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4-02.マリア様の宿題(2)

「そう。ヒカリさんが前向きに考えれている様で良かったわ。

 私も躊躇なく好きなことが出来るし、貴方へ協力のお願いもするわ」

「は、はい……」


「ヒカリさん、魔族の本国を見てくるのはどうかしら?」

「は、はい?」


 あっ。

 ビックリしすぎて、変な反応になった。

 でも、まだ人族の領地を取り戻せてないのに、魔族の国へ行くとか、どういうこと?


「クレオさんの冒険者ギルドへの貸しが金貨2000枚相当、上級迷宮の鎮圧依頼の対応、貴方達が拾ってきた山盛りの上級迷宮のお土産、貴方の金貨6000枚、そしてユッカちゃんの騎士団員400名。

 これでサンマール王国を制圧できないなら、腕が悪いとしか言いようが無いわ」

「は、はい……」


 なんで、サンマール王国を制圧することになっちゃっているんだろう?魔族を元の国境まで押し返す話だよね。サンマール王国の支援をする立場だったはずだけども……。


「ヒカリさん、私が此処へ来た目的は何だったかしら?」

「砂糖の安定供給や、南の大陸との交易をスムーズに行うためにの拠点構築です」


「違うわよ」

「えっ?」


「エスティア王国がストレイア帝国から完全に独立するためよ。そこで邪魔なのが、バックボーンとしてのサンマール王国との結びつきと皇后陛下の力ね。

 わかるかしら?」


 な、な、何でそんなことに?

 『おばあちゃんとして、孫や義理の娘の面倒をみたい』って、言ってたのは何処に行ったの?


「ヒカリさん、理解が出来ない?リチャードはどうかしら?」


 ええと……。

 ストレイア帝国の支配下からは抜け出せてない。

まだまだストレイア帝国の支配力は外交への影響力や軍事力も含めてとても強い。今、独立戦争を起こせば負ける。


 ストレイア帝国の属国であるエスティア王国へ侵攻が始まるとしたら、ロメリアが緩衝地帯となっているから防衛は出来ると思う。けれど、防衛できることと、支配下から抜けるのは話が全然違う。交易から外交から全てに邪魔が入る訳だから、エスティア王国としてはそういった諸問題への解決に向けて国力を割かなくてはいけなくなる。


 私はそんなことを望んでいないから、平和裏にロメリアの影響下から完全に抜け出すことを考えて来た。でも、ストレイア帝国からの離脱は考えていなかったよ……。

 まして、ユッカちゃんと上皇様の関係があるのだから、曖昧な関係のまま維持していても良いかなと思っていた。

 敵対関係にはなくても、同盟関係ぐらいな状態で……。


 あ、でも、それって……。

 ストレイア帝国の属国では無いってこと?

 わたしがぼんやりとイメージしていたのは、敵対関係にない同盟関係ぐらいであって、実際には納税もしていて、支配下に置かれている。マリア様はその状態から名実ともに脱却したい考えっていうこと?


「今、エスティア王国はヒカリの仲間達のおかげで、独立出来るだけの力はついてきた。だが、帝国に敵対するほどの国力があるとは思わない。

 こうやって、ハネムーンを利用して南の大陸での外交を進めているのは、本当の意味での国力を付ける為であり、外交戦術を学ぶためでもあると思っている。

 鉱山や冶金やきんによる資源供給だけでは、独立国家として弱いですから」


「リチャード、勉強不足と想像力の欠如の両方ね。

 ヒカリさん、今のリチャードの意見をどう思うのかしら?」


「ええと……。私は明確に想像していなかったです。

 ですが、マリア様が具体的に明示して頂いた事で、私が出来ていると勝手に信じていたことが、実際には出来ていなかったことが改めて分かりましたし、また、他の皆様とも共有出来ていないことが判りました。

 そういった観点からしますと、リチャードの知識や想像力の欠如というものは、私がちゃんとイメージを共有していなかったことに起因しているのかもしれません」


「あら……。貴方、気が付いていたのかしら?」

「気が付いていながら、有耶無耶にしていたという方が確かかもしれません」


「どういうことかしら?」

「実質、ストレイア帝国の束縛から解放されて、同盟関係のような状態であると思っていました」


「同盟とは?」

「敵対関係になく、共同で国家を存続させるために同じ立場で成長していく存在です。部分的には依存関係もあるでしょうが、あくまで敵対関係にあるものでは無いという認識です」


「ヒカリさん、それは理想かもしれないわ。そういった考えが私には無かったわね。

 けれど、少なくとも毎年金貨5000枚。そしてロメリアの肩代わり分として金貨7000枚。この負担はストレイア帝国と同盟関係にあるのであれば、それに見合う対価を私たちエスティア王国は得られるべきね」


「あ、あの……。

 ロメリアの納税負担分は、アジャニアへの技術料としての積立金を戴いていますので、実質負担はありません。

 エスティア王国内での納税額に関してですが、メルマの商人へのロメリア王国への裏金が無くなり、交易品の価格低下、食料自給率の上昇から、国全体での税収は上がっています。

 その上、関所での税収も含めて経済特区扱いですので、来年からは関所からの税収も免除になり、実質税収の値下げ交渉が可能となります。


 これは、私が漠然と理解していたことで、マリア様やリチャードへの報告が出来ておりませんでした。私の中ではストレイア帝国に対して、金銭的な若干の束縛は残っていますが、ほとんど独立出来ていると考えていました……」


「ヒカリさん、アジャニアへの技術料というのが良くわからないわ。

 ヒカリさんが技術提供して、その代わりに技術料を貰っているということかしら?」


「いえ……。

 ストレイア帝国とアジャニアとの徴納関係に介入しまして、アジャニアとエスティア王国で新規に締結しています。

 ストレイア帝国は自力でアジャニアに到達して、締結内容の更新が行えるまでは、毎年のアジャニアへの技術料の納税先はエスティア王国になります。

 一方で、アジャニアは新規技術開発が滞っていることと、我々がアジャニアの復興に介入したこと、飛竜族を解放したことから、エスティア王国と同盟関係にあります」


「ヒカリさん、横から口を出すわ。 マリア王妃、補足させて戴きます」


と、ステラが断りを入れてから説明を続けた。


「ヒカリさんが飛竜族を解放したのは、アジャニアの技術力でロメリア王国が飛竜族に兜を被せて支配下においていたことが原因ですの。

 アジャニアへの航海では、兜無しの飛竜を同行させたことで、アジャニアによるストレイア帝国への技術供与や内政干渉が完全に破綻したのですわ。


 ストレイア帝国への干渉の停止と、エスティア王国への恭順を誓わせた契約書があり、名実共にアジャニアはヒカリさんの支配下にあります。実務的な部分では、今回の観光迷宮と同様に、アジャニアに返済不能な借金が出来たため、観光迷宮を活用した国家経営の立て直しと、初期費用の全額負担を申し出ており、その見返りの一部として神器の斧を提供して戴いています」と、ステラ。


「ステラ様、詳細な説明ありがとうございます。

 ヒカリさん……。

 話がだいぶ違うわね……。

 航海して、交流して、アジャニアの文化を持ち帰ってきただけでは無いのかしら?」


「正直申しまして、ストレイア帝国が持つ航海技術では、アジャニアとの交易は不可能と思われます。

 であれば、私は金銭的な収支が合っていれば、ストレイア帝国に干渉する必要が無いと考えていました。


 そして、リチャードと同じく、エスティア王国の国力を増強することに注力すべきと考え、アジャニアに関する利権がストレイア帝国に対して有効な切り札になるどころか、エスティア王国への更なる干渉のきっかけになると考え、報告を控えておりました」


「確かにそうね……。

 アジャニアの利権を逆転させていることは、ストレイア帝国の矛先を我々に向けさせるのに十分なきっかけになるわね。問題が無ければ黙っておくに越したことは無いわ。

 それに、アジャニアが我々を直接助けてくれる訳ではないもの」


「はい。マリア様の仰る通りです」


「けれど、いざというときの外交の切り札にはなるわよ。使いどころを間違えなければね。

 リチャード、切り札の使い方を良く考えなさい。貴方は、ヒカリさんのハミルトン家の名目上のあるじでもあるのだから。いいわね?」


「はい。考慮に入れて戦略を再検討します」


「そう。それなら話は簡単ね。

 ストレイア帝国が今回攻め込んできたら、打ち負かした上で、講和条件として、ロメリア王国とエスティア王国をストレイア帝国から完全に独立させてもらいましょう。交易はこれまで通りで良いけれど、納税は無くす方向で。

 南の大陸は現在のサンマール王国の領土とは別に、魔族に侵略されている部分は全てユッカちゃんの名義で領地にしましょう。そうすれば、サンマール王国からの税収は下がったまま維持されることになるわ。良いかしら?」


「「「ハイ」」」


 皆がマリア様の発言に返事をする。

 クレオさんはギリギリ分かるかもしれないけど、リサやシオンは話に付いていけて無いと思うんだよね?


 ま、いっか。

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