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4-13.飛竜族との対話(2)

 こっちが意固地になってても仕方ないから、飛竜族の人と話をしてみるさぁ……。


<<南の飛竜族の方、初めまして。先ほどはうちの娘が不躾な態度で突然の念話での対話を開始し、大変失礼しました。母としてお詫び申し上げます>>


<<いや、いい。

 こちらも人族の全てを同一な存在として疑っており、海人族のエイサン殿にも仲介戴いていたが、過去のしがらみから、人族との交流を易々とは受け入れることが出来ていなかった。

 その点について、こちらも謝罪させて戴きたい>>


<<承知しました。改めて自己紹介をさせて戴いた方が宜しいでしょうか?>>


<<ああ、我から名乗ろう。エルム・ハース………スルトである。人族の方達には長くで覚えにくいでであろう。エルと呼んで頂ければと思う>>


<<私は北の大陸から来たヒカリ・ハミルトンと申します。ウインザー家に嫁ぎましたので、状況によってはヒカリ・ウインザーの名前を名乗ることもございますが、ヒカリと呼んで頂ければと思います>>


<<承知した。それでヒカリ殿、交易の話をする前に幾つか質問をさせて戴きたいのだが、宜しいだろうか?>>

<<私が答えられる範囲の事であれば構いません>>


<<先ず、先ほどクッキーを提供戴き、更に直接念話を通した幼子おさなごは、ヒカリ殿の息女という理解で宜しいだろうか?>>

<<はい。リサと申します。人族のリチャードとの間に授かった子供になります。あちらのテーブルで食事をしている男の子は双子の弟のシオンになります>>


<<なるほど。

 リサ殿は、飛竜の加護を生まれながらに授かっており、それは母上であるヒカリ殿がヌマ殿より授かったと伺った。

 可能であればその経緯を伺っても宜しいだろうか?>>


 北の大陸では飛竜族が針付きの兜で人族に支配されていたこと。

 その飛竜族を人族の支配から解放したこと。

 先代の族長のヌマさんと、現族長のグルーさんと交流をしていること。

 加護の印は何名か貰っていたけれど、飛竜族のヌマさんと水の妖精のウンディーネ様からは加護の印ではなく、何かエネルギーの様なものを戴き、双子が生まれた時に、夫々が加護持ちとして生まれたことを説明した。


<<先代の族長であるヌマ殿は存じ上げている。

 だが、人族に拘束されて交流が途絶えていた。その様な飛竜族を支配下に置くことが出来る兜は脅威であるが、その仕掛けを見破って解放戴いたヒカリ殿には飛竜族として感謝申し上げる>>


<<いえいえ、私たちにとっても必要なことでしたし、グルーさん達からも色々な協力をして頂いています。

 ですので、エルさんとは貸し借りなしの状態から関係構築をさせて戴ければと思います>>


<<すまぬが、先ほどシオン殿にもウンディーネ様の加護を戴いたとの話があったが、それはどの様な経緯であったのだろうか?>>

<<ああ。それはエイサンの方が良くご存じかと思います。ウンディーネ様が奴隷として囚われていた折、エイサンと協働して救出した経緯があります。詳しくはエイサンに聞いて頂ければ宜しいかと思います>>


<<いやいや。加護の印を授かる人間が稀に居ることは知っている。だが、人族にその化身を渡すような話は聞いたことが無い。

 何か特殊なことが有ったのではなかろうか?>>


<<う~ん……。ステラの方が妖精達と人間の関係については詳しいことを御存じでは無いかと推察します。あちらに居るエルフ族の方と話を代わっても宜しいでしょうか?>>


<<あ、ああ……。人族のヒカリ殿の話をエルフ族が知っているということであろうか?>>


<<はい。ここ2年ぐらい一緒に行動していました。私より客観的に私の振る舞いを見ていたであろうと思います>>


<<エルフの方の食事の邪魔で無ければ、話をさせて戴きたい>>

<<少々お待ちください>>


 テーブルでお茶を出してるステラの所に行って、簡単に事情を話す。交易はして貰えそうだけど、色々な過去の経緯を知りたがっていること。長老から貰った加護がシオンに移っている状況を知りたがっていることを説明した。


「ヒカリさん、構いませんわ。お茶は私が淹れますので、手を付けないで戴けますか?」

「あ、はい。お茶は触りません。

 あ、あと、名前はエルマなんとかさん。エルさんって呼んで良いみたい」


「分かりました。交渉を進めて参ります」

「ステラ、無理な交渉はしなくていいからね?」


「私のあるじを馬鹿にした態度をとった飛竜族など、対等に接する必要はございませんわ。徹底的に遣り込めて参ります」

「ス、ステラ、穏便にね?」


「ヒカリさんのご命令とあらば、手加減しますわ」

「う、うん……」


 お茶はお預けで、海洋深層水に砂糖を少し溶かした、非常に体に優しくて塩味も柔らかな味付けの水を飲みながら、ステラの様子を見守ることにしたよ。


 あれ、なんか、ステラの顔が険しいよ?

 接触している手にも力が入ってる……。

 あれは、ひょっとして、イラっとしてる?


「ス、ステラ!無理しないで!私の事は良いから!」

「ヒカリさん、遅いですわ」


 って、ステラが飛竜族のエルさんから離れると、エルさんがいきなり横倒しになった。眠らせたとか、そういった穏やかな倒れ方じゃないよ。気絶とか突然死っていうレベル。


 何やった?


「ス、ステラ!エルさんが倒れた!」

「ヒカリさんの科学を応用して、空気を奪っただけですわ。科学の知識とエーテル駆使の併用の素晴らしさを体感して頂いただけですわ。心臓も呼吸も正常なので、いずれ元に戻りますわ」


 と、周囲に説明しつつ、ステラは平然とした態度で戻って来てお茶を淹れ始めた。 仄かに香るハーブが心を落ち着かせるね。

 それにして、ステラが怒りだすって何したんだ?まさかステラのお茶を馬鹿にしたの?


「ステラ、エルさんが何を言ったの……?後学のために教えてもらえると有難いかな……」

「ヒカリさんを『幸運な者である』と、言い切ったわ」


「ああ……。確かに私は皆に出会えて幸運だと思うよ」

「そういった意味での『幸運を呼び寄せる力のある人』という評価では無く、単に運に恵まれて今の状態にあるだけの存在という意味での発言だったわ」


「ま、まぁ、そういわれると、そういう部分は大きいよね……」

「ヒカリさんは自覚が足りませんわ。

 これだから『ヒカリだから』と言われるのですわ。ただ、その意味はヒカリさんの本当の力を知っている人たちだからこそ使える言葉な訳ですけれども……」


「ま、まぁさ。今日会ったばかりの人だし。お互いの信頼関係を築けていない訳だから、そういう物の見方になっても仕方ないんじゃない?」

「私のことも、『ヒカリ殿の奴隷として支配下に置かれているから、そのような物の見方しか出来ない』とも言ったわ」


「それはステラに失礼だよね。私も奴隷印を解除出来れば良いんだけど、そういう知識が乏しくて、解除の仕方が分からないし……」

「ヒカリさん、私は解除する必要が無いと以前から言っていたはずですわ。私は身分に縛られることは無いですし、ヒカリさんとの出会いの記念として大事に見つけておきたいですもの」


「私は、身分で人を強制的に束縛するのは好きじゃないかな……」

「ええ。その考え方を理解せずに、ヒカリさんを誤った認識のまま評価し続ける訳です。こちらからは何も語ることはありませんわ」


 って、私とステラが話している間にリサとユッカちゃんが二人掛かりでエルさんを起こしに行ってて、3分も経たずにエルさんは意識を取り戻した。


「あ、ステラ。エルさんが起きたよ。どうする?」

「今度はヒカリさんが打ち負かしてくださいな」


「ええ?」

「運だけでも、奴隷落として支配しているだけでも無く、科学に裏打ちされた実力を備えて、人を惹きつけるに十分な包容力がある方であると、あの飛竜に示してくださいな」


 そう……。

 ちょっと、頑張ってみようかな……」

 エルさんに近づき、接触して念話を通す。


<<エルさん、お話をさせて戴いても大丈夫でしょうか>>

<<うむ……。何が起こったのだろうか?どの程度時間が経過した?>>


<<ちょっとした事故に遭われて、数分……。少しの間、倒れていた様です。我々のお茶が冷めない程度の少しの時間でした>>


<<エルフ族のステラ殿と会話をしていたと思ったのだが?>>

<<会話が通じず、その際に事故に遭われた様です。ステラはあちらで皆とお茶をしています>>


<<リサ殿と、この子は?>>

<<その子はユッカと申します。諸事情により、私と養子縁組しております>>


<<奴隷契約ではなく、養子とな?ヒカリ殿の役に立たなかったのであろうか?>>

<<私は役に立つ、立たないで人との交流を決めません。まして、人と交流する際に、奴隷契約を前提に相手を従えるつもりはありません>>


<<エイサン殿もステラ殿もヒカリ殿の奴隷契約印が付いていて、そのような建前を繕うことは無用であるぞ>>

<<私のげんを信じることが出来ず、自分の価値観で相手を量ろうとするのであれば、また事故に遭われますよ?>>


<<事故は事故であろう。そうそう事故に遭って倒れることは無い。ここに居る人間達と私とでは事故にでも遭わない限り、勝負などするまでも無い>>


 念話相手をユッカちゃんと、リサにもつなげ直して、


<<エルさん、またユッカちゃんとリサに世話して貰うことになりますよ?>>

<<故意に事故を起こせない限り、それは無いだろう?>>


 あ。言ったね?

 これって、ステラの魔法すら否定する発言だし、エイサンやステラを私が奴隷扱いして従わせているってのも、頭に来た。


<<エーテルさん、空気中の窒素と酸素の比率を酸素を10%ぐらいまであ減らした空気の塊を生成して、それを飛竜族のエルさんの前に集めて。

 分量は飛竜族の人にとって、数呼吸するぐらいでお願い>>


 と、ほんの一息吸った飛竜さんがいきなり横倒しになった。

 ステラがお願いした方法とは違うけれど、科学的には酸欠を起こさせるには十分で、尚且つ危険な方法だね。

 ユッカちゃんがよく使う、疲れる成分を脳に生成して、眠りを誘うのとは違って、生物そのものが持つ防御反応だね。

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