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4-04.マリア様の宿題(4)

「ヒカリさん、皆の知恵に感謝する必要があるわね。


 先ず、巫女の遺体を奪還したことは隠密裏おんみつりに済ませそうね。

 次に、魔族からの調査を攪乱するためには、飛竜の血を入手して、クレオさんに秘薬として利用して貰えば、迷宮から魔物が溢れた理由も有耶無耶に出来そうね。


 そうであれば、後は元の魔族との国境まで進軍して、防衛網を張るための構想を立てれば良いわね。


 それが出来れば、リチャードの家族全員で外交手腕を磨きながらハネムーンを楽しんでらっしゃいよ」


 マリア様が言うと、本当に実現できちゃいそうなのが怖いな。

 でも、まぁ、何だかんだで皆の力が合わさって実現できているっていうね……。


「エスティア王国で所有している神器を全てここに持ち込んだとして、当初予定している魔族との国境まで制圧するのに、あと何日間必要かしら?」


「制圧だけであれば3日間。防衛拠点を築きあげるには、そこから10日間。

 防衛拠点までの情報網と街道整備、交代要員の生活施設の立上げまでを想定しますと、さらに追加で3ヶ月を要すると思います」


「地図を見ただけでは判らないけれど、人族が侵攻される前の旧国境まではどれくらいの距離かしら?」


「地図の縮尺が合っているとすれば、国境まで凡そ500km。エスティア王国の王都から、ストレイア帝国の帝都までの距離に匹敵すると思います」


「確かに、その距離を飛竜族の助けを無しで街道整備するには時間が掛かるわね……」


「石切り場の位置も判りませんし、空気搬送システムを活用するにも、膨大な石板の作成が必要になり、それだけの人数を集めないといけません」


「そうすると、ヒカリさんが領地を開拓して整備した、神器による開墾と土をこん棒で固める方法が有効かしら?」


「あ、はい。


 神器に近い性能のこん棒でしたら、ちょっとした魔力の持ち主で有れば操作可能です。そして、例の観光迷宮で3本ほど追加で産出しました。

 また、ニーニャの剣やナイフにコーティングを施した物でしたら、大方おおかたの大木は切り倒すことも可能です。


 ただ、大木の根の部分が不ぞろいに残ってしまうので、そこの処理を何とかしないと、綺麗な舗装路にはなりません……」


「ヒカリさんの知識でもダメなのかしら?」


「私の領地の整備のときは、マリア様からお借りした神器の剣のスコップ機能を利用して根を除去して、その後でこん棒で土を固めました。

 今回は時間が無いため、神器1本では木の根を除去するには、魔族国境までの距離があるため時間が掛かり過ぎます……」


「ヒカリさん、ドリアード様にお力添えして頂くのはどうかしら?」と、ステラ。

「ステラ?」


「飛竜族に会いに行くのだから、ついでにユグドラシルも登れば良いでしょう?

 スチュワートが言っていたけれど、『飛竜の監視があるから難易度が高い』訳よね。飛べるのであれば大した問題では無いでしょう?」


「まぁ、たぶん。

 念話も通じれば、ちょっとぐらいはこちらの願いをいてくれると思うし。

 ただ、会話するきっかけが出来る前に敵対行動に出られると不味いかも……」


「ヒカリさん、ステラ様のおっしゃっていることがおかしいのかしら?」

「あ、いや、そんなことは無いです。

 無いですが、計画も立てていないですし、ユグドラシルの高台に登る順番や利権の話もありまして……」


「ステラ様の提案なのだから、エルフ族の順番でアプローチすれば良いのよ。飛竜がどこに居るかは、クレオさんが知っているのでしょう?何も問題無いわ」


「マリア様、ですがニーニャ達とラナちゃん達家族にも話をしないと……」

「ヒカリさん、ニーニャさん達はそろそろ戻って来るわよ。ユッカちゃんの誕生会に合わせて帰って来るって言っていたわ。


 クロ先生の家族はどうなのかしら……。ステラ様はあの家族の方達から何か聞いていませんか?」

「ヒカリさんがお願いすれば、いつでも戻ってくると思いますわ」と、ステラ。


 ええ?

 妖精の長へのお願いを私がするの?

 『願えば叶う』というラナちゃんの言葉を信じるなら、私が願えばそれで良いわけだけど……。


 何を願うんだ?

 『ドリアード様に会いに行くから、戻って来て~』って?

 そんなのラナちゃんからすれば、『ヒカリの好きにすればいいじゃない』で、終わりな訳でさ?


 あれ?

 そもそも何でラナちゃん達に戻ってきて貰う必要があるんだ?飛竜族との交渉は私たち人族の問題であって、ラナちゃん達は関係無いし。

 ユグドラシルへのアプローチだって、人間たちのルールの範囲で登頂を目指す訳で、ドリアード様に会うのも私たちの都合。


 ああ、何の問題もないじゃん?


「ヒカリさん、お願いの最中かしら?」と、マリア様。

「あ、いえ、違います。

 飛竜族もドリアード様も人族の私たちの都合なので、ラナちゃん達をわざわざ呼んで戻って来て貰うのは、ちょっと違うかな~って……」


「ヒカリさん、不味いわ」と、ステラ。

「ええ?」


「ユッカちゃんの誕生パーティーをすることは、私は伝えていないもの……。

 それに、飛竜族との戦闘が想定されているなら、それも不味いわ」


「わ、私が悪いの?」

「ヒカリさんが勝手に面白そうなことをするのが不味いのよ……」


「ヒカリ、ちょっと良いか?」と、割り込むリチャード。

「はい。何でしょうか」


「母の話も良い。魔族との国境までの進軍も良い。

 だが、飛竜族やドリアード様は良くない」

「良くないとは?」


「危険すぎるだろう。説明が必要か?」

「飛竜族は危険だけど、会話が成立すれば戦闘にはならないと思うよ。

 ドリアード様の方が面倒かもね。ユグドラシルを登れば必ず見つかるという訳でもなさそうだし……」


「ラナちゃん家族を呼び戻して、飛竜族の戦闘にクロ先生に参加して貰うという事か?」

「そんな必要は無いし、そんなことを考えていなかったよ。

 でも、ステラの指摘からすると、それ以上に大変なことになるから、ちゃんと話をしてから実行しないと不味いね」


「これまで会話をしたことが無い、初めての飛竜族が怖くない?

 そして、それよりもラナちゃん達の家族の方を心配するということか?」

「うん」


「皆に説明できるか?」

「……」


「どうした?」

「困ってる……」


「飛竜族の対応に準備が必要ということか?」

「そっちは、まぁ大丈夫……」


「どこに居るか分からないラナちゃん達と連絡をとる方法が無いということか?」

「……」


「やはり、そういうことか……」


 あれ?

 私はラナちゃん達が妖精の長であることは言って無いし、念話で会話できることも言って無いよね。


 何が『そういうこと』なの?

 ひょっとして、リチャードの勘が鋭くなって、気づいている?


 私が黙っているとリチャードが話を続けた。


「魔族との国境まで制圧するためには、ラナちゃん達家族に話をするにも、その連絡手段が無い。

 魔族に人族の状況を知られないためにも直ぐに行動を起こす必要があるにも拘わらずだ。


 そういうことだな?」


 いや、そこは念話で良いんだけど。

 念話で呼んだあとで、誕生会のパーティーの準備が出来ていないと怒られるっていう、単純な話なんだけどね?


 そこを言うと、『念話は秘密だろう?』と、次の問題をリチャードに問い詰められるからねぇ……。


 どうしたもんだか……。


「ヒカリさん、私の方で冒険者ギルドへ依頼を掛けて、ラナちゃん達家族の追跡と言付けをしましょうか?」と、クレオさん。


 いや、そういう問題じゃなくてね?

 リチャードが勘違いしてることでさ?

 う~ん、う~ん……。


「ヒカリさん、どうしましょう?」と、ステラ。


 よし、ここは話をぶった切るよ!


「分かった。

 先ずは盛大な誕生パーティーの準備をしよう!

 ラナちゃん達が間に合わなかったら、伝言することにしよう!」


 宣言してみたものの、問題の先送りってことは判ってる。

 みんなも判ってるから、唖然として反応が無いね……。



「ヒカリ、誰がパーティーに間に合わないのかしら?」


 突然、ラナちゃんの声がした。

 念話じゃなくて、音声で聞こえたよ?

いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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