表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/301

1-01.生まれた_リサの場合


 生まれた?

 転生に成功した?


 私はエミリー。

 輪廻転生の神によって、別の生を与えられた。

 転生前の記憶をハッキリと覚えている。

 そして、輪廻転生の神が約束してくれたことも……。


 私はここで新しい人生を歩む。

 輪廻転生の神が導いてくれたとおり、メイドをしているのお母さんなのかな~。優しい人だと良いな~。 そして、お母さんは私が聖女を目指すことを応援してくれたら、良いのだけど……。


ーーーー


 それにしても……。

 転生前は、聖女とは言えないけれど、人族としては希少な魔法ランク3までを駆使できていて、そこに医療技術を合わせ治療を行っていた。

 ところが、この生を受けた体では、喋ることすらできない……。目もぼやけている。手も握れない。音も良くわからない。


 隣では兄弟なのか、姉妹なのか判らないけれど泣いている。

 って、そういえば私は女性に生まれ変わった?それとも男の子?

 心配しても仕方が無いので寝て待つ……。


ーーーー


 自分が女の子に生まれ変わったと分かった。

 粗相をしたときにメイドが股をやさしく拭いてくれたから。

 教会で治療や施しをした際に、男性と女性の違いは知っている。

 私が触られた触感から、私は女性。

 聖女を目指せるのかも……。


 一方で、私は双子である可能性が判明した。隣の子と私は一緒に育てられている。乳母が実子と預けられた子を育てている可能性もあるけれど、隣の子と私とで扱いに区別が無い。お風呂に一緒に入れて貰える。どちらが先と言うことも無く、ほぼ順番に体を洗って、柔らかい布で体を拭いてから、再び乾いた優しい香りのする布に包まれて眠る。


 もし、ここで乳母の子と預けられている子であったならば、扱いが変わる。貴族の貴婦人たちは知らないが、実際に乳母の周りでお手伝いをしていたのだからわかる。自分の子が可愛いに決まっている。食事やお風呂といった当たり前の世話だけでなく、言葉の掛け方や泣いたときの面倒を看る順番が違う。


 もし、私が双子だったら大きな問題が発生する。一般的な平民の場合、双子の片方は里子に出される。教会に預けられる場合もあるし、奴隷として売られるのも知っている。

 この家庭の懐事情(ふところじじょう)も分からないし、他に兄弟がいるのかも判らない。けれど、女子が売られる可能性が高い。労働生産性が低く家督が継げない事と、売り物としての女性であれば、市場があるのだから……。


ーーーー


 耳が聞こえて、目がモノを認識出来るようになってきた。

 そこで、抱えていた不安が絶望へと確定した。私と一緒に生まれた双子はシオンという男の子だった。私は姉でリサと名付けられていた。


 少しでもこの家に長くいて、捨てられるまでの時間を稼ぎたい。

 弟が寝返りを打って、私にぶつかってくる。我慢しても、我慢してもぶつかってくる……。こちらも寝返りを打って何とか交わしていたのだけれども、タイミングが悪い時があって、シオンの振り回した腕が私に当たった。思わず泣いてしまう……。

 こんなことで、世話してくれる人に迷惑を掛けてはダメ!強くならないと!


 夜は夜で、シオンに妨げられる。お腹が空いても、ぐっと堪えて我慢しているというのに、シオンが泣き始める。この家では何故か夜に泣いても世話をしてくれる。だから、泣くことで余計ない迷惑を掛けてはダメ。

 シオンに対して泣き止むように言っているつもりが、言葉にならない。私も一緒に母乳を与えられて寝かしつけられる……。


 私はどうにか捨てられずに生き延びて、聖女様を探して仕えたい……。


ーーーー


 母親なのか、乳母なのか判らないけれど世話をしてくれる。

 お父さんらしい金髪に青い瞳の男性が私をのぞき込む。

 リサ、リサと、私に微笑み掛ける。きっと私達が初めての子供で嬉しいのだろう。

 出された指を掴んでほほ笑んで返す。

 これぐらいしかできない。

 お父さん、私を捨てないでください……。


ーーーー


 首が座って、抱き起こされるようになった。

 食事はスープと母親か乳母かの母乳。

 私は母親と思われるメイドに弟と一緒に抱きかかえられて、父の訓練を見学する。父は背が高くて黒い鎧に身を包んだ人と毎日訓練を行っている。

 それが訓練だと分かるのは、毎日動きが一緒だからだ。最初はゆっくり体を丁寧に動かす。それに慣れてくるとテンポをあげて打ち合いを始める。


 もし、輪廻転生の神の言葉が正しいのだとすると、母はこの屋敷のメイドで、父はこの館の傭兵なのか、あるいは騎士団員を目指してるのだろうか……。父に稽古をつけてくれている黒騎士さんも凄いと思うけれど、父は毎朝の訓練を欠かさない。


 私に、お父さんの血が流れているなら、強い女騎士に成れるのかな?聖女になるのと女騎士になるのでは、どちらがこの家から捨てられずに済むのだろう……。

 やはり、シオンが父の後を継いで、私はメイドの子として暮らしていくのだろうか……。この館のあるじが私を雇ってくれるのなら、ひょっとすると……。


 とにかく、今は女騎士にでも、聖女にでもなれる様に父の訓練も目で見て動きを覚えよう。そしてメイドの母の仕事を手伝えるようになろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ