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4-05.誕生パーティー(1)

「ヒカリ、誰がパーティーに間に合わないのかしら?」


 声がする方を振り向くと、今話題にしていたラナちゃんが居た。

 タイミング良すぎる。

 ある意味で、最悪のタイミングかも?


「ニーニャ達がパーティーに来れないと困るかな?」


「そう。ヒカリは私の耳が悪いと思っている?

 そして、『朝食後の談話をして楽しく過ごしています』と、メイドさん達に聞いて、この部屋に案内して貰ったのは、私がヒカリに話しかける直前だと思ったのかしら?」


「じゃ、じゃぁ、ラナちゃん達は私が返答に困っているのを御存じで、黙って聞いていたのですよね?」

「ユグドラシルに登る前に、誕生パーティーを開こうとして困っているのは知っているわ」


「誕生パーティー自体は然程さほど問題ありません。強いて言うなら、ニーニャの鉄板が無いとタコ丸パーティーが出来ないぐらいです」


「『ラナちゃん達家族と連絡が取れない』ことは、問題無いのかしら?」

「何らパーティーの準備も出来ていないのに、ラナちゃん達を待たせてしまう方が、私としては困ります!」


「ステラ、ヒカリはそんなこと言っていたかしら……」


 ステラは、ラナちゃんと私の会話より、何故かクロ先生の後ろの人物が気になるみたい。


 浅黒い褐色系に日焼けした肌、亜麻色の髪の男性。クレオさんの男性バージョンみたい。 容姿は人族の男性っぽいんだけどね。ステラは色々な人脈があるから、過去の知り合いなのかも?


 ただ、人族だとすると、年齢差からして、相当幼かった頃の人っていうことになりそうだけど……。


「あ、ああ、ライト……。ラナちゃん、ヒカリさんはそのようなことを言っていたような、言っていなかったような……」

「ステラはダメね。会話にならないわ。

 ユッカ、ヒカリは私を貴方の誕生パーティーに招待する気が有ったのかしら?」


「ラナちゃん、ヒカリお姉ちゃんは、いつもみんなの事を考えているよ。パーティーの準備も色々しているよ。心配しないで」


 なんか、ステラの返事があやふやだから、ユッカちゃんに確認してる。それにしても、ステラのこの反応は……。

 なんか変だね?


「ユッカは相変わらず良い子ね。ヒカリも見習うべきよ」

「あ、はい!

 では、早速タコ丸以外のパーティーの準備を進めたいと思います。


 卵や砂糖が潤沢に手に入るので、ケーキの類が作れると思います。クレオさんに頼んで、山羊や牛の乳が手に入れば、生クリームも作れると思うので、フルーツを挟んだデコレーションケーキも初めて作ることができます!」


「そう……。

 だったら、ご褒美としてヒカリに良い人を紹介するわ。ユグドラシルの調査をしたことがある貴重な人物よ。ガイドをしてくれるわ。

 ステラ、貴方が知り合いだとしても余計なことは言わなくて良いわ」と、ラナちゃん。


 そ、それって……。

 ステラが呆然として、ラナちゃんが素性を明かしちゃいけないって明言するのは、妖精の長ってことでさ……。

 たぶん、あの人の中身はドリアード様なんじゃないの?


「ラナちゃん、お帰りなさい。そしてパーティーに間に合って良かったわ。

 ヒカリさんたら、貴方達家族との連絡手段が無くて困っていた様子だったのよ。


 そして、素晴らしい人物を紹介戴けることに感謝するわ。

 宜しかったら、お名前を伺っても宜しいかしら?

 私はマリアと申します。初めまして」


「マリアさんは流石よ。ヒカリとは違うわね。

 こちらは、ドリア……。

 

 ……。

 ええと……」


 と、名前の紹介途中で言葉に詰まるラナちゃん。

 それ、ステラに口止めしておいて、自分でばらしちゃ不味いんじゃないの?

 まぁ、良いけどさ……。


「ラナちゃん、そちらは、ドリアンが大好物でいらっしゃる方ですよね。お名前は確か……。ユグドラシルに似た名前のユーフラテスさんでしたっけ?」


「そ、そうよ。ステラはやっぱり知り合いだったのかしら。

 ドリアン好きのユーフラテスよ」


 ステラ、それはギリギリじゃないですか?

 自己紹介で名前を言う前に好物を紹介するって、どういうこと?

 話を合わせるために、ドリアンを大盛に盛って、整えて来るけどさ……。


「ユーフラテスさん、初めまして。

 クワトロ、庭でドリアンの準備をしなさい。倉庫に山ほどあるでしょう?」

「承知しました」


 と、ドリアン好きと信じるマリア様と、その指示を直ぐに実行するクワトロ。これじゃぁ、私の出る幕は無いね。


「ヒカリ、飛竜族の手土産は準備できているかしら?

 ユ、ユー、ユーフラテスに聞いたのだけど、こっちの飛竜は肉食よ。貴方のいつものクッキーでは交渉のネタにならないかもしれないわ」


「あ、はい。海鮮が潤沢にとれますので、クジラ辺りが良いかなと思っていました。

 クレオさんが飛竜族の巣のある位置は知っているので、直前に狩りに行けば良いかなと。


 それよりも……」


「それよりも、何よ」

「魔族の国を訪問するメンバーの方が問題かなと……」


「私は行くわよ」


 即答のラナちゃん。

 ユーフラテスさんの名前は分かって居なくても、そっちは即答なんだよね。ただ、それが通るかっていうね……。


「でも、人族の国では自由に暴れられるけど、魔族の国に行ったら、普通の人族の旅人を装うんだよ?」

「何故?」


 何故って……。

 そもそも普通の人族の旅人では不味いのかっていうね……。


「リチャードも、私も目立ちたく無いからかな。

 この南の大陸の人族の領地を押し返したいから、その準備が出来るまでは魔族に警戒されたくないの。特別な才能を持った団体が南の大陸に到着しているって判ると、魔族も警戒して、全力を出して人族の占領拠点を防衛するかもしれないでしょ」


「だったら、誰が行くのかしら?美味しい物は食べられるのかしら?」

「美味しい物が食べられるかは分かりません。少なくとも、ここのお屋敷で食べられる物より、格段にレベルは下がると思います。

 人選はとても困っています」


「困ったわね……」

「はい、悩んでいます……」


「ヒカリ、パーティーの食事を食べてから決めるわ」

「え?」


「私が行くかどうかよ」

「はい……」


 な、なんかね?

 一気に話が進んだよ?

 困ったことは、食事のレベルってこと?


 でもね?

 なんか、すごいプレッシャーを感じるんだよ。

 魔族のメンバー探しよりもさ!


「ヒカリ、もう一度言うわね。

 パーティーの食事を食べてから決めるわ」

「はい!」


「何が食べられるのかしら?」

「今の所、凝った物でなければ完熟フルーツは種々準備できているかな。

 料理の類ではスパイスが潤沢に使用できるので、生ハーブや乾燥させてブレンドしたスパイスを元に味付けした魚料理、肉料理。


 あとは……」


 あとは、何だっけ?

 基本的に鮮魚が美味しくて、捌き方、料理の仕方を間違えなければ、北の大陸と同レベル以上の海鮮を味わえると思うんだよね。


 醤油とか鰹節みたいな特殊な調味料は無いけど……。

 お菓子の類は、小麦、砂糖、バター、牛乳類があれば自由自在ってところかな?


「あとは何かしら?」

「北の大陸で食べていたようなお菓子は作れると思います」


「フルーツって、あのバナナというものかしら?あれは『りんご』より美味しくないわ」

「いえいえ。

 今準備させて戴いているドリアンもそうですが、主食ではなくて、フルーツとしてのバナナは十分に美味しいです。

 フルーツ類は日持ちがしないため、市場には流通しにくいですし、まして北の大陸ではこちらで入手できるような完熟して、芳香も甘さも豊かな物は入手できなかったと思いますが……」


「ステラ、どうなの?」と、ステラに確認するラナちゃん。

「バナナは分かりませんが、ドリアンは美味しいと思います。私は過去に食べたことが有りませんでした。

 あれにチャレンジするのはヒカリさんならではとしか……」


 あれ?

 ひょっとして、ステラもラナちゃんも南国のフルーツを食べて無いってこと?

 まぁ、来て翌日には別行動だったから、私たちみたいに市場を散策したり、食べ歩きとかしてないもんね……。

 マリア様同様に主食のバナナしか知らないと……。


「ユッカ、ヒカリと一緒にフルーツを食べたのかしら?」

「ラナちゃん、色々あるよ。一緒に食べよう?」


 冷蔵庫もあるし、日々色々なフルーツが届いているから突然のお客さんにも困ることは無いよ。当然、20~30人のパーティーぐらいなら十分に賄える。クワトロさんもドリアンの準備を進めていることだし、みんなでフルーツで歓迎すれば良いかな?


 パーティーの準備の話よりもユッカちゃんの一言が一番説得力があるらしく、マリア様との朝食会も自然解散になってしまった。

 私が悪いわけじゃないから、良いんだけど、誕生パーティーの準備を何か考えないと不味いかな?



いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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