。また、双方や各種族間の交流を円滑にするためのいしずえを築くものであると考えます」


「ヒカリ、これまで通りの付き合いの範囲で願いを叶えるわ。安心しなさい。

 その代わり、これまでの範囲通り私は自由よ?

 良いかしら?」


「はい、お願します。そして私の願いを聞いて頂きありがとうございます」

「ヒカリ、良いわ。貴方が居ないとつまらないもの。

 トンネルの構築は【?】の字の全てと、隔壁迄私が構築するわ。

 貴方はステラのサポートでニーニャの鎧をコーティングごと身に付けなさい。

 エイサン、ヒカリが気絶すると窒息する危険があるわ。酸素を放出できるあの物体をヒカリに提供しなさい」


 と、ラナちゃんが全てを納めてくれる願いを聞き入れてくれた……。

 アリアのナノ核融合炉とか、印だけで構築できる冷蔵庫とか、これで3回目だね……。

 もし、科学技術の力で人をマッハ3まで加速して、移動できて、尚且つ安全に着陸できるとなると、それは軍事技術としてとんでもないことになるよね。


 ああ、ありがたい……。


 と、色々なことを考えながら、ステラのサポートを受けつつと鎧を身に付けていると、エイサンが例の海神さんから回収した黒い墨をもって戻ってきた。


「ヒカリ様、こちらになります。ライト様のご指示ですのでご了承ください」


 って、エイサンが私が何かを言い返そうとする瞬間を狙って、グイグイって、黒い塊を私の口に押し込んだ。


「ヒカリさん、このまま兜を固定しますね」


 って、ステラは口がきけず、鎧でほとんど固定されて動けない状態の私の返事を聞かずに、エイサンとラナちゃんの指示に従って、準備を完成させる。


 ガチガチに固定されて、水の革袋みたいのが足や腰に括り付けられて、手足は胴体に固定されて、首もガチガチに兜の中で一体化している。


 そして、トドメは口の中に例の生臭いイカ墨を押し込まれて完成。


 もう、あとはロケットの発射台に運ばれるロケットの状態。

 念話は通せるけれど、通したところで何もこの事態が変わる訳じゃない。


 まぁ、もう、任せたよ!

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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