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4-11.飛竜族の訪問(2)

 う~ん。

 飛竜さんが訪ねてきてくれたのに、その先が進められないのは不味い。

 どうしよっかな……。

 先ずは、エイサンからの回答待ちかな?


「ヒカリ様、大変お待たせしております。


 先ず、『南の大陸の飛竜族と北の大陸の飛竜族では、ここ100年近く交流が無いし、念話も通せない。そして、その交流が途絶える原因になったのは、人族が飛竜族を罠に嵌めたことがきっかけとして伝わっている』とのこと。


 また、こ『ちらの南の大陸では、先ほどの通り飛竜族の卵の略奪が起きており、人間達全般への不信感があるため、安易には信用できない』とのことです」


「うん。だから、北の飛竜族は解放したし、その交流の証として飛竜族の加護の印があるんだけど、それじゃ信用して貰えないってこと?」


「『人族や魔族、ましてエルフ族と親交ある人物であれば、印の偽装も行える可能性があるため、それでは証に成らない』とのことです」


「じゃぁ、北の飛竜族の族長の名前を言えば良いとか?」

「人族が支配していたなら、その族長の名前を聞き出せていたかもしれません」


「でも、普通の人族では念話は使えないよね?」

「ヒカリ様が普通の人族で無いのであればこそ、高度に騙すことも可能と捉えられています」


「グルーさんっていう、飛竜族が200歳以上の高齢の人だったと思う。先代の族長さん。この人に直接確認してもらうことは出来ないの?」


「ヒカリ様、直接接触していない、名前だけを知っている人とは念話は通せません。


 ヒカリ様に一目いちもくを置いて戴いていることは確かです。辛抱強く私との対話を続けて戴いていますので。

 ですが、最後の信用を得るだけの何かが示せていないのが現状です」


「妖精の長の加護の印も偽装している可能性があるから、意味が無いでしょう?」

「はい。『普通ではない人族だからこそ、偽装の可能性がある』と、同様に捉えられるでしょう」


「じゃぁ、飛竜の血だけちょっと分けて貰えないかな?北の大陸まで戻って貰ってくるのが大変だからさ?」

「ヒカリ様も中々、大胆な申し出でをしますね。一応確認してみますが……」


 あ~あ~。なんか、面倒なことになってるな~。


 南の飛竜族とも縁を繋げておいて、その上で血を分けて貰えたら、飛竜族の聖地として、人族による卵の窃盗から保護できるかもしれないんだけどな~。信用が無いのに、保護とか余計に信用されないよな~。


 「ヒカリ様、飛竜の血の使い道を確認されましたが、如何回答しましょうか?」

「身体強化を強制的に付与できるから、ある冒険者パーティーに上級迷宮をクリアして貰おうかなって。

 ただ、できれば効能は期間限定。そして数量も限定にしたい。更には、飛竜の血の効能ではなくて、アルケミストが作成した秘薬扱いにしておきたい」


「ヒカリ様、それは飛竜族方への説明になっていますでしょうか?」

「使い道は合ってると思うよ」


「左様ですか……。少々お待ちください」


 次のエイサンの返事はこんな感じ。

 この特殊な人間がこれ以上強くなってどうする。今でも十分に迷宮をクリアできるパーティーが形成できるのではないか。

 自分で使わないなら、何に使うのか?と。


 回答は魔族から自分達のパーティーを隠ぺいする為なんだよね。

 すると、今度は「人族と魔族の争いの一方にのみ関与するつもりはない」とか、返ってきそうな気がするよ。


 なんか、決め手が無いかな~。

 でも、南の飛竜族とは交流が無いし、信用関係も築けてないんだよね~。

 どうしたもんだかな~。


 と、独りでブツブツ考えていると……。


 ステラがエイサンに状況の説明をしてくれている。魔族に私たちの存在が露見せずに、人族の領地を取り戻したいこと。そのためには、観光迷宮で魔物が溢れたことを、私たちのパーティー以外のパーティーのせいにしておきたくて、実際に1回限りの秘薬を使えば、上級迷宮のクリアを示すことが必要であること。

 当然、飛竜族の方達の支援とは言わず、人族かエルフ族の秘薬によって、その効能が実現できており、その秘薬は南の大陸では手に入らないことにする。


 その恩に報いる形で、少なくとも人族とエルフ族は飛竜族の卵の採取は行わない聖獣として扱う様に伝えて行く。そんな風に私たちが考えていることをエイサンへ説明してくれた。


 と、色々と交渉が難航していると……。


「ヒカリ、サトウキビジュースは何処かしら?」


 と、突然ラナちゃんが登場。

 ついでに、リサ、シオン、ユーフラテス様まで。


「ラナちゃん、サトウキビジュースについては、そこにいる海人族のエイサン達に御馳走になりました。貰って来た方が良いですか?」


「ヒカリは、私を除け者にする気だったのかしら?」

「ええ?」


「ユッカが教えてくれなければ、砂糖工場があるとか、サトウキビジュースを飲んでいるなんて知らない所だったのだけれど?」

「ああ、あの、ご覧の通り、飛竜族との交渉中でして……」


「ヒカリ、私の質問に答える気が無いのかしら?」

「直ぐに、サトウキビジュースを準備して参ります。少々お待ちください」


「いいわ。ユッカの分を含めて5人分よ」

「分かりました!」


 一体、私は何をやってるんだ?

 サトウキビジュースは私は作れないから、その辺に居る海人族さんに南の大陸の言語と北の大陸の言語の両方を使って、尚且つ身振り手振りで話をして、サトウキビジュース5杯分の入手に成功。そして、外で待機している私たちの所に運んでもらった。


 まぁ、飛竜族との交渉も必要だけれど、ラナちゃん達にはお世話になりっぱなしな訳だから、こういう細かいところで少しずつ恩を返しておかないとね。


「ヒカリのクッキーに比べたらまだまだだけど、これはこれで美味しいと思うわ。

 ところで、ヒカリはここで何をしているのかしら?サトウキビジュースを飲みに来ただけでは無いわよね?」


「はい。飛竜族との交渉に向けて準備を進めていたのですが、縁あって、エイサンが飛竜族の方を此処へ呼んで頂いたので、飛竜の血の入手について交渉を進めている最中です。

 尚、サトウキビジュースは飛竜族の方達が到着するまでに提供戴いた物になりますので、私たちもここで初めて体験した次第です。ラナちゃんを除け者にするなんてとんでもございません」


「ヒカリ、皆で急いで飛んで来たから、お昼ごはんを食べて無いわ」

「ラナちゃん、私たちも、まだ食べていません」


「ヒカリは何を言っているのかしら?」

「すみません。直ぐにお昼ごはんの準備を頼んできます」


 今度は、皆の分の食事を準備して貰えるように頼んでくる。

 あと、外でご飯が食べられるような屋外用のテーブルセットも準備してもらう。

 飛竜族の食事が何かわからないけど、そっちもお願いしておいた。

 もし、海産物系の加工場も近くにあるなら、それで何かを作っても良いんだけどさ?食材に何があるか分からないから、全部お任せしてしまうことにしたよ。


「ヒカリ、ステラや海人族、飛竜族は、さっきから何をしているのかしら?」

「椅子が足りないから食事がしにくいのかもしれません」


「ヒカリ、食事は良いのよ。私が食べているのが見えないかしら?

 そうではなくて、さっきから何の話をしているのかということよ」


「飛竜族に血を分けて貰おう交渉しているのですが、私たちが信用を得られないので、直接念話で話をすることもできませんし、交渉することもできません」


「なぜ?」

「過去の飛竜族と人族の軋轢でしょうか……」


「私は人族がきらいだけれど、ヒカリは好きよ」

「ありがとうございます」


「ヒカリは、クジラを獲りに行ったのでは無かったからしら?」

「訳有って、失敗しました。また、南の飛竜族ではクジラは保護の対象として扱われている様でして、食用にしていないそうです」


「そう……。ヒカリはクッキーを持っていないのかしら?」

「私のカバンには入っていません。ユッカちゃんのカバンだと、ひょっとするかもですが……」


「おねえちゃん、リサちゃんのカバンに少し残っているかも。私が持ってきた分は、もう迷宮の中で食べちゃったから、後で作って」


 と、ユッカちゃんが話に加わってくれた。


「リサ~。ユッカちゃんから貰ったクッキーは残ってる?

 そもそも歯が生えそろって無いのに、クッキー美味しい?」


「お母様、身体強化の応用で咀嚼そしゃくが出来るのです。

 会話のときも、歯が生えそろって無くて大変ですが、工夫によって喋っています」


「そう……。

 それで、クッキーは残ってそう?あったら、そこの飛竜族の人に分けてあげて欲しいのだけど……」


「あの飛竜は、傍にいる海人族かステラ様の乗り物では無いのですか?」

「今のリサなら念話が出来るから、会話できると思うよ。とても優れた生物なので、馬とかの家畜とは違うよ」


「お母様、クッキーは少しですが、ユッカお姉ちゃんから戴いた物が残っています。お母様も一緒に付いてきて貰えますか?」


「うん。リサは飛竜族の人が怖いの?」

「兜も手綱も付いていない、野生の飛竜を見るのは初めてです」


「あれ?北の大陸の領地では、飛竜さん達と会って無いっけ?」

「お母様が何を言っているのか判りませんが、遭っていません」


 あれ?そうだったけかな?

 いつもは人目に付かない様に、光学迷彩とかして行動してくれているから、気にしてなかったのかな……。


 ま、いっか。

 飛竜族の人にクッキーを渡しに行こう。


「エイサン、うちのリサです。飛竜族の人にお土産をお持ちしたので、食べて貰えないか確認して貰える?」

「ひょ、ひょっとして、まさか、クッキーでございますか?」


「あ、うん。ああ、ゴメン!今回はエイサンの分は持って来てない!」

「そうですか……」


 エイサンが、なんだかとっても残念そうだよ。

 飛竜族との交渉が難航していることなんか、どうでも良いぐらい落胆している。

 ちょ、ちょっと悪いことしたかな?

 でも、小麦とバターさえ手に入れば南の大陸でも焼ける。何せ、此処には砂糖工場があるからね!


 って、考えている間にエイサンが飛竜族の人と念話を通してくれた。


「ヒカリ様、私が味見をした後で宜しければ、食べて戴けるそうですが、クッキーは2枚以上残っているのでしょうか?」

「リサ、どう?」


「お母様、残り3枚です」

「エイサン、残り3枚だって。エイサンの分と飛竜族さんの分は何とかなるね。あとは、小麦粉とバターを準備して、焼くしか無いかな」


「ヒカリ様、ここにある砂糖は幾らでもお使いください。ただ、南の大陸では小麦栽培の文化が無いため、北の大陸と同じクッキーは作れないかも知れませんが……」


「うん。飛竜族さんとの信頼関係が得られたら、色々作ってみようね」

「承知しました!」

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